Kan 拡張 alg-d http://alg-d.com/math/ 2014 年 5 月 25 日 目次 1 Kan 拡張とは 1 2 各点 Kan 拡張 3 3 米田埋込と Kan 拡張 12 4 普遍随伴 19 5 Adjoint Functor Theorem 26 1 Kan 拡張とは 定義. C, D, U を圏,F : C −→ D,E : C −→ U を関手とする.F に沿った E の左 Kan 拡張とは組 ⟨F † E, η⟩ であって,以下の条件を満たすものである. (1) F † E は関手 D −→ U ,η は自然変換 E =⇒ F † E ◦ F である. DO LLL L KS LLFLL† E LLL F η L& /U C E (2) 他に関手 S : D −→ U と自然変換 θ : E =⇒ S ◦ F が存在したとき,自然変換 1 τ : F † E =⇒ S が一意に存在して θ = τF ◦ η となる. EE DO E τ E>F EE EE ES KS EEE EEE EE ECK EE F E" † η F E EEE EθE "/ C U E 同様にして,F に沿った E の右 Kan 拡張 ⟨F ‡ E, η⟩ が自然変換の向きを逆にして得ら れる. EE DO E τ EEE EE~ EE EEESE EE E EEE f η F ‡ E EEEθ E" EE" /U C E 左 Kan 拡張 F † E を LanF E ,右 Kan 拡張 F ‡ E を RanF E と書くこともある.以下,左 Kan 拡張を単に Kan 拡張と書く. 関手 F : C −→ D に対して,関手 F −1 : U D −→ U C が F −1 (S) := S ◦ F により 定まるのであった.このとき,Kan 拡張 ⟨F † E, η⟩ とは E ∈ U C から F −1 への普遍射 η : E −→ F −1 (F † E) = F † E ◦ F である. / F †E ◦ F EH HH HH HH τF θ HH # S◦F η f †E S τ 故に,普遍射の性質から次が分かる. 命題 1. F : C −→ D ,E : C −→ U に対して関手 HomU C (E, F −1 (−)) : U D −→ Set が 得られる.このとき Hom(E, F −1 (−)) が表現可能関手 ⇐⇒ F † E が存在する が成り立つ.またこの同値な条件を満たすとき,Hom(E, F −1 (−)) ∼ = Hom(F † E, −) で ある. 命題 2. 各 E ∈ U C に対して F に沿った Kan 拡張 F † E ∈ U D が存在するとする.こ のとき F † : U C −→ U D は関手 F −1 : U D −→ U C の左随伴関手である.同様にして 2 右 Kan 拡張 F ‡ : U C −→ U D は F −1 の右随伴関手である.即ち F † ⊣ F −1 ⊣ F ‡ とな る. 例. 関手 E : J −→ U に対して余極限 colim E とは E から対角関手 ∆ : U −→ U J への 普遍射 E −→ ∆(colim E) であった.一方,1 = {∗} を一点圏として F : J −→ 1 を唯一 の関手とすれば F −1 : U 1 ∼ = U −→ U J は ∆ と一致する.よって F に沿った E の Kan 拡張は普遍射 E −→ ∆(F † E) であり,普遍射の一意性から F † E ∼ = colim E が分かる. 1O EE E † KS EFEEE=colim E F EE " /U J E 即ち,余極限は Kan 拡張である.同様にして,極限は右 Kan 拡張であることも分か る. 2 各点 Kan 拡張 余極限が Kan 拡張であることを使って,各点 Kan 拡張という方法を使って Kan 拡張 を計算することができる. C, D, U を圏,f : C −→ D, E : C −→ U を関手とする.簡単のため,U は任意の余極 限を持つとする. DO F C /U E Kan 拡張 F † E を定義するため,まず d ∈ D に対して F † E(d) を定める.d : 1 −→ D を d(∗) = d なる関手としてコンマ圏 F ↓ d を考えれば次の図式を得る. 1O π F↓d d [c ??? ? /D O F /C E /U E E U は任意の余極限を持つから,Kan 拡張 π † (F ↓ d → C − → U ) = colim(F ↓ d → C − → U) E は存在する.これを使って F † E(d) := colim(F ↓ d → C − → U ) と定める. 3 次に射 h : d −→ d′ に対して F † E(h) を定める.h : d −→ d′ は自然変換 d′ ⇑ 1 d / /D と同一視できることに注意する.コンマ圏 F ↓ d,F ↓ d′ を考える. 1O π d [c ??? ???? ? θ F↓d /D O d′ 1O π F [c ??? ???? ′ ? θ ′ /C /D O F /C F↓d 左の図式と h を組み合わせて,次の右の図式が得られる. 1O π d′ h⇑ [c ???d ???? ? θ F↓d / / DO 1O = F /C d′ /D O [c ??h?π ◦θ ???? F ? /C F↓d π コンマ圏 F ↓ d′ の普遍性により射 F ↓ d −→ F ↓ d′ が得られる. d′ B 1O θ /D [c ??? O ? F ′ /C ; ′ F? ↓ d E /U F↓d 故に,余極限の普遍性により射 colim(F ↓ d → C → U ) −→ colim(F ↓ d′ → C → U ) が得られる.F † E(d) = colim(F ↓ d → C → U ) だったから,射 F † E(h) : F † E(d) −→ F † E(d′ ) が定義される.以上により,関手 F † E : D −→ U が定まるが,これが F に沿っ た E の左 Kan 拡張となることが分かる.(読者の演習問題とする.) E 以上の議論から分かるように,任意の d ∈ D に対して余極限 colim(f ↓ d → C − → U) が存在すれば Kan 拡張 f † E が存在することが分かる.故に次の定理が得られた. 4 定理 3. C, D, U を圏,F : C −→ D ,E : C −→ U を関手とする.各 d ∈ D に対して余 E 極限 colim(F ↓ d → C − → U ) が存在するならば,F に沿った E の左 Kan 拡張 F † E が E 存在し,F † E(d) = colim(F ↓ d → C − → U ) となる. C が小圏ならば F ↓ d も小圏となる.故に次の定理が得られる. 定理 4. C, D, U を圏,F : C −→ D,E : C −→ U を関手とする.U が余完備で,C が 小圏ならば F に沿った E の Kan 拡張 F † E が存在する. ※ 同様にして,F に沿った E の右 Kan 拡張が,各点右 Kan 拡張 /D O ?? ??F ‡ E ???? ?? F # ? / d↓ F C E /U d 1O により F ‡ E = lim(d↓ F → C → U ) として得られる. 例. X, Y を集合,f : X −→ Y を写像とする.集合を離散圏とみなせば f : X −→ Y は 関手である.また (順序集合を圏とみなして)f −1 : P(Y ) −→ P(X) も関手である. 圏 2 := {0 → 1} を考えれば P(X) ∼ = 2X であり,このとき関手 f −1 は 2Y ∋ A 7−→ A ◦ f ∈ 2X である. YO DD DD DDA DD f DD D" /2 X −1 f (A) 故に関手 f −1 : P(Y ) −→ P(X) の左随伴関手が Kan 拡張 f † である.これを各点 Kan 拡張で計算してみる. A : X −→ 2 に対して f † A を求める.y ∈ Y を取りコンマ圏 f ↓ y を考える.コンマ圏 の定義から f ↓ y = {x ∈ X | f (x) = y} = f −1 (y) である. 1O f↓y y [c ??? ? /Y O f /X 5 A /2 故に f † A(y) = colim(f ↓ y → X − → 2) = A ⨿ A(x) x∈f −1 (y) となるから { † f A(y) = 1 0 (ある x ∈ f −1 (y) が存在して A(x) = 1) (そうでないとき) である.即ち A ∈ P(X) に対して f † A = f (A) ∈ P(Y ) となる.従って f −1 : P(Y ) −→ P(X) の左随伴関手は f : P(X) ∋ A 7−→ f (A) ∈ P(Y ) である. 更にこの場合,f −1 の右随伴関手 (= 右 Kan 拡張) も存在する.それには各点右 Kan 拡張を同様に計算すればよい.すると 1O /Y O y ???? # f /X y↓ f A /2 f ‡ A(y) = lim(y ↓ f → X − → 2) = A ∏ A(x) x∈f −1 (y) となるから ‡ f A(y) = { 0 1 (ある x ∈ f −1 (y) が存在して A(x) = 0) (そうでないとき) であり,f ‡ A = Y \ f (X \ A) =: f! (A) となることが分かる. 以上により,f −1 : P(Y ) −→ P(X) は左随伴,右随伴両方を持つ. f P(X) o ⊥ f −1 ⊥ f! / P(Y ) / 従って f −1 は余極限,極限両方と交換する.特に以下が成り立つ. f −1 (A ∪ B) = f −1 (A) ∪ f −1 (B), f −1 (A ∩ B) = f −1 (A) ∩ f −1 (B) 一方 f は左随伴を持たない.実際,f と極限は交換しないのである.例えば f (A ∩ B) = f (A) ∩ f (B) は成立しない. 6 例. X を位相空間,O(X) を X の開集合全体がなす圏とする.X 上の (集合の) 前層と は関手 P : O(X)op −→ Set のことであった.よって SetO(X) op が X 上の前層の圏で ある. X, Y を位相空間,f : X −→ Y を連続写像とする.このとき,X 上の前層 P に対し て Y 上の前層 f∗ P が f∗ P (U ) := P (f −1 (U )) により定まり,関手 f∗ : SetO(X) op Set O(Y )op −→ を順像というのであった.また関手 f∗ は左随伴関手 f ∗ を持ち,これを逆像と いうのであった. さて,F を関手 O(Y )op ∋ U 7−→ f −1 (U ) ∈ O(X)op とすれば,定義から f∗ = F −1 : SetO(X) op −→ SetO(Y ) op である. O(X)opI O II II P II II F II $ op / O(Y ) Set f (P ) ∗ 故に f ∗ = F † である.そこで前層 P ∈ SetO(Y ) op の逆像 f ∗ (P ) を各点 Kan 拡張で計算 してみる. U ∈ O(X) を取りコンマ圏 F ↓ U を考える. U 1O F↓U / O(X)op O [c ??? ? F / O(Y )op P / Set P F † P (U ) = colim(F ↓ U → O(Y )op − → Set) = colim P (V ) となる.コンマ圏の定義 ⟨V,h⟩ から ⟨V, h⟩ ∈ F ↓ U ⇐⇒ h : F (V ) −→ U in O(X)op ⇐⇒ F (V ) ⊃ U ⇐⇒ f −1 (V ) ⊃ U ⇐⇒ V ⊃ f (U ) となるので F † P (U ) = colim P (V ) となり,普段見る逆像の定義が現れる. V ⊃f (U ) 例. 各点 Kan 拡張で書けない Kan 拡張は存在する.C := 1 = {∗},D := 2 = {0 → 1}, 7 U = {a, b} とする.F : 1 −→ 2 を F (∗) := 1,E : 1 −→ U を E(∗) := a で定める. 2O 1 1 a / {a, b} 関手 2 −→ U は ∆a と ∆b の二つしかない.また自然変換 a =⇒ ∆b は存在せず, a =⇒ ∆a は唯一つ存在する.よって 1† a = ∆a である.一方,0 ∈ 2 に対して各点 Kan 拡張を考えると 1O 0 [c ??? ? /2 O 1 /1 1↓ 0 a / {a, b} a 1↓ 0 = 0 だから,colim(1↓ 0 → 1 − → U ) は始対象となるが,{a, b} は明らかに始対象を 持たない. 定義. 関手 K : U −→ V が Kan 拡張 ⟨F † E, η⟩ と交換する ⇐⇒ K を合成して得られる次の図式も Kan 拡張となる. DO RRRRR † RR RRR E) KS RK◦(F R F RRR Kη RRR ) / /V C U E K 定理 5. Kan 拡張 F † E が各点 Kan 拡張で書けているとする.関手 K : U −→ V は余極 限と交換するとする.このとき K は Kan 拡張 F † E と交換する. 証明. 各点 Kan 拡張により K ◦ F † E(d) = K(colim(E ◦ π)) = colim(K ◦ E ◦ π) = F † (K ◦ E). 1O F↓d d π / D RHRR O HHHRRRRF † (K◦E) HH RRRR HH F † HH RRRRRR F E # R) /C /U /V E K 各点 Kan 拡張により得られる自然変換を η : E =⇒ F † E ◦ F ,η ′ : KE =⇒ F † (KE) ◦ F とする.c ∈ C に対して ηc : Ec −→ F † E(F c) = colim(F ↓ F c → C − → U) E 8 は余極限の標準的射である. ηc′ : KEc −→ F † (KE)(F c) = colim(F ↓ F c → C − → U −→ V ) E K も余極限の標準的射である.K は余極限と交換するから E E K Kηc : KEc −→ K colim(F ↓ F c → C − → U ) = colim(F ↓ F c → C − → U −→ V ) も標準的射である.よって Kη = η ′ が分かる. 定理 6. 左随伴関手は Kan 拡張 F † E と交換する. 証明. L ⊣ R : U −→ V とする.L ⊣ R : U D −→ V D となるのであった.このとき S ∈ V D に対して自然に HomV C (LE, F −1 (S)) = HomV C (LE, SF ) ∼ = HomU C (E, RSF ) = HomU C (E, F −1 (RS)) ∼ = HomU D (F † E, RS) ∼ = HomV D (L ◦ F † E, S) となるから関手 Hom(LE, F −1 (−)) は表現可能関手であり,F † (LE) = L ◦ F † E となる. Kan 拡張 F † (LE) の自然変換 η ′ : LE =⇒ F † (LE) ◦ F は自然同型 Hom(LE, F −1 (L ◦ F † E)) ∼ = Hom(L ◦ F † E, L ◦ F † E) で id に対応する自然変換であった.一方,この同型 で id に対応するのは,随伴 L ⊣ R の unit を α とすれば ∈ Hom(L ◦ F † E, L ◦ F † E) id _ † αF † E ∈ Hom(F E, R ◦ L ◦ F † E) _ αF † E◦F ◦ RLη ∈ Hom(E, R ◦ L ◦ F † E ◦ F ) _ Lη ∈ Hom(LE, L ◦ F † E ◦ F ) DO HH H †E KS HHF HH F HH η H# /U C L E /V KS R α id となるから η ′ = Lη である. 9 /U : 定理 7. Kan 拡張 F † E が各点 Kan 拡張で書けていて,F が忠実充満とする.このとき η : E =⇒ F † E ◦ F は同型である. E 証明. 各点 Kan 拡張により F † E ◦ F (c) = F † E(F (c)) = colim(F ↓ (F c) → C − → U) で ある.コンマ圏 F ↓ (F c) の対象は g : F (c′ ) −→ F (c) であるが,今 F が忠実充満関手だ から g は c′ −→ c と対応する.よって F ↓ (F c) ∼ = idC ↓ c が分かる.コンマ圏 idC ↓ c は E 終対象 idc : c −→ c を持つから,colim(F ↓ (F c) → C − → U ) = E(c) となる.よって同 型E ∼ = F † E ◦ F が成り立つ. 逆に b に対して η : y =⇒ F † y ◦ F が同型ならば,F は忠実充満 定理 8. 米田埋込 y : C −→ C である. DO HH H † KS HHHFH y F HH η H# /C b C y 証明. F † y(d) ∼ = HomD (F −, d) だから,y(c) ∼ = F † y ◦ F (c) ∼ = HomD (F −, F c) である. 故に HomC (c, c) ∼ = HomD (F c, F c) 定理 9. F : C −→ D ,E : C −→ U で,Kan 拡張 ⟨F † E, η⟩ が存在すると仮定する. DO LLL L KS LLFLL† E LLL F η L& /U C E このとき G : D −→ B に対して Kan 拡張 ⟨(GF )† E, σ⟩ が存在する ⇐⇒ Kan 拡張 ⟨G† (F † E), τ ⟩ が存在する. BO 8 88 KS 88 G 8 τ 88 † † 88G (F E) 88 DO LLL KS LLLL 88 LLL 88 F η 8 † F E LL& / C U E BO 8 88 KS 888 G 88 88(GF )† E 88 DO σ 88 88 F 8 / C U E 更に,これらが存在するとき (GF )† E = G† (F † E),σ = τF ◦ η である. 10 証明. (=⇒) Kan 拡 張 ⟨(GF )† E, σ⟩ が 存 在 す る と す る .⟨F † E, η⟩ の 普 遍 性 に よ り τ : F † E =⇒ (GF )† E ◦ G が存在して,σ = τF ◦ η となる. BO ? ?? KS ?? G KS ??? ? (GF )† E τ ?? ?? DO PPP P P KS PPP ??? σ PPP ?? F η PPP ? † F E P( /U C E 任意の関手 S : B −→ U と θ : F † E =⇒ S ◦ G を取る. ? BO ? ?? ??ρ ?;C ? KS ?? ?? ? G KS ??? ??S ? ? τ ?? ?? ?θ? ;C ?? DO PPP ? P P KS PPP??? ??? σ PPP ?? F η PPP ? F †E P( /U C E (GF )† E の普遍性から,ρ : (GF )† E =⇒ S が一意に存在して ρGF ◦ σ = θF ◦ η となる. σ = τF ◦ η だったから ρGF ◦ τF ◦ η = θF ◦ η である.よって Kan 拡張 F † E の普遍性か ら ρG ◦ τ = θ となる.従って ⟨(GF )† E, τ ⟩ が G に沿った F † E の Kan 拡張である. (⇐=) Kan 拡 張 ⟨G† (F † E), τ ⟩ が 存 在 す る と す る .任 意 の 関 手 S : B −→ U と θ : F † E =⇒ S ◦ G を取る. ? BO ? ?? ??ρ ?;C ? KS ??? ??BJ ? G ? ?S τ µ ?? ?? ?? ?? ?? CK ?? DO PPP KS PPPP ?? ??? PPθP ?? ? F PP ? η PPP?( /U C E F † E の普遍性から µ : F † E =⇒ SG が一意に存在して µGF ◦ η = θ となる.よって G† (F † E) の普遍性から µ : G† (F † E) =⇒ S が一意に存在して ρG ◦ τ = µ となる.この とき µGF ◦ (τF ◦ η) = θ である.従って ⟨G† (F † E), τF ◦ η⟩ が GF に沿った E の Kan 拡 張である. 11 3 米田埋込と Kan 拡張 圏 C1 , C2 に対して圏 Span(C1 , C2 ) を次のように定める.まず対象を Ob(Span(C1 , C2 )) := {⟨C, f, g⟩ | C は圏, f : C → C1 , g : C → C2 } f C1 C? ??g ?? C2 として射 ⟨C, f, g⟩ −→ ⟨C ′ , f ′ , g ′ ⟩ は次の図式を可換にする関手 h : C −→ C ′ とする. C7 777 h 7 f 77g ′ p C NN 777 NNN 7 p xpppfp′ N& g′ C1 C2 補題 10. C1 , C2 , D, E を圏,fi : Ci −→ D,gi : Ci −→ E を関手とする. C1 ? ?? ?? f1 D C2 f2 C1 ? ?? ? g1 ? E C2 g2 このとき HomSpan(C1 ,C2 ) (f1 ↓ f2 , g1 ↓ g2 ) ∼ = Hom C op ×C (HomD (f1 (□), f2 (−)), HomE (g1 (□), g2 (−))). Set 1 2 証明. h ∈ Hom(f1 ↓ f2 , g1 ↓ g2 ) とすると,⟨c1 , c2 , k⟩ ∈ f1 ↓ f2 に対して h(⟨c1 , c2 , k⟩) = ⟨c1 , c2 , hc1 ,c2 (k)⟩ と書ける.そこで写像 φ : Hom(f1 ↓ f2 , g1 ↓ g2 ) −→ Hom(Hom(f1 (□), f2 (−)), Hom(g1 (□), g2 (−))) を h ∈ Hom(f1 ↓ f2 , g1 ↓ g2 ) に対して ∈ / HomE (g1 (c1 ), g2 (c2 )) ∈ φ(h)c1 ,c2 : HomD (f1 (c1 ), f2 (c2 )) k / hc1 ,c2 (k) により定める.φ が同型であることは容易にわかる. 12 b := SetC op と書く. small な圏 C に対して C 定理 11. C, D, U を圏,f : C −→ D, E : C −→ U として,Kan 拡張 f † E が存在する とする.d ∈ D, u ∈ U を取る.このとき HomU (f † E(d), u) ∼ = HomCb (HomD (f (−), d), HomU (E(−), u)). 証明. 補題により HomSpan(C,1) (f ↓ d, E ↓ u) ∼ = Hom(Hom(f (−), d), Hom(E(−), u)) で ある.故に HomU (f † E(d), u) ∼ = HomSpan(C,1) (f ↓ d, E ↓ u) を示せばよい.今,次の図 式が成り立っている. u ;1F xx KS FFFF KS x x d FF θ xx # f ↓ dF D x; KS η FF f xx FF F# xxx E C f †E " /U < ;1F xx KS FFFFu x x FF xx # E ↓ uF ;U FF xx x FF F# xxx E C θ ∈ Hom(f † E(d), u) が存在すれば,コンマ圏 E ↓ u の普遍性により射 f ↓ d −→ E ↓ u が 一意に存在する.これにより Hom(f † E(d), u) −→ Hom(f ↓ d, E ↓ u) が定まる. 逆に,g ∈ Hom(f ↓ d, E ↓ u) が与えられたとする.このとき自然変換 E ◦ π2 =⇒ u ◦ π1 = ∆u が存在する. / x; 1 FFFFu x FF ⟲ xxxx KS F# / E↓ u ;U FF xx F x F ⟲ x FF # xx E π2 /C π1 f↓d g よって余極限の性質から f † E(d) = colim(E ◦ π2 ) −→ u が一意に存在する. 系 12. f : C −→ D に対して f † y(d) ∼ = HomD (f (−), d). b に対して 証明. 任意の P ∈ C Hom(f † y(d), P ) ∼ = Hom(Hom(f (−), d), Hom(y(−), P )) ∼ = Hom(Hom(f (−), d), P ). 故に米田の補題により f † y(d) ∼ = Hom(f (−), d) である. 13 b を米田関手とするとき y † y ∼ 系 13. C を圏,y : C −→ C = id. b EE C O E † ∼ KS EyEEy = id y id EE" /C b C y b に対して前系により y † y(P ) ∼ 証明. 任意の P ∈ C = Hom(y(−), P ) ∼ = P. b は y(c) の余極限で書ける. 系 14. 任意の前層 P ∈ C 証明. 系 13 により y † y(P ) = P であるが,一方各点 Kan 拡張 /C b EE O EEy† y ∼ [c ??? EE = id y ? EE E" /C / b y↓ P C y 1O P b = により P = y † y(P ) = colim(y ↓ P → C − → C) y colim y(c) である. ⟨c,f ⟩∈y↓P b に対して 系 15. 前層 P ∈ C P が表現可能 ⇐⇒ コンマ圏 y ↓ P が終対象を持つ. 証明. (=⇒) P = y(c) とする.y ↓ P = y ↓ y(c) = {⟨d, f ⟩ | f : y(d) −→ y(c)} で,y は忠 実充満なので y ↓ P = idC ↓ c である.よって終対象 idc : c −→ c が存在する. (⇐=) コンマ圏 y ↓ P が終対象 ⟨c, f ⟩ を持つとすれば,系 14 により P = colim(y ↓ P → b = y(c) である. C → C) b は極限と交換する. 定理 16. 米田埋込 y : C −→ C 証明. 関手 T : I −→ C の極限 lim T が存在するとする.標準的な射を pi : T i −→ lim T b の極限であることを示せばよい. とする.y(lim T ) が関手 y ◦ T : I −→ C TO i bE EE EEpj EE EE T j o pi lim T y(T i) O dJJ JJy(pj ) JJ JJ J o y(lim T ) y(T j) y(pi ) b と自然変換 µ : ∆P =⇒ y ◦ T を任意に取る.(射 P −→ y(lim T ) が一意 その為に,P ∈ C に伸びることを示せばよい.) 系 14 によりある S : K −→ C が存在して P = colim(y◦S) 14 と書ける.このときの標準的な射を αk : y(Sk) −→ P とする. y(T i) ogP µi O PPPy(pi ) PPP PP o y(T j) y(lim T ) e y(pj ) αk y(Sk) P eLo L O LLL LLL αl L y(Sl) µj このとき,k ∈ K に対して次の可換図式が得られる. y(T i) iR RRR µ ◦α O RRiR k RRR RR o y(T j) y(Sk) µj ◦αk y は忠実充満だから,ある fik : Sk −→ T i が存在して y(fik ) = µi ◦ αk となる. TO i iRRR RRR f RRRik RRR RRR o Tj Sk y(T i) iR RRR µ ◦α O RRiR k RRR RR o y(T j) y(Sk) µj ◦αk fjk よって lim T の普遍性から gk : Sk −→ lim T が存在して次が可換となる. TO i mgPPP PPPpi fik PPP PP T j io lim T m pj gk Sk fjk 故に y(gk ) : y(Sk) −→ y(lim T ) が得られる. y(T i) ogP µi O PPPy(pi ) PPP PP r o y(T j) y(lim T ) _ f y(pj ) µj 15 y(gk ) αk y(Sk) P oeLL O LLL LLL αl L y(gl ) y(Sl) よって P = colim(y ◦ S) の普遍性により h : P −→ y(lim T ) が存在する.このとき y(pi ) ◦ h = µi である. . . . ) i, k に対して次の図式が得られる. y(T i) o O µi P tt O t h tt αk y(pi ) tt t t zt y(lim T ) o y(Sk) y(gk ) この図式の外側の四角は gk の取り方により可換である.また右下の三角形は h の取 り方により可換である.よって µi ◦ αk = y(pi ) ◦ h ◦ αk が成り立つ.故に次の図式を 考えれば y(T i) mgPp y(pi )◦y(gi ) Z PP µi PPP P y(pi ) PP y(lim T ) kWW WWWW h y(pi )◦y(gl ) αk y(Sk) P eLo L O LLL LLL αl L y(Sl) P = colim(y ◦ S) の普遍性により µi = y(pi ) ◦ h が分かる. h の一意性も普遍性により分かるので,y(lim T ) = lim(y ◦ T ) である. 定理 17. 関手 f : C −→ D に対して f † ◦ y ∼ = y ◦ f である. b C O f† y C b /D O y f /D b に関して自然に 証明. まず c ∈ C に対して f † (y(c)) ∼ = y(f (c)) を示す.P ∈ D Hom(y(f (c)), P ) ∼ = P (f (c)) ∼ = Hom(y(c), P ◦ f ) = Hom(y(c), f −1 P ) ∼ = Hom(f † (y(c)), P ) であるから米田の補題により y(f (c)) ∼ = f † (y(c)) である.同型の与え方から分かるよう にこれは c に関して自然なので f † ◦ y ∼ = y ◦ f である. 16 b −→ D b が得られる.このとき次は同値 定理 18. f : C −→ D を関手とすれば f † , f ‡ : C である. (1) f が忠実充満 (2) f † が忠実充満 (3) f ‡ が忠実充満 証明. (1 =⇒ 2) 随伴 f † ⊣ f −1 の unit を η とすれば「f † が忠実充満 ⇐⇒ η が同型」で あった.仮定 1 により f が忠実充満だから η が同型となり (定理 7),f † も忠実充満で ある. (2 =⇒ 1) 定理 17 により f † ◦ y ∼ = y ◦ f である.仮定 2 より f † が忠実充満で,y も忠 実充満だから f † ◦ y ∼ = y ◦ f も忠実充満である.よって f も忠実充満と分かる. (2 ⇐⇒ 3) f † ⊣ f −1 ⊣ f ‡ より分かる. 定理 19. C, D を圏として,C は有限極限を持つとする.このとき 関手 F : C −→ D が有限極限と交換する b −→ D b が有限極限と交換する. ⇐⇒ F † : C 証明. (⇐=) 定理 17 により F † ◦ y ∼ = y ◦ F である.y と F が有限極限と交換するから, y◦F ∼ = F † ◦ y も有限極限と交換する.y は極限を創出するから F が有限極限と交換す ることが分かる. b の有限極限 lim Pi に対して F † (lim Pi ) = lim F † Pi を示す.その為には (=⇒) C 各 d ∈ D に対して F † (lim Pi )(d) = (lim F † Pi )(d) を示せばよい.(lim F † Pi )(d) = b −→ Set が lim(F † Pi (d)) であるから F † (lim Pi )(d) = lim(F † Pi (d)),即ち F † (−)(d) : C 有限極限と交換することを示せばよい. b に対して,各点 Kan 拡張により F † P (d) = colim P ◦ π である. P ∈C / Dop E O EE † [c ??? KS EEFE P ? F EE " / Set F ↓ d π / C op P 1O π −1 d b −−→ SetF ↓d −−−→ Set である.π † ⊣ π −1 だから π −1 は右随伴, 故に F † (−)(d) = C colim よって極限と交換する.故に colim : SetF ↓d −→ Set が有限極限と交換することを示せ ばよい.その為には F ↓ d がフィルター圏であればよい. 定義により,F ↓ d の対象は D の射 d −→ F c,射 (d → F c0 ) −→ (d → F c1 ) は次を可 17 換にする C の射 c1 −→ c0 である. j4 F cO 0 jjjj j d TTTTT T* F c1 c0O c1 (i) まず F ↓ d ̸= 0 を示す.C は有限極限を持つから終対象 1 ∈ C が存在する.F が有 限極限と交換するから F (1) ∈ D は終対象.よって D の射 d −→ F (1) が存在する.故 に F ↓ d ̸= 0 である. f g (ii) d − → F c0 , d − → F c1 ∈ F ↓ d を取る.C は有限極限を持ち F が有限極限と交換する から F c0 × F c1 = F (c0 × c1 ) は存在して D の射 ⟨f, g⟩ : d −→ F c0 × F c1 = F (c0 × c1 ) が得られる.このとき次が可換である. c1O Fc ll5 O 1 l l ll lll lRll / F (c0 × c1 ) d RRR RRR RRR RR) F c0 c0 × c1 c0 よって射 (d → F c0 ) −→ (d → F (c0 × c1 )) と (d → F c1 ) −→ (d → F (c0 × c1 )) が得ら れた. f g f g (iii) d − → F c0 , d − → F c1 ∈ F ↓ d と二つの射 p, q : (d − → F c0 ) −→ (d − → F c1 ) を取る. 即ち次の図式を考える. 5 F c0 jjjj O O j j j jj d TTTTT F p F q TT g TT) F c1 cO 0O f C は有限極限を持つので,equalizer b 交換するので F b Fe / F c1 Fp Fq e / c1 p q c1 p q // c0 が存在する.F は有限極限と // F c も equalizer である.今 F p ◦ g = f = F q ◦ g だ 0 18 から,equalizer F e の普遍性により次の図式が可換となる射 d −→ F b が存在する. cO 0O F c0 u: O O u f uu uu F p F q u u uu / F c1 d g O p q c1O e Fe $ Fb b よって (d → F c0 ) Fp Fq / / (d → F c1 ) Fe / (d → F b) が可換になる射が存在することが分かった. 以上の (i)(ii)(iii) により F ↓ d はフィルター圏である. 4 普遍随伴 補題 20. C, D, U を圏,U は余完備で F : C −→ D ,E : C −→ U を関手とする.この とき F † E = y † E ◦ F † y かつ η = η1 ◦ η2 である. F †y / b y< C y y y η1 yy KS y y F y† E y y yy η2 yy /U C DO E EE KS EEEEF † E EE F EE η EE " /U C E DO KS E 証明. 任意の d ∈ D を取る.コンマ圏 f ↓ d を取る. 1O F↓d d F †y / b y< C y y y η1 yy KS y y y† E y y yy η2 yy /U /C /D O KS [c ??? ??? ???? F ???? E 19 このとき次の図式は lax pullback である. 1O F↓d F † y(d) / b <C y &OW &&& yy y yyy &&&& y && yy y y yy /C . . . ) A を圏,K : A −→ C ,! : A −→ 1 を関手,θ : y ◦ K =⇒ F † y ◦ d ◦ ! を自然変換 とする. F † y(d) / b 1 w; C G [c ?????θ w y ww ???? ??? ww w ww ! ll5 C lll l l l lllll K A このとき a ∈ A に対して射 θa : y(Ka) −→ F † y(d) が得られる.系 12 により F † y(d) ∼ = Hom(F (−), d) だから θa ∈ Hom(y(Ka), F † y(d)) ∼ = Hom(y(Ka), Hom(F (−), d)) ∼ = Hom(F (K(a)), d) である.これにより L : A −→ F ↓ d を La := ⟨Ka, ∗, θa ⟩ で定めれば,次の図式は可 換である. 1 G O F↓d zz< z zz L K A d † /D F y /C b w; (PX ((( w y ww (((( ww w w w /C : このような L は明らかに一意だから,lax pullback であることが分かる. 故に y † E ◦ F † y(d) = y † E(F † y(d)) = colim(F ↓ d → C → U ) = F † E(d) である. 定理 21. C を圏,U を余完備な圏とすると,関手 F : C −→ U から二つの関手 y † F , 20 F † y が得られる.このとき随伴 y † F ⊣ F † y が成り立つ. b EE C O bEE EE EE EE y† F EEDEE EE EE y EE EE F †y EE E" E /U C F ※ この随伴を,twitter 等で一部の人が普遍随伴と呼んでいる. 証明. まず Kan 拡張 y † F ,F † y の定義から次の図式が得られる. y† F /U < y y F yy α y KS y yy F †y y y β y y yy /C b C y b C O KS 二つの自然変換 α, β を合成して図式 b C O y C KS y† F α◦β y /U F †y /C b が得られる (但し,合成 (Rα) ◦ β を単に α ◦ β と書いた.以下同様にする).よって Kan 拡 張の普遍性により自然変換 η : id = y † y =⇒ F † y ◦ y † F が一意に存在して,η ◦ id = α ◦ β となる. † y F /U bE C O EE η =E FN KS EEE α◦β EE F † y y EE id id EE E /" b C C y 21 次に,補題 20 により F † F = y † F ◦ F † y だった. DO E EE KS EEEEF † F EE F EE EE " /U C F F †y /C < b y y yy y β yy KS y F y† F yy α y y yy /U C F DO = KS 図式 UO EE E KS EEidEU F id EE" /U C F に対して F † F の普遍性を使い自然変換 ε : F † F = y † F ◦ F † y =⇒ idU が得られる.この とき ε ◦ β ◦ α = id である. EE E D ε O EE >F EEE id EE KS EE EEE EE EEM EE F EE E" β◦α F †F E EEid "/ C U F 随伴 y † F ⊣ F † y を示すためには εy† F ◦ y † F η = id と F † yε ◦ ηF † y = id を示せばよいの であった. まず εy† F ◦ y † F η = id を示す.その為には α = ε ◦ η ◦ α を示せばよい.(α の普遍性に よる.) まず α ◦ id = α だから,次の合成は α である. y † F lll6 U M ll l lks l b C Y44 α 44 44 F y 44 44 4 C JR id F 22 idU /U この図式は,ε の取り方から idU H y † F lll6 U M V^ 5 HHHHF † y C ; ll l l 555 HH l b ks α C 55555 H# ε Y44 b 44 β 55555 z< C KS 55 F 44 z 55 y† F y zzz y 44 55 α 44 zzz 55 z 4 zz F /U C と分解できる.η の取り方から l6 U idU lll η HP HHHHF † y ;C l l l H l b [[[[[[[[[ [[ HHH# C ε [[[[[Y44 X` 99 b 44 9999 id C < z KS 55 44 9999 zz 55 y† F 9 id z y 9 4 9 zz y 4 9 55 α 44 z 55 4 zzzz F /U C y† F となる.よって l6 U idU lll IQ HHHHF † y ;C l l HH ll HH b C # ε Y44 b 44 C < η KS 5 44 y zzzz 55 † 55y F y 44 z α 44 zzz 55 4 zzz 5 F /U C y† F となり,α = ε ◦ η ◦ α が分かった.次に F † yε ◦ ηF † y = id を示す.その為には β = ε ◦ η ◦ β を示せばよい.まず id ◦ β = β だから † idU ks U o id F 23 -U F y / b C T(( J (( β (( ks (( ((F y (( (( C となる.ε の取り方から † idU F y /C b 8 UT( r † J r y F rr ( [c ???? r ( β ??ε rrr r eeeee (( ks (( b cH nv e α C ((F y K HHHH HH y (( F † y HHH HH (( HH ( H β o U C F である.η の取り方から † idU -U F y / b 8 r † *PX * η iiii4 C y F rrr [c ???? J iii r i ε i r ?? i r rr iiii id b cHiii ai LLLLLL C K HH LLLLid L HH HH y LLLLLLLL y L H F † y HHHH β HH H U o C F となる.よって † idU -U F y / b 8 r *PX * η iiiii4 C J y † F rrr [c ???? i r i ??ε rrr iiiii i r i id b iii C K ks y β F †y U o C F であり β = ε ◦ η ◦ β が分かった. 逆に次が成り立つ. b −→ U はこのようにして得られる. 定理 22. 随伴 f ⊣ g : C 証明. F := f ◦ y : C −→ U とする.随伴 y † F ⊣ F † y が得られる.一方,左随伴関手 f は Kan 拡張と交換する (定理 6) から y † F = y † (f ◦ y) = f ◦ (y † y) = f ◦ id = f である. よって随伴の一意性から g = F † y である. 24 定義. 関手 F : C −→ D が conservative ⇐⇒ f ∈ C が射で F (f ) ∈ D が同型射ならば,f も同型射である. 定理 23. 圏 C に対して,次の同値が成り立つ. b と書ける ある小さい圏 A により C ∼ =A ⇐⇒ C が余完備で,小さい充満部分圏 A ⊂ C が存在して,i† y が余連続かつ conservative. b は米田埋込.) (ただし i : A −→ C は包含関手で y : A −→ A b のとき,C は余完備で,y : A −→ C は充満部分圏である.また 証明. (=⇒) C ∼ = A y† y ∼ = id は明らかに余連続かつ conservative. b −→ C を得る. (⇐=) 定理 21 により随伴 y † i ⊣ i† y : A b EEE A O bEE E EE EE y† i EEDEE EE EE y EE EE † i y EE E" E /C A i この随伴の unit,counit を η ,ε とする (定理 21 の証明を参照).η の取り方から y† i /C KS y< y i yy α y KS y y y i† y y y β yy yy /A b A b A O y† i = y / bE A >F C O EE η KS EEE EE y i† y id EEE id EE " /A b A y i は忠実充満なので定理 7 により β : y =⇒ i† y ◦ i は同型である.仮定により i† y は余連 ∼ y † (i† y ◦ i) ∼ 続で C が余完備だから,定理 5 より Kan 拡張と交換するので i† y ◦ y † i = = 25 y† y ∼ = idAb となる.この同型を γ : i† y ◦ y † i =⇒ idAb とする.このとき y† i /C b QQQ A O DL 1 QQQ 111 QQQ id QQQAb γ −1 1 i† y KS y 1 QQQ QQQ 11 QQQ 1 id Q( b A :A y† i = /C b QQQ A O :: QQ DL 1 111 :: QQQQ id KS :: † QQQQAb γ −1 11i† y y ::y i 1 CK QQQ α :: γ QQQQ 11 QQ( /A / C KS A : b i i† y β y y = y† i /C < y y i yy α y KS y yy i† y y y β yy yy /A b A y b A O KS となる.故に Kan 拡張の普遍性から η ∼ = γ −1 で,η : i† y ◦ y † i =⇒ idAb は同型となる. 一方 ε : y † i ◦ i† y −→ idC から (i† y)ε : i† y ◦ y † i ◦ i† y −→ i† y が得られる.任意の c ∈ C を取る.(i† y)ε ◦ ηi† y ∼ = idi† y から i† y(εc ) ◦ ηi† y(c) ∼ = idi† y(c) である.既に示したように † η は同型だから,i† y(εc ) = ηi−1 † y(c) も同型である.今 i y は conservative だったから,εc b −→ C は圏同値で が同型射である.c ∈ C は任意だったから ε も同型射.従って y † i : A ある. 5 Adjoint Functor Theorem 定理 24. F : C −→ D を関手とする.F に沿った idC の Kan 拡張 ⟨F † idC , η⟩ が存在し, F が Kan 拡張 F † idC と交換するとする. DO RERR EE RRR EE RRRR † KS EEE FRRRFR=F ◦(F † idC ) F EEF † idC RRKC RR EE η R E" id RRRRR /C /( D C F id C このとき F ⊣ F † idC であり η がその unit である. 証明. G := F † idC と置く.Kan 拡張 F † F = F ◦ G の普遍性により,自然変換 ε : F ◦ 26 G =⇒ idD が一意に存在し,εF ◦ F η = idF が成り立つ. DO RERR EE RRR EE RRRR RRidD KS EEE F EEG RRRRKC RR EE η R E" ε RRRRR /( D /C C F id C 故に後は Gε ◦ ηG = idG を示せばよい. DO RERR EE RRR EE RRRR RRidD KS EEE F EEG RRRRKC RR EE η R E" ε RRRRR / C TT F /( D C TTT idC TTT η FN 222G TTT 2 TTT idC ) C その為には,Kan 拡張 ⟨G, η⟩ の普遍性により,(Gε ◦ ηG )F ◦ η = η を示せばよい. (Gε ◦ ηG )F ◦ η = GεF ◦ ηGF ◦ η = GεF ◦ GF η ◦ η = G(εF ◦ F η) ◦ η = GidF ◦ η = η. 定理 25 (General Adjoint Functor Theorem). C, D を圏,C は余完備で関手 F : C −→ D は余連続であるとする.更に,任意の d ∈ D に対してある集合 S ⊂ Ob(F ↓ d) が存在 して次を満たすとする. 任意の ⟨c, f ⟩ ∈ F ↓ d に対してある ⟨s, k⟩ ∈ S と射 ⟨c, f ⟩ −→ ⟨s, k⟩ が存在する Fc > F s NNN k NNN NNN f ' 7/ d p p p ppp ppp k′ F s′ このとき F は右随伴を持つ. 27 π 証明. 各 d ∈ D に対して colim(F ↓ d − → C) が存在することを示せばよい. . . idC . ) この余極限 colim(F ↓ d → C) = colim(F ↓ d → C −−→ C) が存在したとする. 1O F↓d d [c ??? ? /D O F /C π idC /C idC このとき Kan 拡張 F † idC が存在し,F † idC (d) = colim(F ↓ d → C −−→ C) である. 今 F が余連続だから,F は Kan 拡張 F † idC と交換する.従って定理 24 により F は 右随伴を持つ. d ∈ D とすると,仮定の条件を満たす集合 S ⊂ Ob(F ↓ d) が存在する.S ⊂ F ↓ d を充 満部分圏とみなす.π を S に制限した関手 π|S : S −→ C を考える.S は small で C は 余完備だから,余極限 θ : π|S =⇒ ∆(colim(π|S )) が存在する.colim(π|S ) が π の余極限 であることを示せばよい. まず自然変換 η : π =⇒ ∆(colim(π|S )) を定める.⟨c, f ⟩ ∈ F ↓ d を取る.このとき S の取り方から,ある ⟨s, k⟩ ∈ S と g : c −→ s が存在して f = k ◦ F g となる. g >s c Fg Fc > F s NNN k NNN NNN f /7' d p pp pp′p p p p k F s′ これを使って η⟨c,f ⟩ := θ⟨s,k⟩ ◦ g と定める. sN |> NNNNθ⟨s,k⟩ | NNN || ' η⟨c,f ⟩ || / colim(π|S ) c 7 ppp p p ppp θ⟨s′ ,k′ ⟩ s′ g これは well-defined である. . . . ) ⟨s0 , k0 ⟩, ⟨s1 , k1 ⟩ ∈ S と g0 : c −→ s0 ,g1 : c −→ s1 が f = k0 ◦ F g0 = k1 ◦ F g1 28 を満たすとする. s0 ? c? ?? ? g1 ? s1 g0 F s0 ? k0 F g0 5/) d f F c? ?? ?? F g1 F s1 k1 C が余完備だから,左の図式の pushout p が存在する.また F が余連続だから,F p も pushout である. ? s0 ?? ?? ? p c? ?? ? ? g1 ? s1 g0 F s0 ? ??? ? Fp F c? ?? ? ?? F g1 F s1 k0 F g0 5) d k1 よって pushout の普遍性により,射 F p −→ d が一意に伸びる. F s0 ? ??? ? F c? ?F p ?? ?? F g1 F s1 k0 F g0 /)5 d k1 k 2 S の性質により,この射 F p −→ d はある ⟨s2 , k2 ⟩ ∈ S を使って F p → F s2 −→ dと 書ける. F s0 ? ??? ? F c? ?F p ?? ?? F g1 F s1 k0 F g0 / F s2 k1 29 k2 /)5 d このとき C の次の図式を得る. s0 ? ??? ?? c? ?p ?? ? g1 ? s1 g0 θ⟨s0 ,k0 ⟩ θ⟨s2 ,k2 ⟩ / s2 ) / colim(π|S ) 5 θ⟨s1 ,k1 ⟩ 図式の左側は,pushout だから可換である.また右側は,θ が自然変換であること により可換である ( S が充満部分圏であることに注意する).よって全体が可換で, θ⟨s0 ,k0 ⟩ ◦ g0 = θ⟨s1 ,k1 ⟩ ◦ g1 となり,well-defined 性が分かった. また,η は自然変換となる. . . . ) 射 h : ⟨c, f ⟩ −→ ⟨c′ , f ′ ⟩ を取る.このとき,well-defined のときと同様にして次 の可換図式が得られる.(h = id の場合が,先の図式である.) cD DD g0 DD D" s02 22 2 π(h) Ep s1 z< z z zzz g1 c′ η⟨c,f ⟩ θ⟨s0 ,k0 ⟩ / s2 θ⟨s2 ,k2 ⟩ ) " / colim(π|S ) 5 < θ⟨s1 ,k1 ⟩ η⟨c′ ,f ′ ⟩ 故に η が自然変換であることが分かった. x ∈ C と自然変換 φ : π =⇒ ∆x を任意に取る.このとき自然変換 φ|S : π|S =⇒ (∆x)|S が得られるから,colim(π|S ) の普遍性により,射 h : colim π|S −→ x が一意に伸 びて φ⟨s,k⟩ = h ◦ θ⟨s,k⟩ となる.即ち次の図式の下の三角形は可換である. φ⟨c,f ⟩ c) UUUU UUUU )) ) η⟨c,f ⟩ U* g )) colim(π|S ) )) θ⟨s,k⟩lll5 lll φ⟨s,k⟩ sl h /*5 x また η の定義から左の三角形は可換で,φ の自然性から外側の三角形も可換だから,上の 30 三角形も可換であり,φ⟨c,f ⟩ = h ◦ η⟨c,f ⟩ が分かる.よって φ = ∆h ◦ η となる h が一意 に存在するから colim π = colim(π|S ) である. 補題 26. C, D, U を圏で U は co-wellpowered で余完備,F : C −→ D,S, T : C −→ U を関手,φ : S =⇒ T をエピな自然変換とする.このとき Kan 拡張 F † S が存在するなら ば F † T も存在する. DO LLL L KS LLFLL† S LLL F η L& S / C U φ / T π T 証明. d ∈ D に対して colim(F ↓ d − →C− → U ) が存在することを示せばよい. π S 各点 Kan 拡張により F † S(d) = colim(F ↓ d − →C− → U ) である.⟨c, f ⟩ ∈ F ↓ d に対 して,標準的な射を σ⟨c,f ⟩ : Sc −→ F † S(d) と書く.これと自然変換 φ : S =⇒ T を合わ せて,次の可換図式を得る. F † S(d) O F † S(d) σ⟨c1 ,f1 ⟩ O σ⟨c0 ,f0 ⟩ Sc1 ? Sc0 φc0 φc1 / T c1 ? / T c0 今 U は余完備だから,次の図式のように pushout を取ることができる.(また,pushout の普遍性から点線の射が延びる) F † S(d) O mi F † S(d) O Sci mj / ui O φcj Scj ? / T ci φci 31 / uj ? O / T cj ? 仮定から φci はエピ射で,エピ射の pushout はエピ射だから,mi もエピ射である. 余極限 v を取る.(この余極限は co-wellpowered 性から存在する.) v = colim(F ↓ π T d− →C− → U ) であることを示そう. その為に任意の θ : T ◦ π =⇒ ∆w を取る.このとき θ ◦ φ : S ◦ π =⇒ ∆w が得られる から,普遍性により F † S(d) −→ w が一意に延びる. よって pushout の普遍性から ui −→ w が一意に延びる. よって v の普遍性から v −→ w が一意に延びる. 397: CwK jjj4 B v j j j / u1 j ? O / u0 O φc1 / T c1 ? / T c0 F † S(d) O F † S(d) O Sc1 ? Sc0 φc0 π T 以上により v = colim(F ↓ d − →C− → U ) である. 定理 27 (Special Adjoint Functor Theorem). C, D が圏で,C は余完備,co-wellpowered で,small generating set S を持つとする.このとき 関手 F : C −→ D が余連続 ⇐⇒ F が右随伴を持つ. 証明. (=⇒) 各点 Kan 拡張 F † idC が存在することを示せばよい. generating set S ⊂ C を充満部分圏とみなし,i : S −→ C を包含関手とする.S が small で C が余完備だから Kan 拡張 i† i,(F ◦ i)† i が存在する. DO 8 88 KS 888 F 88 88(F ◦i)† i 8 L CO LL LLLi† i888 KS LLL 88 i LLL8 & / S C i 32 故に定理 9 より F † (i† i) も存在して,F † (i† i) = (F ◦ i)† i が成り立つ.また idC : C −→ C を考えれば,Kan 拡張の普遍性により φ : i† i =⇒ idC が一意に取れる. EE CO E φ E>F EE EE E idC KS EEE EEE EE ECK EE i E E" † η i i EE idi EE" /C S i φ はエピ射である. . . . ) c ∈ C に対して φc : i† i(c) −→ c がエピ射であることを示せばよい.各点 Kan 拡 張の構成を思い出せば,φc は i† i(c) = colim(i ↓ c → S → C) = colim c の普遍性 ⟨c,f ⟩∈i↓c から定まる射である. cj t t t ttt ztt c dJJ JJJ JJJ fk ck fj cj F fj FF FF # i† i(c) x; xx x x fk ck / 8& c φc s, t : c −→ d を射で,s ̸= t とする.S が generating set だったから,ある s ∈ S と g : s −→ c が存在して s ◦ g ̸= t ◦ g となる.このとき ⟨s, g⟩ ∈ i↓ c である. cj F fj FF FF # i† i(c) x; xx x xx g s /&8 c φc s t / /d よって s ◦ φc ̸= t ◦ φc でなければならない.故に φc はエピ射である. DO LLL † † L KS LLFLL(i i) LLL F η L& i† i / C C φ / idC よって補題 26 により F † idC が存在し,各点 Kan 拡張で書ける. 33 参考文献 [1] Saunders Mac Lane, Categories for the Working Mathematician, Springer, 2nd ed. 1978 版 (1998) [2] ft math さんによる圏論祭, 2012 年 12 月 8 日, http://alg-d.com/math/ft_math/ [3] ft math さんによる圏論祭, 2013 年 12 月 7 日・8 日, http://alg-d.com/math/ft_ math/ 34
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