セラミックス 第 3,4 回目 ( 2号館 2301教室 ) 2014年 4 月 22 日(火),4 月29日(火) 材料工学科 教授 永山 勝久 ニュ-セラミックス(ファインセラミックス)とは オ-ルドセラミックスとは? 窯業製品:陶磁器,ガラス,セメントなど ・・・無機物系原料を熱加工した“焼き物”の総称 脆くて割れ易いという致命的欠点を有する 天然の無機物原料を焼結 *マイセン・・・高級食器の代名詞 と言われるドイツの高級食器 ブランドメーカー (特に,ティ-カップが有名) 図:マイセン* のティーカップ ニュ-セラミックスとは? 原料自体を人工的に合成し、高純度かつ微細・ 均質化した無機化合物(ファインセラミックス)を 精密な製造・加工工程を用いて焼結したもの ①高温でも硬い,②燃えない,③錆びない,④圧力を加えると 電気を通すなどの優れた機能を有する新しい材料の誕生 ※ セラミックス原料 ・・・ ①高純度(: ~99.9%以上) ②粒子径の微細化(:0.2 μm程度) → 粒子径の微細化に伴う表面エネルギ-の増大を利用して 焼結性の向上とセラミックス製品自体の緻密化を促進 cf.ファインセラミックス(Fine Ceramics)=微細 結晶粒セラミックス セラミックスの構造 『単結晶体と多結晶体』 について 図:セラミックスの単結晶と多結晶の構造概念図 (通常の材料の単結晶と多結晶構造) (a)単結晶体・・・ 結晶中の原子配列が連続で、一つの面方位のみ有する結晶 (⇒ ex.半導体Si ) (b)多結晶体・・・ 種々の大きさの結晶粒の集合体で、結晶粒同士の結合界面には 結晶粒界(非整合部分)が形成される( ← 通常の材料) 『多結晶体の定義』・・・種々の大きさの結晶の集合体で、結晶粒同士の 結合界面には結晶粒界が形成される 『結晶粒界』は異なった方位を有する結晶の結合部分(非整合部)であるため、 非整合界面に起因する格子欠陥や格子ひずみなどが発生し、かつ不純物が 偏析する 『多結晶体の一般的組織構造』 :① 気孔(pore)が存在する(粒界、粒内) ② 不純物を構成主元素とした ガラス相の形成(:焼結部分液相化) ③ 冷却時に形成された微小亀裂 (・・・凝固収縮に伴う結晶粒の 異方性により生じる微小割れ) 『多結晶体中の構造欠陥』 ( ⇒ 結晶粒界,気孔,微小亀裂,ガラス相) ↓ 図: 多結晶体の微細構造 構造特性(特に,強度特性)を劣化せる (セラミックス多結晶体の ため、高強度セラミックス材料では気孔 微細構造 を減少させ、結晶粒を微細化させる ・・・『クラシックセラミックス』) 『単結晶体の代表材料』 半導体Si:【図1 参照】 Si・・・精製による高純度化→電気抵抗の増加 99.999%:100kΩ(絶縁体) 半導体Si : 0.01% ( 1万分の1,100ppm ) の不純物ドープにより, 電気抵抗が1Ω以下(10万分の1以下に低下) ・・・不純物ドープ:p型:3価元素添加(Bなど)電子が1個 不足 n型:5価元素添加(Pなど)電子が1個 過剰 (a) アクセプタ(B 3+)とホール(:p型半導体) (b) ドナー(P 5+)と電子(:n型半導体) 図1 不純物半導体のホールと電子 単結晶Si の作製 ( m.p. = 1412℃ ) 通常冷却・・・融点以上からの徐冷→多結晶Si 単結晶Si・・・単結晶を溶融部に接触させ,融体から徐々に引下げる 【CZ法】 ( ⇒ 工業的には直径300mmの単結晶が生産可能) 多結晶体・・・ 結晶粒(grain):粒内の原子配列は一定(整合) 結晶粒界(grain boundary):原子の配列が不整合(エネルギーの高い状態) 粒界・・・電子の運動を妨害する(電子の移動,mobility を低下させる) 半導体・・・ドープした微量元素が粒界に集中し,粒内での効果が発生しないため単結晶化する ※ 単結晶製造法 [CZ法:チョクラルスキ-(Czochralski)法]注) 単結晶の種子結晶を高周波溶解や抵抗加熱法によって加熱・溶融し、 下部に設置されたSi溶融体と接触し、上部に引上げ種子結晶と同じ方位 を有する単結晶を成長(結晶成長)させる ・・・ 『半導体Si製造用装置(~10インチ・ウエハ-作製用 ← 大口径化)』 固体Si(微小単結晶) - 融液Siの接触界面における『結晶成長(Crystal Growth)』 図 MCZ法 * で作製した大口径(直径:300mm)単結晶Si * MCZ(Magnetic field applied CZ)法 :Si融液中の対流を抑制・制御し、融液に磁場を印加させ、 大口径Siを作製する新プロセス技術(信越半導体(株)より) 図 単結晶製造装置(チョクラルスキ-法) 注)1916年にポーランドのチョクラルスキー が発明した金属の単結晶化技術 CZ法による単結晶Siの製造法 MCZ (Magnetic field applied CZ)法 :Si中融液中の対流制御を目的に 融液Siに磁場を印加する手法 CZ法を用いた単結晶Siの引き上げ機構 単結晶Si引き上げ用 石英ルツボ CZ法を用いた大口径単結晶Siの引き上げ 時の写真 CZ法を用いた大口径単結晶Si (現在は、直径300mmまでの 単結晶Si製造が可能) Siウエハー 大口径単結晶SiとSiウエハー 日本は世界第1位の大口径単結晶Siの生産量を有している 現在は、99.999999999%(11N)の超高純度と30cmの直径かつ長さ 約1mの大型単結晶Si製造に成功し、0.5~1mm程度に薄くスライスし、 IC,LSI等の高密度集積回路をSiウエハー上に作製する 図 Siウェーハサイズ(口径)の変遷 (・・・現在は直径300㎜,今後は450㎜) 200mmのSiウェーハと 300mmSiウェーハでは、 面積比が300/200=1.5 の2乗(=1.5 2)となり、 ICチップが2.25倍採取可能 Siウェーハの大手企業 ・・・世界全体に占める日系企業のシェア:60% ①信越半導体、②SUMCO(日,住友・三菱系) ③MEMC(米)、④Siltronic(独)、⑤コバレント マテリアル(日,旧 東芝系)、⑥LG Siltron(韓) 次世代3次元デバイス -球状半導体Si(ボール・セミコンダクター)- バルク状の球状単結晶Si表面に集積回路 を形成する次世代3次元電子デバイスへ 応用( ⇒ 集積密度の顕著な向上) 『半導体(semiconductor)』 の定義 電気を通す『良導体』や電気を通さない『絶縁体』 に対し、それらの中間的な性質を示す物質である 電気伝導性を周囲の電場や温度によって敏感に 変化させる性質は、近年における種々の電子機器に とって極めて重要であり、電子工学(エレクトロニクス) で使用される集積回路(IC,LSI,VLSI等)の半導体 デバイス素子は、この半導体の性質を利用している ※ 「半導体:semiconductor」 ・・・“semi-” =「半分」 と “conductor” =「導体」 から生まれた単語である p型半導体(positive semiconductor) ・・・4価のSi結晶中に3価のBをドープした時の模式図 (正孔(ホール)の移動によって電荷が運ばれる半導体で、正孔は、 電荷を有する荷電粒子(キャリア)として半導体特性を示す) n型半導体(negative semiconductor) ・・・4価のSi結晶中に5価のPをドープした時の模式図 (5つの赤い丸がPが有する価電子であり、1つだけ余った e- の 電子が電荷の運び手となってSi結晶中を動き半導体特性を示す) 図 金属(a)、半導体(b)、絶縁体(c)におけるバンドギャップ (禁制帯幅)Eg の模式図 ある種の半導体では比較的容易に電子が伝導帯へと 遷移することで電気伝導性を持つ伝導電子が生じる 金属ではエネルギーバンド内に空準位があり、価電子 がすぐ上の空き準位に移って伝導電子となるため、常に 電気伝導性を示す 『半導体材料』 の種類 1.IV族半導体(単体結晶):Si,Ge など 2.化合物半導体 2.1. Ⅱ-Ⅵ族半導体:ZnSe,CdS,ZnO など 2.2 Ⅲ-Ⅴ族半導体:InSb,GaSb,GaAs,InP,GaN など 2.3 Ⅳ族化合物半導体:SiC,SiGe など 2.4 Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ族半導体 :CuInSe2などのカルコパイライト系半導体 3.有機半導体 『応用例』 ・・・① 各種半導体素子(トランジスタ、ダイオード、LED等) ② 太陽電池( ⇒ p型半導体とn型半導体をp-n接合) 注)『p-n接合(pn-junction)』 :半導体素子中で、p型とn型半導体が接している部分,p-n接合部 で電子やホール(正孔)が不足するため僅かな電流が流れ(=整流 作用)、ダイオード,トランジスタ等の各種デバイス素子に応用される 注)『p-n接合(pn-junction) :p型とn型半導体の接触部分』 :p-n接合部では、電子やホール(正孔)が不足するため、 空乏層が生成し、電子と正孔が互いに拡散し、僅かな電流 が流れ(整流作用,発光現象,光起電力効果などが発生)、 ダイオード,トランジスタ等,各種デバイス素子に応用される 図 半導体のp-n接合部の構造(模式図) (1)p型とn型半導体接合部で電子と正孔が拡散し電流が流れる様子 (2)接合部分に電子と正孔が少ない空乏層が形成され、電子と正孔 をn型およびp型領域 に引き戻そうと する内蔵電場 が生じ、これに よってキャリア (電子と正孔) が動き電流が 流れる (ドリフト電流) 太陽電池用Si(ソーラーパネル) 太陽電池(Solar cell)は、光エネルギー(太陽光)を利用し、 直接電力に変換する自然エネルギーを利用した電力機器 近年の技術革新によって、1W当たり約100円の薄膜型の 安価な製品も実用化され、2010年度から本格的に世界中で 価格競争と新プロセス技術開発が進められている 図 太陽電池用Siソーラーパネルと構造 『III-V族化合物半導体』 とは何か :III-V族半導体は、III族元素とV族元素を用いた半導体 である。 2種類以上の元素を組み合わせた半導体を 化合物半導体と呼び、Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体 とも呼ばれる 代表的なIII族(13族)元素としてはAl,Ga,Inが用いられ、 V族(15族)元素としてはN,P,As,Sbが使用される この他、B,タリウム(Tl),BiもそのIII-V族化合物半導体を 構成する元素である。 また、V族元素として窒素を用いた GaN,AlN,InN 等を、特に, 『窒化物半導体』 と呼ぶ 半導体Siと比較して、III-V族化合物半導体はその多くが 直接遷移型の半導体であるため、発光ダイオード(LED)や、 レーザーダイオード(LD)をはじめとする発光素子に用いら れる。またSiとはバンドギャップエネルギーが異なっている ため,フォトダイオードといった受光素子(InGaAs)にも用 いられる 各種半導体レーザー材料 (LED:Emitting Diode,発光ダイオード) レーザーポインター 青色LED 窒化物Ⅲ-Ⅴ族セラミックス化合物半導体LED薄膜の構造 発光ダイオードLEDの応用例 LED電球 iPhoneのバックライト 自動用ヘッドライト (2007年5月,トヨタ・ハイブリットカーレクサスLS600hに初めて使用) 白色LED:青色LEDと黄色発光体を使ったものが最も普及 ⇒ 青色LEDの発明によりLED照明は実用化 白色LED照明の世界市場 白色LED:1 - 2W, 白色電球:60W 2万~6万時間, 1000時間 白熱灯に比べて約87%、蛍光灯に比べて約30%消費電力 が削減可(・・・『省エネルギー型次世代照明』) 物質創製科学 現状の材料のプロセスと既存核生成機構 ○ 材料(物質)の製造(現状の材料プロセス) (ex. 金属合金,半導体,無機,有機(含 医薬品)材料) 結晶成長(Crystal Growth) 気相プロセス(ex. 半導体,薄膜材料など) 液相プロセス(ex. 単結晶材料のMelt Growth) 固相プロセス(ex. メカニカルアロイング,粉末焼結) 核生成(Nucleation) :全ての材料の結晶成長の前駆段階としての 統一的現象および理論 (※ 固相法の場合は,界面 growth が支配) 『既存・核生成理論(・・・核生成機構)』 1. 均一核生成(Homogeneous Necleation) ・・・理想状態下で生じる本来の核生成現象 2. 不均一核生成(Heterogeneous Necleation) ・・・通常の材料製造・作製時における核生成現象 (ex. 基板上への薄膜作製,液相からの結晶作製(←溶融・凝固) ※ 核生成理論の推移 1926年:Volmer, Weber (Z. Phys. Chem, 119 (1926) 277. 1950年:D. Turnbull (J. Chem. Phys., 18 (1950)198. 既存核生成理論 核生成に対 表面自由エ する駆動力 ネルギー項 体積自由エ ネルギー項 均一核生成 ・・・ 不均一核生成・・・ ΔG(T, r) r σLS ΔGv θ : 核生成に伴う系の自由エネルギー変化 : 核の半径 : 固-液間における界面エネルギー : 温度 T における単位面積当たりの固液間における 自由エネルギーの差 : 異種固相上に形成された凝固相(結晶化する液相) のなす角・・・異種固相(不均一核生成サイト)と液相 (核生成する凝固相)との接触角(濡れ角) θ: 異種固相上に形成された凝固相(結晶化する液相)のなす角 ・・・異種固相(不均一核生成サイト)と液相(核生成する凝固相) との接触角(濡れ角) 異種固相に対してθ≒ 180°ならば,均一核生成として扱える. 既存「核生成理論」(Nucleation Theory) 均一核生成,不均一核生成 ともに; 安定(平衡)結晶の成長のみを仮定した統一的理論 21世紀の材料科学(物質科学:Materials Science) における新たな展開 1. 従来の安定平衡物質(製造,材料物性)の延長でよいか? 2. 既存概念にない新たな構造と物性を発現する ⇒ 『新物質創製(≡非平衡相,非平衡物質)の探索』 (・・・宇宙環境を利用した材料科学実験の目的) 既存核生成理論に変わる 新たな『非平衡相の核生成理論』構築の必要性 日本政府における科学技術の重点4分野 (2002年度に制定・発表,現在も継続中) 1. ライフサイエンス(生命科学) 2. IT(Information Technology:情報・通信技術)※ 3. 環境 4. ナノテクノロジー・材料 (1)次世代情報通信システム用 ナノデバイス・材料 (2)基礎技術:ナノレベルでの計測・評価・加工など (3)革新的な物性・機能を有する物質(材料)開発 ※ 日本政府のナノテクノロジー分野に対する研究費 :558億円(2001年度 当初予算総額) ※ IT(Information Technology):『情報・通信技術』 ↓ ICT(Information and Communication Technology) :『情報・通信技術』 ← 情報・通信技術の総称 ・・・ コンピュータ・ネットワーク通信技術等 全般
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