347 医療薬学Vol.34,No.4(2008) Jpn. J. Pharrn. Health Care Sci. ノ 一 ト 34(4) 347-354(2008) プラパスタチン製剤の後発医薬品(メパン錠TM)への 切り替えに伴う治療学的同等性に関する レトロスペクティブ解析 田辺公一*1, 竹内都子1,池崎友明1,北澤英徳1,豊本貴嗣2,中林智之3 富山県済生会高岡病院薬剤部1,同皮膚科2,同内科3 ’ Assessment of Therapeutic Equivalence of Original and Generic Preparations of Pravastatin Sodium (Mevalotin’M vs. Mevan’M) : A Retrospective Study Kouichi Tanabe“i, Miyako Takeuchii, Tomoaki lkezaki’, Hidenori Kitazawa’, Takashi Toyomoto2 and Tomoyuki Nakabayashi3 Department of Pharmacyi, Dermatology2, Intemal Medicine3, Saiseika・i Takaoka Hospital 隠:瀧翻bl瓢。7〕 Pravastatin sodium tablets are widely used for the treatment of hyperlipidemia, and 22 generic products of this compound have been approved in Japan. A few studies have compared the clinical efficacy of the original and generic forms, and 1 study has questioned the reliability of biological equivalency tests. We therefore retrospectively examined the effect of sub- stituting a generic product(MevanTM;Nichi-iko Pharrnaceutical Co., Ltd。)for the orig血al product(MevalotinTM;Daichi Sankyo Co., Ltd.) on clinical efficacy and safety. We targeted patients who were initially treated with the original product and then the generic product, and from elec- tronic medical records, obtained their prescription data for 3 months before and after generic substitution. Next, we investi- gated clinical equivalence with regard to changes in total cholesterol (TC), HDL cholesterol (HDL), LDL cholesterol (LDL), and triglyceride (TG) levels as indices of clinical efficacy, as well as in ALT, AST, 7 一GTP, and CPK levels as in- dices of safety. We examined the changes in each of these laboratory parameters between 3 months before substitution and 3 months after substitution. in 293 patients, no significant differences were observed in the indices of efficacy between be- fore and after substitution. We also examined records for presence of diabetes mellitus and familial hypercholesterolemia and their influence on TC levels before and after substitution but no significant differences were observed in this regard. Accordingly, we concluded that the generic product investigated in this study was clinically as effective as the original product. Key words generic product, pravastatin sodium tablet, biological equivalency test, clinical efficacy, clinical equiva一 lence 少ないのが現状である.当院でも数少ない医薬品情報を 緒 元にプラパスタチン製剤の後発医薬品を選定し,医局と 言 協議の上,2005年8月に先発医薬品(メバロチン⑧錠, HMG-CoA還元酵素阻害薬であるプラバスタチンナト 第一三共(株))から後発医薬品(メバン②錠,日医工(株))へ リウムはわが国で開発され,1989年10月に発売されて と切り替えた.しかし,プラパスタチン製剤の後発医薬 以来,高脂血症および家族性高コレステロール血症の治 品の生物学的同等性試験に対して信頼性に疑問を投げか 療薬としてわが国で汎用されてきた.2003年7月にプ けている報告’)があり,先発医薬品と後発医薬品との臨 ラバスタチンナトリウムの後発医薬品が数多く承認され 床効果についても比較した報告は数少ない状況にある. 薬価収載されたが,各後発医薬品の評価に関する情報は 今回,医師からメバン⑪錠はメバロチン⑪錠と同等の臨 *富山県高岡市二塚387-1;387-1,Futatsuka, Takaoka-shi, Toyama,933-8525 Japan Presented by Medical*Online 348 医療薬学Vol.34, No.4(2008) 床効果が得られているのか当院の患者の検査値を調査し LDL = TC 一 HDL 一 O.2 TG 検討してほしいとの依頼があったことより,メバロチ ン⑧錠からメバン⑪錠への変更による臨床効果に対する また,一般的にHMG-CoA還元酵素阻害薬に関して 影響について,有効性の指標として血中脂質濃度(総コ 知られている重大な副作用のうち,横紋筋融解症や肝障 レステロール(TC), HDLコレステロール値(HDL), LDL 害と関連性が深いALT, AST,γ一GTPおよびCPKを コレステロール値(LDL)および中性脂肪(TG))を,安全性 電子カルテの検査歴より抽出し,安全性指標の解析に用 の指標としてALT, AST,γ一GTPおよびCPKを調査 いた. し,メバロチン⑪錠とメバン⑪錠との治療学的同等性に 4 ・血中脂質濃度の変動 ついてレトロスペクティブに検討した. 血中脂質濃度は後発医薬品への変更前3カ月および変 更後6カ月までの各検査値を検討した.後発医薬品の初 方 法 回処方日を0日目とし,4週毎の検査値を抽出して集計 1.対象症例の抽出 した.患者の来院日は必ずしも28日周期ではないこと 当院の電子カルテシステム(EGMAIN-FX,富士通(株)) から,28n±7日の範囲を設定し各検査項目の変動を検 (以下,電子カルテと略す)の処方歴より,2005年4月以 討した. 降に先発医薬品を処方されている患者を抽出した.後発 医薬品への切り替えは2005年8月以降に順次行われ 5.対象症例のプラパスタチン製剤以外の変更薬剤の調 た.次に,これらの患者データより以下の条件に当ては 査 まる患者を絞り込み,対象患者とした.対象患者の患者 対象症例の処方歴より,後発医薬品への変更前後の処 背景を表1に示す. 方の中から14日以上の処方日数で定期的に処方されて ・後発医薬品への切り替え時まで連続した先発医薬品 いた内服薬を対象に,後発医薬品への変更前後で変更さ の処方歴が3カ月以上あること ・後発医薬品に切り替え後も同規格の製剤を用いてい ること 表2.各調査対象群の平均BMI ・後発医薬品がそのまま3カ月以上継続して処方され A.対象症例全体の平均BMI ていること 2.BMIの調査 群 例数(人) 全体 164 平均BMI±SD 24.0±3.9 群 B.総コレステロール値のコントロール門別平均BMI 対象症例のカルテを調査し,身長および体重が記載さ 時数(人) 平均BMI±SD れている症例についてBMIを算出した.得られたBMI TC220以上(1ポイント以上) 67 24.3±3.9 を用いて,各解析対象群の平均BMIを算:出した(表2). TC220未満(全ポイント) 77 23.9±3.8 C.糖尿病の有無別平均BMI 3.有効性および安全性の指標となる検査値の抽出 群 先発医薬品添付文書の臨床成績の項目で変動が認めら れた血中脂質(TC, HDL, LDL, TG)のうち,電子カル テの検査歴よりTC, HDL, TGの各検査値を抽出し, 例数(人) 81 23.5±3.9 糖尿病有り 83 24.6±3.9 D.家族性高コレステロール血症の有無別平均BMI 群 有効性指標の解析に用いた.また,同一検査日にこれら 例数(人) 家族性高コレステロール血症 3項目がすべて測定されている場合を抽出し,以下の 無し Friedewaldの式を用いてLDLを算出した. 家族性高コレステロール血症 有り 対象症例 @ 服用量(mglday) @(人) 23.9±3.9 30 24.6±4.2 1 5 後発品への切替時の 性別内訳 男性(人) 女性(人) ス均年齢±SD(歳) 87 (24) 10 189 (63) 20 17 (4) (13) 72.3±10.0 293 (91) (202) 68.4±112 1 全体 Presented by Medical*Online (63) 64.5±11.8 (126) 69.8±10.6 平均BMI±SD 134 表1.患者背景 プラバスタチンナトリウムの 平均BMI±SD 糖尿病無し 349 医療薬学Vol.・34,No.4(2008) 響を及ぼすと考えられる薬剤が変更された症例は16例 れた薬剤のある症例を抽出した. であった.この16例のうち,プラパスタチン製剤の切 6.病態別の血中脂質濃度比較 り替え前後で各3ポイント以上の検査値が得られた13 対象症例を,糖尿病および家族性高コレステロール血 例の血中脂質濃度を個別に調査したところ,切り替え後 症の有無,ならびにTCのコントロール度別に群分けし のHDL, LDL, TC, TGが著明に上昇した症例が1例 検討した.当院でのTCの基準値上限が220 mg/dしであ あった.当該症例は切り替え後入院加療されており,切 ることから,TCのコントロール度別の検討では,対象 り替え前にあった四肢浮腫が入院加療により改善したこ 症例を先発医薬品服用期丁丁の3カ月間のTCが1回で と,ステロイド剤が新たに開始されたこと等が検査値の も220mg/dLを超えた群と,すべて220 mg/dL未満で 上昇に関与した可能性が考えられる. あった群に分類し,各検査項目の変動について検討した. 2.TCコントロール度別の血中脂質濃度変化 Z 統計処理 統計学的検討は,後発医薬品の初回処方時に行った採 先発医薬品服用中の採血で少なくとも1ポイント以上 血における血中脂質濃度を対照としたStudent’s t-test(有 の群においても後発医薬品への変更前後で平均値に有意 意水準p>α05)にて行った.また,それぞれの測定値は な変動は認められなかった(図2). 220mg/dLを超えた群について検討したところ,いずれ 平均値±標準偏差として表現した. 3.糖尿病の有無別の血中脂質濃度変化 結 いずれの群においても後発医薬品への変更前後で平均 果 値とそのばらつきに有意な変動は認められなかった(図 1.血中脂質濃度の変動 3). 2005年4月~8月の間に先発医薬品の服用歴がある 350例のうち,今回の対象に該当する症例は293例で あった.対象とならなかった57例の内訳は,先発医薬 4 家族性高コレステロール血症の有無別の血中脂質濃 品の服用期間不足,または処方期間の不連続症例が11 いずれの群においても後発医薬品への変更前後で平均 例,HMG-CoA還元酵素阻害薬の投与中止,または別の 値とそのばらつきに有意な変動は認められなかった(図 HMG-CoA還元酵素阻害薬への変更が37例,後発医薬 4). 度変化 品への切り替え後3カ月以内に中止または他州への変更 症例が9例であった.また,対象症例のカルテ調査より 5.安全性に関する指標となる検査値の変化 164例のBMIが得られ,解析対象の各群の平均BMIを 先発医薬品から後発医薬品への切り替え前後におい 算出したところほぼ同様な値を示した(表2).28日ごと て,安全性の指標としてALT, AST,γ一GTPおよびCPK の集計時期におけるそれぞれの症例数はO’ 坙レで134~ の変化を検討したところ,いずれかの検査値が基準値上 166例,先発医薬品服用期間中では33~71例,後発医 限の2倍を超えて上昇した症例は8例であった.これら 薬品服用期間中では23~81例であった(表3). の症例のカルテを個別に調査したところ,いずれの症例 先発医薬品から後発医薬品への変更前後における, にも元疾患(特に,炎症性疾患)の増悪,手術,血液透析, HDL, LDL, TC, TGの平均値に有意な変動はみられな 嘔吐や発熱に伴う脱水などの要因が認められた. かった(図1).また,対象症例の併用薬(処方が14日以 考 上で定期的に処方されていた内服薬)を調査したとこ 察 ろ,プラパスタチン製剤の切り替え前後で処方変更が あった症例が79例あった.このうち,ステロイド剤, 治療学的同等性を確認するためには,先発医薬品と後 SU剤,αグルコシダーゼ阻害剤等の血中脂質濃度に影 発医薬品との間で有効性と安全性がそれぞれ同等である 表3.各検査項目の乱数の分布 1 検査項目 経過日数 一84 一56 一28 0 28 56 84 112 140 168 HDL 35 65 46 142 55 68 35 43 32 25 LDL 33 59 44 134 53 63 34 42 32 23 TC TG 45 71 57 166 72 81 43 49 40 33 38 69 51 152 63 74 38 44 35 28 Presented by Medical*Online 350 医療薬学Vol.34,No.4(2008) HDL (mg/dL) 一84 o 一28 一56 28 56 経過日数 84 112 140 168 84 112 140 168 84 112 140 168 TC (mg/dL) 掴 一84 o 一28 一56 28 56 経過日数 LDL (mg/dし) 200 坦綱郭 一84 o 一28 一56 28 56 経過日数 TG (mg/dL) 400 掴 一一 W4 一56 一一 Q8 o 28 56 経過日数 84 112 140 図1.先発医薬品から後発医薬品への切り替えに伴う 血中脂質濃度の変化 Presented by Medical*Online 168 351 医療薬学Vol.34,No.4(2008) HDL (mg/dL) 140 一 一●一TC220以上 黶Z一了C220未満 12e 工 1eo 剛 曜 - h I 一k T 、 @ ■ ● 艦n」 @ 」 」L 黶@ (1 一墜 埋梱 8e 4e_ 2e e u 1 一84 幽 1 [ 1 酢 l l 一56 o 一28 28 56 経過日数 84 140 112 168 TO (mg/dL) 400 一●一TC220以上 璽 黶Z一TC220未満 35e Reo 埋綱 25θ U ニ エ ・工 墨 二、 二 墨 工 二 一 一 ▼ zou関 Q Ω ?一一つ Q 159 109 50 P 1 幽 0 一84 一56 l l I I I 1 o 一28 28 56 経過日数 84 140 112 168 LDL (mg/dL) 200 一●一TC220以上 黶Z一丁C220未満 一 汲O 工 169 ■■ 」L ■ , 14e @ 」 k @ 」 L 引qA ● 」 一 H 1 』 .』 工 一 k 」 7 ■ 7 「 7 ■7 「 7 「7 ) ■膠 「 」■ 窪ii童 80蘭 留 膠 60 40 20 1 一・ W4 I I 一56 O l I I I 匡 「 o 一28 28 56 経過日数 84 140 112 168 TG (mg/dL) 600 , 一●一TC220以上 黷p-TC220未満 509 4eo T T τ , T ・ ▲ ▲ _⊥ ▲ 工¥ 掴 3θe @T τ_一 ← 」、 【 」F Y ㌧r一_ ▲ 」L 晶w」 N 一 7 -¶= .1」 一84 @〉 †十…†1や十亭十, e 一一 T6 一28 o 28 56 経過日数 84 112 図2.総コレステロール値のコントロール度による 血中脂質濃度の変化 Presented by Medical*Online 140 168 352 医療薬学Vol.34,No.4(2008) HDL (mg/dL) 140 一〇一糖尿病無し 一 黶怦齠恃A病有り 12e 撃 HLI.1餉.II】=ユエ 8e 一 一 画一亀 露L “ __■■一_一 _ _ τ 了 :【 4e一一 @ ’ :【 @ ■ ・・ 工 天一醒 ● 1 ■ 匿 ■ , 2e h e 1 I I I I I I I 一84 一56 o 一28 28 56 経過日数 84 112 140 168 TC (mg/dL) 400 一〇一糖尿病無し 一 黶怦齠恃A病有り 35e 300 25e Y 】r 響暫.一1 玉 ス_ム. エ ニ サ ス エ_、 工 丞 一 =「■臨「= 一 一 =@ 7 】r Y 】「 Y 】「 15e モeo 5e h 幽 9 0 一84 一56 一28 1 I l ■ 1 幽 o 28 56 経過日数 112 84 140 168 LDL (mg/dL) 一〇一糖尿病無し Q00 一 黶怦齠恃A病膚り ■ llll 18e 16e ● , 一 @ ■■ ▼ -慶 r , 「 7 ■ 「■r 」L L 7, 酵 L 」 L一一■一 - 7 「 」冒一 『 一 τ’;;. 膠 . X T - ■「 - 「 乙 ユ ,臨 桝 」 1 L 父 叉 C 一 - 69 , 49 2e 戟@ I I 一84 一56 0 1 o 一28 1 「 1 1 1 28 56 経過日数 84 112 140 168 TG (mg/dL) 600 一〇一糖尿病無し 黶怦齠恃A病有り 5ee 4ee 綱 30e 。 ● 0 戟@ I l 一84 一56 一28 τ . 一 7 工 ( エ2eo調 L .. 工 」L ^ 昌、 了 rθθ・ 1 マ ・ γ Y 蘭 b .L 凸 ▲ @ I l I I I l o 28 56 経過日数 84’ 112 図3.糖尿病の有無による血中脂質濃度の変化 Presented by Medical*Online 140 168 353 医療薬学Vol.34, No.4(2008) HDL 一〇一家族性高コレステロール血症 (mg/dL) @ 無し 140 @一 黶怦皷ニ族性高コレステロール血症 @ 有り 120 1eθ 80一 一 一 一 T I 又 」 = エ 1 vL 6Ω」墜 ll 7●紛】r?一u I 一 ■【F一一一 -, @ ● ., r一r1 2θ e l l I I I 圏 圏 i P 一84 一56 o 一28 28 56 経過日数 112 84 TC 140 168 一〇一家族性高コレステロール血症 (mg/dL) 無し +家族性高コレステロール血症 Lり 400 一 35e 3ee Q5e 綱 昌 工 二.』 璽 蓋 ▲ ニ エ 六一 一 一一一一一 一 r Y Y 、 15θ イY Y マ Y τ u 画 1eg 50 P 1 1 一84 一56 9 I I I . I I I o 一28 LDL 140 168 一〇一家族性高コレステロール血症 無し (mgZdL) 200 112 84 28 56 経過日数 一●一家族性高コレステロール血症 一 @ 有り 18e P6e 糧 140’ 去 一 一 ∩. 盒120. -■「 帰r■ 亡一4・ τ T 7 - T L 石 己L ▲ 」幽し 」墜 凸 7 一一 ■ 7 ℃rワー▼ r7 u ・ Y , , 1 ・ 1 一 6e 49 Qe 0 l I 「 一84 一56 1 I l l l l o 一28 28 56 経過日数 84 112 140 168 TG (mg/dL) 600 一〇一家族性高コレステロール血症 無し 一 黶怦皷ニ族性高コレステロール血症 @ 有り 500 4ee 綱 3ee 黶@ ▼ T 2ee一 盒 ▲ ▲ 」 一 工 ゐ 畳 【こ\∩ r7 r, r「 ? T 量L ⊥ 一 了 Y Y1θe「 占 ■ . ’ Y l Y . 占 ● ■■騒 一 C1 犀 1 h I I e 一一 W4 一56 一28 @ I I I o 28 56 経過日数 84 112 図4.家族性高コレステロール血症の有無による 血中脂質濃度の変化 Presented by Medical*Online 140 168 354 医療薬学Vol.34,No.4(2008) ことを示す必要があると考える.本研究を行うにあたっ については体内動態や臨床効果への影響が危惧されてい ては,複数の医師を交えて有効性・安全性の指標につい るが,実際に臨床効果が劣るとする報告4)と変わらない て検討した.プラパスタチン製剤の主たる薬理作用は血 とする報告5)がみられる.プラパスタチン製剤の先発医 中コレステロール値の低下作用であり,臨床ではTC, 薬品は,血中脂質濃度の低下効果が安定するまでには投 HDL, LDLおよびTGの改善を目的に処方されること から,TC, HDL, LDLおよびTGを有効性の指標とし 与開始後4週間程度かかり6),投与前の値に戻るまでに た.また,本剤の臨床上特に注意を払うべき副作用とし いることから7),若干の製剤間のバラつきは臨床効果に ては,横紋筋融解症と肝障害が知られていることから, 対して大きく影響しなかったものと思われる. これらの副作用と関連性が深いALT, AST,γ一GTPお また,これらの報告では商品名が公表されておらず, よびCPKを安全性の指標とした. 問題提起,あるいは基礎データとしては有用と考える プラパスタチン製剤を先発医薬品から後発医薬品に切 が,後発医薬品の選定に関しては必ずしも有用な情報源 り替えた際の臨床効果について,先発医薬品を3カ月以 にはならない.本研究のような治療学的同等性を示した 上服用し,効果が安定していると思われる症例を抽出し 報告を蓄積することは,後発医薬品に対する医師の不信 て比較検討した.また,これらの症例では先発・後発の 感を払拭することにつながり,さらには使用促進に結び 両医薬品を継続して3カ月以上服用しており,コンプラ つくものと考える. も中止してから同程度の期間がかかることが報告されて イアンスについてもある程度良好な集団と推察される. さらに,後発医薬品への変更の前後で血中脂質濃度の平 引用文献 均値に有意な変動は認められず,血中脂質濃度に影響を 及ぼす可能性のある併用薬に変更があった症例について 調査したところ,ほとんどの症例で血中脂質濃度に変化 が認められなかったことから,今回比較したプラパスタ チン製剤の先発医薬品と後発医薬品の臨床効果はほぼ同 等と考えられる. 1)中村敏明,福岡美紀,萱野勇一郎,後藤伸之,脇屋 義文,政田幹夫,後発医薬品の生物学的同等性試験 における試験間差,医療薬学,31,158-163(2005). 2)平山武司,黒山政一,加賀谷肇,HMG-CoA還元酵 素阻害薬プラバスタチンナトリウム後発医薬品の品 質に関する研究一含量均一性および不純物含量の検 今回の検討において安全性指標として設定した 討一,新薬と臨床,53,796-804(2004). ALT, AST,γ一GTPおよびCPKについて,いずれかの 3)平山武司,常田愛子,黒山政一,矢後和夫,HMG- CoA還元酵素阻害薬pravastatin sodium後発医薬品 の医薬品添付文書における薬物動態情報のあり方に 指標が基準値上限の2倍を超えて上昇していた症例が8 例存在したが,いずれにおいてもプラパスタチン製剤の 切り替え以外の要因に起因することが強く疑われ,製剤 関する研究,医療薬学,30,770-776(2004). 間の差異は影響を及ぼさなかったと思われる.また,服 4)平野勉,プラバスタチンナトリウム先発医薬品から 後発医薬品への切替えにより血清脂質の変動,Prog. 用を継続するうちに正常値に戻った症例もあり,後発医 Med., 25, 2415-2417 (2005). 薬品の服用との因果関係は不明である.さらに,後発医 薬品に変更した293例の症例が3カ月以上後発医薬品の 服用を継続していたことから,その他の有害事象につい てもほとんど問題ないと推察される.以上の結果より, 5)國領俊之,松本名美,菅原義生,山田衆,プラバス タチン製剤先発医薬品と後発医薬品における臨床効 果の比較,医療薬学,32,912-926(2006). 6)五島雄一郎(CS-514研究会),高脂血症に対するCS- 514(Pravastatin)の臨床効果一Multiclinic open studyの 今回比較検討した後発医薬品は,先発医薬品と治療学的 成績一,臨床医薬,4,201-227(1988). にほぼ同等であると考えられる. 7)五島雄一郎(CS-514研究会),高脂血症に対するCS- 数多くあるプラパスタチン製剤の後発医薬品の中には 514の臨床効果一二重盲検三群比較法による用量設 先発医薬品と比較して品質に差異のある製品や含量にば 定試験一,臨床医薬,3,1445-1472(1987). らつきがある製品の存在が指摘されている2・3).当該製品 Presented by Medical*Online
© Copyright 2024 Paperzz