Japan Tax Update 法人税改革の方向性について

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Japan Tax Update
法人税改革の方向性について
Issue 101, May 2014
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復興特別法人税の 1 年前倒し廃止
(2014 年度(平成 26 年度)の税制改
正)により、2014 年 4 月 1 日以後開
始事業年度から、法人実効税率の引
き下げが実現することになりました。
一方で、2015 年度税制改正に向け
た、更なる実効税率引下げについて、
政府税制調査会での議論が進めら
れています。
本ニュースレターでは、政府税制調
査会、法人課税ディスカッショングル
ープ(以下、「法人課税DG」)の議論
をもとに、法人税改革の方向につい
て解説いたします。
2014年5月15日に開催された、経済財政諮問会議におい
て、6月に公表される経済財政運営の基本方針(骨太の方
針)に、法人税の実効税率引き下げを明記する指示が安
倍首相から出されました。自民党税制調査会の野田毅会
長も、今年末の与党税制改正大綱に法人減税の方向性
を盛り込み、課税ベースの見直しの作業を年末までに終
えることを表明しています(5月16日付新聞等で報道のとお
り)。
2015年度税制改正に盛り込まれる予定の法人税改革(実
効税率の引下げと課税ベースの見直し)は、政府税制調
査会の法人課税DGで今年3月から議論が行われていま
す。2014年5月16日に開催された第6回法人課税DGでは、
経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に反映される、法
人税改革の意見書案の内容が議論されました。
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我が国の法人実効税率は、2011年度(平成23年度)税制
改正により5%引き下げられ、復興特別法人税の1年前倒
し廃止に伴い、2014年4月1日以後開始事業年度より、法
人実効税率の5%引き下げが実現することとなりました。法
人税改革の意見書には、具体的な法人税率の引き下げ
時期や税率の明記はしない方向であると報道されてい
ますが、地方税も含めた課税ベースの見直しによって
は、企業の税負担が増加する可能性もあり、今後の法
人課税DG議論の動向を見守る必要があります。
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1. 第6回法人課税DGでの議論の概要
「法人税の改革について」と題する会議資料では、今般の法人税改革の趣旨について、「立地競争力を高めるとともに、
わが国企業の競争力を強化するために税率を引き下げること」と、「法人税の課税ベースが狭くなり、負担が一部の黒字
法人に偏っている現在の負担構造を見直すこと」の2つである点を明らかにしています。
第2点の「黒字法人に偏っている現在の負担構造を見直す」という観点から、企業活動や業種に対して中立で簡素な
法人税とし、地方税も含めたより広い税目で税制中立を図るべきことが提案されています。
法人税改革の論点について ( 第1回法人課税DG 資料より)
(3)法人税の構造改革により、企業活動や業種に対して中立で簡素な法人税にする
・課税ベースを拡大して広く薄い税にすることで、新産業や新規開業が起こ りやすくなり、産業の新陳代謝が促される
(4)単年度・法人税の枠内だけではなく税収中立をはかる
・単年度ではなく中期的に税収中立をはかる
・法人税の枠内ではなくより広い税目で税収中立をはかる
・国税の枠内ではなく地方税も含めて税収中立をはかる
2011年度の実効税率引下げの改正においては、課税ベースの拡大として、租税特別措置である特別償却や準備金等
の廃止や一部縮減、減価償却制度の償却速度の見直し、欠損金の繰越控除、貸倒引当金制度の廃止、外国税額控除
制度の見直し等の、法人税の枠内での課税ベース拡大の措置が講じられました。
今般の法人税改革では、課税ベースを拡大して広く薄い税にするため、赤字法人への課税強化や中小法人の優遇税
制の見直し等を行う提案が行われています。また、代替財源は法人税に限定せず、地方税や法人税以外の関連税目も
包含する税制の改革とすることが検討されています。したがって、今般の法人税改革の内容によっては、改正により新た
な税負担が生じることも想定されます。
課税ベー ス拡大の主たる 項目
赤字法人問題への対応
・欠損金の繰越控除制度
・外形標準課税
企業の業種や規模に対しての税制中立
の確保
・中小法人、公益法人等の優遇税制の
見直し
・その他の租税特別措置の見直し
2 0 1 1 年度改正項目
所得の80%に制限
研究開発税制、準備金制度等の縮減・
廃止
法人税DG での検討項目
( 2 014年5月16日時点の情報によ る )
控除率の引下げ
対象法人の拡大、付加価値割の増加
拡大
優遇税制の見直し
研究開発税制の分野の限定化、政策
税制の対象の重点化
定率法と定額法の選択の見直し
中期的な税収中立(課税繰延制度)、
その他
・減価償却制度の見直し
・引当金制度の原則廃止
・一般寄附金の損金不算入制度の見
直し
・受取配当益金不算入制度の見直し
・外国税額控除制度の見直し
地方法人課税
・地方法人課税の応益性強化等
250%定率法の廃止
貸倒引当金制度・返品調整引当金制度
の原則廃止
損金算入限度額の縮小
控除限度額計算等の見直し
株式保有目的による優遇措置の限定
法人住民税均等割の増額、地方税の
損金算入措置の見直し
2. 経済財政諮問会議での議論
第7回経済財政諮問会議(2014年5月15日開催)では、法人税改革は、「経済再生」と「財政健全化」双方の実現のため
に必要不可欠であり、「企業が新たな投資や雇用、事業展開を決断するためには、中長期的な見通し・展望がはっきりし
ていることが極めて重要であり、法人税の実効税率について、将来的には25%を目指しつつ、当面は数年以内に20%台
への引下げを目指すべきである」こと、「法人税減税を2015年度から実現」することが提言されています(内閣府ホームペ
PwC
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ージ: http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0515/gijiyoushi.pdf)。
具体的な法人税率の引き下げ時期や税率は、2015年度税制改正大綱において明確にされるものと思われますが、来年
度からの適用となった場合は、2011年度税制改正時と同様に、繰延税金資産等の取崩しに伴う財務諸表への影響も考
慮が必要となります。
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