14 年 10 月 22 日

幾何学 II:14年10月22日
今日の講義の摘要: この講義の主題は位相空間の(特異)ホモロジー群である。今日は、まず、
1 」を述べ、定義(および証明)は後回しにして、それらを用いて n 次元
「ホモロジー群の基本性質
{
}
∑
球面 S n := (x0 , x1 , . . . , xn ) ∈ Rn+1 ; ni=0 xi 2 = 1 のホモロジー群を計算する。n ≥ 1 について
{
Z,
if q = 0 or n
n
Hq (S ) =
0,
otherwise.
となるのである2 。応用として n 6= m のとき Rm 6≈ Rn であることを証明する。 さらに Brouwer
の不動点定理を証明する。特異ホモロジー群の定義および「基本性質」の証明は §5 以降おいおい
述べていく。
§3. ホモロジー群とはどのようなものか?
まずホモロジー群の基本的な性質を述べておく。特異ホモロジー群の定義は §5 で与え、
諸性質の証明は §§5-8 で与える。この § ではこれらの基本性質を使って球面のホモロジー
群を計算し、応用として、n 6= m のとき Rn と Rm が同相ではないことを証明する。
ホモロジー群の基本性質
非負整数 q ≥ 0 と位相空間 X に対して空間 X の第 q ホモロジー群 (the q-th homology
group) とよばれる可換群(つまり Z-加群) Hq (X) = Hq (X; Z) が対応し、位相空間 X と
Y の間の連続写像 f : X → Y に対して f の 誘導準同型(induced homomorphism) とよ
ばれる可換群の準同型
f∗ : Hq (X) → Hq (Y )
が対応して、以下の自然性を充たす:
(1) 任意の位相空間 X について、恒等写像 1X : X → X, x 7→ x, は次をみたす
1X ∗ = 1Hq (X) : Hq (X) → Hq (X).
(2) 任意の連続写像 f : X → Y および g : Y → Z について次が成り立つ
(g ◦ f )∗ = g∗ ◦ f∗ : Hq (X) → Hq (Z).
言い換えると、Hq は 位相空間の圏から可換群の圏への共変函手 である。とくに、位相
空間 X と Y が同相 X ≈ Y ならば、同型 Hq (X) ∼
= Hq (Y ) がすべての q ≥ 0 について成
立つ(補題 2.4 参照)。
(q ≥ 0 を全て動かして可換群の集まり(次数加群、graded module) H∗ (X) =
{Hq (X)}q≥0 = {H0 (X), H1 (X), . . . , Hq (X), . . . } および可換群の準同型の集まり(次数加
群の準同型)f∗ : H∗ (X) → H∗ (Y ) を考えることもできる。このときには、ホモロジー群
H∗ は、位相空間の圏から次数加群の圏への共変函手である。)
これらの対応(つまり共変函手)は次の基本性質 (I) ∼ (V) をみたす。
Eilenberg-Steenrod の公理系のような由緒正しい整ったものではない。
多様体や単体複体のように性格の温厚な位相空間のホモロジー群というのは、ホモロジー群の
定義を知らなくても幾つかの基本的な性質を使えば計算できてしまうのである。そこのところの事
情を明確に定式化したのが Eilenberg-Steenrod の公理系である。例えば上掲 Hatcher の教科書の
160 ページ以下を参照。
1
2
1
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2
(I) (ホモトピー不変性)連続写像 f : X → Y と g : X → Y がホモトピック(homotopic)
ならば、任意の q ≥ 0 について
f∗ = g∗ : Hq (X) → Hq (Y )
がなりたつ。ここで f と g がホモトピックであるとは、連続写像 F : X × [0, 1] → Y
であって、すべての x ∈ X について F (x, 0) = f (x), F (x, 1) = g(x) をみたすものが
存在することをいう。このことを次の記号で表す
f ' g : X → Y.
(II) (Mayer-Vietoris 完全列)位相空間 X の開被覆 {U, V } について完全列
j
∂
i
· · · → Hq (U ) ⊕ Hq (V ) → Hq (X) →∗ Hq−1 (U ∩ V ) → Hq−1 (U ) ⊕ Hq−1 (V ) → · · ·
j
∂
j
i
· · · → H1 (X) →∗ H0 (U ∩ V ) → H0 (U ) ⊕ H0 (V ) → H0 (X) → 0(exact)
が成り立つ。ここで準同型 i および j は包含写像 iU : U ∩ V ,→ U , iV : U ∩ V ,→ V ,
jU : U ,→ X および jV : V ,→ X によって
i(w) = ((iU )∗ (w), −(iV )∗ (w)) ∈ H∗ (U ) ⊕ H∗ (V ), w ∈ H∗ (U ∩ V )
j(u, v) = (jU )∗ (u) + (jV )∗ (v) ∈ H∗ (X), u ∈ H∗ (U ), v ∈ H∗ (V )
と定義されるものとする3 。q = 0 では、 §2 の定理 2.11 で与えた i, j と同じものに
なっていることに注意せよ。連結準同型とよばれる ∂∗ の説明は後回しにする。連結
準同型 ∂∗ は次の自然性をもつ。位相空間 Y および U 0 ∪ V 0 = Y なる Y の開集合
U 0 , V 0 ⊂ Y , そして連続写像 f : X → Y であって条件 f (U ) ⊂ U 0 および f (V ) ⊂ V 0
を充たすものが与えられたとする。このとき図式
∂
∗
Hq (X) −−−
→ Hq−1 (U ∩ V )




f∗ y
f∗ y
∂
∗
Hq (Y ) −−−
→ Hq−1 (U 0 ∩ V 0 )
は可換となる。つまり ∂∗ ◦ f∗ = f∗ ◦ ∂∗ : Hq (X) → Hq−1 (U 0 ∩ V 0 ) が成り立つ。
(III) 位相空間 X の、各 λ ∈ π0 (X) に対応する弧状連結成分を Xλ とすると包含写像
Xλ ,→ X は任意の q ≥ 0 について次の直和分解を誘導する4 :
⊕
Hq (X) =
Hq (Xλ ).
λ∈π0 (X)
(IV) 一点からなる位相空間 ∗ = {∗} について5
{
0,
Hq (∗) =
Z,
if q 6= 0,
if q = 0.
一般に位相空間 X とその部分空間 A について包含写像 i : A ,→ X の誘導する準同型 i∗ :
Hq (A) → Hq (X) を包含準同型(inclusion homomorphism)という。包含写像は連続である。
4
X が局所弧状連結で π0 (X) が有限集合のときは (III) は、 (II) と代わりに付け加える条件
H∗ (∅) = 0 から導かれる。逆に X = ∅ のときは π0 (X) = ∅ なので (III) から Hq (∅) = 0 がわかる。
5
0 = {0} のように集合とその要素を同じ記号で表すが、一般的な習慣なのでご容赦下さい。
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(V) 任意の位相空間 X について
H0 (X) = Zπ0 (X)
(つまり §2 で定義した H0 (X) = Zπ0 (X) と §5 で定義する H0 (X) が等しいという
ことである。)この同型は自然である。つまり連続写像 f : X → Y について図式
H0 (X)


f∗ y
Zπ0 (X)


f∗ y
H0 (Y )
Zπ0 (Y )
は可換(どちらを径由しても答えは同じ)である。
性質 (II) の Mayer-Vietoris 完全列の H1 から H0 にかけての部分には variants がある。
(II’) (II) の状況で、さらに(X, U , V および)U ∩ V が空でないとき、完全列
j
j
∂ e
i e
e
e
· · · → H1 (X) →∗ H
0 (U ∩ V ) → H0 (U ) ⊕ H0 (V ) → H0 (X) → 0 (exact)
e 0 (X) は被約ホモロジー群である。
が成り立つ。ここで H
(II”) (II) の状況で、さらに、U ∩ V が 弧状連結 であるとき、完全列
i
j
· · · → H1 (U ∩ V ) → H1 (U ) ⊕ H1 (V ) → H1 (X) → 0 (exact)
が成り立つ。
(II’) については §8 で Mayer-Vietoris 完全列を証明するときに、同時に証明する。U ∩ V
e 0 (U ∩ V ) = 0 だから (II”) は (II’) から導かれ
が弧状連結ならば、補題 2.9 (1) によって H
る。しかし、ここでは (II) から直接 (II”) を証明しておく。
(II) =⇒ (II”) の証明 j : H1 (U ) ⊕ H1 (V ) → H1 (X) が全射となること、つまり、 Im j =
H1 (X) となることを示せばよい。U ∩ V は弧状連結だから、補題 2.5 (1) により (iU )∗ :
H0 (U ∩ V ) → H0 (U ) は単射である。ゆえに i = ((iU )∗ , − (iV )∗ ) : H0 (U ∩ V ) → H0 (U ) ⊕
H0 (V ) も単射、つまり Ker i = 0 となる。 (II) により ∂∗ (H1 (X)) = Ker i = 0 を得る。ゆ
えに ∂∗ = 0 : H1 (X) → H0 (U ∩ V )、もう一度 (II) により Im j = Ker ∂∗ = H1 (X) となる。
これで (II”) が証明できた。
当面の目標 は、いま述べた基本性質を使って n 次元球面
}
{
∑n
2
n+1
S := (x0 , x1 , . . . , xn ) ∈ R ;
xi = 1
n
i=0
(n ≥ 1) のホモロジー群を決定すること、つまり次を示すことである
{
Z,
if q = 0 or n
Hq (S n ) =
0,
otherwise.
P := (0, . . . , 0, 1), Q := (0, . . . , 0, −1) ∈ S n とおき、補題 2.12 と同様に S n の開被覆
{U, V }
U := S n \ {Q}, V := S n \ {P }
(3.1)
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を考える。Mayer-Vietoris 完全列(基本性質 (II))
j
∂
i
· · · → Hq (U ) ⊕ Hq (V ) → Hq (S n ) →∗ Hq−1 (U ∩ V ) → Hq−1 (U ) ⊕ Hq−1 (V ) → · · ·
が成り立つから、 H∗ (U ), H∗ (V ) 及び H∗ (U ∩ V ) が分かれば H∗ (S n ) も分かるはずである。
そこで U , V および U ∩V の「形」を調べよう。この § を通じて y = (y1 , y2 , . . . , yn ) ∈ Rn
について kyk を Euclid 長さとする
kyk :=
(∑ n
i=1
yi 2
)1/2
∈ R≥0 .
補題 3.1. 次の同相が成り立つ:
(1) U ≈ V ≈ Rn .
(2) U ∩ V ≈ Rn \ {0}.
証明. (1) 立体射影を用いる。 U 上の点 x と Q を結ぶ直線と Rn ×{0} との交点を (f (x), 0)
とおく。f が立体射影である。二つの連続写像
(
)
x0
xn−1
n
f : U → R , (x0 , . . . , xn−1 , xn ) 7→
,...,
1 + xn
1 + xn
(
)
2y1
2yn
1 − kyk2
n
g : R → U, y = (y1 , . . . , yn ) 7→
,...,
,
1 + kyk2
1 + kyk2 1 + kyk2
は互いに逆写像となっているから同相 U ≈ Rn が成り立つ。 V についても同様である。
(2) (1) の同相写像によって U ∩ V ≈ Rn \ {0} が成り立つ。
ホモトピー同値
連続写像 f : X → Y が ホモトピー同値 (写像) (homotopy equivalence) であるとは連
続写像 g : Y → X が存在して
g ◦ f ' 1X : X → X
および
f ◦ g ' 1Y : Y → Y
のなりたつことを言う。 g を f の ホモトピー逆(homotopy inverse)と呼ぶ6 。(' につ
いては、後でもう一度説明するが、とりあえず基本性質 (I) 参照。)明らかに同相写像はホ
モトピー同値である。
補題 3.2. 連続写像 f : X → Y がホモトピー同値ならば、すべての q ≥ 0 について f の
誘導準同型 f∗ : Hq (X) → Hq (Y ) は同型である。
証明. g を f のホモトピー逆とする。
g∗ ◦ f∗ = (g ◦ f )∗ (自然性)
= (1X )∗ (ホモトピー不変性)
= 1H∗ (X) (自然性)
同様に f∗ ◦ g∗ = 1H∗ (Y ) である。そこで f∗ は逆写像 g∗ をもち、同型写像となる。
6
g は f に対して homotopy を除いて 一意に定まる。
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二つの位相空間 X と Y が ホモトピー同値 (homotopy equivalent) であるとは、ホモ
トピー同値写像 f : X → Y が存在することをいう。このとき
X'Y
と書く。このことを X と Y は同じホモトピー型(homotopy type)をもつともいう。
少し話が逸れるが、第 0 ホモトピー集合 π0 がホモトピー不変であることに注意し
ておく。一般に、互いに homotopic な連続写像 f ' g : X → Y を考える。連続写像
F : X ×[0, 1] → Y であって、すべての x ∈ X について F (x, 0) = f (x), F (x, 1) = g(x) をみ
たすものが存在する。このとき、任意の x ∈ X について F (x, t), t ∈ [0, 1], は f (x) = F (x, 0)
を g(x) = F (x, 1) に結ぶ Y 内の path である。そこで f∗ [x] = g∗ [x] ∈ π0 (Y ) となる。した
がって
f∗ = g∗ : π0 (X) → π0 (Y )
が成立つ。補題 3.2 と同様の議論によって、とくに X と Y がホモトピー同値 X ' Y な
らば、集合としての同型(一対一対応) π0 (X) ∼
= π0 (Y ) が成立つ。
さて、一点からなる位相空間 ∗ とホモトピー同値であること X ' ∗ を可縮 (contractible)
であるという。次は補題 3.2 から明らか7 。
系 3.3.
とくに X が可縮ならば
X ' Y ⇒ H∗ (X) ∼
= H∗ (Y )
{
Z,
Hq (X) = Hq (∗) =
0,
if q = 0,
otherwise.
球面 S n に戻る。我々の U , V および U ∩ V については次のようになる。
補題 3.4.
(1) U ' V ' ∗.
(2) U ∩ V ' S n−1 .
証明. (1) 補題 3.1(1) により U ≈ V ≈ Rn だから、 Rn が可縮なことを示せばよい。二つ
の連続写像
r : Rn → ∗ = {∗}, y →
7 ∗ および i : ∗ → Rn , ∗ 7→ 0
を考える。明らかに r ◦ i = 1∗ である。また、連続写像 F : Rn × [0, 1] → Rn , F (y, t) := ty,
を考えると、任意の y ∈ Rn について i ◦ r(y) = F (y, 0), F (y, 1) = 1Rn (x) である。これは
1Rn ' i ◦ r, したがって r と i はホモトピー同値であり、 Rn ' ∗ が分かる。
(2) 補題 3.1(2) により同相 U ∩ V ≈ Rn \ {0} が成り立つ。そこで Rn \ {0} ' S n−1 を示
せばよい。包含写像 ι : S n−1 ,→ Rn \ {0} および連続写像 ρ : Rn \ {0} → S n−1 , x 7→ x/kxk
を考える。 ρ ◦ ι = 1S n−1 である。連続写像
x
Φ : (Rn \ {0}) × [0, 1] → Rn \ {0}, (x, t) 7→ (tkxk + (1 − t))
kxk
を考える8 と、任意の x ∈ Rn \ {0} について Φ(x, 0) = ιρ(x), Φ(x, 1) = 1Rn \{0} (x) である
から ι ◦ ρ ' 1Rn \{0} である。かくして ι と ρ は互いにホモトピー逆となり、ホモトピー同
値 Rn \ {0} ' S n−1 がえられる。
同型写像が、ホモトピー同値写像 f : X → Y の誘導準同型 f∗ : H∗ (X) → H∗ (Y ) であたえら
れることに注意する。
x
8
(tkxk + (1 − t)) kxk
∈ Rn \ {0} であることに注意する。tkxk + (1 − t) > 0 だからである。
7
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6
ここでまた脱線して 変位レトラクト(変形レトラクト、deformation retract)と
いう言葉を導入しておく。
定義. 位相空間 X がその部分集合 A ⊂ X を 変位レトラクト にもつとは、二つの連続写
像 r : X → A と F : X × [0, 1] → X が存在して次の四つの条件
r ◦ i = 1A : A → A
∀x ∈ X, F (x, 0) = i(r(x))
∀x ∈ X, F (x, 1) = x = 1X (x)
∀(a, t) ∈ A × [0, 1], F (a, t) = a
を充たすことを言う。ここに i : A ,→ X は包含写像である。
このとき i ◦ r ' 1X ; X → X であるから、包含写像 i : A ,→ X はホモトピー同値であ
る。連続写像 r : X → A を(変位)レトラクション(retraction)という。
補題 3.4 の証明からわかるように {0} は Rn の変位レトラクトであり、S n−1 は Rn \ {0}
の変位レトラクトである。(4番目の条件は F および Φ の定義から明らか。)
例 3.5. n 次元単位球体(n-unit ball, n-unit disk)
}
{
∑n
2
n
n
2
yi ≤ 1 ⊂ Rn
D := y = (y1 , y2 , . . . , yn ) ∈ R ; kyk =
i=1
を考える。n ≥ 1 のとき、その境界 ∂Dn = {y ∈ Rn ; |yk = 1} は (n − 1)-次元球面 S n−1 に
他ならない。
Dn \ {0} は ∂Dn を変位レトラクトにもつ。 i : ∂Dn ,→ Dn \ {0} を包含写像とする。
連続写像
r : Dn \ {0} → ∂Dn , y 7→ y/kyk,
F : (Dn \ {0}) × [0, 1] → Dn \ {0},
および
(y, t) 7→ (1 − t + tkyk)y/kyk,
は、変位レトラクトの条件をすべて充たすからである。とくに、すべての (a, t) ∈ ∂Dn ×[0, 1]
について F (a, t) = a であることに注意する。
球面のホモロジー群にもどる。補題 3.4 に系 3.3 を適用すると
Hq (U ) = Hq (V ) = Hq (∗) = 0, if q ≥ 1,
Hq (U ∩ V ) ∼
= Hq (S n−1 ) (∀q ≥ 0)
となる。 Mayer-Vietoris 完全列(基本性質 (II))に代入して q ≥ 2 について
∂
0 → Hq (S n ) →∗ Hq−1 (U ∩ V ) → 0 (exact)
したがって補題 2.6 (3) により
Hq (S n ) ∼
= Hq−1 (S n−1 ),
if q ≥ 2
が得られる。これを懸垂同型(suspension isomorphism)という。
他方、二点からなる集合 S 0 = {+1, −1} のホモロジー群が
{
Z ⊕ Z,
if q = 0
Hq (S 0 ) = Hq (∗) ⊕ Hq (∗) =
0,
if q 6= 0
(3.2)
(3.3)
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となることに注意する。ここで基本性質の (III) (IV) を使った。
これで n 次元球面 S n のホモロジー群の計算の準備が整った。
定理 3.6. n ≥ 1 について
{
Z,
Hq (S n ) =
0,
if q = 0 or n
otherwise.
証明. 例 1.6 により、S n は弧状連結だから H0 (S n ) = Z である。そこで Hq (S n ), q ≥ 1 を
n(≥ 1) について帰納的に計算する。
n = 1 とする。 (3.3) を (3.2) に代入して
Hq (S 1 ) = Hq−1 (S 0 ) = 0,
if q ≥ 2
が分かる。肝腎なのは H1 (S 1 ) である。 H1 (U ) = H1 (V ) = 0 を Mayer-Vietoris 完全列(基
本性質 (II))に代入して
∂
i
0 → H1 (S 1 ) →∗ H0 (U ∩ V ) → H0 (U ) ⊕ H0 (V ) (exact)
補題 2.6(4) より
∂
∗
H1 (S 1 ) ∼
= Ker (i : H0 (U ∩ V ) → H0 (U ) ⊕ H0 (V ))
である。開被覆 {U, V } は補題 2.12 の開被覆 {U+ , U− } に他ならないから、右辺は Z に同
型である。これで H1 (S 1 ) ∼
= Z が分かった。
つぎに n ≥ 2 とし Hq (S n−1 ) が定理 3.6 の通りであると仮定する。まず、 n ≥ 2 より
U ∩ V ' S n−1 は弧状連結であるから、基本性質 (II”) により
j
0 = (H1 (U ) ⊕ H1 (V )) → H1 (S n ) → 0 (exact)
したがって H1 (S n ) = 0 である。q ≥ 2 については、 (3.2) より
{
Z,
if q − 1 = n − 1 (⇔ q = n),
Hq (S n ) ∼
= Hq−1 (S n−1 ) =
0,
if q − 1 6= n − 1 (⇔ q 6= n),
となる。以上で Hq (S n ) が定理 3.6 の通りであることが分かった。帰納法が完成した。
この証明では q = 1 の辺りがゴタゴタしてしまった。被約ホモロジー群を使うとそれ
e q (X), q ≥ 0 を
を回避することができる。空でない位相空間 X の第 q 被約ホモロジー群 H
{
if q ≥ 1
e q (X) := Hq (X),
H
(3.4)
e 0 (X),
H
if q = 0.
e 0 (X) は前の § で定義した Ker(επ (X) : Zπ0 (X) → Z) である。すべ
によって定義する。H
0
e q (∗) = 0 となる。
ての q ≥ 0 について H
このとき定理 3.6 は次のように書き換えられる:
定理 3.6a. n ≥ 0 について
{
e q (S n ) = Z,
H
0,
if q = n
otherwise.
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e 0 (S 0 ) = Z は容易に分か
証明. n ≥ 0 についての帰納法。S 0 は二点からなる集合だから H
e q (S 0 ) = 0 は明らか。
る。q ≥ 1 について H
n ≥ 1 とする。これまでと同じ S n の開被覆 {U, V } を用いる。U ' V ' ∗ より
e q (U ) = H
e q (V ) = H
e q (∗) = 0 だから、Mayer-Vietoris 完全列 (II’) により、すべての
H
n, q ≥ 1 について
∂∗
e q−1 (S n−1 )
e q (S n ) ∼
H
=H
となるから帰納法が進む。
球面のホモロジー群の計算を使うと命題 1.3 と同様の議論により Rn 6≈ Rm が分かる。
これをもう少し精密にするために少し準備をする。
(ここだけの記号として) p ∈ Rn , > 0
について
Bn (p, ) := {x ∈ Rn ; kx − pk < }
Bn× (p, ) := {x ∈ Rn ; 0 < kx − pk < } = Bn (p, ) \ {p}
とおく。ここで x = (x1 , x2 , . . . , xn ) ∈ Rn について kxk := (
∑n
i=1 xi
2 1/2
)
∈ R である。
補題 3.7. 0 < 0 < をみたす 0 について、次の写像はホモトピー同値である
ι : S n−1 → Bn× (p, ),
y 7→ p + 0 y.
証明. 連続写像 f : Bn× (p, ) → S n−1 , x 7→ (x−p)/kx−pk を考える。明らかに f ◦g = 1S n−1
である。連続写像
Φ : Bn× (p, ) × [0, 1] → Bn× (p, ),
(x, t) 7→ p + ((1 − t)kx − pk + 0 t)
(x − p)
kx − pk
から、ホモトピー ι ◦ f ' 1Bn× (p,) が分かる。
定理 3.8. n 6= m とする。 Rn の空でない任意の開集合 U と Rm の空でない任意の開集
合 V について U と V は同相ではない: U 6≈ V . とくに Rn 6≈ Rm .
証明. n > m として一般性は失われない。(上への)同相写像 f : U → V が存在したと仮
定する。 f −1 : V → U を逆写像とする。U は空でないから、点 p ∈ U を一つとって固定
する。このとき、正の実数 1 < 2 および δ を上手くとると、
Bn (p, 1 ) ⊂ f −1 (Bm (f (p), δ)) ⊂ Bn (p, 2 ) ⊂ U
(3.5)
とすることができる。
(3.5) の証明. U は開集合だから実数 2 > 0 を Bn (p, 2 ) ⊂ U を充たすようにとることがで
きる。Bn (p, 2 ) は U の開集合、f −1 は連続だから f (Bn (p, 2 )) ⊂ V は V の開集合、ゆ
えに Rm の開集合である。つまり実数 δ > 0 であって Bm (f (p), δ) ⊂ f (Bn (p, 2 )) つまり
f −1 (Bm (f (p), δ)) ⊂ Bn (p, 2 ) をみたすものがとれる。さらに Bm (f (p), δ) は V の開集合、
f は連続だから f −1 (Bm (f (p), δ)) は U の開集合、ゆえに Rn の開集合である。つまり実
数 1 > 0 であって Bn (p, 1 ) ⊂ f −1 (Bm (f (p), δ)) をみたすものがとれる。(3.5) が示され
た。
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したがって、可換図式
f
/ B × (f (p), δ)
m
OOO
OOO
OO
f −1
j OOO'
Bn× (p, 1 )
Bn× (p, 2 )
がえられる。ここで j は包含写像である。第 n − 1 ホモロジー群に移行して可換図式
f∗
/ Hn−1 (B × (f (p), δ))
m
TTTT
TTTT
TTTT
(f −1 )∗
TTT)
j∗
Hn−1 (Bn× (p, 1 ))
Hn−1 (Bn× (p, 2 ))
×
(f (p), δ) に対する補題 3.7 と定理 3.6 により
をうる。ここで、仮定 n > m と Bm
×
m−1
Hn−1 (Bm (f (p), δ)) = Hn−1 (S
) = 0 である。他方、0 < 0 < 1 (< 2 ) をみたす 0
について、補題 3.7 の ι : S n−1 → Bn× (p, 1 ) を考えると ι および j ◦ ι はホモトピー同値で
ある。ゆえに j∗ = (j ◦ ι)∗ (ι∗ )−1 : Hn−1 (Bn× (p, 1 )) → Hn−1 (Bn× (p, 2 )) は同型であって、定
理 3.6 により両辺は Z に同型である。以上をあわせると
j∗ = (f −1 )∗ ◦ f∗ : Z → 0 → Z
が同型写像ということになり、矛盾が導かれる。かくして同相写像 f : U → V は存在しえ
ない。
この定理は、後で導入する位相空間対のホモロジー群を使えば、「同相写像 f : U → V
が存在すると仮定すると
f∗
Z∼
= Hn (U, U \ {p}) ∼
= Hn (V, V \ {f (p)}) ∼
=0
となって矛盾が生ずる」と手短に(しかし本質的には何の違いもなく)証明される。
定理 3.8 から位相多様体の次元の位相不変性が証明できる。
n ≥ 0 とする。X が n 次元位相多様体(topological manifold of dimension n)である
とは、二つの条件
(1) X は Hausdorff 空間である。
(2) 各点 p ∈ X について p の X における開近傍 U が存在して U は Rn のある開集合
V と同相である。
をみたすことをいう。自然数 n ≥ 0 を X の次元といい、dim X = n と表す。n 次元位相
多様体の任意の開集合は再び n 次元位相多様体である。
系 3.9. (多様体の次元の位相不変性) X および Y を、空でない互いに同相な位相多様
体とする X ≈ Y . このとき X と Y の次元は一致する dim X = dim Y .
証明. n = dim X, m = dim Y とする。n = m を示す。f : X → Y を同相写像とする。点
p ∈ X をとる。点 f (p) の Y における開近傍 U 0 であって Rm のある開集合 V 0 と同相で
あるものが存在する。ϕ0 : U 0 → V 0 を同相写像とする。f −1 (U 0 ) は X の開集合だから n 次
元位相多様体である。そこで p の f −1 (U 0 ) における開近傍 U で Rm の開集合 V と同相で
あるものがとれる。 ϕ : U → V を同相写像とする。いま、f および ϕ0 は同相写像だから
ϕ0 f (U ) は V 0 の開集合したがって Rm の開集合である。ϕ0 ◦ f ◦ ϕ−1 : V → ϕ0 f (U ) は Rn
の空でない開集合 V から Rm の空でない開集合 ϕ0 f (U ) の上への同相写像を与える。定理
3.8 により n = m となる。これが示すべきことであった。
幾何学 II
10
最後に、 Brouwer の不動点定理を証明する。証明の準備として レトラクト という概念
を導入しておく。
X を位相空間、 A ⊂ X をその部分集合とする。 i : A ,→ X を包含写像とする。 A が
X の レトラクト (retract) であるとは、連続写像 r : X → A であって r ◦ i = 1A : A → A
をみたす(つまり任意の a ∈ A について r(a) = a をみたす)ものの存在することをいう。
連続写像 r を レトラクション(retraction)とよぶ。
変位レトラクトはレトラクトである9 。たとえば、 n 次元単位球体
{
}
∑n
n
n
2
2
D := x = (x1 , x2 , . . . , xn ) ∈ R ; kxk =
xi ≤ 1 ⊂ Rn
i=1
について、 Dn \ {0} はその境界 ∂Dn = S n−1 をレトラクトにもつ。レトラクションとし
て写像 r : Dn \ {0} → ∂Dn , x 7→ x/kxk がとれる。単位球面 S n−1 が単位球体 Dn の境界、
とくに部分空間であることを強調する場合には、記号 S n−1 よりも記号 ∂Dn を用いる。
補題 3.10. A ⊂ X が X のレトラクトならば包含写像 i の誘導する準同型(包含準同型)
i∗ : Hq (A) → Hq (X)
はすべての q ≥ 0 について単射である10 。
証明. ホモロジー群の自然性を関係式 r ◦ i = 1A : A → A に適用すると
r∗ ◦ i∗ = 1Hq (A) : Hq (A) → Hq (A)
が成り立つ。すると任意の u ∈ Ker(i∗ : Hq (A) → Hq (X)) について u = 1Hq (A) u = r∗ (i∗ u) =
r∗ (0) = 0 となるから i∗ は単射である11 。
次の命題は、n = 2 のときには、「円周 S 1 にはられた膜を、破ることなしにすべてを
円周に押し付けることはできない」ということを言っている。
命題 3.11. n 次元球体 Dn はその境界 ∂Dn をレトラクトに持たない。
証明. Dn がその境界 ∂Dn をレトラクトに持つと仮定して矛盾を導く。 n ≥ 2 とする。こ
のとき補題 3.10 により包含写像 i : ∂Dn → Dn の誘導する準同型
i∗ : Hn−1 (∂Dn )(∼
= Z) → Hn−1 (Dn )(= 0)
は単射となり矛盾が生ずる。n = 1 の場合は包含準同型 i∗ : H0 (∂D1 )(∼
= Z⊕Z) → H0 (D1 ) ∼
=
Z が単射ということになるが、∂D1 = {−1, +1} であって、[−1] 6= [+1] ∈ H0 (∂D1 ) かつ
i∗ [−1] = i∗ [+1] ∈ H0 (D1 ) だから、これは単射ではない。矛盾である。
これで Brouwer の不動点定理の証明の準備ができた。
定理 3.12. (Brouwer の不動点定理)任意の連続写像 f : Dn → Dn は不動点(つまり
f (x) = x なる点 x ∈ Dn )を持つ。
しかしレトラクトは変位レトラクトとは限らない。例えば、空でない可縮でない空間 X の任意
の点 x ∈ X について {x} は X のレトラクトであるが、変位レトラクトではない。
10
第 0 ホモロジー群について既に見たように、一般に包含準同型は単射とは限らない。したがっ
て、包含準同型が単射であるための充分条件を与えるこの補題は重要である。
11
もっと強く、直和分解すること Hq (X) ∼
= Ker r∗ ⊕ Hq (A) が分かる。
9
14 年 10 月 22 日
11
証明. 連続写像 f : Dn → Dn が不動点を持たないと仮定して矛盾を導く。このとき、各
x ∈ Dn について x と f (x) を結ぶ線分を x の方に延ばした半直線の ∂Dn との交点を
r(x) ∈ ∂Dn とおく。
こうして得られる写像 r : Dn → ∂Dn が well-defined かつ連続であることを確認して
おこう。各 x ∈ Dn について二次方程式 ktf (x) + (1 − t)xk2 = 1 つまり
t2 kf (x) − xk2 + 2t(x, f (x) − x) + kxk2 − 1 = 0
(3.6)
n
を考える。ここで
∑un = (u1 , . . . , un ), v = (v1 , . . . , vn ) ∈ R について (u, v) ∈ R はユークリッ
ド内積 (u, v) := i=1 ui vi を表わす。 f が不動点を持たないという仮定から kf (x)−xk2 > 0
である。また t = 0 で kxk2 − 1 ≤ 0、 t = 1 で kf (x)k2 − 1 ≤ 0 である。したがって (3.6)
は t ≤ 0 と t ≥ 1 に一つづつ根をもつ。t ≤ 0 の方の根を t(x) とすると写像は
r(x) = t(x)f (x) + (1 − t(x))x
と表わされる。したがって r(x) は well-defined である。高校で習った二次方程式の根の公
式から写像 t : Dn → R, x 7→ t(x) は連続、したがって写像 r : Dn → ∂Dn も連続である。
作り方から明らかに x ∈ ∂Dn ならば r(x) = x である。いいかえれば包含写像 i :
n
∂D ,→ Dn について r ◦ i = 1∂Dn をみたす。したがって r : Dn → ∂Dn はレトラクショ
ン、 ∂Dn は Dn のレトラクトとなり命題 3.11 に矛盾する。定理が証明された。
次回は、球面の写像度について議論する。応用として代数学の基本定理の証明を与える。
宿題レポート問題 3. (提出締切: 10月29日.) Rn の空でない部分空間 X ⊂ Rn につ
いて
C+ X := {(tx, 1 − t) ∈ Rn × R; x ∈ X, 0 ≤ t ≤ 1} ⊂ Rn × R
C− X := {(tx, t − 1) ∈ Rn × R; x ∈ X, 0 ≤ t ≤ 1} ⊂ Rn × R
SX := C+ X ∪ C− X ⊂ Rn × R
P± := (0, ±1) ∈ C± X
とおく。このとき次を証明せよ。
(1) SX \ {P+ } は可縮である。
(2) SX \ {P+ , P− } は X とホモトピー同値である。
e q−1 (X).
e q (SX) ∼
(3) すべての q ≥ 1 について H
=H
(4) S(S n−1 ) は S n に同相である。
幾何学 II
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今回の宿題レポート問題は 11ページにあります。
幾何学特別演習 II
14年10月22日 河澄
問題 3.1. Rn の空でない部分集合 C が凸 (convex) すなわち
∀x0 , ∀x1 ∈ C, ∀t ∈ [0, 1],
(1 − t)x0 + tx1 ∈ C
であるならば可縮であることを示せ。その際、凸性をどこで使うのか明確に述べよ。
問題 3.2. n 次元球体 Dn の任意の内点 p について Dn \ {p} が、Dn の境界 ∂Dn を変位
レトラクトに持つことを証明せよ。その際、レトラクション r : Dn \ {p} → ∂Dn を具体
的な式で与えよ。
問題 3.3. 0 ≤ p ≤ n とする。
S p = {(x0 , . . . , xp , 0, . . . , 0) ∈ Rn+1 ; (x0 , . . . , xp ) ∈ S p } ⊂ S n
によって、 S p を S n の部分空間とみなす。このとき、ホモトピー同値 S n \ S p ' S n−p−1
が成り立つことを証明せよ。
問題 3.4. n ≥ 3 とする。このとき、実射影空間 RP n−1 は H1 (RP n−1 ) = Z/2 となること
が知られている。このことを(証明なしに)用いて、n 次元ユークリッド空間 Rn の −1
倍作用による商空間 Zn := Rn /{±1} が n 次元位相多様体とならないことを証明せよ。
問題 3.5. n + 1 次元複素射影空間 CP n+1 から一点 [0 : · · · : 0 : 1] ∈ CP n+1 を除いたもの
と n 次元複素射影空間 CP n がホモトピー同値であることを証明せよ。
問題 3.6. 特殊線型群 SL(2, C) が特殊ユニタリー群 SU (2) を変位レトラクトにもち、SU (2)
が S 3 と同相であることを示せ。(とくにホモトピー同値 SL(2, C) ' S 3 が成立つ。)
問題 3.7. 同相 U (n) ≈ SU (n) × S 1 を示せ。(群の同型ではない。)
問題 3.8. 一般線型群 GL(n, C) が unitary 群 U (n) を変位レトラクトにもつことを示せ。
問題 3.9. 一般線型群 GL(n, R) が直交群 O(n) を変位レトラクトにもつことを証明せよ。
問題 3.10. 位相空間 X が局所弧状連結で π0 (X) が有限のときは本文の「ホモロジー群の
基本性質」の (III) は (II) と H∗ (∅) = 0 から導かれることを証明せよ。
問題 3.11. n ≥ 2 とする。m ≥ 1 について、Xm = Rn \ {p1 , p2 , . . . , pm }, ただし pi =
(i, 0, . . . , 0) ∈ Rn とする。
(1) ホモロジー群 Hq (X2 ), q ≥ 0 を求めよ。(ヒント:
(その1) X2 の開被覆 {U, V } で
n−1
U ' V ' S , U ∩ V ' ∗ となるものを見つけよ。(その2) Rn の開被覆 {U, V }
で U ' V ' S n−1 , U ∩ V = X2 となるものを見つけよ。)
(2) ホモロジー群 Hq (Xm ), m ≥ 3, q ≥ 0 を求めよ。