微細気泡をトレーサとしたPIV計測の検討(PDF,910KB

No.14-20
第 92期 流体 工学部門講演会
プログラム
日 場 画
催
開 会 企
2014年 10月 25(土 ),26日
(日
富山大学 五福キャ ンパ ス
日本機械学会 流体 工 学部門
一般社団法人 日本機械学会
)
日本機械学会流体工学部門講演会講演論文集 (2014.10.25-26, 富山)
Copyright ©2014 一般社団法人 日本機械学会
0525
微細気泡をトレーサとして用いる PIV 計測手法の検討
Investigation of the PIV Method Using Microbubble for Tracer
○学
畑 実希(立命館大院)
正
吉岡 修哉(立命館大)
Miki HATA, Ritsumeikan University, Nojihigashi1-1-1, Kusatsu-shi, Shiga 525-8577
PIV measurement needs tracer. Generally, solid particle is used as tracer. Solid tracer, however, tends to accumulate
on the gap located at wall. It might cause the machine trouble if actual machine was used for the measurement. In this
study microbubble is proposed as PIV tracer. In order to investigate whether microbubble is effective as tracer, loci of
both microbubble and solid particle tracers are calculated and then compared. Results show both loci are coincides
each other. Next, mean velocity distribution of turbulent flow over a backward-facing step is measured by PIV using
microbubble and solid particle as tracer. Results show both distribution are well coincide. It can be said that
microbubble is available as tracer for PIV measurement of time averaged velocity field.
Key Words: PIV, tracer, microbubble, backward-facing step flow
1.緒言
PIV は可視化の際に,トレーサを流れに混入する.従来,
トレーサには主に固体粒子が用いられてきた.しかし固体粒
子は,死水領域や,壁面などの間隙に残留してしまう.この
ため,流体機械等の実機の計測に用いると機械故障の原因に
なりうる.さらに,粒子の定期的な回収,除去が必要である.
本研究では,この問題を解決するため,トレーサとして微細
気泡を用いる事を検討する.
トレーサには,流れを乱さず,流れに追従する必要がある.
そのため,十分小さく,流体と同程度の比重を持つ事が要求
される.直径が数十マイクロメートルの微細気泡は,小ささ
は十分であるが,比重が水とは大きく異なる.そのため,重
力の影響による浮上や,遠心力により曲率中心側への移動が
考えられる.本報では,微細気泡のトレーサとしての有用性
を評価する.まず,バックステップ乱流を対象として数値解
析を行った.数値解析により得られた速度場に対し,質量を
もつ粒子をパッシブに流す計算を行い,その軌跡を検討した.
次に,気泡をトレーサとした PIV 計測を実際に行い,固体粒
子を用いて計測した結果と比較した.
2-1 実験および PIV 計測 実験は,図 1 に示す回流式水槽で
行った.測定部にはアクリル製で,ステップ上流には 75h の
助走区間を設け,完全発達したチャネル乱流を流入させた.
測定部のスパン中央断面をシート状の YAG レーザー(4W)で
可視化した.
PIV のアルゴリズムには,
相互相関法を用いた.
PIV には,フローテックリサーチ社の FtrPIV を用いた.
Fig. 1
Experimental apparatus
Fig. 2
Backward-facing step
2.方法
検討対象となるバックステップを図 2 に示す.ステップ高
さ h=20mm,拡大比 1.5 である. h と入口チャネル部中央速
度に基づくレイノルズ数は Re=3600 である.
2000
frequency
2-1 数値解析 支配方程式は非定常ナビエ・ストークス方程
式,連続の式,k-ε乱流モデルである.数値計算法は有限要
素法である.入口にはチャネル乱流の速度分布を与えた.出
口は自由流出とした.壁面は壁関数を適用した.計算は 10
秒間行った.t=10(s)の瞬時の速度場に対して,質量をもつ粒
子の挙動を算出した,これは,運動方程式をルンゲクッタ法
により解く方法で行った.瞬時速度場に対する気泡挙動の非
定常計算なので,実現象とは異なることに注意する.これら
の計算は,微分方程式ソルバ COMSOL Multiphysics を用いて
行った.
トレーサとして使用する気泡の直径は,撮影した気泡画像
から,
フローテックリサーチ社の FtrPIA を用いて算出した.
図 3 は,本研究で用いた微細気泡発生装置から生成された気
泡径の分布である.気泡径の平均値は 40μm であった.これ
より,計算する粒子(気泡)の直径は 40μm とした.また気
泡の抵抗係数は Cd=0.44 とした.
1500
1000
500
0
0.00 0.01 0.03 0.04 0.05 0.06 0.08 0.09
particle radius(mm)
Fig. 3
Distribution of bubble radius
3.気泡トレーサの流れへの追従について
図 4 に,微細気泡および固体粒子の軌跡を示す.初期位置
は,(x/h, y/h) = (-8.0, 0.0), (-8.0, 0.5), (-8.0, 1.0)の 3 点である.
赤は固体粒子,青は気泡の軌跡を示す.粒子放出後,各時刻
における気泡と固体粒子の距離 d/h を算出した.結果を図 5
に示す.図 4 を見ると,描かれた 3 本の軌跡のうち,逆流領
域に入った 1 本は,一周して逆流領域を離脱している.離脱
後緩やかに壁面方向へ動くが,微細気泡は固体粒子より内側
を移動している.これは,遠心力の影響で気泡が内側に移動
したことを示している.この現象は再循環領域では見られな
いが,これは比較的速度が遅いためと考えられる.他の 2 本
は,微細気泡と個体粒子はほぼ同一の軌跡を描いている.
図 5 に示す青色のプロットは,
再循環領域に入る場合の d/h
である.おおよそ t=1.5[s]までは再循環領域内を旋回してい
る.t=2.8 までは遠心力の影響により,d/h は増減を繰り返し
ている.ここまでは遠心力により気泡が固体粒子の内側を動
いているが,浮力により気泡が上昇するため,t=2.8 にて位
置関係が逆転する.そのため,ここで d/h は最後の極小値を
とる.その後は,浮力の影響で単調増加に転じている.その
他の緑,オレンジのプロットをみると,時間とともに緩やか
に d/h が増加するのみである.このことから,再循環領域内
では複雑な流れによる遠心力の影響で d/h が変動し,後流で
は浮力による上昇により d/h が単調に増加していると考えら
れる.ただし,この両者どちらの場合でも t=2.5[s]には x/h=10
を通過している.この時点では 3 本の軌跡すべて,d/h≦0.3
に収まっている.後述の PIV 計測の範囲は,x/h=10 までなの
で,影響は最大でも d/h≦0.3 となる.
Fig.6
Mean velocity distributions in 0≦x/h≦2
Fig. 7
Mean velocity distributions in 3≦x/h≦5
Loci of microbubble and solid particle
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
x/H=6.0
x/H=7.0
x/H=8.0
0.0
0.0
0.0
2
1.5
1
y/h
d/h
Fig. 4
4.PIV 計測結果
図 6,7,8 に得られた平均速度分布を示す.図 6 はステッ
プ直後,図 7,8 はその後流領域である.図では微細気泡を
トレーサとして計測した PIV の結果,従来の固体トレーサを
用いた PIV の結果とあわせて,軌跡計算に用いた数値解析の
結果を比較している.
微細気泡 PIV 測定結果は,他の結果と順流領域,せん断領
域,逆流領域ともに,良い一致を示している.このことから,
d/h≦0.3 程度の差であれば,少なくとも平均速度の評価に対
しては,気泡トレーサが乱流計測に有効であることが分かる.
0.0
1.0
y/h=1.0
Fig. 5
2.0
t[s]
y/h=1.5
3.0
4.0
5.0
0.5
0
-0.5
y/h=2.0
-1
0.0
0.5
Distances between microbubble and solid particle
numerical analysis
Fig. 8
0.5
0.5
u/Uo
solid particle
0.5
microbubble
Mean velocity distributions in 6≦x/h≦8
5.まとめ
微細気泡の PIV 用トレーサとしての有効性を検討した.ま
ず,数値解析により速度場を算出した.得られた速度場にお
いて質量を持つ粒子の軌跡を計算した.その結果,再循環領
域では,遠心力の影響を比較的強く受けるが,固体トレーサ
の軌跡との差は d/h≦0.3 に収まった.次に,気泡トレーサを
用いた PIV による乱流計測を実行した.少なくとも平均速度
の計測に対しては,微細気泡がトレーサとして有効であるこ
とが分かった.