明治学院大学機関リポジトリ http://repository.meijigakuin.ac.jp/ Title Author(s) Citation Issue Date URL ニューヨーク市近郊のロースクールの現状飯田, 浩司; 東澤, 靖明治学院大学法科大学院ローレビュー = Meiji Gakuin University Graduate Law School law review(15): 1-15 2011-12-31 http://hdl.handle.net/10723/1084 Rights Meiji Gakuin University Institutional Repository http://repository.meijigakuin.ac.jp/ 1 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号 2011年１−15頁ニューヨーク市近郊のロースクールの現状飯田浩司・東澤靖大学院が学ぶべきところは多いと思われ，いくつはじめにかのロースクールを2011年３月７日から９日までの３日間で実際に訪問することとなった。 21世紀社会で期待される役割を果たすための人我々が訪問したのは以下の５校である。的基盤を確立するための，新たな法曹養成制度の中核を担うプロフェッショナル・スクール（1）と ①New York Law School して2004年４月に法科大学院における教育がスタ ②Fordham University Law School ートし，早くも七年が経過した。この間，新司法 ③Brooklyn Law School 試験も初年度の2006年には合格率が48.3％であっ ④C U N Y （ニューヨーク市立大学） L a w たが，2010年は合格率が25.4％まで下落し，法科（2）大学院の志願者数も年々減少傾向にある。 School ⑤Hofstra University Law School このため定員割れする法科大学院が増え，法科大学院の撤退や合併など動きも生じている。とり全米のロースクールは，US News（8）などの情わけ，関東圏，関西圏は，法科大学院が集中して報誌によってランクづけされ，概ね５段階程度におり，今後，生き残りをかけた競争が加速するも分けられる。上位25校はトップクラス（Tier １）のと思われる。のロースクールとして位置づけられるが，これら法科大学院制度を導入する際にモデルとなったの学校については，日本からの留学生も多く，日米国のロースクールは，現在，アメリカ・ロース本国内でも情報を得ることは難しくない。それにクール協会（Association of American Law 対して，中堅から下位のロースクールについては， Schools: AALA）の会員であるロースクールが留学生の数が少なかったり，そもそも留学生用の 172校に上り（3），アメリカ法律家協会（4）（American コースを設けていないところもあり，日本で充分 Bar Association: ABA）が認定（accredit）してにその実態が知られているとは言えない。そこでいるロースクールが200校に上る（5）。例えば，ア今回の視察では，ニューヨーク近郊にある中堅かメリカ法律家協会の認定校の数で見ても，1948年ら下位のロースクールを中心に，できるだけ地域，には112校であったものが，1991年には176校（6），規模，形態等の異なるロースクールを数校選定し，現在は200校と増加している。米国でも主要都市これらのロースクールを訪問し，教員と直接面談近郊では，複数のロースクールが設置されており，を持ち質問を投げかけると共に，実際の施設を見とりわけニューヨーク州には15のロースクールが学し，日本での法科大学院の将来像についての何（7）存在し，その多くがニューヨーク市あるいはその近郊に位置している。これらのロースクールがどのように独自性を発揮し，ロースクールの維持を図っているかということに，今後の日本の法科らかのヒントを得ることができればと考えた。訪問時には，以下の諸点を中心に質問を行なった。 2 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号 ①学生選抜場所にあること，②法律実務家の技術を育てる教 ②学業支援育を行っていること，③学術的（academic）側 ③クリニック面よりも訓練（training）としての側面に力を入 ④就職支援れていることなどを挙げることができる。例えば， ⑤その他少人数のクラスでライティング，リサーチ，証人録取などの実践的なスキルを教えており，ここで以下，個々のロースクールごとに概要を述べる。は，具体的にどのような証拠，書類を選択するか，どのようにクライアントとの最初のインタビュー２ New York Law School（ニューヨーを行うかなどについても教えている。学生の選抜は，通常通りLSAT（10）（足きり150 ク・ロースクール）点）やGPA（足きりMid−2）を考慮するが，それ盧（11）に加えてサイコメトリックス（心理統計学）場所５ West Broadway New York, NY を用いている。いわゆるソフトスキル（パーソナリティー）をいかにして評価するかが重要である盪ロースクールの概略と考えており，具体的には，オンラインのインタマンハッタンの南部（Lower Manhattan）にビューで５分間程度質問に回答してもらい位置する1891年設立の単体の私立ロースクールで（Skype等を利用することにより，回答の影像をあり，単体のロースクールとしては，全米で最も録画しておき，それを後日採用担当者が見てい古い学校の一つである。マンハッタンという場所る），最低限の資質を持つかどうかを判断する。を活かし，「法を学び，行動する（Learn Law, 選抜は，教員と管理部門共同で行っている。 Take Action）」という標語の下，理論と実践の後述するロースクール卒業後の就職の困難さや架橋，社会の中での役割や公益を重視した教育にマーケットの動向は，ロースクールの志願者数に力を入れているのが特徴である。はあまり影響していない。学部卒業生にとっても教員数はフルタイム（Dean等の管理職を除く）就職は困難であり，ロースクールに進学して法曹で65名，パートタイムで111名であり，学生数は，資格を取得するという方が学生の目には堅実な選フルタイムで1,408名，パートタイムで448名であ択に見えるようだ。（9）る。JDコース以外にFinancial Services Law，学生の大半は新卒の学生だが，パートタイムの Real Estate，TaxationのLL.M.コース，Mental 学生にはより年齢の高い者が多い。 Disability LawのM.A.コースがある。その他，他 ②学業支援校（Baruch College）と連携したM.B.A./J.D.の複専任の教員は，専任，実務家，書面作成指導者合学位コースもある。ランキングは，2011年のなどからなるが，それ以外にもその２倍程度の非 US Newsによれば，135位である。常勤講師がいる。教育課程では，学生が自らの到達度を自己評価できるようにしている。蘯質問と回答 ①学生選抜質の高い学生を集めることに関心があるが，ニ司法試験準備のためには，以下の３つの措置を取っている。第一に，学業が苦手な学生には試験対策のための特別な援助を行っている。第二に，ューヨーク・ロースクールは，各種の学部を有すニューヨーク州の司法試験の試験科目になっている大学付属ではなく，単体のロースクールであるる14科目すべてについて講義を提供している。第ことから，ロースクール自体の魅力を訴えなけれ三に，BAR/BRIなどの受験予備校の講座を校内ばならない。そのポイントとしては，①ニューヨでも開講し，学生が受講できるようにしている。ーク市，その中でも裁判所や各種政府施設に近い当ロースクールでは，ニューヨーク州の司法試験ニューヨーク市近郊のロースクールの現状 3 の合格率は概ね85ないし86％程度である。近年は，金融や保険関連企業のコンプライアンス部門へ就職するものも増えており，これについては，こういった分野を専門とする新たな教員を雇っている。また，Ｅディスカバリーのスキル等，実践的かつ最新のスキルの取得についても力を入れている。 ③クリニック法務技能センター（Lawyering Skills Center）のもとに，５種類のクリニック，２種類のエクスターンシッププログラム，４種類のシュミレーションコースが開設されている。クリニックでは，教員の監督のもと，実際の依頼者の事件を扱い，シュミレーションコースでは，様々な状況を設定して関係者との関わり方を学ぶ。 ④就職支援就職は，リーマンショック以降，法律事務所が求人数を減らしている中，深刻な問題となっている。ロースクールの就職課（Office of Career Services）試験前だけあって，カフェテリアも勉強する学生が目立った。が，専門性促進（Professional Development）という形で就職支援を実施している。例えば，卒業生の若い弁護士や各種団体，組織を招いて講演会や質疑応答を行ったり，校内で法律事務所の合同インタビューを開催したり，エクスターンシップの機会を提供したり（４単位），求人のコンピュータ検索の指導をするなどの就職支援を実施している。就職という点では，卒業生とのネットワークも重要である。 ⑤その他：すでに法曹資格を有し，実務を行なっている者に対しても，ロースクールが継続的法律教育（CLE）として，いくつかのセミナーを開講して図書館１Ｆロビー。この階から地下３Ｆまでが図書館になっている。いるが，こういった継続的法律教育については，むしろ専門のセミナー企業の方が力を入れておビル建築の建物が印象的である。マンハッタンのり，当ロースクールとしてはあまり力を入れてい建物が密集した地域に位置しているため，中庭等るとは言えない。の設備はないが，その分建物内のレイアウトを工夫し，ガラス部分を増やすことによって，都市部盻施設等のビル作りの校舎とは思えない開放感を出してい地下鉄の複数の駅から歩いて数分程度のところる。カフェテリアも明るく，グループ学習にも使にあり，アクセスは極めて良い。最近校舎を改築い勝手が良さそうである。本館の中にある図書館したということであり，白を基調とする近代的なは，１Ｆが入口階になっており，その他の階は地 4 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号 Development），J.D./M.B.A.，J.D./M.S.Wなどの複合学位コースもある。ランキングは，2011年版のUS Newsによると 30位である。蘯質問と回答 ①学生選抜志願者に訴えるポイントとしては，（i）ニューヨークミッドタウンの格好の場所に位置すること，（ii）優れた卒業生がいること，（iii）司法試験中規模の教室。教壇には，AV機器が秩序よく並んでいる。の合格率が高いこと，（iv）協力的な環境であること，（v）公的奉仕へのかかわりに重きを置いてい下に３階に渡って設けられている。ること，（vi）絶えざる革新を行なっていることななお，入学課，ブックセンターなどは隣接した別のビルに入っている。どがある。過去２代の学長が親切な環境づくり，人材の育成に力を入れ，これによってフォーダム・ロースクールの評価も上がってきている。３ Fordham University, the School of Law（フォーダム大学ロースクール）入学許可を出した者に対しては，その定着を計るために，Admitted Student Dayを１月，２月，３月及び４月にキャンパスで実施している。盧場所 Admitted Student Dayでは，概要の説明，卒業 140 West 62nd Street, New York, NY 生の話，就職に関する話等を午前中に実施し，ランチの後，午後各教員が法律家の役割，会社法，盪ロースクールの概略国際法，クリニックなどの分野に分かれて話しを 1841年創立のイエズス会系の名門私立し，さらに模擬授業や上級生も参加するセッショ Fordham Universityのロースクールとして1905 ンを設けている。旅費は原則として学生の自弁と年に設立された。Fordham Universityのメインなっている。また，これらのAdmitted Student キャンパスはブロンクスにあるが，法科大学院， Day以外にも，希望者に対しては，キャンパス・経営大学院等は，マンハッタンの西部に位置するツアーを適宜実施し，実際の授業にも参加してもリンカーン・センター・キャンパスにある。ローらっている。スクールは，コロムビア大学，ニューヨーク大学志願者選抜は，他のロースクールと同じようにと並びニューヨーク三大ロースクールと称され LSAT，GPA，エッセイ（自己申告文）などで総る。合的に判断している。近年は，ロースクール間で教員数はフルタイム（Dean等の管理職を除く）の競争が激しく，優秀な学生に来てもらうためにで81名，パートタイムで141名であり，学生数は，は質の高い教員を取ることが重要となり，そのたフルタイムで1,160名，パートタイムで309名であめの財政的な投資も必要となる。いい教員を採用（12）。JDコース以外にBanking, Corporate & するために，給与について差別化を図る必要があ Finance Law，International Business & Trade る場合は，chairのポジションを付けたり，リサ Law，Intellectual Property & Information ーチ基金を与えることなどの工夫が良く行なわれ Technology Law，International Law & Justice る。のLL.M.コースがある。その他，J.D./M.A. ②学業支援る（ International Political Economy and フォーダム・ロースクールの長所である協力的ニューヨーク市近郊のロースクールの現状 5 な環境という点と関連するが，学生課（Office of 学生のためのサマープログラム（3週間のプログ Student Affairs）が学力不足の学生に対して学業ラム）も開始した。豊富化プログラム（ Academic Enrichment また，仕事を持ちながら勉強する人のために夜 Program）と称する様々なサポートを提供してい間部（Evening Division）のコースも設けている。る。例えば，いかにノートを取るか，いかに授業夜間部の場合は，通常３年のところを４年で修了の準備をするか，いかに法的な文書を作成するかすることになる。昼（Day Division）のクラスとなどについて指導を行なっている。夜間部のクラスは同じ教員が教える場合と別の教ドロップアウトする者はほとんどいないが，休員が教える場合があるが，同じ教員が教えるもの学する者はいる。卒業のための単位は，83ヶ月間については，例えば，秋学期は昼，春学期は夜との間に取ればいいことになっている。いうようなシフトを取って，教員に負担がかから司法試験の合格率は高いので，その点での競争ないように配慮している。的な雰囲気はない。 ③クリニック盻施設等クリニックは，顧客との付き合い方を身につけマンハッタン西側のセントラルパークから遠くるために必要なもので，各学年80名の学生が受講ない地域に位置するが，中庭等もあり，恵まれたできる。環境にあると言える。建物はオーソドックスな大 ④就職支援学校舎であるが，模擬法廷は，実際の法廷と見間就職支援は就職課が担当している。違うほど，大きくかつしっかりした作りになって就職のための支援としては，法律事務所の運営いる。の仕方，クライアント・マネジメント，いかにして仕事を取るかなどについて指導し，即戦力の養成も意識している。オン・キャンパスで，政府機関，公的機関などが採用面接を行なっている。卒業生のネットワークが強みであり，卒業生は本校への忠誠心にあふれている者が多い。現在，卒業生の組織は４つ存在する。いい就職をするためには，成績がいいことが重要であり，これが全体の下から４分の１までのレンジに入るとなかなか仕事が見つからないのが現実である。その他，最近になって橋渡し（Bridge）プログラム（フェローシップ・プログラム）を実施している。これは，裁判官のクラークや公益の業務に無給で３ヶ月間従事することを，１人3,000∼ 4,000ドルのファンドをつけて支援するというものである。このプログラムを通じて能力を評価してもらい，採用につなげようとしている。 ⑤その他フォーダム・ロースクールは，その国際性を高めるためにLLMプログラムを拡大している（現在200数十名）。その他，無学位であるが，外国人フォーダム大学校舎 6 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号る。その他，Banking, Corporate & Finance Law，International Business & Trade Law， Intellectual Property & Information Technology Law，International Law & JusticeのLL.M.コースがある。その他，他校との連携によって J.D./Masters of Business Administration， J.D./Master in City and Regional Planning， J.D./Masters in Library and Information Science，J.D./Masters in Political Science， J.D./Master in Urban Planningなどの複合学位コ図書館１Ｆ部分ースもある。ランキングは，2011年版のUS Newsによると 67位である。蘯質問と回答 ①学生選抜全米的には，ロースクールの志願者数は10％ぐらい減少しており，世間では数年のうちには閉校になるロースクールも出てくる可能性があるとも言われているが，幸いブルックリン・ロースクールの場合，志願者数はやや増加している。志願者の多くはニューヨーク地域の学生であり，地方か本物の法廷と見間違うほど立派な模擬法廷ら出てくる場合には住宅の家賃の高さが障害になっている。この問題を緩和するため，ブルックリン・ロースクールでは，2005年に大規模な居住用４ Brooklyn Law School （ブルックリン・ロースクール）ビルを取得し，300室を用意している。家賃は，相場よりも15％低い家賃（概ね月1,700から1,800 ドル）で供給している。盧場所 250 Joralemon Street Brooklyn, New York 司法試験での高い合格率と司法試験受験のための支援，充実したクリニックプログラムが売り物である。New York州の司法試験合格率はロース盪ロースクールの概略 1901年に設立された単体の私立ロースクールであり，ロングアイランドでは初のロースクールでクールによって90％∼70％ぐらいにばらつくが，ブルックリン・ロースクールは90％台を保っている。ある。ブルックリン市の官公庁の中心地に位置し，志願者の選抜において，LSATよりもGPAに重ニューヨーク州の第一審裁判所に隣接している。きを置いている。確かに，LSATは，聡明である教員数はフルタイム（Dean等の管理職を除く）（smart）ことをある程度は示しているのであろで63名，パートタイムで86名であり，学生数は，うが，実際に勉学に熱心であること，勤勉に勉学フルタイムで1,278名，パートタイムで180名であすることを保証するものではないことによる。ま（13）る。 JDコース以外に外国人用にLL.Mコースがあた，LSATは，時間の厳しい制約の下，素早い回答が要求されるものであるので，必ずしも高い分ニューヨーク市近郊のロースクールの現状 7 析力を有することを示す指標とはいえない。むしールが司法試験の支援教育に単位を付与することろのGPAの方が，信頼性は高い。を禁止していたが，それは数年前に変更された。現在では多くのロースクールが優秀な学生を獲一般にニューヨークのロースクールは，相互に得するために，成績優秀者向けの奨学金（Merit 情報交換をし，お互いに協力的な関係にある。 Scale Scholarship）の競争に走っている。経済的 ③クリニックな困難を抱える学生のための奨学金は必要不可欠裁判所や政府機関が集中する地域にあることかであるが，成績優秀者を囲い込むための奨学金のら，それらの場所でのクリニックやエクスターン増大は問題がある。また，コロンビア・ロースクシップへの学生の参加が容易である。ールやジョージタウン・ロースクールなどの有名 ④就職支援校が実施している編入生制度（Transfer Student）も問題である。こうしたロースクールは，最初の経済不振により，採用を止めている法律事務所も少なくなく，就職は容易とは言えない。入学者は絞っておいて，２年次に他のロースクーブルックリン・ロースクールでは，就職課を中ルから優秀な学生の編入を多く募集するというも心に，公益業務を含めて就職の可能性を追求してのである。これによって，優秀さが既に実証されいる。卒業生には，考えを広く持って，ニューヨた学生を，入学選抜の苦労を経ることなく，有名ーク以外の地域，様々な種類の職種も視野に入れ校がそのネームバリューを武器に引き抜いているて探すように勧めている。ロースクールでは，卒というのが実情である。業生の進路を州外まで追跡して，就職支援に役立 ②学業支援てている。司法試験の合格率は，概ね90％である。政府は，ローン免除計画（Loan Forgiveness 一般に，ロースクールの名声を高めることと司 Plan）を設けていて，政府，裁判所，公益事務所法試験の合格率を上げることの間には，相矛盾すなどの公益業務に10年間従事した場合には政府のる側面がある。司法試験対策を充実させるロース奨学金返済義務を免除する制度（Fellowship）をクールは，試験が各州ごとに実施されることから，設けており，学生にはこういった制度も活用するロースクールが所在する州の試験科目を意識したよう指導している。カリキュラムになり，集まる学生もその地方の学 ⑤その他生が多く，地方レベルのロースクールとして，相アメリカ法律家協会の認証は，７年ごとに実施対的に評価が低くなる。これに対して，全米レベされる。初回は，実際に調査員がオンサイトで調ルの有名校の場合は，全米に通用するより学術的査を行うが，二回目以降は，年次報告書な勉強が中心になるので，州の試験科目について（Annual Report）や各種データの調査が中心にの授業はほとんで実施しておらず，学生も全米かなる。ら集まっているので，仮に司法試験の支援をしようとした場合でも，特定の州の試験科目に特化しにくいという問題がある。盻施設等地下鉄の駅から歩いて１分程度のところにあブルックリン・ロースクールでは，２年次からり，アクセスは極めて良い。官公庁の群立地域に司法試験を意識した支援をはじめ，２名の専任教位置していることからビル建築の建物であり，中員が特別のコースを実施して学力不足の学生に備庭等は存在しないが，建物の前に広い空間を設けえるようにしている。この特別コースについては，るなど，圧迫感を感じない作りとなっている。カ２単位が与えられ，基本的には，１対１でライテフェテリアもテラス席を設けるなど，開放感が高ィング力を強化することを目的にしている。また，い。近隣のいくつかのビルを買い取り学生寮や事非常勤講師による司法試験用のサポートも実施し務室等に利用している。ている。かつてアメリカ法律家協会は，ロースク 8 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号図書館。すでに試験前の休暇に入っており，学生は少なかった。５ City University of New York Law School（CUNY：ニューヨーク市立大学ロースクール）盧本館の外観。小型のデジタルカメラでは全体が収まらない。場所 65−21 Main Street, Flushing, NY 盪ロースクールの概略ニューヨーク市立大学のロースクールであり， 1983年に設立された。公益業務の法律家養成ロースクールとして全米トップクラスの評価を与えられている。教員数はフルタイム（Dean等の管理職を除く）で31名，パートタイムで9名であり，学生数は，フルタイムで406名である（14）。ランキングは，2011年版のUS Newsによると 121位である。蘯質問と回答 ①学生選抜志願者の選抜方法は，他のロースクールと異なり，LSATやGPAはあまり重視せず，最低限の指標としてのみ用いている。これらの点数が必ずしもロースクールでの成功・不成功と相関していないからである。そういった指標よりも，政府機関学生寮。ロースクール近隣にいくつかの寮がある。での業務，貧困層のための業務などへの意欲が高いかどうかなどを中心に判断している。具体的には，オンラインでの願書のフォーマットに記載さニューヨーク市近郊のロースクールの現状 9 れた，なぜCUNYロースクールを志望するのか等短答試験用のコースも実施している。ここでは，のいくつかの質問に対して，文章で回答してもら試験の実質面（substantially）と技術面（proce- う方法を取っている。また，人種等での多様性を durally）の理解を増進させることが目的である。推進すべく，人種等の代表不十分性（under−rep- 司法試験の合格率は，１昨年までは，全体平均 resented）を考慮している。 78％前後のところ78から81％であったが，昨年は，また，LSATの足切り点を満たさない学生のた全体平均76％のところ73％であった。不合格者にめにも，次回のLSATで合格点を出し，CUNYに対しての学業支援としては，実際に書いた答案を入学してもらえるように，能力開発として，700 基に，添削指導を行っている。これには賛否両論ドルの低額で支援プログラム（pipeline program）あるが，おそらく実施しているのはCUNYだけだを提供している。このプログラムでは，17週間にと思われる。わたって火曜日と木曜日の夕方，LSATや読解， ③クリニック記述などの訓練を実施する。この700ドルには，クリニックには，大きく分けて２種類のものが次回のCUNYへの出願手数料が含まれている。ある。１つは，分野別のもので７つの分野のクリ LSATについては，予備校が提供する受験コースニックをそれぞれ１人の教員に８名の学生で実施を受験者が受講していることが少なくないことをしている。もう一つは，いわゆるエクスターンシ考えると，この700ドルのコースは入学希望者にップであり法務関連の官公庁や小さな法律事務所とって魅力的なものと言える。などで，１人の教員に12名の学生で実施している。志望してくる学生層は，ニューヨーク州だけでまた，著名事件や社会的に注目された重要課題なはなく，州外あるいは外国など幅広い。年間学費どにも取り組ませている。CUNYでは，全学生をが州内居住者で１万ドル（州外居住者は1.5万ドクリニックまたはコンセントレーションと呼ばれルであるが，入学後は，近隣に居住することになる体験的な集中的演習に参加させており，現在，るので，その場合，２年目からは州内居住者としこういった学生が全員参加できるようにクリニッて１万ドルということになる）というのも魅力的ク及び類似科目を用意しているのは全米でCUNY である。そうした破格の学費を維持したり，州外，だけと思われ，先駆的な取り組みと言える。国外の学生を積極的に受け入れるための予算をニ ④就職支援ューヨーク州政府から獲得するためには，それな就職先は，公益業務が多く，法律扶助，公的弁りの苦労がある。護，検察官事務所，HIV支援，移民支援などであ ②学業支援り，法律事務所に就職した場合も奉仕的（Pro 学力が十分でない学生のために３名の専任教員 Bono）業務などに力を入れる者が多い。サマーが，１年次には必修クラスの授業に立ち会ってサインターンシップも活用しているが，最近はそうポート（monitoring）をし，２年次には個別的に，した市場が枯渇してきているのが実情である。就集中的かつ包括的なサポートをしている。この２職率は81％程度であるが，この点は革新が必要で年次のコースは単位が与えられる。また，法律文あり，住宅問題など新しい分野（これらの分野は書作成，面談技術等のクラスは，20名の小さなク必ずしも高収入ではないが）への就職候補先を広ラスで行っている。それでも学生の中には，ドロげている。ップアウトする者が出てくるが，それは学業面だ卒業生のネットワークの中でも，特に各地で小けではなく，ロースクールの雰囲気に適応できなさな事務所を持つ弁護士のネットワークいという要素もある。司法試験準備のためには，４単位の授業がある。（Community Legal Resource Network）は，設立10年を迎え，350名の弁護士が参加している。コア原理の修得，論文作成の形式修得などであり，このネットワークは，政府や私人の助成で運営さ非常勤の教員がこれにあたっている。また，毎週，れているが，低額での継続教育（CLE）の提供や， 10 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号公益業務への参加や，公益業務に関する情報交換を行うための支援機関（incubator）として機能しており，卒業後すぐに独立する弁護士を支援している。 ⑤その他専任教員の給与も定額制を採用して，雇用条件の改善を通じて，良い教員の確保に努めている。盻施設等現在は，クイーンズの中でも最深部のフラッシング地区に位置し，マンハッタンからアクセスす体育館を転用した大教室るためには，地下鉄とバスを乗り継がなければならず，アクセスの点で，学生や教員にかける負担が大きい。また，施設もかつての中学校校舎を転用したものであり，個々の教室の収容人数は多くなく，双方向授業も二つの教室を連結させることによって扇状の教室とし，何とか実施しているという印象であった。大教室としては，旧体育館を転用した教室を使っているが，音声が不必要に反射して，教員の話し声も聞き取りにくいなどの難点がある。現在，同じクイーンズの中のよりマンハッタン地区に近い場所に，新校舎を建設中である。 CUNYでは，託児所施設をロースクールの建物ロースクール内の託児所。子供を持った学生も安心して勉強できる。に設置しており，子供を持つ母親でも安心して授業に出席できる体制を整えている。６ Hofstra University School of Law （ホフストラ大学ロースクール）盧場所 121 Hofstra University, Hempstead, NY 盪ロースクールの概略 1935年創立の私立Hofstra UniversityのLaw Schoolとして1970年に創設された。マンハッタンから電車とバスを乗り継いで，概ね１時間のところに位置し，郊外の広大な大学キャンパスの中に数棟のロースクール専用の建物を配する。教員数はフルタイム（Dean等の管理職を除く）中学校の校舎を転用した建物で60名，パートタイムで37名であり，学生数は，フルタイムで939名，パートタイムで170名である（15）。ニューヨーク市近郊のロースクールの現状 11 JDコース以外にFamily Lawに特化したLL.M. ット等の通信手段を利用したものがあり，具体的コース，外国人用のLL.M.コース（American には，ダイレクト・メール，Ｅメール，ウェブ等 Legal Studies）がある。その他，J.D./M.B.A，で宣伝を行なっている。授業の模様については， J.D./M.A.などの複合学位コースもある。また， YouTubeにも公式にアップロードしている。も海外でのインターナショナルプログラムも実施しう一つは，オンサイトによるものあり，具体的にているは，Law School Admission Council主催のロースランキングは，2011年版のUS Newsによると 84位である。クールのNational Fair（Law Fair）に参加している。このNational Fairは春の期間に全米約10箇所で順次開かれるが，極めて上位のロースクール蘯質問と回答 ①学生選抜ホフストラ・ロースクールは，ニューヨークにを除き，ほとんどのロースクールが何らかの形で参加している。とりわけホフストラ・ロースクールは，このNational Fairに積極的に参加している。近く，かつ都会の喧騒を離れ，田舎のゆったりし入学許可を出した後も，良い学生の実際の入学た雰囲気を味わえる点が売りである。また，ホフを確保するために，各種のフォローアップを実施ストラは総合大学であり敷地も広く，法学だけでしている。まず優秀な学生には，成績優秀者向けなく他の様々な学問を並行して学べるのが魅力との奨学金を付けた合格通知を出している。また，なっている。毎週，ホフストラ・ロースクールの近況について入学選考は，LSAT，GPA，エッセーを中心にのニュースレターをメールで配信している。さら判断しているが，とりわけエッセーは，前二者でに，全米数箇所で（さらに海外でも中国の学生のは表れない本人の考え，意欲等を見ることができためには上海などで），全米規模の法律事務所のるので重要と考えている。協賛で，合格者を対象にしたレセプションを行な GPA，LSATとその後の成績との相関関係につっており，ロースクールについてのより具体的ないては，これまでにいろいろと研究してきたが，説明を行なっている。また，合格者を対象にした GPAの方が相関関係があるとの結論に達した。 School Daysを設け，卒業生を交えてのグループ LSATについては，本人の勉学上の可能性を示すトークや模擬授業を行なっている。加えて，ローものではあるが，必ずしもLSATが高いからと言スクール参観の希望があれば，適宜ツアーを実施って，いい成績を上げるとは限らないし，司法試し，授業も聴講してもらっている。その他，合格験の合格率が高いとは限らない。これに対して，者には，Hofstraのロゴの入ったT−Shirtなどのロ GPAが高いということは，大学時代を通じて真ースクールグッズを送っている。面目に勉強する習慣が身に付いていることを意味 ②学業支援し，実際にロースクール入学後も真面目に勉強に取り組む者が多い。まず入学後，全員に対してオリエンテーションを実施し，リーディング，ライティングのスキルロースクールの成績と司法試験の合格率との間についての指導をおこなっている。ライティングにも関連性があり，ロースクールの成績が下位４については，法律の文書の構成（IRAC：Ｉ＝分の１の者の司法試験合格率は45％程度しかな Issue（問題提起）, Ｒ＝Rule of Law（法）, Ａ＝い。 Analysis（分析）, Ｃ＝Conclusion（結論）の各ブ学生の45％は州外からの学生であり，ロースクールの授業としては，国際比較法，会社法，家族法，国際ビジネス，環境法，クリニックなどを売り物にしている。ロースクールの宣伝活動としては，一つは，ネロックの構築の仕方を指導している。それらは，司法試験準備にもつながっていくものである。１セメスターが終わった段階で，授業に適応できていない学生に対して，事例問題の事実の中から法的な問題を見つけ出し，これを分析するスキ 12 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号ル，制定法を読むスキル等の基本的なスキルにつ（iv）地域経済発展（小規模の非営利団体や企業いてのワークショップを設けている。例年，75なの支援）（Community and Economic Development いし80名程度（１学年の定員は300名）が参加す Clinic），（v）証券仲裁（投資被害）（Securities る。学生の中には，自分がそういうワークショッ Arbitration Clinic），（vi）調停（Mediation プに参加する必要があることを理解できていない Clinic）（とりわけ小額訴訟，家裁事案について），者もおり，そういった学生にきちっと状況を理解（vii）立法（Law Reform Advocacy Clinic）の７して参加してもらうことが重要である。ワークシ分野で，各分野１名の専任教員と，常時各８名のョップでは具体的には，課題を与えて，答案の構学生が学んでいる。2人一組で案件にあたり，１成を考えさせ，アウトラインを作らせる。これを週間に２時間が指導の時間となる。単位は６単位グループに分かれてディスカッションさせて，マが与えられる。ッピングを行って発表される。クリニックへの参加は，２年次の春学期（後期）以前は，こういった学業支援を行なっている学から可能である。できるだけ多くの学生に参加し校は少数であったが，こういった学業支援を行ってもらいたいと思っているが，上記の定員があるているロースクールは，だんだんと増加し，現在ことから，実際には抽選で学生を選抜している。では，ほとんどのロールクールで同様の学業支援全学生を参加させたいとは思うが，残念ながら実を行っているようである。ロースクールによって現には至っていない。は，２名以上の専任を置いているところもある。クリニックを行なうにあたって大切なのは，教こういったプログラムに参加している学生に，員や学生がクリニックを通じて何をすべきかを明個別の科目の知識や理解が不足している場合は，確に示し，これを共有することであると考えていそれぞれの専門の教員に尋ねるように指導している。そのため，クリニックの指導教授が集まって，る。自らの使命が何であるかを話し合い，ミッショ司法試験については，司法試験予備校ン・ステートメントを作成した。ホフストラ・ロ（BAR/BRI）と提携して，準備コースを提供してースクールのクリニックは，専用棟が設けられている。ロースクールの試験でもそうだが，司法試おり，担当教員やスタッフがそこにすべて集まっ験の場合はとりわけ，短期間に問題を処理するスているので，適宜ミーティングやディスカッショキルを付けることが重要となる。ンを行なえる環境にあり，実際に概ね１ヶ月に２アメリカ法律家協会は，司法試験に関連する授回は担当教員のミーティングを持っている。また，業については，かつては単位を付与することを禁市民を対象に，実際にクリニックに参加した学生止していたが，５年ほど前に単位を付与することがクリニックの体験を語る機会を設けており，社を認めるようになった。もっとも，それ以前でも会の認知度を上げる努力も行なっている。単位を付与できるかどうかにかかわらず，指導をクリニックは，就職の際の有利さもさることな行っていたところは少なくなかった。また，例えがら，地域に奉仕するという目的を重視して実施ば択一の問題のワークショップを制定法分析している。地元の弁護士との間でも，仕事という（Statutory Analysis）というコース名で実施する点は協業関係にあることから当初は緊張関係があことによって，単位を与えているところもあった。ったようだが，ニッチな分野であること，取扱件 ③クリニック数が少ないことなどから現在はそういった話は聞クリニックは，ロースクールの本校舎から道路を挟んだ向かい側の建物が専用棟になっている。いていない。 ④就職支援（i）刑事（Criminal Justice Clinic），（ii）難民経済が停滞している影響で，就職はなかなか難（Asylum Clinic），（iii）子供の権利（とりわけ移しい問題ではあるが，学生に法律実務がどのよう民の子供について）（Child Advocacy Clinic），なものであるのかということを理解させることをニューヨーク市近郊のロースクールの現状 13 通じて，就職の支援を行なっている。具体的には，学生に持たせるようにしている。ハーバード・ロ Professional Development & Leadership ースクール等と同様，全米で最初にこういった試 Programを設け，これによって，基本的なコミュみを行った学校の一つということになる。ニケーションスキルのアップ，リーダーシップの養成，プロジェクトマネジメント力の養成などをおこなっている。例えば，１月には，２日間の「Success Strategies Boot Camp」と称する集中プログラムを実施した。また，就職活動についてのガイドブックを作成し，この中では，履歴書やカバーレターの書き方，面接のポイントなどを解説している。履歴書の書き方については，生で講習会を行うと共に，この模様を録画したものを自由に見てもらっており，これを基に学生が実際に作成した履歴書の添削も行っている。１年次修了後の春休み期間中に，２年次の夏に実施されるサマー・インロースクール本館の正面玄関ターンの応募を行うことになるが，それまでに履歴書は必ず就職課がレビューすることにしており，レビューが完了していないものについては，サマー・インターンへの応募を認めていない。その他，学内で適宜，政府機関，公的機関，法律事務所などの就職先に分けたCareer Fairを実施しており，年間約100人の卒業生がゲストスピーカーとしてこのCareer Fairに参加している。また，学内での法律事務所面接，卒業生による講演・相談（年間約50件）などを実施している。サマー・インターン受け入れ先の拡充については，現在1人が専任で当たっており，積極的に受け入れ先や候補先への訪問等を行っている。これロースクール図書館らの受け入れ先や受け入れ候補先の協力を得るには，ロースクールで行っているJob Programに参加してもらって，実際に我々がどのように取り組んでいるかを見てもらうことが最も効果的である。卒業生の過半数は法律事務所（うち12から13％は大手事務所），85％はニューヨーク地域で就職している。 ⑤その他１年次に国家間法（Transnational Law）の授業を必修とし，比較法，国際私法（Conflict of Laws），国際管轄などの国際的な視点を早くからクリニック担当教授の研究個室 14 『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第15号盻施設等もまた，各ロースクールの課題であった。高けれ郊外のキャンパスだけあり，ロースクールの建ば90％，低くても70％という司法試験の合格率は，物もメインの建物に加え，隣接したロースクール日本の現状に比べれば夢のような状況であるが，図書館，少し離れたクリニック棟，さらには，広それでもなお卒業生に資格を取得させることがロ大な駐車場等非常に充実している。ースクールの任務であるという意識は，今回訪問ロースクール図書館は，在学生，卒業生に加え，したロースクールには共通していた。アメリカ法一般法曹関係者の利用も認めている。ロースクー律家協会が認定ロースクールに司法試験受験教育ル図書館の横にはロースクールのカフェテリアがを解禁した背景はあるにせよ，司法試験への合格ある他，すぐ近くにも大学のカフェテリアがある。は日本と同様に，あるいは有名校ではないからこそ，向き合わなければならない課題のようであっ７まとめとしてた。他方で，クリニックの重要性は，すべてのロー駆け足の視察であったが，当初意図した通りの，スクールが一様に強調していたところである。学あるいはそれ以上のアメリカ都市部の法曹教育事生の勉学意欲を高める，事件を通じて法的知識を情を実感することができた。日本に紹介されてき確実に習得させる，あるいは，就職の際に即戦力たアメリカのロースクール像は，国際的な著名校と評価される付加価値をつける，などクリニックのそれが一般的であるが，それとは異なるロースが重視される理由は多い。しかし，それを可能にクールには，それぞれのロースクール像と試練がする教育環境は，学生の負担やロースクール側のあるようだ。施設も含めて，日本のロースクールが多くを学ぶまず，リーマンショック後の経済の停滞や弁護べき点である。士の就職事情の悪化は，日本と比べものにならな卒業生の就職については，程度の差はあれ，各いほどに深刻だが，それにも関わらず，法曹志望ロースクールともに格闘していた。就職を少しで者は減少していない。これは，弁護士という職業も進めるために，就職フェアの校内開催や参加，に対して抱く社会の意識あるいは不況の時期であ同窓会の組織化，就職のための支援ファンドの設るからこそ確実な資格を得ようとする意識に支え置，即時独立開業者のためのネットワーク作り，られているのかも知れないが，経済状況や就職事などさまざまな工夫がなされていた。情の変動には必ずしも左右されない法曹志望者獲得の可能性を示唆してくれる。今回の視察対象は，ニューヨークという大都市近郊のロースクールの実情であったが，地方都市そうした法曹志望者の中で優秀な学生を入学さのロースクールにはまた，異なる実情もあるかもせるための苦労も各校が共有している。LSATと知れない。今後，さらに調査を実施できればと考いう統一適性試験の指標にあまり信頼おけないとえている。いう認識はほぼ共通であったものの，それ以外の最後に，執筆者両名は，便は違うもののともに手段でどのように能力と熱意を持つ志願者を選抜３月10日に帰国の途につき，そして，帰国直後あし，さらには他校にさらわれないようにつなぎ止るいは帰国直前に，３月11日の東日本大震災に遭めていくのか，という点では，それぞれのロース遇することになった。そのために深刻な被災からクールの工夫があった。しかし，それが成績優秀は免れることができたが，空港施設あるいは地方者向けの奨学金付与，有名校による優秀な学生のの空港に停泊した機中で，不安な一夜を過ごすこ引き抜きという事態など，各校にとっても深刻なととなった。その意味でも，今回の視察旅行は，競争の原因となっている。生涯忘れられないものとなったことを記してお司法試験の合格率を上げること，そして授業の落伍者が出ないような手厚い教育体制を敷くことく。ニューヨーク市近郊のロースクールの現状注（1）文部科学省ホームページ， http://www.mext. go.jp/a_menu/koutou/houka/houka.htm。（2）例えば，法科大学院適正試験の志願者数の推移は，独立行政法人大学入試センター実施の「法科大学院適正試験」で 3 9 , 3 5 0 名（ 2 0 0 3 年）， 24,036名（2004年），19,859名（2005年），18,450 名（2006年），15 , 937名（2007年），13 , 138名（2008年），10, 282名（2009年），8, 650名（2010 年）となっており，（公財）日弁連法務研究財団及び（社）商事法務研究会が組織する適正試験委員会が実施する「法科大学院統一適正試験」で，20 , 043名（2003年），13 , 993名（2004年）， 10,725名（2005年），12,433名（2006年），11,945 名（ 2 0 0 7 年）， 9 , 9 3 0 名（ 2 0 0 8 年）， 8 , 5 4 7 名（2009年），7,820名（2010年）となっている。独立行政法人大学入試センターホームページ， http://www.dnc.ac.jp/modules/news/content0371.h tml，及び公役財団法人日弁連法務研究財団ホームページ，http://www.jlf.or.jp/jlsat/pdf/ 20110520.pdf参照。（3）アメリカ・ロースクール協会ホームページ， http://www.aals.org/about.php。（4）アメリカ法曹協会と訳されることもある。（5）アメリカ法律家協会ホームページ，http://www. americanbar.org/groups/legal_education/resources /aba_approved_law_schools.html。認定制度については， http://www.americanbar.org/groups/ legal_education/resources/accreditation.html参照。（6）アメリカ法曹協会（日本弁護士連合会編）『法学教育改革とプロフェッション―アメリカ法曹協会マクレイト・レポート』（三省堂，2003年） 13頁。（7） Law School Admission Council（LSAC）ホームページ， https://officialguide.lsac.org/Release/ SchoolsABAData/SchoolsAndLocation.aspx?scho olinfo＝schoolsandlocation&alphabeticalrange＝ allschools&geographicsearch＝NY。Law School 15 Admission Councilは，ロースクールと志願者に対し，その選抜過程を容易にするために設立された非営利団体で，LSATなどを運営している。会員には， ABA 認可のすべてのロースクール，カナダ及びオーストラリアのロースクールが参加している。（8） US News ホームページ， http://grad − schools. usnews.rankingsandreviews.com/best−graduate− schools/top−law−schools/law−rankings参照。（9）アメリカ法律家協会ホームページ，https://officialguide. lsac.org/Release/SchoolsABAData/ SchoolPage/SchoolPage_Info/ABA_LawSchoolD ata.aspx。（10）Law School Admission Test の略。Law School Admission Councilが実施するアメリカ，カナダなどのロースクール志願者のための統一適正試験。（11）基礎とするテスト分析の方法論。平均点や標準偏差，正答率といった古典テスト理論に基づく分析手法とは異なり，受験者と試験問題という互いに影響しあう要素を，分離して精緻に分析し，テストの品質を評価できるとされる。（12）アメリカ法律家協会ホームページ，https://officialguide.lsac.org/Release/SchoolsABAData/Scho olPage/SchoolPage_Info/ABA_LawSchoolData.as px。（13）アメリカ法律家協会ホームページ，https://officialguide.lsac.org/Release/SchoolsABAData/Scho olPage/SchoolPage_Info/ABA_LawSchoolData.as px。（14）アメリカ法律家協会ホームページ，https://officialguide.lsac.org/Release/SchoolsABAData/Scho olPage/SchoolPage_Info/ABA_LawSchoolData.as px。（15）アメリカ法律家協会ホームページ，https://officialguide.lsac.org/Release/SchoolsABAData/Scho olPage/SchoolPage_Info/ABA_LawSchoolData.as px。