07 ■ 事 業 紹 介 07―■ 事業紹介 3ダムを新設して柏崎刈羽地域の 農業振興を目指す 石 川の農 業 用水の歴史は、 −国営柏崎周辺農業水利事業の取組状況− 1595 年に上杉景勝の家臣である 直江兼続が、木杭にそだ束を組ん だ草堰(くさぜき)により藤井堰 ★ を造り、新田を開発したことから 始まる。その後、1772 年に上流に 善根堰が造られ、上流と下流の水 争いが厳しくなり、それは最近ま 北陸農政局柏崎周辺農業水利事業所長 で続いてきている。昭和 52 (1977) 渡邉 昭弘 年に改修された藤井堰の記念碑 には「用水の一滴が血の一滴を合 言葉に」水源の確保に努力したこ Ⅰ.はじめに 分水嶺となっているため流域は しがわ)の支流に栃ヶ原(とち と、下流の藤井堰の用水配分が 1 狭く、夏場に晴天が続くと河川 がはら)ダム、そして鵜川(うか 対 2.8 に決まり水利権が復活した 新潟県中部の中越地域にある柏 流量は激減してしまうことから、 わ)の支流に市野新田(いちの ことなどが刻まれている。 崎市と刈羽村において、コシヒ 古くから水不足に悩み、上流と しんでん) ダムの 3 ダムを新設し、 カリなどのおいしい米を生産する 下流の水争いは幾度となく起き 昭和 50 年代に造られた藤井堰と 左岸側に全量取水し、射流分水 つ客観的に聴くことが大切だとい 地元の柏崎土地改良区から「受 水田約 3,500 ヘクタールを対象に てきた。 善根堰(ぜごんぜき)の 2 頭首 工で用水を 1 対 2.8 に分けて、善 うことを改めて認識した。 益農家に安心感が生まれた」と評 国営柏崎周辺農業水利事業は、 ■ 石川の上流側にある善根堰の射流分水工 ■ 石川の下流側にある 藤井堰の記念碑 一方、上流の善根堰では河川を 価していただいた。 事業を展開している。この地域 そこで、国営事業では、地域 工と用水路を改修することにより 根堰掛りに 1、河川に 2.8 を戻し は、上流側に豪雪地帯を抱えて を流れる 3 河川、別山川(べつ 農業用水に苦労してきた地域に て下流の藤井堰で取水するように いるため雪解けの春先には河川 やまがわ)の支流に後谷(うし 安定的に水を供給し、地域農業 なっている。射流分水工は、水を 本事業は平成 9 年度に着工し、 にダム本体工事に着手するととも 流量は豊富であるが、市町境が ろだに)ダム、 の振興を図ることとしている。 射流にすることにより下流側の水 平成 25 年度末の進捗率は 84%、 に、間接流域からの導水路と受益 (バックウォーター)の影響を受 栃ヶ原ダムと後谷ダムの 2 ダム 地へ送水する幹線導水路のパイ けずに水深が一定となるため、水 は平成 22 年から供用を開始した プライン工事を進めているところ 路の背割りの幅で正確に分水する ところ、平成 24 年に渇水があり、 である。 石川(さばい 石川における藤井堰(下流)と善根堰(上流)の歴史 ○水田開発の進展とともに、農業用水の取水や配分方法を巡って、昔から河川の上流と下 流の間で水争いが絶えなかった。 ■文禄 4 年(1595年) 上杉景勝の家臣、直江兼続が新田開発と ともに、藤井堰(草堰)の築堰を開始。 (草堰:川に大杭を並べ、そだ木の束を組み、 土俵を積む工法) ■安永 2 年(1773年) 善根堰と下流の藤井堰の分配比が 1:3 で示談成立。 石川では、上流 (善根堰掛り)と 下流(藤井堰掛り)の間で水争い が絶えなかった。 ■昭和 51 年 (1976年) 善根堰改修に関する覚書を調印。 ゲート操作に関し て、交渉は難航し たが、射流分水工 により 1:2.8 に配 分することで合意。 30 ARIC情報|No.117 2015-03 文禄 4 年 正保元年 安永 2 年 大正11年 昭和36年 昭和51年 昭和52年 昭和54年 平成 9 年 ■正保元年(1644年) 藤井堰改修(鎧堰) 鎧堰 (鎧堰:川に杭を並べ、材木等 を差し渡し、その上流に同じも のを積上げる工法) ■大正 11 年(1922年) 善根堰をコンクリート固定堰に改築。角落とし 方式により、下流へ水を流すものの、流れを止 めてしまうのではないかと下流の不満が再燃。 ■昭和 36 年(1961年) 善根堰が自動転倒ゲートに改築。協議なしに善 根堰が全量取水の固定堰へ改修されたことで下 流から抗議。 市野新田ダムは、平成 24 年度 ことができ、誰の目からみても配 分がわかるようになっている。私 は、このような大きな射流分水工 を見たのは初めてである。 余談ではあるが、 石川の農 業用水の歴史を講演会で話した ところ、終了後に会場出口で男 達2人が私を待っていた。彼らは 「我々は善根堰掛りの者です。 石川の農業用水の歴史は分かっ たが、善根堰の言い分も聞いて ■昭和 52 年(1977年):藤井堰改修 ■昭和 54 年(1979年):善根堰改修 ほしい。最近、古文書が見つかっ ■平成 9 年(1997年) 国営柏崎周辺農業水利事業 着工 行くから‥‥」と言われた。水利 (後谷、栃ヶ原、市野新田の 3 ダム新設、藤井堰と善根堰等の改修) Ⅱ.事業の実施状況 たので解読している。今度持って 権に関わる話は、両者から公平か ARIC情報|No.117 2015-03 31 07―■ 事業紹介 ■後谷ダムの全景 ■後谷ダムの平面図 ■栃ヶ原ダムの全景 Ⅲ.新規水源 3 ダムの概要 と技術的な対応事例 生代新第三紀鮮新世∼第四紀更 は、中央遮水ゾーン型フィルダム 新世の泥岩を主とする西山層と とし、堤高 27 m、堤頂長 288 m、 1.後谷ダム 第四紀更新世の砂岩を主とする 総 貯 水 量 1,150千 m3(有効 貯 水 後谷ダムは、地区の北部にあ 灰爪層である。これらは軟岩に分 る旧西山町の海岸から 3 km 程の 類され、基礎の変形係数は CML 3 量 1,100千 m )とした。 2.栃ヶ原ダム 栃ヶ原ダムは、地区の南部に ■栃ヶ原ダムの平面図 特性において新鮮岩盤との差が見 設 計 セン断 強 度 が 0.8∼1.0 MN/ られたことから CML 級とした。 m2 程度であることから 50 m 級の 石川上流部の ダム形式は、フィルダムとコンク 重力式ダム築造は可能である。こ 支流である境川にあり、標高約 リートダムが考えられたが、①堤高 れらのことから重力式コンクリー ある旧高柳町の 堤体については、泥岩の強風 170 m、冬期の積雪が 4∼5 m あ が 50 m 以上となり、フィルタイプ トダムとし、堤高 52.7 m、堤頂長 石川水系別山川の支流である 2 級で 130 MN/m であり、ボーリ 化(DL)材と弱風化材の混合材 る豪雪地帯に位置している。平 ではゾーン型となるが、栃ヶ原ダム 152.5 m、総貯水量 2,470千 m3(有 後谷川にあり、標高約 60 m に位 ングコアを用いた一軸圧縮強度 を不透水性ゾーンに流用し、弱 成 13 年度にダム本体工事に着手 近傍ではロック材の入手が困難で 効貯水量 2,300千 m3)とした。 置する。平成 15 年度にダム本体 は 2 MN/m2 程度と小さいこと等 風化材を単体で外側の半透水性 し平成 18 年 12 月に完成したが、 ある。②重力式コンクリートダムタ なお、それぞれのダムの有効 工事に着手し平成 18 年 9 月に完 からコンクリートダムには適さな ゾーンに流用することとした。堤 平成 19 年 7 月に中越沖地震が起 イプでは、コンクリート量が約 12万 貯水量は、受益地内の必要水量 成したが、平成 19 年 7 月に中越 いと判断された。また、貯水池上 体内の浸透水を排水するために こり、安全確認等を行ったうえ 3 から、地域内で利用可能な水量 3 m であり骨材の搬入量は約 7 万 沖地震が起こり、安全確認等を 流左岸側の原石山から、築堤材 立ち上りドレーンと水平ドレー で平成 20 年 10 月から試験湛水 m で済むことから経済的である。 を差し引いて、ダムに依存する水 行ったうえで 12 月から試験湛水 料として不透水性材料∼半透水 ンを設けることとした。フィル を開始し平成 22 年 3 月に終了し、 ③基礎岩盤となる田麦川層の砂質 量を算定し、河川協議を経て設 を開始し平成 21 年 2 月に終了し、 性材料が区別して採取可能であ ター、ドレーン材は砕石を、リッ 平成 22 年から供用している。 泥岩は、比較的良好な岩盤であり、 定したものである。 平成 22 年から供用している。 り、各材料にも流用が可能であっ プラップ材は耐久性の大きい割 た。これらのことから、ダム型式 石を購入した。 ダムサイトの地層と地質は、新 ダムサイトに分布する地層は、 新第三鮮新世の田麦川層の砂質泥 岩であり、これを被覆する第四紀 系は沖積∼段丘性堆積物、河床 堆積物及び崖錐堆積物に区分さ れる。地質は、ダムの基礎岩盤を 構成する砂質泥岩は、新鮮岩の圧 縮強度が 10 MN/m2 程度である ため、岩盤等級区分により最上級 を CM 級とした。また、概ね新鮮 ではあるが岩質がやや軟質(針貫 入勾配 Np < 12 N/mm)なものに ついては、菊池・斉藤らの区分で ■後谷ダムの標準断面図 32 ARIC情報|No.117 2015-03 CM 級の下限に含まれるが、力学 ■栃ヶ原ダムの標準断面図 ARIC情報|No.117 2015-03 33 07―■ 事業紹介 3.市野新田ダム 市野新田ダムは、地区の南西 部で冬期の積雪が 4∼5 m ある豪 着手し、ダム本体工事には平成 部の鵜川水系の支流である石橋 雪地帯に位置する。平成 21 年度 24 年度に着手した。 川にあり、標高約 240 m の山間 に付替道路等のダム関連工事に ダムサイトの地層と地質は、米 山層火砕岩類および凝灰岩類を主 体とし、左岸下流側に駒の間層礫 岩が分布する。ダム形式としては、 ①基盤は米山層凝灰岩類の CL 級 を考えており、物性値は変形係数 65 MN/m2、セン断強度 ・ 粘着力 であり 30 kN/m2、内部摩擦角 34° 比較的軟質であることから、コンク リートダムの基盤としては強度が不 足する。②築堤材料は、土取り場 ■市野新田ダムの標準断面図 に凝灰角礫岩、ダムサイト近傍に 凝灰岩があるため流用が可能であ ■仮排水トンネル坑口への軌道と法面保護 (左岸地山から上流を望む) る。③遮水ゾーンの位置は、中心 が分布するため基礎処理量も多く 水性ゾーンが厚く、掘削量、堤体 ルダムとすることとし、堤高 26.7 m、 遮水壁型にすると D 級層の掘削量 なる。一方、上流側への傾斜遮水 積が少なくなる。これらのことから、 堤 頂長 199 m、総 貯 水 量 1,687千 が多く、止水ライン部に高透水帯 壁型にすると止水ライン部に難透 ダム形式は、傾斜遮水ゾーン型フィ 3 1,600千 m3) とした。 m(有効貯水量 ■市野新田ダムの平面図 34 ARIC情報|No.117 2015-03 ARIC情報|No.117 2015-03 35 07―■ 事業紹介 【市野新田ダムにおける技術的な 対応事例】 (1)軟弱地盤における工事用道 路の整備 (2)基礎処理試験 また、それぞれ非超過確率 85% 水省の土地改良事業計画設計基 で管理することとした。 準によるパターンAとグラウチン その結果、軟弱地盤は 3∼5 m と キスタイルによる支持力確保とし 厚く広い範囲に分布しており、N た。支持力算定式により補強材 基礎処理(カーテン及びブラン 値は 5 以下で含水比が 60%程度 料の必要引張強度を計算した結 ケットグラウチング)は、地質が 本試験では、①地質の限界圧 と非常に高いことが判明した。 果(T = 56.0 kN/m:最大盛土厚 軟質で亀裂が少ないため、CL 級 力が低いことから、ルジオンテス *2 *3 グ指針によるパターンBの 2 パ ターンで実施し、結果としては、 当初計画のままでは、10 t ダン 2.0m)から、これを満足するジオ 岩盤においては二重管ダブルパッ ト において 本地盤で改良効果が高かったパ 11 月は降雨が多く 12 月から 4 月 プや重ダンプが走行すると、基盤 テキスタイル(土木シート T-200: カー工法でなければ改良が困難 は、低圧から徐々に圧力を上げ ターンAを採用することとした。 までは 4 ∼ 5 m の積雪があるた 面が耐えきれず道路自体が大きく 材料強度 72.0 kN/m)を設置した。 であると想定していたが、経済的 ることとし、圧力段階を当初の 3 また、基礎処理試験では、1 次 め、土工事の施工可能期間は 5 沈下したり路面に大きな轍(わだ 路体部についても、ほとんど礫 なステージ工法を検討するため、 段階から 8 段階に細分化して慎 から 2 次、2 次から 3 次と次数を 月初旬から 10 月下旬までとなる。 ち)が発生し、安全性と施工性 を含まない粘性土を盛土材料にす 基礎処理試験を実施した。 重に行った。②地盤上面へのリー 追うごとにルジオン値を下げるこ 試験は、堤体右岸天端の一部 クを抑えるための措置として、カ とができた。 当地 域の 気 象 条 件は 厳しく、 地質は河床部付近では軟岩と に支障をきたすおそれがあった。 るしかないため、重ダンプの走行 及び水押し試験 なるが、ほとんどは粘性土である このため、重ダンプの走行に耐え に耐える強度を確保する方法を検 区間で行うこととし、改良目標値 バーロック上面から 1 m 深度ま ため、工事用道路の盛土材を得る る地盤支持力を確保する方法を、 討した。そこで①盛土材料を購入 は、ブランケットグラウチングが でのスラッシュグラウチングと、 果を高めるため、5 次孔以降は同 *1 さらに限界圧力が低い中で効 ことは難しい状況であった。また、 施工性と経済性を踏まえて検討 する案と②路体部をセメント系材 、カーテン 10 Lu(ルジオン値 ) 厚さ 20 cm のカバーコンクリー じ圧力でもより浸透性の高い超 基礎掘削の発生土として約 45 万 した。その結果、①軟弱地盤の 料で改良する案を検討した結果、 グラウチングが深度 H/2 以浅は トの 2 種 類 の 方 法を実 施した。 微粒子セメントを採用することと m の土砂を 10 t ダンプや重ダン 厚さが 3 m 以下の箇所は、施工 ①は近傍に適する材料を確保でき 5 Lu、H/2 以深は 10 Lu とした。 ③カーテングラウチングでは、農 した。 プを使用して運搬する工事用道路 後の維持補修も考慮して、杭基 ないことから②を採用した。 を早期に整備する必要があった。 礎による支持力確保とした。岩砕 これまでに、延べ 14,000 台の 工事用道路は、河床部に広が 路床の下部に鉄板を敷きそれを 重ダンプが走行したが、適度な る湿地帯を縦貫することから、そ 木杭で受ける構造とし、木杭は径 維持補修は必要としたものの道 こに分布する軟弱地盤の範囲お 200 mm で支持地盤に 0.5 m 貫入 路の沈下や変形により運行効率 よび堆積している粘性土の厚さや させ打設間隔は 2.0 m とした。 が低下することなく円滑な運土 3 支持力を確認するため、試掘調査 やサウンディング試験を行った。 ま た、 ② 軟 弱 地 盤 の 厚 さ が 作業が行われている。 3 m を超える箇 所には、ジオテ 4 号 工 事 用 道 路 支線(実線)幅員 W=8 m 運行車種 32 t 重DT/1 車線 建設発生土 受入地 1 号工事用道路 5 号工事用道路 材料採取地 ■杭基礎による支持力確保の構造図 堤体 5 号道路脇仮置場 仮排水路呑口部進入路 盛立道路 掘削土仮置場 2 号工事用道路 ブレンヤード② 半透水性 材料置場 仮置場 8 号工事用道路 支線(実線)幅員 W=8 m 運行車種 32 t 重DT/1 車線 仮置場 ブレンヤード① 4 号工事用道路 幹線(破線)幅員 W=13 m 運行車種 32 t 重DT/2 車線 ■基礎処理試験の概要図 ・パターン A:A 列を粗改良、B 列を本改良とする手法 ・パターン B:完全複列配置で改良する手法 ルジオン値 : 基礎地盤の透水性の値。 ルジオンテスト: 基礎地盤のボーリング孔に圧力水を注入し透水性を測定する。 *3) 水押し試験 : 圧力段階ごとに注入量を測定し、グラウチングによる改良状況の把握やセメントミルクの初期 濃度を決定する。 *1) *2) ■工事用道路の配置計画図 36 ARIC情報|No.117 2015-03 ■ジオテキスタイルによる支持力 確保の構造図 ARIC情報|No.117 2015-03 37 07―■ 事業紹介 (3)環境対策としての濁水処理 鵜川は清流であるため、下流 を踏まえてハードとソフトの両面 より周辺から川に流れ込む状況 て処理能力 150 m3/hr の施設を から検討した。 を把握 ・ 監視することとした。か 増設した。また、濁水が流入し で取水している農家や関係住民 ダム本体工事の初年度であ んがい期の約半年間を監視した やすい区間はパイプライン化す は、ダム工事により河川に濁水が る平 成 24 年度は土 工 事の範囲 ところ、ダムサイト上流域は軟弱 ることにより清濁を分離し、ろ 流れることを強く懸念している。 が少ないため、ダムサイト用に な湿地帯で、沈降分離しにくい 過壁を設置した自然沈降池を設 3 効果的な濁水処理のため、上流 60 m /hr の機械脱水処理方式の 濁水が発生すること、及び自然 けて濁度の軽減を図り、さらに、 域や掘削範囲の地形、河川の流 濁水処理設備を設置し、浮遊物 河岸の河川であるため、雨が降 雨水排水が酸性であったため安 況、土質、下流の水利用状況等 質(SS 分)の沈降状況、降雨に ると濁水がどこからでも河川に流 定的に SS 分を沈降させる対策 れ込むことが分かった。 平 成 25 年 度 は 基 礎 3 ■濁水処理プラント (150m /hr) ■ウッドチップを利用した濁水ろ過壁 として中和装置も追加した。 一方、ソフト対策としては、 濁水処理プラント (60m3/h) 濁水処理プラント (150m3/h) 濁水貯留池 Ⅳ.農業水利施設の水管理と施 設管理の最適化に向けた検討 設を最適に管理する方策の検討 国営事業の進捗を契機に、市 うこととしていたた 見回り濁水流入に早急に対応で 町村ごとにあった土地改良区が、 め、掘削箇所や運搬路 きるようにするとともに、河川 平成 21 年に柏崎土地改良区とし から発生する高濃度の 近くの工事等により、やむを得 て一つに合併している。 SS 分を含む濁水に対応 ず濁水が出るような場合は、下 本地域は農業用水の確保に苦 できるよう、濁水処理 流で取水する農家や関係住民に 労した歴史から、ため池、渓流 国営事業所は、ゼネコンやコ の対象範囲をダム工事 事前に連絡を取るようにした。 水、河川水そしてダムと多様な ンサルと連携し、農政局や学識 水源で成り立っているため、土 経験者等の助言 ・ 指導を得なが 地改良区の傘下に 36 の維持管 ら、ひとつひとつ課題を解決して 理組合があり賦課金も 36 通りと いる。今回の原稿を作るに際し なっている。 ても、事業所の各担当はじめ (株) の行われる全域に広げ 堤敷範囲 ARIC情報|No.117 2015-03 ダム工事は、広い工事範囲の中 で多様な土木工事を行うため、次々 と技術的な課題が発生してくる。 フジタ市野新田ダム作業所から 的に水管理や施設管理を行い、 技術情報の提供やチェックをい 土地改良区はダムや大規模な頭 ただいたが、様々な意見があり 首工を中央管理所から遠隔管理 一つの原稿にまとめるのに苦労 し、補修 ・ 改修事業を担当してい したぐらいである。 る。まさに地域コミュニティと中 まさしく事業所は、調査・設計・ 央制御の良いところが組み合わ 施工等に関する「技術の結節点」 された、いわゆるハイブリッドな といえる。もう少し余裕があれ 水管理と施設管理を行っている。 ば「技術の道場」になれるのだ このような地域特性を踏まえ、 が‥‥。やはり 50 年も、 100 年も、 今後の農業構造の変化を考慮し それ以上も地域に活きていく農 ながら、本事業計画に基づく国営 業生産基盤を造る「生産の現場」 から団体営までの施設が、最大 は楽しいものである。 限かつ持続的に機能を発揮させ 濁水処理プラント (150m3/h) 集水域 ていく必要があると考えている。 このため、施設を総合的に管 38 Ⅴ.おわりに これらの維持管理組合は自立 濁水処理プラント (60m3/h) 集水域 ■濁水処理対策の概要図 を始めたところである。 毎日午前と午後に河川の状態を 濁水処理プラント (150m3/h) 鵜 川 ■冬のダムサイトの様子 掘削工事を本格的に行 濁水処理プラント (60m3/h) 清水バイパス水路 (暗渠・開渠) ■夏のダムサイトの様子 理していく土地改良区の立場に 立って、地区全体の農業水利施 ■原稿作成に関し、技術情報の提供 やチェックをしてもらった方々(敬 称略)石田弘、太田宏通、坂元孝一、 中尾善武、山田敏克、壽時正伸、井 守徹、吉村侑一郎、山岸信義、他 ARIC情報|No.117 2015-03 39
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