VOL.33 333 CHEMOTHERAPY S-3 Bacmecillinam(KW-1100)の 植 田省 吾 ・吉 住 臨 床的 検 討 修 ・中村 勝 ・松 田 央 一 ・今 野 久留米 大学 医学部泌尿器科学教室 繁 ・江 藤 耕 作 (主任:江 藤耕作教授) Mecillinamのetboxycarbonyloxyethylester誘 導 体 で あ るbacmecillinam(KW-1100)を28例 の 慢 性複 雑 性 尿 路 感 染 症 に使 用 し,そ の臨 床 的 検討 を 行 い以 下 の結 果 を 得 た 。 1)総 合 臨 床効 果 で は著 効4例,有 効4例,無 効19例,判 定 不 能1例 で総 合 有 効 率 は29.6%で あ った 。 2)細 菌学 的効 果 で は38株 中22株(57.9%)が 3)副 作 用 で は 発 疹 が1例,頭 除菌 され た。 痛,腹 痛,嘔 気 が1例,ま た臨 床 検 査 値 に お い て はBUNの 上昇 を1例 に認 め た 。 Bacmecillinam(KW-1100)は,Astra社 で 合 成 され た ー ゼ に よ り3位 剤 は 経 口 投 与 後,腸 よ び 補 遺3))に 基 づ い て 行 な っ た 。 ま た, 症 例 に よ っ て は14日 mecillinam(MPC)のethoxycarbonyloxyethylester誘 導 体 で あ り,本 基 準(第2版2)お 管粘 膜内のエステラ の エ ス テ ル 部 分 が 加 水 分 解 さ れ,MPC 目に も効 果 の 判定 を行 な った 。 III.臨 検 討28症 床 例 の 詳 細 はTable と な り抗 菌 力 を 発 揮 し,MPCのpivaloyloxymethylester に 中 途 で 投 与 を 中 止 し たNo.24を 誘 導 体(PMPC)と 評 価 の 判定 が可 能 で あ った 。 比 較 し腸 管 粘 膜 か らの 吸 収効 率 が 高 (1)5日 い と 言 わ れ て い る()。 今 回,我 々は 本 剤 の尿 路 感 染 症 に対 す る有 用 性 と安 全 性 に つ い て 検 討 し た の で,そ 1.対 を 有 す る28例 を 対 象 と し た 。 年 齢 は22歳 男 性23例,女 性5例 盂 腎 炎8例,慢 性 膀 胱 炎20例 た は320mg 間1例,14日 II.臨 間12例 間1例, で あ った 。 床 効 果 判 定基 準 臨 床 効 果 の 判 定 はU.T.I.研 究 会 のU.T.I.薬 10例(37.0%)が 2の 効19例(70.4%)で あ った 。 膿 尿 に 対 す る 効 果 では structure of KW-1100 菌尿に対する 効果 消 失,7例(25.9%)が 菌 交 代, 不 変 で あ っ た。 疾 患 病 態 群 別 に お い て は,Table 3の ご と くで あ り, 群 別 有 効 率 は1群0%,2群0%,3群0%,4群46.2 %,5群0%,6群33.3%で あ り,単 数 菌 感 染 症 で は22.2%の 細 菌 学 的 効 果 で は,Table midisは80%と Chemical 改 善,15例 不 変 で あ っ た 。 ま た,細 で は5例(18.5%)が 独菌感染症 では 4の 有 効 率 で あ った 。 ご と くで あ る 。 E.coli,P.vulgaris,E.cloacae等 Fig. 1 が 薬効 ご と く 著 効4例 正 常 化,2例(7.4%)が (55.5%)が 33.3%,複 効 評価 除 い た27例 効4例(14.8%),無 15例(55.5%)が 経 口 に て 連 続 投 与 した 。 投 与 期 間 は2日 5日 間14例,7日 で で あ った 。 投 与 方 法 は 本 剤 を1日240mg(3×)ま (4×)を か ら90歳 で あ った 。 感 染 症 の 内 訳 は 慢 性 腎 示 す 。 副 作 用 のた め 目判 定 総 合 有 効 率 は29.6%で 当 科 入 院 お よ び 外 来 患 者 の うち 慢 性 複 雑 性 尿 路 感 染 症 績 1に 総 合 臨 床 効 果 に お い て はTable (14.8%),有 の 成 績 を 報 告 す る。 象 お よび 方 法 成 は100%,S.epider- 高 い 除 菌 率 で あ り,Paem8inosaは 28.6%,S.mamescensは40%,S.faeoalisは20%と 低 い 除 菌 率 で あ っ た 。 全 体 で の 除 菌 率 は57.9%で,P. aerugimsa,S.marcescens,Sfaecalis等 投 与 後 出 現 菌 はTable 2株,S.epidermidis 5の が 存 続 した 。 ご と くで,R.alcaligenes 3株,S.faecalis 2株 等,15株 が 分 離 され た 。 MICと で はTable 細 菌 学 的 効 果 と の 関 係 で は106cells/ml接 6の ご と くE.coliは 全 て1.56μg/ml以 で,全 株 除 菌 さ れ て お り,P.aeruginosaは 全 て100μg/ml 種 下 334 CHEMOTHERAPY OCT.1985 VOL.33 S-3 CHEMOTHERAPY 335 336 CHEMOTHERAPY OCT. 1985 VOL.33 CHEMOTHERAPY S-3 Table Table 3. 2 Overall Overall clinical clinical efficacy efficacy 337 of KW-1100 of KW-1100 in complicated classified by type U.T.I. of infection (Evaluation : 5th day) 以 上 で6株 中2株(33.3%),S.marecscenSは100μg/m1 以 上 で5株 中2株(40%),S.epidermidisは25μg/m1 で2株 Table 示 す ご と く2群,3群,5群,6群 %の と も 除 菌 さ れ た 。 ま た,108cells/m1接 7に 示 す ご と く ほ ぼ106 cells/mlと 種 で は 同様 の結 果 で あ った 。 (2)14日 検 討28例 の う ち14日 に つ い て14日 間 連 続 投 与 が 可 能 で あ っ た12例 目 にU.T.1.薬 等9株 効 評 価 基 準 に 準 じて み て み る と,総 合 臨 床 効 果 で はTable8の (8.3%),無 効11例(91.7%)で ご と く 著 効1例 あ った 。 ま た,細 果 で は 消 失1例(8.3%),菌 50%,Sfaecalis あ っ た 。 疾 患 病 態 群 別 で はTable9に 体 で70.6%の 11の 50%,他 sp,S.maroesoens 12に 目の判 示 す ご と く有 効2 あ り14日 目判 定 意 で は な か った 。 膿 尿 目判 定 よ り 正 常 化 が 少 な く,改 善 が 多 か っ た 。 細 菌 尿 に 対 す る 効 果 で は ほ ぼ14日 定 と 差 を 認 め な か っ た 。 疾 患 病 態 群 別 で もTable 示 す ご と く14日 除菌 除 菌 率 で あ った 。 投 与後 出現 菌 で 総 合 有 効 率 は16.7%で に 対 す る 効 果 で は14日 変 は 全 て100%の が 分 離 さ れ た 。 ま た 同 一 症 例 に お け る5日 効10例 示 80%,Smar- ご と く.Pseud0monas よ りや や 良 い 成 績 で あ っ た が,有 菌 尿 に 対 す る効 交 代5例(41.7%),不 が 分 離 さ れ,Paeruginosa 定 で は 総 合 臨 床 効 果 で はTable 例,無 総 合 有 効 率 は8.3%で あ っ た 。 膿 尿 に 対 す る 効 果 で は 正 常 化3例(25.0%), 不 変9例(75.0%)で 6例(50.0%)で cesms はTable 間 連 続 投 与) は25.0 有 効 率 で あ っ た 。 細 菌 学 的 効 果 で はTable10に す ご と く17株 率 で,全 目 判 定(14日 は0%,4群 目判 13に 目判 定 と 差 を 認 め な か っ た 。 細 菌 学 的 CHEMOTHERAPY 338 Table 4 Bacteriological * Persisted: Regardless Strains* treatment appearing after in complicated response of bacterial OCT. to KW-1100 in complicated count 1985 U.T.I. (Evaluation: 5 th day) 認 め られ た が5日 間 の投 与 は可 能 で あ り本 剤 投 与 中 止 に Table 5 KW-1100 U.T.I. て 直 ち に軽 快 した。 投 与 前 後 に お け る臨 床 検 査 値 の 詳細 はTable16に す ご と くで あ る。No.4に ら23.3mg/dlへ に て16.9mg/dlと 示 お い てBUNが18.5mg/dlか と 軽 度 の 上 昇 を 示 し,1週 間 後 の再 検 正 常 化 し,こ の変 動 は 本 剤 と関 係 あ るか も しれ な い と考 え られ た。 他 の症 例 にお い て は 自他 覚 的,お よび臨 床 検 査 値 に お い て本 剤 に よ る と思 わ れ る 副 作 用 は認 め られ な か った。 V.考 案 尿 路 感 染 症 に 対 す る治 療 薬 と して過 去 に お い てABPC 等 の経 口 ペ ニ シ リン 剤 の 感 染 症 に 及 ぼ す 貢 献 度 は大 き く,そ の有 用 性 と安 全 性 は 多 くの 症 例 に お い て 評 価 され て い る〇 しか し,近 年ABPC耐 性 株 の 増 加 に よ って こ れ ら既 存 の経 口 ペ ニ シ リ ソ剤 に よ って は 難 治 性 の尿 路 感 *: Regardless of bacterial count (Evaluation: 5 th day) 染 症 が増 加 して い る。 Bacmecillinam(KW-1100)は に はTable14の は40%で ご と くで ありp.aem8inosaの あ り,14日 目判 定 の80%よ 全 体 で も52.9%の 除 菌 率 で14日 た 。 投 与 後 出 現菌 で はTable15に 除菌率 り除 菌 率 が 低 く, linamと 腸 管 粘 膜 内 でmecil- な り抗 菌 力 を 発 揮 し,か つ腸 管 粘 膜 よ りの吸 収 効 率 も良 く,E.coZi,KlebsieZlasp,Proteusspな どの 目 よ り低 い値 で あ っ グラ ム陰 性 菌 に 対 して 強 い 抗 菌 力 を 有 し,か つABPC耐 示 す ご と く,5株 性 株 に も優 れ た 抗 菌 力 を 示 す と言わ れ て い る4,5)。 と 14日 目判 定 よ り少 な く,14日 間 投 与 に よ る菌 交 代 の増 加 が認 め られ た 。 今 回,我 々はbacmecillinam(KW-1100℃ を慢 性 複 雑 性尿 路 感染 症 に対 して 使 用 して 総 合 有 効 率29.6%の IV.副 自他覚 的 に はNo.24で 作 投 与2日 結 用 果 を 得 た。 こ の結 果 は や や 低 い 値 で あ った が 各症 例 に つ 目に本 剤 に よ る と思 い て み て み る と難 治 性 尿 路 感 染 症 が 多 くを 占 め て お り, わ れ る薬 疹 を認 め た た め 投 与 を 中止 した。 またNo.25 疾 患 病 態 群 別 に お い て も1群,2群,5群,6群 に お い て 本剤 投 与3日 の 約 半 数 を 占 め て お り,ま た投 与 前 分 離 菌 に お い て も 目 よ り軽 度 の頭 痛,腹 痛,嘔 気 が で全体 VOL.33 CHEMOTHERAPY S-3 Table 6. Relation between MIC and bacteriological 339 response in KW-1100 treatment No. of strains eradicated/No. Table 7. Relation between MIC and bacteriological response in KW-1100 No. of strains of strains isolated of strains isolated treatment eradicated/No. CHEMOTHERAPY 340 Table Table 9. 8 Overall Overall clinical clinical efficacy efficacy OCT. of KW-1100 of KW-1100 in complicated classified by type 1985 U.T.I. of infection (Evaluation:14th day) Table *P 10 ersisted:Regardless Bacteriological response of bacterial count to KW-1100 in complicated U.T.I. (Evaluation:14thday) VOL.33 P. aeruginosa, CHEMOTHERAPY S-3 S. marcescens, S. faecalis が多 く分離 さ 341 Table 11 れ て い て,こ れ ら の菌 種 の 除 菌 率 の低 さが影 響 した も の と考 え られ た。 しか し,Ecoli,Profeus Strains* treatment appearing after in complicated KW-1100 U.T.I. sp等 が分 離 さ れ た症 例 で は著 効,有 効 例 が 多 く,こ れ ら有効 菌 種 に対 して は 良好 な成 績 が得 られ る も の と考 え られ た 。 ま た,本 剤 の2週 間連 続 投 与 は12例 に 可 能 で あ った が そ の 有効 率 は8.3%と の5日 低 い 値 で あ った 。 そ の 同 一 症例 目判 定 と比較 す る と除 菌 率 の向 上 は 認 め られ る も の の,菌 交 代 が増 加 し全 体 の有 効 率 の向 上 に は つ な が ら な か った と考 え られ た。 副 作 用 で は 発 疹 を認 め た1例 気 を 認 め た1例 の 計2例 と軽 度 の頭 痛,腹 痛,嘔 と 臨 床検 査 値上,軽 度 のBUN *:Regardless 上 昇 を 示 した1例 を 認 め た が い ずれ も軽 微 で あ り,特 に of bacterial count (Evaluation:14th day) 2週 間連 続 投 与 にお い て も5日 間 連 続投 与 と比 較 して も Table Table 13. 12 Overall Overall clinical clinical efficacy efficacy of KW-1100 of KW-1100 in complicated classified by type U.T.I. of infection (Evaluation : 5th day of 14 days treatment) CHEMOTHERAPY 342 Table 14 Bacteriological response *Persisted :Regardlessofbacterialcount 副 作 用 の増 加 傾 向 を認 め なか った 。 また,本 剤 の 長 期投 与 に お い て も既存 の経 ロペ ニ シ リン剤 と劣 らぬ 安全 性 を to KW-1100 OCT. in complicated 1985 U.T.I. (Evaluation: 5 th day of 14days treatment) Table 15 Strains* appearing in complicated U.T.I. after KW-1100 treatment 有 して い る もの と考 え られ た 。 *: Regardless of bacterial count (Evaluation : 5 th day of 14days treatment) VOL.33 S-3 CHEMOTHERAPY 343 344 CHEMOTHERAPY OCT. 1985 VOL.33 CHEMOTHERAPY S-3 文 1) 山 路 武 久, 他: Chemotherapy 献 KW-1100 (Bacmecillinam) の体 内 動 態 に 関 す る研 究 ー ヒ トに お け る 吸 収, 排 泄 に つ い て 。 第31回 日本 化 学 療 法 学 会 西 日本 支 部 総 会, 佐 賀, 2) 1983 大 越 正 秋, Chemotherapy 3) 大 越 正 秋, 他: 28: 他: 345 UTI薬 効 評 価 基 準(第2版)。 324∼341, UTI薬 1980 効 評 価 基 準(補 4) 熊 沢 浄 一, 28: 他: 1351∼1358, KW-1100 1980 (Bacmecillinam) の泌 尿 器 科 領 域 に お け る 臨 床 評 価 成 績 。 第31回 5) 日本化 学 療 法 学 会 西 日 本 支 部 総 会, 佐 賀, 1983 石 神 裏 次: わ が 国 に お け るPivmecillinamの 礎 的, 1∼11, 臨 床 的 研 究 の ま と め 。Chemotherapy 基 25: 1977 遺)。 CLINICAL STUDIES ON BACMECILLINAM (KW-1100) IN CHRONIC COMPLICATED URINARY TRACT INFECTION SHOGO UEDA, OSAMU YOSHIZUMI, MASARU NAKAMURA, YOUICHI MATSUDA, SHIGERU KONNO, and KOUSAKUETOH Department of Urology, School of Medicine, Kurume University Bacmecillinam (KW-1100) was administered to 28 cases of chronic complicated urinary tract infection and the following results were obtained. 1) The efficacy of KW-1100 was clinically evaluated and found to be excellent in 4 cases, moderate in 4 cases, poor in 19 cases and unknown in 1 case, with the efficacy rate being 29.6%. 2) Bacteriologically, 22 (57.9%) out of 38 strains were eradicated. 3) Side effects were observed in 2 cases (eruption, and slight headache, abdominal pain and nausea respectively) and as for laboratory findings, transient elevation of - BUN was observed in 1 case.
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