大和総研デイリーコラムでは、幅広いトピックスを大和総研の研究員ならではの視点で皆様へお届けしております。 大和総研デイリーコラムでは、幅広いトピックスを大和総研の研究員ならではの視点で皆様へお届けしております。 大和総研デイリーコラム [2011.08.03]号 大和総研 環境・CSR調査部 小黒由貴子 今の電力量を知りたい 先月、政府が「携帯電話への電力需給ひっ迫お知らせサービス」を開始した。計画停電を実施する 可能性がある日の前日 18 時に電力需給ひっ迫警報が発出されたときに、メールをくれる、というサー ビスである。早速、登録してみたが、幸い今のところメールは来ていない(2011/8/1 現在)。こうしたお 知らせをキッカケとして緊急的な節電行動を促し、実際に消費電力が削減されたという結果が、首都 圏で行なわれた実験で出ている(※1)。こちらの実験では、独自の算定モデルや電力供給・使用デー タ、気象予報データなどから「家庭での節電の必要度を予測するシステムを構築」し、電力需給逼迫 度に応じたお知らせ(節電予報と節電警報)を発信した。実験家庭に取り付けた「省エネナビ (※2)」 のデータによると、25%の削減効果が出た(図表1)。節電行動のうち、電源を切った割合が高かった のはテレビ、パソコン、電子レンジなどで不急のものと考えられる。省エネしながら使い続けたものは、 照明、冷蔵庫などである。 筆者も計画停電が実施されて以来、フリースを着た上に毛布をかぶってエアコン稼働時間を減らし、 照明も半分にするなど節電したつもりであった。ところが自分の過去 2 年分の使用電力データを見ら れる東京電力の「シェイプアップカルテ (※3)」という Web サービスで昨年の 3 月と比べると、わずか ではあるが増加していた。「寒いのを我慢したのに」とガッカリしたが、よく見ると計測期間は 2 月 25 日 から始まっている。2010 年の 2 月末は旅行で不在だったため、今年が増えたというより昨年が少なか ったと考えていいだろう。幸い、4 月以降は平均 2 割以上削減できているが、ピーク時対策にはなって いない。このように、節電行動と、その結果の関連性が見えないと、何をどのくらいやればいいかわか らないばかりでなく、節電するという「やる気」を保ちにくい。 この「見える化」対策として注目されているのが、双方向通信機能を持つ電力量計であるスマートメ ーターや、ITを使って家電などの使用電力を「見える化」することができるHEMS(Home Energy Management System)である。イタリアやスウェーデンではスマートメーターの導入が、ほぼ完了してい る。米国ではカリフォルニア州のPG&E(電力・ガス会社)が 800 万台超(2011 年 6 月時点)、SDG&E (電力・ガス会社)が 180 万台超(2010 年末時点)のスマートメーターを導入している。これらの国・地 域に比べ、日本は最も多い関西電力でも約 76 万台(2011 年 3 月末時点)と、スマートメーター導入が 遅れている。欧米で導入が進んだのは、義務化(EU指令で 2020 年までに 80%、2022 年までに 100% の 世 帯 導 入 を 要 求 ) や 、 補 助 が 手 厚 か っ た ( 米 国 再 生 ・ 再 投 資 法 : American Recovery and 大和総研ホームページでは、国内外のマクロ経済分析を始め、政策分析、金融市場及び金融ビジネスの動向、金融税制、会計制度や 大和総研ホームページでは、国内外のマクロ経済分析を始め、政策分析、金融市場及び金融ビジネスの動向、金融税制、会計制度 環境政策、CSRなど、長年の多岐にわたる調査分析活動を基とした幅広い情報発信および提言活動を行っています。 や環境政策、CSR など、長年の多岐にわたる調査分析活動を基とした幅広い情報発信および提言活動を行っています。 大和総研デイリーコラムでは、幅広いトピックスを大和総研の研究員ならではの視点で皆様へお届けしております。 大和総研デイリーコラムでは、幅広いトピックスを大和総研の研究員ならではの視点で皆様へお届けしております。 Reinvestment Act, ARRA)ことが背景にある。日本では 7 月 29 日、国家戦略室の「エネルギー・環境 会議」で、今後 5 年以内に総需要の 8 割をスマートメーター化する「当面のエネルギー需給安定策 (案)」が出された(※4)。2010 年 6 月のエネルギー基本計画で「費用対効果等を十分考慮しつつ、 2020 年代の可能な限り早い時期に、原則全ての需要家にスマートメーターの導入を目指す」としてい たものを前倒しした案である。さらにHEMS導入の推進も検討されている(※5) 。この案通り、スマー トメーター、もしくはHEMS導入がスピードアップされることを期待している。無理のない効果的な節電 は、まずは「今の電力量を知る」ことから始まるのだから。 (※1)科学技術振興機構(JST)、荒川区、柏市、川崎市、横浜市、プラチナ構想ネットワーク 「停電予 防連絡ネットワークによるシステムの効果を実証試験で確認 -家庭での適切な節電で停電回避を目指 す-」 (※2)分電盤や電気器具に取り付けた消費電力量を記録するメーター (※3)自分と同じ契約容量の顧客の平均使用量を月ごとに比較したグラフを見ることもできる。 (※4)国家戦略室 エネルギー・政策会議 2011 年 7 月 29 日 配布資料 (※5)例えばイギリスでは、簡易な製品が販売されており、スターターキットは約 6,500 円(1 ポンド 130 円換算)である。このくらいの価格であれば、省エネ分ですぐに元が取れるため、補助がなくても普及する かもしれない。http://www.alertme.com/products 以上 このコラムの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。 著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研 の許諾が必要です。 大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為 です。 著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります 大和総研ホームページでは、国内外のマクロ経済分析を始め、政策分析、金融市場及び金融ビジネスの動向、金融税制、会計制度 大和総研ホームページでは、国内外のマクロ経済分析を始め、政策分析、金融市場及び金融ビジネスの動向、金融税制、会計制度や や環境政策、CSR など、長年の多岐にわたる調査分析活動を基とした幅広い情報発信および提言活動を行っています。 環境政策、CSRなど、長年の多岐にわたる調査分析活動を基とした幅広い情報発信および提言活動を行っています。
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