この人・あの時 シリーズ! 活躍する国際活動奨励賞受賞者 その3 ちん らん 陳 嵐 株式会社NTTドコモ 研究開発センター 無線アクセス開発部 [email protected] https://www.nttdocomo.co.jp/ 3GPPにおける無線アクセスネットワーク関連の標準化活動において、主に、LTE/LTE-Advancedにおける MIMO伝送、基地局間協調制御(CoMP) 、下り制御チャネルの拡張(ePDCCH)等の基本仕様策定を主導した。 またIEEE 802.11vにおいては、QoSを考慮したアクセスポイント選択の仕様策定に貢献した。さらに中国の国 際研究フォーラム(FuTURE)における副議長等を務め、日中の政府機関、大学、及び企業間における移動通信 技術の交流促進を図るとともに、標準化、及び将来の方向性に関する両国のコンセンサス作りに貢献を行った。 研究所発の技術を世界へ 今から8年前、北京研究所の運営が安定し始めた設立2年 目から、研究所の成果の出口を探していた。現地研究者の 適性を充分生かし、高いモチベーションをキープでき、かつ 本社R&Dの一翼を担う研究は何かと自問自答を繰り返し た。中国は当時、国を挙げて移動通信の国家プロジェクトを 推進しており、無線通信、特に物理レイヤ専門の卒業生が 潤沢であった。また、数学やプログラミング、英語が得意の 人材も多い。さらに、標準化会議に参加することに興味を持 つ研究者が多かった。そこでこの3点を「天の時、地の利、 人の和」と捉え、3GPP標準化向けの研究成果を標準規格 に盛り込むことを目標に、研究プロジェクトを立ち上げた。 写真1.ドコモ北京研究所の所員(2009年山田社長視察時) だが一つの難関に直面した。本社の標準化部隊に北京研 究所を信頼してもらうことであった。そこで2-3年をかけて標 論においては、他社に先駆けて各種シナリオと現実的なトラ 準規格、各社の寄書やchairman's noteを深く理解し、標準 ヒックモデルを提唱、評価結果を入力することで議論を主導 化に提案できるまで技術を磨き、さらに3GPP評価条件準拠 し、併せてフィードバック、制御シグナリングに関する技術 のシステムレベル・シミュレーションができるチームを育て、 寄書を入力し、関連仕様書に寄与した。さらに、下り制御 本社の信頼を得ることに努めた。その結果、2007年に初めて チャネル容量拡大ためのePDCCH(enhanced Physical 寄書を作成提出し、また北京研が作った大規模なシミュレー Downlink Control Channel)の仕様策定において、高効率 ションプラットフォームを本社に成果移管するなど、本社と なハッシュ関数について多数の会社から提案があり、議論が 密接な連携関係を構築することに成功した(写真1) 。 紛糾する中、オペレータとしての評価基準(信頼度、確実 標準規格に提案を盛り込むためには、技術の先進性だけ では勝てない場合が多く、合意を得るためのキープレイヤー とのコンセンサス作り、連名会社を増やすことも欠かせない。 性)を新たに確立し、この基準を満たす技術を規格に盛り込 むことができたのは大きな成果であった。 標準化向けの研究経験をLTE-Advancedの商用開発に生 そこで中国のFuTUREフォーラムにおいて、ワーキンググル かし、ユーザ及びオペレータにとって必要な機能を次の標準 ープの副議長等を務め、技術の方向性について積極的に議 リリースに盛り込み、より良いシステムをスピーディに実現 論することで各社キーパーソンとの関係構築にも努めた。 できるように引き続き頑張っていきたい。また将来の5G標準 本社標準化部門と密に連携し、研究所発の提案を3GPP 標準規格に入れることができた。例えば、基地局間で送受信 を協調するCoMP(Cooperative Multiple Point)の仕様議 68 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 化に向けて、引き続き日中間の移動通信技術の交流促進に 貢献していきたい。 み の くち あつし 巳之口 淳 株式会社NTTドコモ R&Dイノベーション本部 ネットワーク開発部 [email protected] https://www.nttdocomo.co.jp/ 移動通信システムコアネットワークにおけるサービス要求条件・アーキテクチャの専門家として、ITU-T、 3GPPにおける国際標準化活動、欧州プロジェクトへの参画、オペレータ団体での国際協調を2001年より継 続的に実施し、技術/運営の両面で寄与してきた。 Thank you! 2001年4月(∼2010年3月):ITU-T SSG、SG19、SG13 加えて、VoLTE以前の音声方式をCSFB(CS-Fallback) 2001年から2008年まで、SSG、SG19において、 「2010年 方式に統一する議論に関し、方式比較検討を資料エディタ 頃の移動通信サービスと網能力に関わる長期ビジョン」に関 として主導し、統一見解をGSMAMWCで発表するまでの成 する一連の勧告Q.1702、Q.1703、Q.1704の策定に貢献し 果を得た。 た。TTCの次世代All-IPモバイルネットワークの研究成果を 国際展開する最初の試みとして、3GPPやIETFに先立ち、 2011年4月(∼現在):3GPP SA1、SA2、SA ITU-Tに当該成果を持ち込んだ。そのうちQ.1704では、 2011年から、3GPPにてEPC標準化に従事している。当初 Q.1/19ラポータ代行として議事進行を行うとともにエディタ SA2にて、開発フィードバック課題を扱っていたが、2012年 業務も行い、勧告化の主導的役割を果たした。2008年に移 11月から、SA1に移り、アクセス規制高度化、すなわち、 (1) 動通信関連課題がSG13に統合された以降も、2010年まで 通信中アクセス規制(作業項目名はPMOC) 、 (2)アプリケ ITU-Tでの当該課題の扱いに関し主導的役割を果たした。 ーション単位アクセス規制(作業項目名はASAC及び FS_ACDC、ACDC)の検討に貢献した。 (1)に関しては、 2001年 6月 (∼ 2005年 12月 ): EU ISTプロジェクト MIND、WWI/E2R 今までアイドル状態の端末にしか効果のなかったアクセス規 制を通信中にも適用されるとするサービス要求条件の策定に 2001年6月から2002年11月まで(MIND) 、また、2004年 際し、ラポータとして主導的役割を果たした。 (2)に関して 1月から2005年12月まで(WWI/E2R) 、次世代モバイルネッ は、 (VoLTE音声を規制するSSACを除けば)今まで端末単 トワークを扱う欧州ISTプロジェクトMIND、WWI/E2Rに 位での効果しかなかったアクセス規制を、アプリケーション 参画し、欧州での検討動向吸収を行った。 単位で効果のあるアクセス規制に高度化する要求条件の策 定に際し、ラポータとして主導的役割を果たした。 2006年10月(∼2011年3月):NGMN 2006年から2011年まで、LTE実用化に向けた国際協調と 移動通信では現在5Gに向けた検討が開始されつつありま してNGMNに参画寄与した。2006年には、NGMNの全体ビ す。今後また、新たな気持ちで、5G標準化活動へ寄与でき ジョンを示す「NGMN White Paper」策定に当たりEditing ればと思っております。TTCでは2014年9月に「将来のモバ Teamの一員として貢献した。また2010年には「NGMN イルネットワーキングに関する検討会」が開始されており、 TECHNICAL ACHIEVEMENTS 2007-2010」策定に当たり 3GPP SA1でも2014年11月の会合より5Gの議論が始まりま Editing Teamの一員として貢献した。 した。まだ始まったばかりですが、自らも寄書を提出しまし さらに、ベースバンドユニット(BBU)とリモートレディ オヘッド(RRH)の間のインターフェースについて、NGMN て、議論に参加させていただいている状況です。 今後は、加えまして、機会があれば、副議長、議長等、 でのプロジェクト設置(OBRIプロジェクト)に関しプロジェ 一段高いステップにて標準化活動を推進できれば、とも思っ クトオーナーとして主導的役割を果たした。当該プロジェク ております。 ト成果のETSIへの移管に関し支援した。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 69
© Copyright 2024 Paperzz