省エネ・節電の取組・事例紹介 (空調熱源設備の改善)

省エネ・節電の取組・事例紹介
(空調熱源設備の改善)
ソニーセミコンダクタ(株)鹿児島テクノロジーセンター
鹿児島生産部門 鹿児島ファシリティ部
四位 賢一郎
目次
1.会社及び事業所の紹介
2.半導体製造工場の特徴について
3.過去の省エネ事例について
4.現在の省エネ事例の紹介
5.今後に向けて
目次
1.会社及び事業所の紹介
2.半導体製造工場の特徴について
3.過去の省エネ事例について
4.現在の省エネ事例の紹介
5.今後に向けて
ソニーセミコンダクタ株式会社の紹介
鹿児島テクノロジーセンターの紹介
所 在 地 鹿児島県 霧島市
設
立 1973年
従業員数
約 1,600名(派遣社員を含
む)
CCDイメージセンサー
生産品目 アナログLSI
MEMS受託
CCDイメージセンサー
アナログLSI
MEMS受託
生産品目
搭載商品
の事例
監視用カメラ
交通監視用カメラ
業務用プリンター 等
スマートフォン
テレビ
ブルーレイレコーダー
ゲーム機 等
ファウンドリーサービス:
開発受託,原理試作から量産受託
鹿児島テクノロジーセンターの特徴
段階的に工場を増設してきており、新旧各設備が混在している状態で
エネルギー使用の見える化や、全体最適化に対しては課題が多い。
エネルギー棟
エネル
ギー棟
生産棟
生産棟
生産棟
エネル
ギー棟
生産棟
エネル
ギー棟
生産棟
生産棟
事務棟
事務棟
・エネルギー棟が複数
・生産棟が複数
・供給系統が複数
目次
1.会社及び事業所の紹介
2.半導体製造工場の特徴について
3.過去の省エネ事例について
4.現在の省エネ事例の紹介
5.今後に向けて
半導体製造工場の概要(鹿児島TECの例)
製品製造のため、クリーンルーム、特殊ガス、薬液、純水等が必要で、
特にクリーンルームを維持するための空調エネルギーの消費が大きい。
大気
燃料
電力
熱源
大気
空調
排気
変電
生産棟
各機器へ
エネルギー
圧縮
空気
特ガス
化学物質
地下水
廃水
処理
クリーンルーム
排水
中継
薬液
純水
工場敷地
水再利用
排水
回収
河川
クリーンルームの維持に必要な空調エネルギー
・各空調機器の運転
・クリーンルーム熱負荷冷却
・年間を通して外気を一定処理
外気処理空調機
各所で多くの
空調エネルギーが使われている
循環空調機・FFU等
電力
一定
処理
外気
クリーンルーム
温熱源
燃料
冷水
冷熱源
電力
排気
排気ファン
電力
冷水
外気の比エンタルピー
蒸気
電力
外気処理のイメージ
冷却、除湿
外気
一定処理
加熱、加湿
4月、 5月、 6月、 7月、 8月、 9月、11月、12月、 1月、 2月、 3月
鹿児島TECのエネルギー消費について
・工場全体のエネルギー消費のうち、約46%が空調熱源用
・空調熱源設備を中心に、省エネを継続し使用量を削減してきている。
・冷熱源電力
・温熱源燃料
・外気処理空調機電力
・循環空調機電力
・FFU電力
・排気ファン電力
エネルギー消費の割合
空調熱源を中心に
省エネを継続し削減
(事例紹介)
目次
1.会社及び事業所の紹介
2.半導体製造工場の特徴について
3.過去の省エネ事例について
4.現在の省エネ事例の紹介
5.今後に向けて
鹿児島TECの過去の省エネ事例
2003年度に空調熱源廻りの大規模省エネ施策を実行し、
原油換算量10,000KL/年のエネルギー削減を達成した。
●空調熱源の高効率化を工場の大部分で同時に実施
※高効率機器への更新
インバータ ターボ冷凍機
※その他
・冷熱源制御の統合化
・各種ポンプ インバータ化
・冷水温度の2系統化
・排熱回収の採用
・自然冷却の採用
※徹底した配管抵抗削減
ロングエルボ
Y管
以降、大規模な投資を伴う省エネは実施していないが、
現在は様々な工夫による省エネを実行している。
目次
1.会社及び事業所の紹介
2.半導体製造工場の特徴について
3.過去の省エネ事例について
4.現在の省エネ事例の紹介
5.今後に向けて
現在の省エネ活動の紹介
ここ数年は”埋蔵金発掘活動”と呼ぶ、コスト改善と環境負荷低減が
一体となった活動も全部署で行い、省エネの一環として取り入れている。
●ソニーセミコンダクタ 環境理念と方針
ソニーセミコンダクタ株式会社の環境方針にも記載されている内容
4. コスト改善活動と一体となった環境負荷低減活動を実施し、
『”MAIZOUKIN” MAKES BLACK & GREEN』 を実現します。
●埋蔵金発掘活動
価値の有無を、明確に見える化し、徹底的に
無駄を排除することで、利益を掘り起こす活動。
(ソニーセミコンダクタを中心にソニー圏で活動中)
見える化
埋蔵金
省エネ取組の事例紹介
“埋蔵金発掘活動”なども取り入れ実施した、空調改善事例を3件紹介
一定
処理
外気
外気処理
・温湿度 維持
・清浄度 維持
③改善
温熱源
燃料
クリーンルーム
冷熱源
電力
排気
②改善
更なる改善
①冷熱源効率の全体最適化
②排気量削減による外気削減
③外気処理の制御適正化
①改善
過去に大規模省エネ施策した範囲
(ある意味やりきった感があった)
※先進的というより、当たり前ではあるが、
稼働中のクリーンルームの温湿度や
清浄度に影響を与えずに改善しなければ
ならない点は高いハードルであった。
①冷熱源効率の全体最適化
外気
外気処理
温熱源
燃料
一定
処理
・温湿度 維持
・清浄度 維持
冷熱源
電力
クリーンルーム
①改善
排気
鹿児島TECの冷熱源は過去の大規模省エネで、約2倍の
高効率化を達成しており、改善の余地はあまりないと考えられていた。
エネルギー棟B 高効率化済
エネルギー棟A 高効率化済
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
※凡例
冷却塔×38台
外気冷却熱交×6台
冷却水ポンプ×35台
冷水冷却熱交×6台
ターボ冷凍機×15台
蓄熱槽×1槽
1次冷水ポンプ×16台
2次冷水ポンプ×16台
埋蔵金発掘活動で
更なる改善を検討し実行
※まず制御に注目した。
エネルギー棟B
冷却塔群
冷却水ポンプ群
冷凍機群+
1次ポンプ群
空調用
低温冷水
冷却塔群
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
2次ポンプ群
各ポンプ群
冷凍機群
冷熱源設備は負荷量に合わせて、
各設備群ごとに、機器の台数制御、
周波数制御を自動で行っている。
現状確認
各設備群毎に部分最適とし、
その結果で全体最適を狙っている。
疑問点
部分最適=全体最適といえるのか。
更に効率が上がる状態がないかの
目線で、調査を実施した。
各設定値を変化させて状態を確認した。
※冷却塔温度の例
現状より冷却水温度を下げる設定へ調整すれば、
ファン電力は増加するが、冷凍機効率向上の影響で、
削減効果があるのでは? ⇒ 設定変更の効果見られず・・
【実際に確認】
冷却水温度低下
ファン電力が増加
冷凍機電力が減少
全体電力は相殺
変化無し
※冷凍機温度の例
・冷凍機の冷水温度を上げれば? → 空調温湿度規格により困難
・逆に冷凍機の冷水温度を下げれば、冷凍機効率が悪化するが、
負荷流量が減少し、搬送動力の減少で、削減効果があるのでは?
⇒ 全体電力の増加が見られた・・・
(冷凍機悪化の影響大)
調査のなかで、冷凍機の台数制御で気づき
エネルギー棟B
冬場にかけて負荷が低下しても、
中温系冷凍機が2台運転している
時期が多い。
低負荷でも
冷凍機2台運転
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
なぜか?
インバータ冷凍機は冬場の部分負荷
効率が高いため、1台運転可能でも
冷凍機の効率を優先し50%負荷の
2台運転となる設定。
疑問点
冷凍機が高効率であれば、
全体効率も最適なのか?
インバータ ターボ冷凍機
(冷却水温度が低いと部分負荷効率が高い)
⇒実際に運転を変化させてみた。
中温系冷凍機を減台させて全体効率を確認
エネルギー棟B
エネルギー棟B
冷却水ポンプ2台
停止の効果大
中温冷凍機
1台停止
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
システムCOP
◎冷熱減全体効率の変化
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
・状況によっては冷熱源の全体効率が
約30%改善できる状態が確認された。
・冷凍機の効率変化の影響より、
冷却水ポンプ停止の電力削減効果が
大きい結果となった。
・削減効果が確認できたため、
冷凍機台数制御設定の見直を実行。
※次に機器の構成に注目した。
エネルギー棟A
②系統、エネ棟の構成からエネルギー棟B
冬場でも冷凍機の
最低稼働台数が5台
①1981年製の効率の悪い
冷凍機が単独系統で存在
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
問題① 1981年製の効率の悪い冷凍機が単独系統で存在している。
⇒ 当初の計画が変更され空調負荷が延命されたため熱源も撤去できず。
問題② 冬場でも冷凍機の最低稼働台数が5台と多い。
⇒ 低温/中温の2系統送水、エネ棟2ヵ所、上記①の制約から5台となる。
機器構成の改善を検討した。
検討結果:負荷量から低温系冷水の統合が可能と判断。
エネルギー棟B
エネルギー棟A
低温系が統合可能
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
年末年始に工場の一斉メンテを実施するため、
この期間を利用して冷熱源の統合を実行した。
3ヵ所の低温系冷水配管を1系統に統合した。
エネルギー棟A
最低稼働台数が3台
合わせて効率向上
廃止
エネルギー棟B
廃止
休止
接続
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
接続 冷却水
空調用
低温冷水
空調用
中温冷水
生産装置用
冷却水
※統合の手順
・効率の悪い冷凍機を切り離し、高効率熱源側へ接続
・エネルギー棟A、B間の低温系を接続
・不要となった冷凍機2台を廃止、1台を休止
・低温系冷凍機が1台で運用可能となり、
最低稼働台数も5台から3台へ減少し、熱源全体の効率が向上した。
冷熱源効率の全体最適化のまとめ
【改善前】
・設備群毎の効率を最高とする設定で運用
・各エネルギー棟単位で運用
【改善後】
・熱源全体の効率が最高となる値に冷凍機台数制御を見直し
・低温系冷水を統合し、熱源全体効率を向上
【年間削減効果】
・冷熱源電力の約6%削減(制御変更1% 冷水統合5%)
・原油換算量420KLの削減
※改善のポイント
部分最適から全体最適への転換
◎冷凍機台数制御の見直し
・減台しやすく、増台しにくい閾値へ変更
・空調側の要因で冷凍機仕様の冷水温度差を確保できていない点から、冷水流量=運転負荷とする台数制御では、
本来の狙いの負荷量に上手く乗せられていなかった背景も、制御変更によって改善できた一因。
②排気量削減による外気削減
外気
外気処理
一定
処理
②改善
温熱源
冷熱源
燃料
電力
クリーンルーム
・温湿度 維持
・清浄度 維持
排気
クリーンルームに導入する外気は、クリーンルームを陽圧に維持するのに
必要な加圧分と、生産装置で排気される量の補充分に分けられる。
生産棟とクリーンルームの概要立面図
クリーンルーム
加圧 3F
生産装置
外気
外気処理
空調機
蒸気
クリーンルーム
生産装置
冷熱源
電力
排気ファン
排気
加圧 2F
生産装置
クリーンルーム
冷水
温熱源
燃料
一定
処理
排気
排気ファン
排気
加圧 1F
排気ファン
外気処理でエネルギー消費しているので、
加圧と排気量を削減できれば省エネが可能。
⇒削減を実行した。
まずは、排気量の適正化を実行した。
生産装置排気の仕様と現状値との差を調査し、適正量に調整
生産棟とクリーンルームの概要立面図
クリーンルーム
3F
生産装置
外気
外気処理
空調機
削減
一定
処理
排気
削減
排気ファン
排気
削減
クリーンルーム
2F
生産装置
クリーンルーム
生産装置
排気ファン
排気
削減
1F
排気ファン
生産装置の段階的増設や大幅な入替で、排気量過剰となっている箇所が
多く、調整ヵ所は数百台に及んだが、関係する全部署一体で実行し、削減
を達成した。
次に、加圧量の適正化を実行した。
清浄度高低エリアを全て整理し、最も低いエリアを必要最低限として調整
生産棟とクリーンルームの概要立面図
クリーンルーム
削減
外気
外気処理
空調機 削減
削減 削減
3F
生産装置
クリーンルーム
排気ファン
生産装置
排気
2F
生産装置
クリーンルーム
排気
排気ファン
排気
1F
排気ファン
生産やフロア構成の都合上、複数エリアに及ぶ室圧差確保の必要もあり、
調整困難な部分もあったが、この改善も関係する全部署一体で実行する
ことで、削減を達成した。
排気量削減による外気削減のまとめ
【改善前】
排気量と加圧量が過剰で、必要以上の外気を導入し、
余分なエネルギーを使用していた。
【改善後】
排気量と加圧量を適正化し、必要最小限の外気導入とすることで
余分なエネルギーを削減した。
【年間削減効果】
・冷熱源電力の約3%削減、温熱源燃料の約3%削減
・原油換算量400KLの削減
※改善のポイント
エネルギー削減の仕組みと効果を明確に伝え、理解してもらう。
(多くの協力が得られ、全部署一体での改善を実行が可能)
③外気処理の制御適正化
一定
処理
外気
外気処理
クリーンルーム
・温湿度 維持
・清浄度 維持
③改善
温熱源
冷熱源
燃料
電力
排気
外気処理空調機は年間を通して、外気露点を一定状態に処理する必要。
出来上がりは問題ないが、処理プロセスの監視が不十分であった。
外気処理空調機
H
外気
H
C
加熱
C
加湿
C
C
冷却
除湿
C
C
露点を
一定に処理して
クリーンルームへ
H
再熱 Fan
20年以上前の
古い空調機の例・・
C
再熱は
年間一定量
温熱源
燃料 (ボイラ等)
排熱
冷水(低温、中温)
冷熱源
電力 (冷凍機等)
外気の比エンタルピー
蒸気
外気処理のイメージ
冷却、除湿
外気
一定処理
加熱、加湿
4月、 5月、 6月、 7月、 8月、 9月、11月、12月、 1月、 2月、 3月
各プロセスごとに現状設定値と、あるべき姿とを比較し問題点を明確にした。
結果、過剰な加熱設定を調整し、加熱+冷却の無駄を削減できた。
H
加熱
C
C
現状(冬場)
外気
加熱
C
C
露点を
一定に処理して
クリーンルームへ
20年以上前の
古い空調機の例・・
CR
加湿
乾球温度
絶対湿度
あるべき姿(冬場)
冷却
除湿
再熱
H
冷却
再熱 Fan
除湿
加湿
C
C
再熱
CR
加湿
設定高過ぎ
外気 加熱
絶対湿度
外気
C
H
設定下げて
改善実行
乾球温度
空調機の多くは古い設備で、各プロセスの状態監視が困難であったが、
蒸気/冷水バルブの開度データが部分的に監視可能であったため、
この情報を利用することで、事前検討や効果確認が実施できた。
外気に対するバルブ開度
(改善後)
外気に対するバルブ開度
(改善前)
蒸気
加熱
排熱
加熱
蒸気
加熱
冷水
冷却
排熱
加熱
冷水
冷却
設定下げて
改善実行
(kJ/kg)
加熱弁+冷却弁の
重なり(無駄)あり!
(kJ/kg)
加熱弁+冷却弁の
重なり(無駄)なし!
外気処理の制御適正のまとめ
【改善前】
冬場の加熱温度設定が過剰で、加熱+冷却の無駄が生じていた。
【改善後】
各プロセスを確認し、加熱温度設定をあるべき姿に調整することで、
加熱+冷却の無駄を削減した。
【年間削減効果】
・冷熱源電力の約1%削減、温熱源燃料の約2%削減
・原油換算量160KLの削減
※改善のポイント
各プロセスの あるべき姿を描き、現状とのギャップを明確にする。
3つの改善事例で学んだこと(当たり前だが、難しく、大事な点)
① 常に全体最適を考える
⇒ 困難であるが、更なる省エネに繋がった
② 改善の仕組と効果を伝える
⇒ 理解されることで、多くの協力が得られた
③ あるべき姿を描く
⇒ 改善すべきギャップが明確になった
今後もこの点を忘れずに改善を実行していく
目次
1.会社及び事業所の紹介
2.半導体製造工場の特徴について
3.過去の省エネ事例について
4.現在の省エネ事例の紹介
5.今後に向けて
今後の更なる改善へ向けて
半導体工場の空調エネルギーは、クリーンルーム容積や温湿度規格が
支配的で基本的には固定で推移しやすく、省エネが進みにくい背景あり。
外気量の適正化で
固定を変動させた
空調エネルギーの
今までの考え方
機器効率改善で
固定を削減した
生産数量
固定
生産数量
エネルギー
固定
エネルギー
エネルギー
変動化
変動
固定
削減
生産数量
“固定の変動化”と”固定の削減”を一過性のものに終わらせないために、
変動分を確実に変動させる指標の明確化や更なる固定削減を検討し、
エネルギー消費原単位の年平均1%以上の低減や、電力ピークカット
などの必要性に確実に対応していく。
ご清聴ありがとうございました。
ソニーセミコンダクタ株式会社
鹿児島テクノロジーセンター
鹿児島ファシリティ部