喜多 諒 - 日本水環境学会

第 48 回日本水環境学会年会優秀発表賞(クリタ賞)を受賞して
東京大学大学院
この度は,
日本水環境学会年会優秀発表賞(クリタ賞)
という大変名誉ある賞を授与していただき,誠にありが
とうございます。
(公益財団)クリタ水・環境科学振興
財団の皆様および審査に携わられた先生方,学会関係者
の皆様に深くお礼申しあげます。
今回,私は「紫外発光ダイオード(UV-LED)を用
いた外照式水処理装置の開発と性能評価」をテーマに研
究を行いました。従来,浄水処理工程における消毒プロ
セスは,次亜塩素酸などを用いた塩素処理が一般的でし
たが,近年,クリプトスポリジウムなどの耐塩素性病原
微生物の存在から,紫外線による水の消毒が注目されて
おります。水の消毒には,通常,低圧ランプや中圧ラン
プのような紫外線水銀ランプが用いられますが,無水
銀光源に対する志向が近年強くなっています。中でも,
発光ダイオードの技術躍進から紫外線を発光する UVLED が注目を集めつつあります。UV-LED は小型,堅
牢,ウォームアップ不要など,無水銀であること以外に
も優れた長所を持ち,従来の紫外線水銀ランプでは難し
かった分野での紫外線消毒を可能にすると期待されてい
ます。新規性の高い UV-LED の水処理への適用は既存
の研究が非常に限られており,具体的な装置開発に向け
てさらなる知見の収集が求められています。そこで本研
究では,UV-LED を用いた水消毒モジュールを作成し,
その消毒効果を実験およびシミュレーションによって評
喜 多 諒
価することで,UV-LED を用いた水消毒装置開発に資
する知見を収集しました。具体的には,280 nm をピー
ク波長とする表面実装型の UV-LED を用いて環状の紫
外線照射装置を作成し,大腸菌および大腸菌ファージを
対象に,石英管内を流れる試料に外側から紫外線を照射
する実験を行いました。実験の結果,UV-LED の水消
毒装置としてのポテンシャルが示された一方で,石英管
に対する UV-LED 設置箇所によって異なる消毒効果を
示すことが明らかになりました。石英管内の水理条件
を CFD 解析ソフトでシミュレーションした結果,噴流
や層流といった管内の複雑な水理条件が確認され,本モ
ジュールの消毒性能に大きく影響することが示唆されま
した。これは,UV-LED を用いた水消毒装置の開発と
実装へ繋がる成果研究と考えております。
本年会では,ポスター発表および口頭発表を通じて非
常に多くの方々から,研究を発展させる貴重なご助言を
いただき,普段の研究では決して気づくことのできない
鋭い切り口に,大変貴重な機会をいただいたと感じてお
ります。このような大変立派な賞をいただけたことを励
みに,今後の研究の一層の向上に努めていく所存です。
最後に,本研究を遂行するにあたり手厚いご指導を賜
りました東京大学の滝沢智教授,小熊久美子講師,酒井
宏治特任助教,都市水システム研究室の皆様,ならびに
学業に専念させてくれた家族に心より感謝申しあげます。