資料 1 我が国の医療制度改革の 方向性を考える -欧米の医療制度改革の動向及び 医療の情報化の2つの視点から- 産業医科大学 公衆衛生学教室 松田晋哉 本日お話しすること • 欧米の医療制度改革の動向と我が 国への示唆 • 特に、我が国における医療・介護の 情報化の現状とその活用について 1 医療費の対GDP割合 資料: OECD (2013) 2 アメリカ医療保障の概要(オバマケア以前) 総人口: 3億人 高所得者 民間保険 (約2億人) メディケア (4100万人) 無保険者(4700万人) 子供向けSCHIP(700万人) メディケイド(4000万人) 低所得者 子供 3 自営業者 賃金労働者 高齢者 障害者 アメリカの民間保険による医療保障 支払い 民間保険会社 企業社員の場合、多 くは福利厚生の一環 保険料 (リスク及び 契約内容に よって異なる) サービス内容の規制 (医薬品リスト、利用審査、同僚審査、等) 高額医療の 事前許可申請 消費者 医療サービス 一般医 患者 病院 紹介 人頭制 診断群分類別 and/or出来高 保険者と医師との関係は種々: スタッフモデル、契約モデル、等 4 マネージドケアの仕組み 支払者・HMO (保険会社) 人頭制 GP制 ゲートキーピング PBM 利用調査(UR) 医師の活動記録 代替治療の紹介 電話相談センター 健康教育プログラム 予防プログラム 健康増進プログラム EBM・ガイドライン サービスの水平統合 サービスの垂直統合 質の保証 サービス提供者 ケースマネージメント クリニカルパス 退院調整 チームケア 5 出典: G. Mayer (1999)を改変 購買者 (雇用主など) 消費者の代理 機能を果たす団 体の関与 消費者・患者 問題点 1. 行き過ぎた介入による医療アクセスの阻害 2. 高い管理コスト オバマの提案する医療保障体制 給付範囲 目標 自由診療 給付範囲の広い民 間保険 広い フリーアクセス 給付範囲の狭い民 間保険 制限あり 内容はプランによる 無保険者 医療保険Exchange 市場等を通して提 供される非営利民 間保険 プランにより様々 貧困層 Medicaid 高齢者 Medicare 中流階級 狭い 医療の質向上(アクセスの向上も含めて) 富裕層 狭い 6 National Health Service (サッチャー改革以前) 予算 地方保健局 政府 税 予算 国民 医療サービス 病院 家庭医 患者 紹介制 財政方式 7 問題点 1. 過少サービス 2. 医療の質を高めるインセンティブ不足 人頭制 全年度実績 ベースの予算 イギリスの医療制度(NHSコミュニティケア改革以後) 地域全体の予算制約 保健当局 コスト 情報 全国対照 コスト表 予算 予算 プライマリー ケアグループ コスト 情報 病院 診断群分類ごとの コスト情報を 考慮した予算契約 予算 効率性及び 質の競争 病院 プライマリケアサービス 登録された住民 問題点 1. 期待された競争は起こらなかった 2. 管理コストの増大 8 フランスの医療保険制度(償還制) 問題点 1. 医療費のコントロールが難しい 企業 保険料 交渉 一般福祉税注1 政府 保険者 診療報酬 補助 医師組合など 償還請求 償還 医療 医療機関 サービス ・ 入院医療 税金 一般福祉税注1 被保険者 保険料注2 患者 支払い 公的病院 DRG/PPS 民間病院 DRG/PPS→病院費用 出来高払→医師費用 ・ 外来医療 出来高払が原則 (全額注3) 償還請求 補足保険制度 9 非営利の共済組合が主体 償還 注1: 現在は保険料ではなく一般税化が進んでいる 注2: 多くの場合は労働協約に従って 雇用者が負担 注3: 公的病院の入院医療は一部負担 のみ(第三者支払い方式) ドイツの医療制度の概要 価格競争+リスク構造調整 医療 保険者 医療 保険者 州政府 医療 保険者 DRG/PPS+出来高 補助金 診療報酬表 州保険協会(AOK)と 医師組合との協議 保険料 被保険者 医療サービス(*) 上限調整付 出来高払い 自己負担 医療サービス 診療所 患者 病院 紹介 自己負担 *: 一般医によるゲートキーピング 10 オランダの社会保険制度 短期医療保険(Zvw)* 国 競争 補助 (医療保険給付) オプション (任意医療保険:VHI) 全国民が医療保険基金 (CVZ) に対して収入に比 例して払う保険料 オプション(VHI) CVZ リスク 構造 調整 保険財源 基礎的保険 定額保険料 国民 性、年齢・ 傷病、医薬品 処方状況等 各保険者 *: 一般医によるサービス、専門医によるサービス(精神科医によるものを除く)、歯科サービス、看護などのパラ メディカルサービス、365日を超えない入院サービス、救急サービス、妊産婦サービス、薬剤などの短期医療 サービスをカバーする 11 オランダにおける医療制度改革(2006年~) 価格競争+リスク構造調整 医療 保険者 医療 保険者 国の定める 公定価格上限 医療 保険者 支払 価格交渉 保険料 Managed Competition (管理競争) 診療報酬 被保険者 医療サービス(*) 病院 患者 評価 • 期待された「競争による適正化」という エビデンスは得られていない 自己負担 営利性↑ *: 一般医によるゲートキーピング 12 近年の欧州における医療制度改革の経時的変化 第一期 目標 政策 第二期 目標 政策 第三期 目標 政策 第四期 目標 政策 13 1970年代後半から1980年代 マクロレベルでの医療費抑制 病院の総枠予算制 医療計画に病院建設及び高額医療機器の制限 医師収入の抑制 医師教育体制の再構築 医学部定員の削減・一般医の養成 1980年代後半から1990年代前半 ミクロレベルでの効率化と利用者への説明責任 市場主義的手法の導入 マネジメント改革 予算管理 1990年代 医療サービスの合理化と優先度設定 一般的公衆衛生活動・健康増進 プライマリーケアの重視 マネージドケア 医療技術評価・EBM 2000年代以降 社会保障制度のサステナビリティ 医療保障の質保証 コミュニティケア・統合ケアの推進 医療の可視化(情報化の推進・指標の公開) 代替政策 緩やかな総額管理(支出目標の設定) 受診行動の適正化 社会実験の歴史 必ずしもうまく いってはいない Value for money Ham C (1997)に加筆 代替政策(Substitution) • 代替政策Substitutionとは、入院医療から外来 医療へ、専門医の診療からプライマリケアへ、 医師によるプライマリケアから看護職によるプ ライマリケアへ、長期療養型医療施設から福 祉施設、そして在宅ケアへというように、サー ビスの質を落とすことなく、より費用効果的な サービスに利用者を誘導していこうというプロ グラム • 1987年のデッカープランで提案された ただし、プロに任せるべきものはプロに任せるという原則は守られるべき 14 フランスにおける在宅入院制度 (Hospitalization à Domicile: HAD) 提供される主なサービス 病院 病院医師 処方箋 • • • • • • • • 開業医 HAD チーム 調整医師、調整看護師 PT、 OT、 栄養士 薬剤師 等 化学療法 抗生物質投与 疼痛緩和ケア 人工栄養 ガーゼ交換など 治療経過モニタリング 輸血 人工呼吸の管理 等 開業医 開業看護師 開業PT など 調整医師による指示箋→ 調整看護師による ケアプラン・サービス 患者 緊急時の搬送 15 コミュニティケア • 生活圏域での「プライマリケア」を中心とした総 合的医療介護サービスの提供 – 総合診療医を中核とした「かかりつけ医制度」+訪 問看護・訪問介護 – 家族・コミュニティの役割(インフォーマルケア→セ ミフォーマルケア) – 本人の役割→セルフケアとそのサポート体制(施 設の社会化) – 全体をコーディネートする組織(フランスの保健 ネットワーク、イギリスのClinical Commissioning Group) 16 フランスにおける保健ネットワーク 疾病金庫 (Réseau de la santé) 自治体 予算(5%) 保健ネットワーク事務局 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ 予算(95%) 医師 看護師 ソーシャルワーカー PT/OT 臨床心理士 個々の医療職に対する支払いは 疾病金庫からの出来高払い 相談 病院医師 SW 本人・家族 ケアプラン よ 開業PT 開業医 開業臨床心理士 患者 開業看護師 在宅福祉サービス 福祉施設 開業医 慢性期病院 急性期病院 17 回復期病院 18 Patient centered Medical Home • 地域資源と 政策支援 Care Partnership Support Care Partnership Support 患者中心の医療ホーム 患者支援の 責任 支援的な統合された コミュニテイ 効果があり、タイミングがよく、 効率的である 継続した 医療提供 情報支援 情報によって支援された 前向きな患者家族 根拠に基づいて、 安全である 機能的にも臨床的にも良い結果 意思決定 支援 前もって対応の準備ができ ている医療スタッフ 連携がよく、 公正である 18 カナダの家庭医グループ(GMF)によるグループ診療 急性期病院 OSCAR (共通電子カルテ) 家庭医 ハブ診療所 看護師 GMF看護サービス支援 メンバー 診療所 メンバー 診療所 メンバー 診療所 メンバー 診療所 ローテーションでの診療業務 GMFのメンバーはグループで地域の患者の診療にあたる。患者の モニタリングを含む看護サービスはGMFの看護師によって提供される。 19 緩やかな総額管理 (フランスの5つの主要医療サービス領域における支出目標ONDAMの設定) 議会における 医療支出目標の決定 社会医療部門 国による予算総額 の決定 施設間連携 国による予算総額 の決定 公的病院サービス部門 国による総枠予算総額 の決定 地方への配分 地方知事 配分の決定 各機関の予算 地方知事 配分の決定 各機関の予算 地方医療機構 支出目標 私的病院部門 国-金庫-施設代表者に よる総額(OQN)の決定 開業医部門 国と金庫による総額 の決定 地方への配分 地方医療機構 金庫と医師団体 による協約 支出目標 各医療機関の予算 各医療機関の予算 目標額と診療報酬 の決定 ONDAMはあくまで支出目標。ただし、それを大幅に超えることが予想されるとき 疾病金庫の理事長は抑制策を提案することができる。 20 フランスにおけるかかりつけ医制度の導入(1) かかりつけ医の紹介状ありで受診 疾病金庫 紹介状 協定価格の 保険給付部分 の 償還 協定価格の 支払い 患者 協定価格の 自己負担部分 の 償還 補足保険 21 かかりつけ医 協定価格の支払い 専門医等 フランスにおけるかかりつけ医制度の導入(2) かかりつけ医の紹介状なしで受診 疾病金庫 協定価格の 保険給付部分の 償還 かかりつけ医 患者 自己負担部分の 償還 専門医等 協定価格の支払い +付加料金の支払い 補足保険 付加料金部分の支 払いは自己負担 22 欧州における医療制度改革の動向(私見) 社会連帯重視 税金が基本 民間保険による補足 社会保険が基本 民間保険による補足 社会保険と 民間保険との混合 民間保険が基本 税金による下支え アメリカ オランダ ドイツ フランス イギリス プライマリケアへの ◎ アクセス 市場主義重視 ◎ ◎ ◎ △ 高度医療への アクセス △ ◎ ○ △ △ 医療費の 対GDP比 低 高 高 低 高 各国の改革の方向性 23 近年の欧州の医療制度改革の特徴 • 責任化原則(Responsabilisation) – 政府 • 制度の維持・改善のための体系整備 – 保険者 • 財政の健全化、アクセスの保障 – 医療提供者 • 質の保障、効率化→透明化、連携 – 被保険者・家族・国民 • 保険料(税)の納付、Medical saving account、セルフケア・セ ルフメディケーション、セミフォーマルケア、コミュニティケア • Value for money 24 歴史的視点が欠けた制度論は誤りやすい • 各国の医療制度(改革)には「歴史的理由」があ る。それは「理念」に裏打ちされている。 – – – – ドイツ・フランス→「職域連帯」の伝統 イギリス→「地域連帯」とプラグマティズム アメリカ→個人の自立(←国の成り立ち) 欧米の病院は「箱もの」(←自由開業医である専門医 は契約に基づいてそこを利用)→Physician fee と Hospital fee が分離できる • では日本は? – 成り立ちの異なる国保と組合健保→「連帯」の理念は 共有されているのか? – 診療所の発展形としての民間病院+当初から「勤務 医」を配置した公的病院 25 欧米の医療制度改革の動向と我が国への示唆 (小括) ・ 我が国でも社会保障制度改革国民会議報告書をも とに、2025年に向けた、医療・介護サービスの提供 体制改革が開始。 ・ 総合診療専門医(かかりつけ医)の普及や、地域包 括ケア、代替政策(「治す医療」から「治し、支える医 療」へ、入院から在宅へ)の取組みが始まる。 ・ 緩やかな総額管理なども視野に入れて改革を進め る必要。 ・ そのためにも、医療・介護情報の活用が必要。 26 本日お話しすること • 欧米の医療制度改革の動向と我が 国への示唆 • 特に、我が国における医療・介護の 情報化の現状とその活用について 27 基本は情報化・可視化 • 日本には優れた公的統計が数多くある • 日本には出来高支払い方式に対応したレセプト電算 システムがある (注)レセプト:医療機関が月末に提出する診療報酬請求書。我国で は90%超が電子化済み。 – それを活用して急性期病院の入院医療を可視化したの がDPC(=患者を診断名と行われた医療行為で分類する 方法:診断群分類(Diagnosis Procedure Combination)) – さらにそれを全国レベルでアーカイブ化したのがNational Database ・ 新たなデータ集めや、システム作りを各組織体がバラバラに 行えば、全体として分析できなくなるだけでなく、トータルでは 高コストになる。 ・ まずは、これらの既存の情報を十分に分析・活用すべき 28 DPCの基本的考え方 • 各患者を「病名」と「行われた医療行為」との 組み合わせで分類する方法 • 例えば「胃の悪性腫瘍、開腹胃全摘術(処置 等、副傷病なし)」という形で患者を分類する このままではコンピューターで処理できないので、 これを14桁の数字で表現する。 060020 x x 01 x0 x x 胃の悪性腫瘍 胃全摘術 副傷病なし 処置等なし 29 様式1とE/Fファイルの関係 様式1 データ識別番号 退院年月日 入院年月日 医療資源 病名 0000000010 20080720 20080710 33 ・・・ 手術 実施年月日 K282 20080711 退院サマリ: H22から患者 住所地の郵便番号も収集 データマッチング E file データ識別番 号 退院年月 日 入院年月 日 データ 区分 診療行為名称 行為点数 実施年月日 0000000010 20080720 20080710 33 ソリタT3号 500ml 483点 20080711 コストデータ(出来高ベース) データマッチング F file データ識別番号 退院年月日 入院年月日 データ 区分 診療行為名称 使用量 薬剤料 0000000010 20080720 20080710 33 ソリタT3号 50 0ml 2瓶 390円 0000000010 20080720 20080710 33 チェナム点滴用 500mgキット 2キット 4300円 0000000010 20080720 20080710 33 1瓶 140円 ビタメジン静注 用 医療行為の詳細情報 30 各患者のDPCへの割りつけ方 すでに各病院が持っているレセ電算システムを 使うことでDPCへの割付ができる これがポイント! DPCとは電子レセプトの 標準化のプロジェクト 病名などの 臨床情報 様式1 (退院サマリ) DPCのコーディングと DPCレセプトの作成 医療行為の コード表 E/F ファイル (点数情報と 医療行為情報) この仕組みをReceipt Data DownLoad 方式という 1750の急性期病院(50 万床)のデータが通年 で集積している。 年間900万件の退院患 者のデータ(一般病床 の70%以上) DPCとは「電子レセプトの標準化」のプロジェクト このデータを用いて臨床面、マネジメント面での種々の分析が可能になる。 31 現状で可能な情報活用の例 1. DPCとNDBを用いた医療資源の適正配 分の議論 2. 保険者レベルでの医療・介護レセプト 情報の統合 3. レセプト情報・DPC・NDBを活用した医 療の質評価 4. 公的統計を用いた医療需要の将来推 計 32 図2‐2 データを活用した地域医療・地域包括ケア計画の策定手順 (1) DPCデータを用いた救急医療と がん診療の提供体制の把握 (2) NDBを用いた医療圏内患者の受療圏の把握及 び地域医療指標の評価(DPC別、年齢階級別) (3) GISによる分析 (4) 隣接医療圏のデータとの連結分析 (6) 人口学的分析 (5) 介護保険関連データとの連結分析 (7) 領域ごと(救急医療、がん診療、周産期、高齢者 医療介護、連携など)の自医療圏における医療提供 体制の評価と課題抽出 (8) 関係者による議論 (公開討議を含む。 必要に応じてアンケート実施) (9) 領域ごと(救急医療、がん診療、周産期、高齢者 医療介護、連携など)の自医療圏における医療提供 体制の具体案と実行計画の立案 33 (10) 地域医療・地域包括ケア計画 への反映 福岡県の二次医療圏 北九州医療圏 宗像医療圏 直方鞍手医療圏 粕屋医療圏 京築医療圏 福岡糸島医療圏 田川医療圏 飯塚医療圏 筑紫医療圏 朝倉医療圏 久留米医療圏 八女筑後医療圏 有明医療圏 34 京築医療圏における医療機関の分布 小波瀬病院 行橋 新行橋病院 豊前 35 表2‐2 要診断群(MDC)の分類 主要診断群(MDC) MDC日本語表記 01 神経系疾患 02 眼科系疾患 03 耳鼻咽喉科系疾患 04 呼吸器疾患 05 循環器系疾患 06 消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患 07 筋骨格系疾患 08 皮膚・皮下組織の疾患 09 乳房の疾患 10 内分泌・栄養・代謝に関する疾患 11 腎・尿路系疾患及び男性生殖器系疾患 12 女性生殖器系疾患及び産褥期疾患・異常妊娠分娩 13 血液・造血器・免疫臓器の疾患 14 新生児疾患、先天性奇形 15 小児疾患 16 外傷・熱傷・中毒 17 精神疾患 18 その他の疾患 36 京築周辺医療圏におけるDPC対象病院の診療実績 (平成23年4月-平成24年3月分厚生労働省データ:MDC別全患者) 37 京築周辺医療圏におけるDPC対象病院の診療実績 (平成23年4月-平成24年3月分厚生労働省データ:MDC別全救急入院患者) 38 National Databaseとは何か • 厚生労働省保険局総務課が「高齢者の医療の確保に 関する法律」に基づき、全保険者、生活保護の電子レ セプト、特定健診データを匿名化後に収集 – – – – 電子レセプトはH21年4月診療分から 医科、DPC、調剤、歯科レセプト、特定健診 患者連結が可能な匿名化がなされている 調剤(99%)、病院(98%)、診療所(95%)のデータが集積 • データベースではなく電子レセプトのアーカイブ – 収集段階で匿名化、削除されている部分がある – 提供段階でさらに再匿名化される部分がある • 研究目的、都道府県の行政利用にも公開が始まった 39 京築医療圏における救急医療の自己完結率 (平成22年10月-平成23年3月分NDBデータ) 19%が北九州医療圏、 49%が京築医療圏、 33%が大分県北部医療圏の 医療施設に入院 40 患者居住地医療圏別にみた平均搬送距離 (平成23年4月~平成24年3月 消防庁データ: 全年齢) 二次医療圏 4001福岡・糸島 4002粕屋 4003宗像 4004筑紫 4005朝倉 4006久留米 4007八女・筑後 4008有明 4009飯塚 4010直方・鞍手 4011田川 4012北九州 4013京築 総計 41 搬送件数 覚知から現場到着(分) 現場到着から収容(分) 覚知から収容(分) 60,331 7.2 19.9 26.8 9,402 8.0 21.6 29.2 5,012 8.1 21.8 29.3 14,564 7.5 20.5 27.7 3,710 9.2 24.3 31.8 15,898 7.5 17.9 25.1 5,404 7.0 21.2 27.1 9,274 7.3 21.9 28.5 8,690 8.4 21.6 29.6 5,570 7.4 25.1 31.7 7,722 8.9 25.9 32.8 53,655 8.0 21.3 28.9 8,266 7.7 23.0 29.6 207,498 7.7 21.0 28.2 患者居住地医療圏別にみた平均搬送時間 (平成23年4月~平成24年3月 消防庁データ: 新生児・乳幼児) 二次医療圏 4001福岡・糸島 4002粕屋 4003宗像 4004筑紫 4005朝倉 4006久留米 4007八女・筑後 4008有明 4009飯塚 4010直方・鞍手 4011田川 4012北九州 4013京築 総計 搬送件数 覚知から現場到着(分) 現場到着から収容(分) 覚知から収容(分) 3,642 7.1 19.5 26.3 724 7.8 21.0 28.9 301 7.8 21.8 29.2 997 7.5 18.3 25.7 142 8.4 25.9 32.6 910 7.4 17.6 25.0 275 6.6 21.3 27.9 319 7.0 21.2 26.1 312 8.1 18.6 26.3 249 7.1 25.7 32.3 296 8.6 26.8 34.6 2,157 9.0 19.9 28.6 460 7.2 27.8 33.9 10,784 7.7 20.4 27.7 42 患者居住地医療圏別にみた平均搬送時間 (平成23年4月~平成24年3月 消防庁データ: 新生児・乳幼児・ 管内搬送) 二次医療圏 4001福岡・糸島 4002粕屋 4003宗像 4004筑紫 4005朝倉 4006久留米 4007八女・筑後 4008有明 4009飯塚 4010直方・鞍手 4011田川 4012北九州 4013京築 総計 43 搬送件数 覚知から現場到着(分) 現場到着から収容(分) 覚知から収容(分) 3,001 7.2 19.2 26.1 244 7.3 13.7 21.0 137 8.3 17.0 25.3 674 7.6 15.3 22.9 83 8.5 17.6 26.1 818 7.2 17.0 24.2 113 6.9 15.2 22.1 181 7.1 18.5 25.4 305 8.1 18.2 26.0 28 6.7 15.1 21.8 107 8.0 21.3 29.3 1,879 9.2 19.3 28.2 45 7.4 14.6 22.0 7,615 7.8 18.3 25.9 患者居住地医療圏別にみた平均搬送時間 (平成23年4月~平成24年3月 消防庁データ: 新生児・乳幼児・ 管外搬送) 二次医療圏 4001福岡・糸島 4002粕屋 4003宗像 4004筑紫 4005朝倉 4006久留米 4007八女・筑後 4008有明 4009飯塚 4010直方・鞍手 4011田川 4012北九州 4013京築 総計 搬送件数 覚知から現場到着(分) 現場到着から収容(分) 覚知から収容(分) 641 6.8 20.9 27.2 480 8.1 24.8 32.8 164 7.3 25.9 32.5 323 7.4 24.6 31.5 59 8.4 37.5 41.8 91 9.2 23.1 32.3 162 6.3 25.5 31.9 138 6.9 24.6 27.2 7 9.0 37.4 37.9 221 7.2 27.1 33.7 189 9.0 30.0 37.7 278 7.2 24.4 31.4 415 7.2 29.3 35.2 3,168 7.4 25.3 31.9 ・ 以上の分析から、医療資源に恵まれているはずの福岡県でも、県内における資源配置 が適切でないために、京築医療圏のように救急、特に小児救急で解決すべき課題がある ことがわかる ⇒ 今後、このデータをもとに関係者による解決のための客観的な議論が可能 ⇒ DPCとNDBを用いれば、地域の医療資源の適正配分(医療・介護サービスの提供量 や費用)の議論が可能。 44 運転時間区分別の カバーエリア (急性心筋梗塞) 資料:アクセスマップと人口カバー率 検討のポイント 1) 傷病ごとの医療機関へのアクセスしやすさを確認する。 45 現状で可能な情報活用の例 1. DPCとNDBを用いた医療資源の適正配 分の議論 2. 保険者レベルでの医療・介護レセプト 情報の統合 3. レセプト情報・DPC・NDBを活用した医 療の質評価 4. 公的統計を用いた医療需要の将来推 計 46 福岡県保健医療介護総合 データベース(FukHDAS)のシステム概要 端末での閲覧 産業医科大学U‐HMS内の作業 国保医科レセプト 国保調剤レセプト 医療保険・介護保険 被保険者対応テーブル 後期医科レセプト 後期調剤レセプト 介護保険レセプト QVファイル データ加工 QV用 サーバー 特定健診データ 傷病コード マスタ National Database における 個人情報保護方針に準拠した システム構成 47 • • • 医療介護特定健診共通の個 人IDの作成とハッシュ化 分析用に加工した各データの 個人IDを上記個人共通IDに変 換して分析用DBを作成 上記分析用DBをQlikviewファイ ルに加工 初期画面 48 傷病別医療費・詳細 (60‐79歳・2012年1月~3月・入院) 傷病別にみた医療費の構造分析 49 薬剤費分析画面 (2011年10月) 保険者がこのようなデータを持つことで、例えば地区の薬剤師会と 協議して、医療の質に配慮しながらジェネリック使用を促進できる。 50 要介護度別介護給付費 (在宅・2012年2月) 51 個人別・サービス別介護給付費 (在宅・脳梗塞・2012年2月分) 医療と介護のレセプトを連結することで、例えば脳梗塞で要介護 状態となった高齢者が受けているサービスの全体像が把握できる。 52 介護給付費・医療給付費合計 (在宅・脳梗塞・2012年2月分) 医療と介護のレセプトを連結 することで、例えば脳梗塞で要 介護状態となった高齢者が受 けているサービスの全体像が 把握できる。 53 保険者レベルでの総合的保健プログラムの実践 将来の医療・介護給付費の推計 種々の対策の効果の推計 種々の対策の効果の評価 人口構造の 将来推計 PDCAサイクルに基づく 政策運営 傷病とリンクさせた医療・介護給付の 現状に関するデータ 54 現状で可能な情報活用の例 1. DPCとNDBを用いた医療資源の適正配 分の議論 2. 保険者レベルでの医療・介護レセプト 情報の統合 3. レセプト情報・DPC・NDBを活用した医 療の質評価 4. 公的統計を用いた医療需要の将来推 計 55 医療の質とは • 臨床の質 – 治療成果に関連する指標 – 安全性に関連する指標 • 経営の質 改善への インセンティブ – 経営の効率性に関連する指標 – 経営の安全性に関連する指標 • 制度の質 – – – – 改善への 働きかけ 公平性 アクセスのしやすさ 効率性 持続可能性 56 都道府県別脳梗塞救急搬送距離と 年齢調整死亡率の相関(平成22年) 年齢調整死亡率 平均搬送距離 57 マクロレベル での評価 福岡県における脳梗塞患者の地域指標 (平成22年厚生労働省National Database) 施設医療圏 1.福岡・糸島 2.粕屋 3.宗像 4.筑紫 5.朝倉 6.久留米 7.八女・筑後 8.有明 9.飯塚 10.直方・鞍手 11.田川 12.北九州 13.京築 連携患者割合 5.1 2.6 0.0 1.1 0.0 4.9 6.6 2.2 5.0 3.3 1.4 3.8 0.0 在宅患者割合 7.1 5.7 3.4 5.1 2.2 5.4 1.8 7.0 3.0 5.5 2.9 5.0 7.4 マクロレベル での評価 レセプトを活用することで上記のような地域医療指標を作成することができる。 連携患者割合=連携関連レセプトの出ている入院患者数/入院患者数 在宅患者割合=在宅関連レセプトの出ている外来患者数/外来患者数 58 DPCデータを用いた医療プロセスの分析例 単純虫垂炎切除術後の抗生物質使用状況の医療機関間バリアンス 病院 ミクロレベル での評価 我が国の医療資源の使い方 には効率化の余地があること も否定できない 59 術後6日間の一人あたり抗生剤使用コスト 資料: 伏見(2008) ミクロレベル での評価 No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 2011年度医療の質の評価・公表等推進事業(済生会) 指標区分 患者満足 病院全体 4疾病等の 主な疾患 回復期 慢性期 地域連携 プロセス アウトカム 1 2 1 2 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 3 4 5 6 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 臨床指標 入院患者の満足度 外来患者の満足度 公費負担医療患者の割合 高齢者における褥瘡対策の実施率 高齢者における褥瘡の院内発生率 手術が施行された患者における肺血栓塞栓症の予防対策の実施率 手術が施行された患者における肺血栓塞栓症の院内発生率 術後の大腿骨頸部/転子部骨折の発生率 手術難易度分類別の患者割合 急性脳梗塞患者に対する入院翌日までの早期リハビリテーション開始率 急性脳梗塞患者に対する入院翌日までの頭部CTもしくはMRIの施行率 急性脳梗塞患者における入院死亡率 急性心筋梗塞患者に対する退院時アスピリンあるいは硫酸クロピドグレル処方率 PCIを施行した救急車搬送患者の入院死亡率 出血性胃・十二指腸潰瘍に対する内視鏡的治療(止血術)の施行率 人工膝関節置換手術翌日までの早期リハビリテーション開始率 人工関節置換術等の手術部位感染予防のための抗菌薬の1日以内の中止率 乳がんの患者に対する乳房温存手術の施行率 胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の施行率 がんのステージ別入院患者割合 がん患者に対する緩和ケアの施行率 脳卒中地域連携パスの使用率 大腿骨頸部骨折地域連携パスの使用率 急性期病棟における退院調整の実施率 救急搬送患者における連携先への転院率 退院時共同指導の実施率 介護支援連携指導の実施率 回復期リハビリテーション病棟退院患者の在宅復帰率 DPCをベースとして質の評価事業も展開していく DPC、電レセ で完結 × × ○ ○ × ○ ○ ○ ○ △ △ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 60 済生会における情報公開 ミクロレベル での評価 DPCデータを活用することで、急性期入院医療については欧米諸国で 行われているような質の評価事業を全国的に展開することが可能となっている。 61 医療費適正化のために必要なこと 1. 「適正化」の意味の再確認 ① Value for money(削減する部分も増額する部分 もある) ② 負担に関する責任範囲に関する議論(保険者、 被保険者、患者、医療サービス提供者、国・地 方政府) 2. Value の可視化が必要 ① 質評価の方法論の標準化・一般化 ② 質の向上は医療費の適正化につながるという 欧米の経験 62 保険者レベルでの医療の質保証 保険者レベルで 医療情報を整理 ソロプラクティス中心の開業医医療に「他の医師の目」を 入れることが医療の質向上には不可欠 現行のレセプト点検は「削ること」が主眼で 医療の質保証のツールになっていないという批判 各地区の 医師組織による 体系的Peer Review ITの活用に よる効率化 なぜ患者は病院を 選好するのかという 疑問に答える必要 病院だけでなく開業医医療の「質の評価」を行うことで、 その信頼性を保証 → それにより円滑な病院・診療所の連携体制を構築する。 介護についても同様の仕組みを構築できる。 63 現状で可能な情報活用の例 1. DPCとNDBを用いた医療資源の適正配 分の議論 2. 保険者レベルでの医療・介護レセプト 情報の統合 3. レセプト情報・DPC・NDBを活用した医 療の質評価 4. 公的統計を用いた医療需要の将来推 計 64 推計の条件 • 傷病別・入院外来別・年齢階級別受療率はH 23年患者調査データ(福岡県分)を利用 • 病床区分別平均在院日数と病床利用率は 2012年病院報告(福岡県分)を利用 • 高度急性期・一般急性期・回復期の配分は 社会保障国民会議の現状追認シナリオを活 用(2:5:3) • 地域内外の患者移動は考慮しない 65 福岡糸島医療圏の人口推移 66 福岡糸島医療圏の人口ピラミッドの変化 福岡糸島医療圏では急激な高齢者増が進んでいく。 67 福岡糸島医療圏の傷病別患者数の推計(外来) 68 福岡糸島医療圏の傷病別患者数の推計(入院) これから生じるこのような傷病構造の変化 に、各医療機関は準備できているのか? → 変化の内容は地域ごとに異なる 69 福岡糸島医療圏病床別患者数の推計(参考値) (現状追認シナリオ: 1日当たり) 年度 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 高度急性期 2609 2941 3209 3507 3708 3813 3898 一般急性期 6522 7352 8022 8768 9270 9532 9745 回復期 3913 4411 4813 5261 5562 5719 5847 医療療養 4033 4916 5712 6739 7391 7707 7990 介護療養 929 1156 1365 1645 1817 1896 1968 5558 6139 6614 7036 7359 7530 7619 108 124 136 150 160 165 169 精神 その他 現在の一般病床を高度急性期:一般急性期:回復期=2:5:3に分割 なお、医療圏内外の患者移動は考慮していない 70 福岡糸島医療圏病床別平均在院日数の推計 (参考値) (現在の病床数で患者増を補う場合) 年度 高度急性期 一般急性期 回復期 医療療養 介護療養 精神 その他 2010 16.8 11.6 64.5 149.2 155.6 358.3 70.0 2015 14.9 10.3 57.2 122.4 125.0 324.4 60.9 2020 13.7 9.5 52.5 105.3 105.9 301.1 55.6 2025 12.5 8.7 48.0 89.3 87.9 283.0 50.5 2030 11.8 8.2 45.4 81.4 79.6 270.6 47.4 2035 11.5 8.0 44.2 78.1 76.3 264.4 45.9 2040 11.2 7.8 43.2 75.3 73.4 261.4 44.6 ここがポイント! ・ 既存の公的統計を活用・分析して、将来の性別、年齢階級別の人口構成や 受療率等の客観的なデータを基に、地域ごとの医療需要の将来推計は可能。 ・ 同様の手法により、地域ごと、あるいは保険者ごとの「緩やかな総額管理」 (支出目標)の設定も可能。 71 医療の情報化と活用のあり方 • 医療に関連する情報は極めて個人的な情報 – したがって、その保護には十分な配慮が必要 – しかし、合理的な医療政策運営には情報が不可欠 • 国レベルでの情報利用に関する指針の必要性 • フランスのCNILのような組織の創設と標準的書類の作成 • セキュリティの高い個人IDの導入(認証の一元化) • レセプト情報の標準化と電子化 – 発生源における情報の精度・代表性の確保が重要 • 医療情報を集中的に管理する情報機構の重要性 • 都道府県や市町村が今回示した • 中立的な第三者機関 ような情報化やその分析の仕組 • 目的に応じた情報の加工と提供 みを単独で持つことは難しい。 • 民間ベースでバラバラに情報化 を行ってしまうと全体として分析 できなくなるだけでなく、トータル では高コストになる。 72 CNIL(Commission Nationale de l’Informatique et des Libérté: 情報と自由に関する全国委員会) • 1978年1月6日法によって創設された組織 – 17名の委員 – 情報の利用の可否を人権保護の立場から審査 • 一般的な情報についても厳格な個人情報の保護規 定があり、医療情報を含めて個人情報の利用に関 してはCNILの事前承認が必要 – 手続きを簡素化するために標準的フォーマットが準備さ れている – 医療情報の利用に関してはかなりの自由度があるが、枠 組みは公的な研究組織などに限定されている。 73 レセプト情報の収集・活用体制について(試案) レセプトデータの運用事例の案 有識者会議による監督(CNIL的) 各種レポート 保健情報機構 • レセプト • DPCデータ 国保 中央会 日本版ONDAM 医療介護の政策評価 ・・・ 医療情報室 支払基金 研修会等 医療機関 ポイント ・ 中立性の確保 ・ データ分析の科学性の担保 ・ データ分析の継続性の担保 ・ データの守秘性の確保 ・ データの利用可能性の向上 分析依頼 資料提供 行政機関 ・ 国、各省庁 ・ 都道府県 ・ 保険者 ・ 医師会 ・ 日本版NIH等 分析担当 部門 参加 申請 検討委員会 研究者 許可 関係団体 診療側 委員 支払側 委員 学識 委員 74 医療の目的は単なる病気の「治療」なのか? 経済活力を維持するためには以下の2つが必要 1.労働力の確保→Ageless 社会の実現 2.労働生産性の向上→「働くことを支援する医療」 • 労働生産性は主に2つの要素から構成される指標 – Absenteeism(病気による欠勤や休業) – Presenteeism(出勤している労働者の健康問題による労働 遂行能力の低下) • 米国の研究では、病気による経済損失の71%を Presenteeismが占め、Absenteeism29%よりも問題の 深刻性が強調されている※。 75 ※ Mattke S, et al. Am J Manag Care 2007; 13: 211 英国における傷病の労働損失に 及ぼす影響の公的報告 • 健康問題による損失 – 約1億7500万労働日/年 – 1000億ポンド/年=15兆円(1ポン ド=150円) • 働くことの健康への影響 – 健康は就業の条件であると同時に、 働くことは健康に良い影響がある。 • 労働損失関連コストの相当額は 早期対応により回避可能 76 活力ある高齢社会の実現のために • 臨床的治療のアウトカム評価として、職場復 帰・就業の継続・労働生産性の評価が重要と なっている。 – Presenteeismの防止 – 雇用継続を目的とした高齢者の健康管理 – 全年齢を対象とした医学面からの就業支援 • 少子高齢化の進む我が国では、そのための モデル作りを急ぐ必要がある 77 産業保健ビッグデータのインフラ基盤構築事業 概要 • 卒業生産業医がいる企業から特定健診及びレセプトのデータ提供を受ける • 労働生産性等に関する調査を適宜追加 • 大学研究者と卒業生産業医は同データを研究利用 • 企業はシステムを実務利用(産業保健、労務管理) • Key word: 健常労働者、労働生産性、高齢者労働、健診、医療費 労働生産性 安全衛生 企業 健保 企業 健保 労安衛法健診 特定健診 企業 健保 労安衛法健診 特定健診 企業 健保 労務管理 医療費(レセプト) 労安衛法健診 特定健診 企業 健保 労務管理 医療費(レセプト) 労安衛法健診 特定健診 労務管理 医療費(レセプト) 労安衛法健診 特定健診 労務管理 医療費(レセプト) 健保毎解析 企業毎解析 労務管理 医療費(レセプト) (医療費等) (人事視点) 突合解析 (産業保健) 3本の矢(視点)による解析・日本企業の労働安全衛生及び生産性の向上 78 まとめ • 我が国には医療・介護の現状と課題、そして今後のあり方を 客観的に検討するための情報がある。しかも、技術的にその 活用は問題なくできる。 • しかし、それが有効活用されていない。 • 最も大きな阻害要因は、どの主体が、どの情報を、どのよう に活用すべきか、のコンセンサスがないこと • 必要なことは「明確な方針と目的」に基づき、「具体的な行動」 を前進させること。 • 福岡県の事例を発展させ、国が標準を示すなど支援を行い つつ、①都道府県が医療提供体制改革の取組を進める際、 ②医療介護情報についてDPC、NDB等の客観的なデータを ITで統合的に利活用して、③医療の量、支出目標を設定。こ れらのデータを保険者は保険者機能を強化しつつ医療費の 適正化に、提供者は質の管理に活用する仕組みが作れるの ではないか。 79 参考文献 • 松田晋哉: 医療のなにが問題なのか 超高 齢社会日本の医療モデル、東京: 勁草書房 (2013). • 松田晋哉/伏見清秀(編): 診療情報による 医療評価 DPCデータから見る医療の質、東 京: 東京大学出版会(2012). • 松田晋哉: 基礎から読み解くDPC 第3版 実 践的に活用するために、東京: 医学書院 (2011). 80
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