「カメラマン最前線」で特集されました。

カメラマン最前線
ameraman frontline
C
〝 未 〟常 識 を 求 め 続 け て
①
:岸田舞子(
Model
)
WILD FLOWER
:新納薫
Hair & Make
:牧野しいな(オペラ)
Styling
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月カメ注目の作家を紹介
Photographer
│ 岡本
卓也
② Model:西山由(sublime) Hair & Make:浦梨未 Styling:吉田謙一(mod)
③
:
Model
岡本 卓也
TAKUYA OKAMOTO
:浦梨未
Hair & Make
1980年、長野県生まれ。大阪芸術大学写真学科中退後、
フリーフォトグラファーとして活躍中。在学中に「月刊カ
メラマン」カメラマン大賞受賞。2008年、魚住誠一主催
第2回ポートレート専科出展。2010年、岡本卓也写真展
を開催。学校法人大阪モード学園講師。
http://www.plusbe.jp
( elite JAPAN
)
NOE
PROFILE
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C
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カメラマン最前線
ameraman frontline
⑤ D irection & Styling:佐藤ゆうき( Palm. ) Model:
Irina Hair & Make:宇高陽子(HIKARIS) ©Palm
④D
irection:佐藤ゆうき( Palm. ) Model:Hailey Hair & Make:浅井可菜
©Palm
①:EF16-40㎜F 4L 絞りF 4 1/ 40秒
ISO100
②:EF16-40㎜F4L 絞りF4.5 1/60秒
ISO100
③:EF135㎜F 2L
ISO100
絞りF 2 1/ 640秒
④:タ
ムロンSP28-75㎜F/ 2.8 XR Di
絞りF2.8 1/60秒 ISO800
⑤:タ
ムロンSP28-75㎜F/ 2.8 XR Di
絞りF2.8 1/60秒 ISO200
⑥D
irection & Styling:佐藤ゆうき(Palm.) Model:Irina Hair & Make:宇高陽子(HIKARIS)
©Palm
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⑥:タ
ムロンSP28-75㎜F/ 2.8 XR Di
絞りF2.8 1/100秒 ISO100
Photographer
│ 岡本
卓也
▲ゆっくりとイメージを作り込み、サクッと撮影。岡本さん独特のリズムで時間が流れていく。
友垣に囲まれて
" 未常識 " の写真を撮る
友垣という言葉がある。人との交わり
を垣を結ぶようにたとえていう。こんな
古風な言葉を思い出したのは、岡本くん
を囲む人たちの情が古き善き時代をほう
ふつとさせてくれたからだ。
写真に限らずプロとして仕事をしてい
く上で、仕事の力量はもちろんのことだ
が、人に、仕事仲間に好かれるというこ
とは重要な要素だと思う。
2010年、それまで撮り溜めてきた作
品の集大成として二度目の個展を開催し
た。30代に入り新たなスタートを切る
格好の区切りとなったようだが、そんな
岡本くんを支えてくれたのも親しき友垣
であった。
生まれは長野県だが、現在は大阪を拠
点に仕事をしている。今回の撮影も大阪
のスタッフが集まり、岡本くんの作品撮
りに協力してくれた。
写真スタジオ「ベロニカ」のオーナー
安藤光勇さん、アシスタントの山口陽平
くん、スタイリストの牧野しいなちゃん、
ヘアメイクの新納薫ちゃん、そしてモデ
ルの岸田舞子ちゃん、みんな岡本くんの
良き友垣である。
安藤さんは岡本くんの作品を高く評価
する理解者である。スタジオ「ベロニカ」
の使用者は今のところ岡本くんだけだと
いう。まさにプライベートスタジオであ
る。じっくり時間をかけて作品づくりが
できるベースがあるということは、岡本
くんにとってかけがえのない強みとなっ
ている。
気心の知れた友垣たちの仕事場は実に
気持ちのいいものである。貸しスタジオ
で撮影するときのように時間の制約のな
い、ゆったりとした撮影時間が流れてい
くのだが、そこにはダレとか淀みといっ
たものがいささかも感じられない。岡本
くんを中心として誰もが作品づくりを楽
しんでいる協和音、共鳴音を奏でている
からだろう。
岡本くんはモデルにあまり細かい指示
を出さない。舞子ちゃんの個性を引き立
てるように、本人の取りたいポーズを取
らせたかと思うと、手を口に持っていて
などといった端から「可愛くない」と言
下に言い放ったりするのだが、舞子ちゃ
んも岡本くんが自分の一番可愛い瞬間を
切り取ってくれるのを知っているので少
しも気にする素振りを見せない。
友垣たちの岡本評をきいてみた。
「発想が斬新。とくに小道具の使い方が
おもしろい」
「枠にとらわれない写真を撮る」
「雰囲気を大切にする。時間をかけて撮
る」
「判断が早い。ここやと撮ったときは速
いですよ」
「写真にストーリーがある。何をされる
んやろうと、わくわくする」
▲ヘアメイクにも自分なりの意見をキッチリ伝えて
スタッフ全員の意志統一を図っている。
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▲パステル調からビビッド調まで作風は多岐に渡り、新境地にもどんどん挑んでいく姿勢は頼もしい。
「常識でも非常識でもなく、未常識の写真
を撮る。未常識というのは5年先、10年先
に常識になっていく可能性を秘めている」
さすがに岡本くんをよく知るものたち
の言葉は、彼を、彼の写真の特徴、色をよ
くとらえていると思う。
こんなステキな友垣に囲まれて撮影を
するのだから、主役の岡本くんが盛り上
がらないはずはないだろう。この日も、
スタジオ内を右に左に自在に使いながら
絶好調の撮影がつづいた。
学生時代に写真コンテスト連続受賞
大学を中退し、フリーカメラマンに
岡本くんの写真とのかかわりは、なん
といっても写真店を営んでいる祖父の影
響が大きかった。父親は広告代理店勤務
なので写真とのつながりも浅からぬもの
があるといえるだろう。要するに、幼い
ころから写真志向の DNA は岡本くんの
中に受け継がれ、育まれてきたといって
いいだろう。
高校に入って写真部に在籍した。写真
部の顧問をしていた物理の先生に勧誘さ
れたそうだが、人に好かれる性格は生来
のもののようだ。写真部に入部した岡本
くんに 祖 父 がカメラを 買 っ てくれた。
EOS Kiss の初代モデルだった。
高校の写真部に入ったのだが、当初は
正直なところ写真の何か楽しいのかよく
わからなかった。そんなとき、部室にあっ
た写真雑誌に目が止まった。中をめくっ
ているうちに写真コンテストというもの
▲本誌の表紙を担当する魚住氏を師匠と仰ぐ岡
本さん。師匠越えを目指せ!
◀いつも作品撮りを手伝ってくれる仲間のスタッフ
と。ポスターは昨年の個展の物。
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Photographer
の存在を知ったのである。さっそく写真
雑誌に作品を応募してみた。
「最初は金目当てでしたね」
岡本くんは正直に話す。 そして本誌
「月刊カメラマン」に応募した畑の霜を内
部ストロボで撮影した作品が佳作になっ
た。17歳、高校2年だった。講評をよき
アドバイスとして作品撮りに励んだ真面
目な高校生だった。高校時代は花と風景
を撮っていた。
高校 3 年になり、本誌「カメラマン大
賞」三席受賞、
「第2回高校生の生活写真
コンテスト」優秀賞受賞、さらに「よみう
り大賞」受賞、2000年には本誌「カメラ
マン大賞」大賞受賞と連続してコンテス
ト受賞をつづける順調なスタートを切っ
たのである。
作品撮りと同時に、岡本くんの写真に
変化が見られるようになった。高校2年
のときに本誌の表紙撮影でおなじみの魚
住誠一氏の連載を見て、
「こういう写真を
撮るにはどうしたらいいんだろう」と、
ポートレート写真への欲と関心が強まっ
ていったのである。
高校3年のときに、岡本くんは自作の
写真を携えて勇躍上京、本誌編集部を訪
れたのである。そこでは、思いもよらぬ
事態が待っていた。岡本くんの作品はそ
のとき編集部に居合わせた魚住氏と内田
ユキオ氏の2人の先輩プロカメラマンに
コテンパンに酷評(愛のムチ?)された
のである。
技術面での厳しい指摘から、
「こういう
のはプロとしてダサい」とまでいわれて
しまった。そこでめげてしまっては、プロ
カメラマン岡本卓也は誕生しなかった。
「いつか彼らを見返してやろう」メラメラ
と燃える想いが、岡本くんを奮い立たせ
たのである。
大学は大阪芸術大学写真学科に進ん
だが、2年で中退した。というのも、在学
中から美容師さんの作品撮りの仕事をし
ていて、それが評判を呼んで仕事が舞い
込んできた。そこで、大学を辞めていき
なりフリーランスのカメラマンとして独
立してしまったのである。
岡 本くんはフィルムからスタートし
た。大学在学中には自宅に暗室をつくり、
カラーの自家プリントまでした。そして、
EOS20D からデジタルに移行している。
実際にあるものの中に
違和感をつくり出すのが好き
花と風景から人物、モデル撮影でやっ
│ 岡本
卓也
▲モデルを寝かせ、ノーファインダーで俯瞰。スーパーボールを小道具に動きも加える。
ていきたいと方向を定めてからプロカメ
ラマンとしての性根もすわった。
ポートレートを主体に撮るようになっ
たのは、多分に魚住氏の影響が大きい。
特 に 色 に 刺 激 を 受 けた。 その 成 果 は
2008年の魚住氏が主催する第2回ポー
トレート専科の出展に示されている。
「もともと独りで行動するのはあまり好
きではなくて、人とかかわる仕事がした
かったんです」
その意味からも、ポートレート撮影は
岡本さんの性分に合っていたのだろう。
「実際あるもの(人、モノ)をそのまま撮
るのではなく、そこに違和感をつくり出
す写真にトライしたいと思っています」
作品を見れば、その意図、モチーフを
垣間見ることができる。2010年の個展
は、自分の作品を振り返る絶好の機会と
なった。
「一点、一点の写真はまさに点でしかな
く、それをまとめてみることで、自分の
写真を客観的に見返すことができまし
た。たとえば、構図ひとつにしても右向
きのものが多いということにも改めて気
づきました」
魅力ある人物を撮りたいという。具体
的にイメージがあるというのではなく、
それは接してみて初めて伝わってくるの
を待つ。ずっと女性しか撮らなかったが、
この半年で変わってきたともいう。ポー
トレートのモデルの範囲が広がれば、そ
れだけ作品の可能性も広がっていく。
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Photographer
│ 岡本
卓也
ameraman frontline
▲お互いの信頼関係に基づく撮影なので合間は笑顔が多いのも印象的だった。
「人への感謝の気持ちを忘れたくない。
テングにはなりたくないですね」
人に好かれる男は、人への感謝の気持
ちを大切にする。だから、人に好かれる
のだともいえる。
友垣のひとりがいった " 未常識 " とい
う表現は岡本くんの写真をよく言い当て
ているように思う。 未常識の写真への
チ ャレンジは、一 歩 間 違 えばマスタ ー
ベーション、自己満足に淫する危うさも
孕んでいる。その細い道を確実に歩いて
いくには、岡本くんの自戒と自省と修練
が欠かせないだろう。
大阪での作品撮りは、実に居心地のい
いように感じられた。それだけにいかに
ゆるくなりがちになる作品撮りをいかに
払拭していくのか、これからの作品を見
続けていきたい。
安藤さんが「岡本くんにはぜひ東京で
写真展をやってもらいたい」という言葉
にも、そうした思いが込められているよ
うに思う。
だが、屈託のない、伸びやかな岡本卓
也は40代になっても失わないでほしい。
▲この大きなスタジオを独占使用してる贅沢な環
境が岡本さんの大きな財産でもある。
■取材協力:スタジオ・ベロニカ(064397-6050)
/岸田舞子(モデル)
牧野しいな(スタイリスト)/新納
岡本さんの主な撮影機材
■ボ ディ:キヤノンEOS 5D
MarkⅡ/EOS 7D/ソニーα
900
■レンズ: キヤノンEF85 ㎜
F 1. 8 / E F 13 5 ㎜ F 2 L /
TS-E45㎜F2.8 シグマ28
㎜F1.8/50㎜F1.4 タムロ
ンSP AF17-50㎜㎜F2.8/
SP AF28-75㎜F2.8 バリ
オゾナーT*24-70㎜F2.8/
プラナーT*85㎜F1.4
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薫(ヘアメイク)/山口陽平(アシ
スタント)
/ Palm 編集部(http://
www.palm.charmworld.jp)
■取材 / 文:石井 健次
■状況写真:編集部
●取材機材
キヤノン EOS Kiss X3
EF-S18〜55㎜ F3.5-5.6IS
EF-S55〜250㎜ F4-5.6IS
EF-S10〜22㎜ F3.5-4.5
EF50㎜ F1.8Ⅱ