三 「脊柱側弯症」

せきちゅう
脊椎の骨が柱状につながった状態を脊柱と
けいつい
くび
呼びます。ヒトの脊柱は、 個の頚椎(頚の骨)
、
ろっこつ
個の胸椎(肋骨が付いた骨)
、 個の腰椎(腰
の骨)
、仙骨、尾骨から構成されます。正常な
ぜんわん
脊柱では、横から見た際に頚椎は前(前弯)
に、胸椎は後ろ(後弯)に、腰椎は前(前弯)
に弯曲(カーブ)しています。一方、正常な脊
柱を正面から見た場合、ほぼまっすぐとなって
います。この脊柱が横に曲がった状態を側弯と
呼び、多くの場合ねじれを伴っています。
小児期の側弯症
か つ み
「脊柱側弯症」
播广谷 勝三
や
ま
り
5
7
1993 年九州大学医学部卒業・整形
外 科 入 局、2006-07 年 Twin Cities
Spine Center、ワシントン大学留学、
2012 年より現職。日本整形外科学会
専門医・脊椎脊髄病医。日本脊椎脊髄
病学会評議員、脊椎脊髄外科指導医。
クなどの治療が行われますが、これらの治療
に抵抗して日常生活動作に著しい障害を呈
する場合は手術療法の対象となります。変
形に伴う神経の圧迫が症状の原因である場
合には圧迫を除く除圧術が行われ、時に固
定術が併用されます。脊柱変形が症状の主
体である場合には矯正手術が行われます。
また、高齢者では骨粗しょう症に伴う脊
椎の骨折が原因で側弯や後弯などの脊柱変
形を呈することがあります。これらの脊柱変
形は、腰背部痛だけでなく呼吸機能障害や
食欲低下、睡眠障害、活動性の低下といっ
たさまざまな障害を来して生命にも影響を
与えることが示されています。早期に骨粗し
進行の有無を確認し、進行が予想される場
弯曲が小さいうちは定期的にX線を撮影して
側弯症とよばれるものです。治療としては、
数ははっきりとした原因のわからない特発性
ありますが、小児期に認める側弯症の大多
成 人の側 弯 症では側 弯 や 後 側 弯( 後 弯
と側弯の合併)などの変形に伴う腰背部痛、
とがあります。
を基盤として新規に発生する腰椎変性側弯
と、成人以降に椎間板の変性(性質の変化)
成人の脊柱側弯には、特発性側弯症など
の若年期から存在した側弯が進行したもの
脊柱変形といっても様々な病態があります
ので、気になった方は一度整形外科の専門医
ブシンドローム(運動器の障害のために移動
を延ばす目的で、整形外科では「ロコモティ
転倒しないような足腰を維持して健康寿命
ょう症を診断して治療を開始するとともに、
合には進行防止目的に成長終了までコルセッ
神経組織の圧迫に伴う脚の痛みやしびれな
にご相談することをお勧めいたします。
して、その予防や治療に介入しています。
機能の低下をきたした状態)
」の概念を提唱
トによる矯正を行います。一方、進行して大
どが問題となります。薬物療法や神経ブロッ
成人の側弯症
行を防止する目的で矯正手術が行われます。
PROFILE
きな弯曲を呈している場合には、さらなる進
さまざまな疾病に合併して生じる側弯や
先天的な骨の異常に基づく先天側弯なども
九州大学整形外科講師
は
12
156
Zaikai Kyushu / FEB.2015