第3章 基礎数学 講義資料

第3章 基礎数学
•  システムの数学的な記述
–  2章においては、各システムは入力の定数倍を
出力するシステムと仮定
x
G�
Gx
–  実際に制御したいシステムはこのような単純な
システムであることは稀
例:機械振動系
•  バネとダンパでつながれた物体の動きをモデル化
図3.6�ダンパ・質量・バネ系�
運動方程式
ロボットアームなど、他の運動方程式も
一般に2次の微分方程式
例:電気回路システム
•  抵抗、コンデンサ、コイルによる回路システム
図3.4�直列RLC回路�
R
L
d2 q(t)
dq(t)
1
v(t) = L
+R
+ q(t)
2
dt
dt
C
C
違うシステムであるが
同じ微分方程式で表される
= システムの等価性
この他にも熱伝導方程式など、多くは微分方程式で記述
制御対象
•  一般に制御対象のシステムは時間に関する
微分方程式で表される
•  システムの性質の仮定 (1.2.3節)
1.  因果性
2.  時不変性
3.  線形性
線形微分方程式
•  一般のシステムは満たさないが、近似的には成り立つ
と仮定して、システムを線形微分方程式で表す。
シミュレーション
•  何らかのシステムの数学モデルが微分方程
式で与えられている場合
→等価な電気回路を作ることが可能
→その回路の挙動を調べることで、もともとのシス
テムの挙動を知ることができる
•  なんらかのシステムを他のものを用いて模擬
すること
→シミュレータ(フライトシミュレータ、運転シミュレー
タなど)
→普通はコンピュータで模擬する
線形微分方程式
次のような形式の微分方程式を考える
ただし、係数ai, biはすべて定数
線形微分方程式の解法について考える
3.3 たたみ込み積分
•  3.3.1 インパルス応答
–  ディラックのデルタ関数(単位インパルス関数)
0
デルタ関数 (単位インパルス関数)
•  時刻τにパルスがある場合
0
τ
単位インパルス関数による関数近似
•  信号f(t)を時間軸に沿って幅Δτの方形パルス
が連続したものとして近似
•  単位インパルス関数を方形パルスに近似
0
単位インパルス関数の性質
f(t)とδ(t)を用いて次の演算を考える
積分することはこのパルスの間の面積を求めることだから
0
単位インパルス関数
•  単位インパルス関数を使うと
•  インパルス応答:単位インパルス関数δ(t)を システムに入力したときの出力g(t)
システム
インパルス応答
•  図3.10 線形時不変システムを仮定
–  インパルス応答がg(t)であるシステムへx(t)を 入力したときの出力y(t)を求めたい
–  時刻t=0で単位インパルス関数に対する出力が
g(t) ならば,時刻t=τでのインパルス関数δ(t-τ)に
対する出力はg(t-τ)
システム
システム
時不変なので
時間がずれるだけ
たたみ込み積分
•  このシステムにx(τ)δ(t-τ)を入力すると, 重ね合わせの原理より出力はx(τ)g(t-τ)
システム
•  この入出力をτで積分する.
システム
重ね合わせ
たたみ込み積分
任意の入力x(t)に対する出力y(t)は
たたみ込み積分
で求められる
インパルス応答g(t)がわかれば、
たたみ込み積分により、任意の
入力に対する出力がわかる
たたみ込み積分による出力
•  実際の入力はt < 0においてx(t)=0
•  因果性からインパルス応答はt < 0において
g(t)=0なのでg(t-τ)が値を持つのはτ < t。
(τ > tの応答は時刻tの状態に影響を与えない)
したがって出力を求めるときの積分範囲は
t > 0のみ
たたみ込み積分
時間領域での解釈
•  入力信号x(t)を図に示すように時間軸に沿って幅Δτの方形パ
ルスの連続したものとして近似(x(t)はt > 0での関数とする)
•  インパルス応答g(t)は時刻0に幅Δτ、大きさ1/Δτの方形パルス
の入力に対する応答と考える
•  x(t)のn+1番目のパルスがシステムに入力したときの、出力は
入力パルスに比例したインパルス応答 x(nΔτ) Δτg(t-nΔt)
0
時間領域での解釈
•  重ね合わせの原理(線形性)から1~n+1番目までのパルス
入力が続けて入力したときの出力は
•  ここでΔτ→0,iΔτ →τ, n →∞としたとき、この和は積分となる
0
3.3.2 ステップ応答
•  線形システムのインパルス応答g(t)が判って
いれば、たたみ込み積分を用いて、システム
に任意の関数を与えたときの出力がわかる
•  例えば、単位ステップ関数u(t)を入力したとき
の出力(ステップ応答)を求める
ステップ応答
•  単位ステップ関数u(t)を入力したときの出力
•  例えばRL回路を考える
–  インパルス応答は
がわかっているとする
(求め方はあとで)
ステップ応答
であるから積分範囲の0からtまでは値が1で、
その範囲だけ考えれば良い
ステップ応答
図3.4
時間領域ではたたみ込み積分を解くことで出力を求めることができる.
他の入力でもたたみ込み積分で出力を求められる
システムからの出力を解くには?
•  あるシステムに任意の信号を入力したときの
出力を解くには?
– 線形微分方程式
– たたみ込み積分
を解く必要がある
その解法を考える
フーリエ級数
•  三角関数を用いて一般的な周期関数の級数
展開を考える
–  周期Tの周期関数
f (t+T) = f (t)
例えば矩形波を
三角関数の和で
近似
矩形波を近似
1次まで
3次まで
5次まで
19次まで
フーリエ級数
フーリエ級数
係数は
–  a0はf(x)の平均値の2倍
–  奇関数の場合にはan=0
–  偶関数の場合にはbn=0
矩形波の場合
矩形波の場合
矩形波の場合
フーリエ級数の複素数表現
フーリエ変換の複素数表現
フーリエ級数の複素数表現
ただし
負の周波数の概念が導入されている
(複素共役)
•  フーリエ変換の実例を入れる
3.4 フーリエ変換
•  周期関数ではない関数もsin, cosで表す
3.4 フーリエ変換
3.4 フーリエ変換
フーリエ変換
複素フーリエ積分公式
フーリエ変換
•  フーリエ変換
•  逆フーリエ変換
フーリエ変換による
たたみ込み積分の解法
•  積分順序を入れ替える。このとき積分の範囲
に注意する
•  システムの出力を求めるには
– 時間領域ではたたみ込み積分
– 周波数領域では乗算
3.5 ラプラス変換
3.5.1 ラプラス変換の定義
•  フーリエ変換では以下のような条件が必要であった.
•  これでは例えばステップ関数には適用できないため、
より多くの関数へ拡張するため、扱う関数にe-σtをか
けたときに,次の条件が成り立つ場合を考える.
•  さらにσが十分に小さければ f(t) e-σtはf(t)に近づくの
で,これをフーリエ変換する.ただしt < 0ではf(t)=0
s = σ + jω とおくことでラプラス変換が導出される
•  ラプラス変換.
•  逆ラプラス変換
周波数領域での扱いではあるが,s領域での
扱いと表現する.
例題3.3
ラプラス変換を求めよ
1.  単位インパルス関数 δ (t)
2.  単位ステップ関数 u(t)
3.  単位ランプ関数 r(t) = t u(t)
ランプ関数
例題3.3 解答
1.  単位インパルス関数 δ (t)
例題3.3 解答
2.  単位ステップ関数 u(t)
例題3.3 解答
3.  単位ランプ関数 r(t) = t u(t)
ラプラス変換対表
•  制御理論ではラプラス変換の積分を解くこと
が目的ではなく、ラプラス変換を使ってs領域
で出力を求めることが重要.
•  従って,次のようなラプラス変換対表を用いる
ラプラス変換対表(その1)
ラプラス変換対表(その2)
ラプラス変換(追加ページ)
5) 
ラプラス変換(追加ページ)
6) 
3.5.2 ラプラス変換の定理
•  加法定理
•  定数倍
•  微積分
のラプラス変換を求めよ
微分の場合
•  部分積分を使う
積分の場合
•  微分の結果を使う
3.5.2 ラプラス変換の定理
•  微分(n階微分)
ただし
3.5.2 ラプラス変換の定理
•  積分(n階積分)
3.5.2 ラプラス変換の定理
•  たたみ込み積分
•  時間遅れ
•  最終値定理
–  システムの定常状態を求めるために、時間領域でt→∞を
求めなくても、周波数領域で求めることができる。
例題3.6
•  直列RL回路の出力電流をラプラス変換を用
いて求めよ。
–  直列RL回路の微分方程式
例題3.6
ラプラス変換を求める
ただし,i(0) = 0
表の(8)の逆ラプラス変換を使うと
ラプラス変換による微分方程式の解法
•  表に載っている形式であるならば、表を使うこ
とによって容易にラプラス変換が可能
•  特に線形微分方程式ならば、微分要素をsに
置き換えればよく、したがって解のラプラス変
換は有理関数(多項式の比)になる
–  ただし初期値の項は無視
ラプラス変換
ラプラス変換による微分方程式の解法
•  線形微分方程式の場合、ラプラス変換すると
•  この右辺も表に載っていれば、逆ラプラス変換をす
ることで、容易にy(t)が求められる
載っていない場合(より一般的な場合)の解法は?
3.5.3 部分分数展開による
ラプラス逆変換
線形微分方程式のラプラス変換が
の形で与えられる(ただし、B(s)は分母に比べて次数
が低く、p1~pnはすべて相異なる複素数)とき、次のよ
うな部分分数の形に展開できる
ただし
係数の求め方の証明
F(s)の両辺に(s-pk)をかける
s=pkを代入すると第k項だけが残り,それ以外
の項はすべて0となるので,係数Akが求まる.
例題
次の逆ラプラス変換を求める
F(s)を次のような部分分数展開する
係数A, Bを求めると
つまり
加法定理より
であるから、逆ラプラス変換表より
より一般的に分母の(s-pk)の次数が2次以上で
ある場合を考える。分母の次数がnの場合
と書ける。ただしA(s)=0の解がnp個あり、 j番目
の解pjがkj乗根であるとする
これを部分分数展開すると
このときの分子の係数は
係数の公式の証明
係数の公式の証明
係数の公式の証明
演習3.7
•  逆ラプラス変換を求める.部分分数展開した
ときの項は以下のようになる.
•  この係数A, B1, B2, B3を求める.
演習3.7
•  公式から係数を求める
演習3.7
•  したがって
•  表(5), (6), (7)を使って逆ラプラス変換すると
式変形で係数を求める
•  公式は覚えるのも、求めるのも面倒(特に分
母の方程式が重解になる場合)
•  分母に現れる項に注意して,通分で解けば良
い。例題を再度考える
A, Bを求めるために,右辺を通分すると
係数を比較する
と求められる
演習3.7の別解
F(s)の部分分数展開を通分する.
演習3.7の別解
係数を比較する
つまり
常微分方程式の解法
1.  微分方程式をラプラス変換する
常微分方程式の解法
2.  F(s)を有理関数で表現し、部分分数展開する
3.  F(s)を逆ラプラス変換する
ラプラス変換表の(8)以降はこの部分分数分解
で導出することができる.表の(5)〜(7)のαが虚
数や複素数でも成り立つ.
例えば(10)は
表の(5)を用いれば,
(13)は
同じく表の(5)を用いれば