会計・監査トピックス 会計・監査トピックス

会計・監査トピックス
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第 30 号
2007 年 9 月 20 日
2006 年 11 月 10 日 第 20 号
監査第一委員会報告第42号
「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金に関する監査上の
取扱い」の改正
(2007年4月13日公表、日本公認会計士協会)
■ 主旨

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日本公認会計士協会は、2007年4月13日付で、監査第一委員会報告第42号「租税特別措置法上の準備金及び特別法上
の引当金又は準備金に関する監査上の取扱い」の改正を公表しました。
企業会計原則注解【注18】の引当金についての監査上の取扱いに関する留意事項が新設されており、【注18】の引当金の
例示として、役員退職慰労引当金、利息返還損失引当金が挙げられています。
■ 適用時期


2007年4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用。早期適用も可。
本報告に基づき、引当金を設定した場合、適用初年度の期首に計上すべき額に金額的重要性が認められる場合は、特別
損失に計上することができる。
以下、概要を紹介します。
原文については、日本公認会計士協会のウェブサイトをご覧ください。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/42.html
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1.
租税特別措置法上の準備金
特定の「準備金」が必ず「引当金」に該当するというものではなく、会社の状況によって当然に計上すべき「引当金」が、特定の「準備
金」の内容に該当する場合に、監査上、これを「引当金」に該当するものとして取り扱うという趣旨は、改正前と同様ですが、当該「引
当金」の繰入額及び取崩し時の過不足額については損益計算書において適切に表示することが必要であるとの旨が新たに追加され
ています。
なお、これまで利益処分案の株主総会決議によって積立て及び取崩しがなされていた「準備金」は、会社法の下では、原則として法人
税等の税額計算を含む決算手続として会計処理することとなります。
具体的には、次のように処理されます(企業会計基準適用指針第 9 号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」第 25
項)。
・ 当期末の個別貸借対照表に税法上の積立金の積立て及び取崩しを反映させる。
・ 個別株主資本等変動計算書に税法上の積立金の積立額と取崩額を記載(注記により開示する場合を含む。)する。
・ 株主総会又は取締役会で当該財務諸表を承認する。
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2.
特別法上の引当金又は準備金
特定の業種について特別の法令(税法を除く。)によって計上することが強制されている引当金又は準備金(以下「特別法上の引当金
又は準備金」という。)については、監査上、次のように取り扱います。
(1) 企業会計原則注解【注18】の引当金の要件を満たす引当金又は準備金
特別の法令によって計上することが強制されている引当金又は準備金のうち、【注 18】の引当金の要件を満たすものについ
ては、負債の部に計上し、その繰入れ及び取崩しは損益計算書に計上します。
(2) 企業会計原則注解【注18】の引当金の要件を満たさない、いわゆる利益留保性引当金
【注 18】の引当金の要件を満たさないが、特別法によって計上することが強制されている引当金又は準備金(利益留保性引
当金)については、特別法で規定する表示箇所に計上することになりますが、特別法に表示箇所に係る規定がない場合は、
純資産の部に計上することが望ましいとしています。
3.
引当金に関する事項
引当金については企業会計原則注解18に示されており、引当金の計上については、過度に保守的なものとなっていないことにも監査
上十分留意する必要があります。
注解 18 の引当金に列挙されたもの以外に、本改正では引当金事例として、役員退職慰労引当金、利息返還損失引当金、負債計上
を中止した項目に係る引当金の 3 項目を新たに示しています。
(1) 役員退職慰労引当金
役員退職慰労引当金は、会社の役員(取締役・監査役・執行役等)の将来における退職慰労金の支払に備えて設定され、
当該支給見積額のうち各事業年度の負担相当額を営業費用として計上されます。
<役員退職慰労引当金の計上>
役員退職慰労引当金については、注解 18 の要件を踏まえ、以下の留意事項を満たす場合には、引当金を計上する必要が
あります。
・ 退職慰労金の支給に関する内規に基づき(在任期間・担当職務等を勘案して)支給見込額が合理的に算出されること
・ 当該内規に基づく支給実績があり、このような状況が将来にわたって存続すること(設立間もない会社等のように支給実
績がない場合においては、内規に基づいた支給額を支払うことが合理的に予測される場合を含む。)
なお、本報告の公表を契機として、役員退職慰労引当金を計上する方法に変更する場合には、監査上、これまでの実務慣
行を踏まえ会計方針の変更として取り扱うものとされました。
<役員退職慰労金制度廃止の場合の会計処理>
既存の役員退職慰労引当金設定会社が役員退職慰労金制度の廃止をする場合、任期中または重任予定の役員に対する
廃止時点までの内規に基づく支給額につき、次の 2 つの場合が考えられるとし、それぞれにおける会計処理を示しています。
制度の廃止に伴い、株式総会におい
て承認決議を行う場合
制度は廃止するものの、当該廃止時
点においては株主総会での承認決議
を行わず、当該役員の退任時に承認
決議を行う場合
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会計処理
この場合で、当該役員の退任時まで承認済の慰労金の支給を留保するケー
スにおいては、当該支払留保額は原則として長期未払金として表示される。た
だし、1 年以内に支給されることは確実である場合には、未払金として表示さ
れる。
引き続き、役員退職慰労引当金として表示される。
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<執行役員に対する退職慰労引当金>
執行役員は会社法上の機関には当たらないため、退職慰労金の支払に関する株主総会の承認決議は必要ではありません。
執行役員に対する退職慰労金制度には様々な形態が見られますが、制度設計上、次の 2 つの形態を挙げ、それぞれの会
計処理を示しています。
執行役員が、従業員としての地位を
失っておらず、通常の従業員の退職
給付金制度に含めて取扱われる場合
執行役員が、従業員に対するものと
は別の内規を定めて運用している場
合
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従業員に対する退職給付引当金として会計処理を行う。
退職給付引当金若しくは役員退職慰労引当金に含めて開示する方法、又は、
執行役員退職慰労引当金として区分表示する方法がある。
他の科目に含めて開示した場合で金額に重要性がある場合は、その旨を注
記することが望ましい。
(2) 利息返還損失引当金
利息返還損失引当金は、業種別委員会報告第 37 号「消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上
に関する監査上の取扱い」に規定されており、注解 18 の引当金として取り扱われています。同様な会計事象が発生した場
合、同報告に準じて引当金を計上することになるので留意が必要です。
(3) 負債計上を中止した項目に係る引当金
法律上の債務性が残っている可能性があるものでも、債務履行の可能性を考慮して一定の要件を満たす場合に負債計上
を中止(利益計上)する会計処理を行う場合があります。負債計上の中止処理後、将来返還(支払)請求に応じた場合には
費用が発生することになるため、引当金の要件を満たしている可能性があります。
このような会計事象については、将来の返還(支払)リスクに対する備えとして注解 18 の引当金計上の要否を検討する必
要があるとしています。なお、当該金額に重要性がない場合はこの限りではありません。
(参考) 企業会計原則注解【注 18】
将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理
的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の
残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特
別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。
発生の可能性が低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。
4.
適用時期
2007年4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用されます。なお、同日前に開始する事業年度についても適用することがで
きます。
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このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限り
ません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、担当会計士にご確認されることをお勧めいたします。
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