倫 理 学習メモ 第 41 回 第 5 章 現代の課題を考える 文化や宗教と倫理 今回学ぶこと グローバル化によって、人やモノ、情報などが急激に移動 し、地球規模での経済や文化の融合が起こっていることを理 解する。また異文化を理解するために必要なことや自民族中 心主義(エスノセントリズム)を脱するために、必要なこと などを学び考える。多文化主義についても理解を深める。 講師 千田有紀 今回のキーワード! グローバル化/サイード/オリエンタリズム/多文化主義/ 自民族中心主義(エスノセントリズム) グローバル化する社会 ▼ 現代社会は、人やモノ、情報などが国境を越えてめまぐるしく移動している。異なる国や地 域の人々のつがりが急速に強まり、経済や文化が地球規模で融合している過程は、グローバル 化、グローバリゼーションと呼ばれている。 グローバル化によって、外国でつくられた製品が流通しているだけではなく、外国人労働者 が日本にも流入し、定住したりしている。また、日本から海外に働きに行く人もいる。一般の 人にとっての海外旅行も容易になり、インターネットの発達で外国の情報や文化を目にするこ とも容易になってきている。 このように、グローバル化の影響は私たちの生活の隅々にまで浸透し、国内国外で私たちが 異文化に触れる機会は、格段に多くなってきている。 − 83 − 高校講座・学習メモ 倫 理 文化や宗教と倫理 オリエンタリズムとは何か パレスティナ出身の思想家、サイードは、オリエンタリズムという考えかたを提唱した。西 洋の文化は、多くを東洋起源のものなどに負っているにもかかわらず、近代の西洋は、東洋(オ リエント)を劣ったものとみなし、文明化されておらず、エキゾチックな存在として描き出し てきた。西洋は、このような「遅れた東洋」を自らのあわせ鏡として必要とし、自らを「西洋」 として描き出してきたのである。 こうした知識のあり方は、西洋による東洋の植民地支配と、密接に結びついており、支配の 一部をなしている。日本は、欧米から見れば後進的な「東洋」である。しかし近隣のアジア諸 国に対しては、西洋が東洋に向ける意識と同じように、自分たちの植民地支配を正当化してき たという過去がある。 グローバル化する現代社会では、それぞれの文化を尊重しながら共生することができる相互 理解の方法を見つける必要に迫られている。 多文化主義を考える それぞれの文化を尊重しながら共生することができる相互理解の方法は、多文化主義と呼ば れている。日本にもいくつも、すでにエスニックタウンが成立している。 ▼ 異なる他者と共存することは、異文化のステレオタイプ的な理解をやめ、決めつけを排除し て、相手との差異や文化を認めることが必要となる。自分たちの文化だけが正しく、相手がそ れまでの文化を捨てて、自分たちと同化するならば受け入れようと考える自民族中心主義(エ スノセントリズム)的な態度は改められなければならない。 多文化主義を考える際に、宗教も大きな問題となっている。日本社会は宗教にかんしてこだ わりがないといわれており、近代化の過程で、日本人はキリスト教をひとつの宗教として受け 入れてきた。しかしこうした宗教に対するこだわりのなさは、宗教対立に関する無理解をも生 みかねない。より開かれた社会にむけての努力が必要とされている。 − 84 − 高校講座・学習メモ
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