経験ベイズ推定量の条件付き MSE とその小地域推定への応用 東京大・経済・院 菅澤 翔之助 東京大・経済 久保川 達也 1 はじめに 経験ベイズ法および経験ベイズ推定量はさまさまな分野で用いられる統計的手法であるが, その重 要な応用分野の1つとして小地域推定がある. 小地域推定では, 推定量を構成した際に, そのリスク を数値的に見積もることは応用上非常に重要である. 従来は (無条件) 平均二乗誤差 (MSE) を用い てきたが, 小地域推定のモチベーションと照らし合わせると, 観測値を得たもとで推定をした際に 生じるリスク, すなわち条件付き MSE(cMSE) の方がリスクとしては自然である. 2 研究内容 本研究 (Sugasawa and Kubokawa (2014)) では,NEF-QVF と呼ばれる分布のクラスに対する経験ベイ ズ推定量の cMSE を導出し, その漸近的な不偏推定量を与え, 通常の MSE と比較することで cMSE の有用性, 重要性を示す. モデルとして次のようなものを考える. yi |θi ∼ f (yi |θi ) = exp[ni (θi yi − ψ(θi )) + c(yi , ni )], θi |ν, mi ∼π(θi |ν, mi ) = exp[ν(mi θi − ψ(θi ))]C(ν, mi ), ここで ξi を ξi = E[yi |θi ] = ψ′ (θi ) と定義する. また Var(yi |θi ) = ψ′′ (θi )/ni = Q(ξi )/ni という構造を考 える. ただし Q(x) は二次関数 Q(x) = v0 + v1 x + v2 x2 である. また mi = ψ′ (x′ β) という構造を入れる ことで共変量があるケースも扱えるようになる. このように分散 Var(yi |θi ) が平均 ξi の2次関数で 書ける指数型分布族は NEF-QVF と呼ばれ, 正規分布や二項分布, ポアソン分布が含まれる. このモ デルのパラメータは η = (β′ , ν) であり, 経験ベイズ推定量は ni yi + b νb mi b . ξiEB = ni + b ν で与えられ, その cMSE の O p (1)(first order) の項は T 1i (yi , η) = Q(b ξi (yi , η)) ni + ν − v2 で与えられる. もし観測値が正規分布であれば Q(x) = 1 なので T 1i は yi に依存しないが, 二項分布 (Q(x) = x − x2 ) やポアソン分布 (Q(x) = x) では T 1i が yi に依存する. それは cMSE と従来の無条件 MSE の差が first order に現れることを意味している. したがって, 二項分布やポアソン分布が想定 されるモデルでは,cMSE で測るべきリスクを MSE では全く捉えられていないことになるので注意 が必要である. 本発表ではさらに詳しく NEF-QVF における cMSE について考察し, その漸近2次 不偏推定量を与え, それらの数値的な振る舞いを数値実験で確認し, 実データへの応用を通じてそ の重要性を報告する. 参考文献 [1] S. Sugasawa and T. Kubokawa (2014). On conditional mean squared errors of empirical Bayes estimators in mixed models with application to small area estimation. Discussion Paper Series, CIRJEF-934.
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