研修報告書 - HMBA 一橋大学大学院 商学研究科経営学修士コース

一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース
金融プログラム 2012
インドネシア国際研修
プロジェクト報告書
Website 版
2012年8月29日~9月5日
Sponsored by みずほ証券商学研究科研究教育助成金
プログラムカレンダー
日時
5月21日
内容
募集説明会
6月5日
参加者選考結果発表
6月6日
第1回オリエンテーション
参加者顔合わせ・今後の流れについて・正副団長紹介・自己紹介
6月8日
第2回オリエンテーション
視察先調査班役割分担決め
6月14日
第3回オリエンテーション(勉強会)
「インドネシア経済-注目される背景と今後の課題-」濱田美紀氏(ジェトロ・アジア経済研究所)
7月9日
第4回オリエンテーション(勉強会)
「海外研修のための危機管理」鈴木あかね氏(一橋大学国際化推進室ディレクター)
8月8日
第5回オリエンテーション
毎日エデュケーション 旅行前オリエンテーション
8月10日
視察調査班別プレゼンテーション
8月27日
第6回出発前オリエンテーション 及び 視察調査班別追加プレゼンテーション
8月29日~ 海外研修期間
9月5日
10月22日
研修反省会
*上記の他、研修参加者には下記の各金融プログラムプロジェクトへの参加を推奨。
・8月1日~7日 夏期集中講義"Money, Banking and Financial Markets" Prof.Kulpatra Sirodom
・8月20日~24日 Business Academic English
2012 金融プログラム インドネシア国際研修プロジェクト スケジュール
8月29日(水)
8月30日(木)
8月31日(金)
9月1日(土)
午
前
成田空港 集合
NH937成田9:25発
9:30-11:30
ダイキン工業
9:00-11:00
みずほコーポレート銀行
昼
機内食
ジョグジャカルタへ
GA206 9:55発
11:05着
昼食 午
後
15:15
ジャカルタ着
ホテルへ
14:30-16:30
曙ブレーキ工業
13:00-14:30 JICA
15:00-16:00 三菱重工
16:00-17:00 東京海上
17:00-18:00 鹿島建設
夕
夕食(結団式)
19:30 電通 夕食講演会
19:00 如水会懇親会(★各自払)
夕食 宿
Sari Pan Pacific
Sari Pan Pacific
Sari Pan Pacific
Melia Purosani Hotel
日付
9月2日(日)
9月3日(月)
9月4日(火)
9月5日(水)
午
プランバナン寺院見学
昼
昼食 ジャカルタへ
14:00-15:00
GA211 14:25発
15:30 着
ASEAN事務局
16:30-18:30
ジャカルタ漁港
9:00~11:00
伊藤忠商事
12:00ー12:30
インドネシア大使館
昼食 13:30~15:00
国際協力銀行
15:00-16:00
Bank Negara Indonesia
(@ホテル会議室)
離団式(車中)
19:30 空港
NH938
早朝 7:15
前
9:30-11:30
ERIA (東アジアASEAN研究センター)
昼食 午
後
昼食
夕
★夕食各自
夕食会(折下氏)★各自払
宿
Sari Pan Pacific
Sari Pan Pacific
昼食 ボロブドゥール遺跡見学
成田到着・解散
ジャカルタ 21:45
★夕食各自(空港で)
Jakarta
研修に寄せて
2012 年度 金融プログラム海外研修を終えて
一橋大学大学院 商学研究科教授
三隅隆司
みずほ証券寄附講義の一貫として行われてきた海外研修プログラムも平成 24
(2012) 年度で6年目を迎えました.本プログラムは,一橋大学大学院商学研究科経
営学修士コース(HMBA)金融プログラムとして行われている事業の中で学生諸君から
の期待・評価が高いものの 1 つです.私にとっても,本海外研修は (1) 数ヶ月にわた
る(個人およびグループのレベルでの)さまざまな作業を通じて,学生の皆さんがどのよ
うに成長され,さらに研修参加者におけるチーム・ビルディングがいかに行われている
かを実感をもって知ることができる,(2) さまざまな企業・組織およびそこで活躍されて
いる多くの方々にお会いすることを通じて,多様な経験・発見をすることが出来る,とい
う 2 つの意味で,毎年楽しみにしている企画の一つです.研修旅行を終えた現在,今
年度の研修も,上記 2 つの意味で,とても充実したそして楽しいものであったと,個人
的には感じています.
今年度は,ジャカルタ(インドネシア)を研修地に選び,多数の企業・組織を訪問さ
せていただきました.インドネシアは,21 世紀のアジアにおいて長期にわたって大きな
成長が期待される大国として,日本のみならず世界の企業が熱い視線を向けている国
です.そのような国を,自分の目で見て,その熱気を体感することは,MBA の皆さんに
とって魅力的なことではないか,ということが選定の理由です.実を言うと,「海外研修
先としてインドネシアを・・・」という声は,数年前からあがってはおりました.ただ,「海外
経験の少ない私に,インドネシア訪問の引率ができるだろうか」という私個人の気後れ
から,これまでインドネシアを研修地に選ぶことを無意識のうちに避けていたような気が
します.そのような中,今年度は,高岡浩一郎准教授が新たに引率者として加わって
下さるとともに,インドネシア訪問経験豊かな小川英治副学長がご参加下さることとなり,
インドネシア訪問を積極的に後押し下さったため,ようやく(めでたく)インドネシア訪問
が決まった,という次第です.その意味で,今回の充実した研修が可能となったことに
対し,小川副学長・高岡准教授に感謝いたしたいと思います.
ジャカルタでは,金融機関(みずほコーポレート銀行様,国際協力銀行様,東京海
上様、バンクネガラインドネシア様),製造企業(曙ブレーキ様,鹿島様,ダイキン様,
三菱重工様),商社(伊藤忠商事様),経済協力関連機関(ASEAN 事務局様,ERIA 様,
JICA 様,ジャカルタ漁港様),広告代理店(電通様)といった多様な企業様を訪問させ
ていただき,有益なお話を伺わせていただいたりしました.さらに,在インドネシア日本
国大使館にも訪問させていただき,一橋大学の大先輩である鹿取克章大使から貴重
なお話を聞かせていただきました.今回お会いできた皆様はいずれも,各業界の第一
線でご活躍されているエース級の方々であり,研修に参加した学生諸君にとっても,
本当によい勉強になったと思います.
学生諸君もまじめな態度で参加してくれました.事前の勉強会をこなし,担当グルー
プ単位のミーティングを繰り返すなど,厳しい時間制約の中で準備を行うことはたいへ
んなことだったと思います.例年と同じ人数であるにも関わらず訪問先の数が多くなっ
たこともあり,今回の研修参加学生は皆,複数の訪問先について調査をすることが求
められました.これら事前準備の内容は,2 度にわたる全体ミーティングで報告・議論し
てもらい,訪問地ならびに訪問先に関する情報を参加者で共有することにしました.学
生諸君の事前調査は細部にわたって注意の行き届いたものでしたので,参加者全員
が,訪問地および訪問先に関する背景情報を十分に知った上で研修に臨むことが出
来ました.その結果,それぞれの訪問先で聞かせていただいたお話については,多く
の学生が,その背景もふくめ深く理解できたのではないかと思います.また,学生諸君
の真摯な態度は,説明下さった方々にも喜んでいただけたものと思っています.今回
の研修旅行にかかわったスタッフの一人として,私は,学生諸君のまじめな態度を見
て,たいへんうれしく思いました.
研修旅行におけるさまざまな経験といった資本が,参加した HMBA の学生諸君の
一人一人によって,いつの日か大きな収益を伴う成果として(どのような形であれ)実
現してくれることを,期待したいと思います.
研修旅行が成功裏に終わりましたのも,多くの方々のご支援のおかげです.とくに
鹿島建設の曽我隆一郎様には,如水会の方々との懇親会のご調整のみならず,多く
の企業様とのご訪問をアレンジ下さいました.曽我様がさまざまなアイディアをお出し
になり,そしてそれを実現下さったおかげて,今回の研修を,例年以上に多様性をもっ
たものにすることができたと思います.また,慶應義塾大学の木村福成教授は,ERIA
様,ASEAN 事務局様およびジャカルタ漁港様をご紹介くださいました.さらに,国際協
力銀行渡辺博史副総裁には,国際協力銀行ジャカルタ駐在事務所への訪問のみな
らずインドネシアの現地の銀行(BNI 様)をご紹介いただきました.訪問先各社の関係
者の方々,および如水会関係者の方々にも,お忙しい中,HMBA の海外研修プログラ
ムにご協力いただきました.そして,みずほ証券様には,海外研修プログラムをはじめ,
HMBA 金融プログラムの運営にさまざまな支援をいただいており,今年度も充実した
海外研修を実施することができました.皆様の温かいご支援に対し,心より御礼申し上
げます.ありがとうございました.
2012 年度
海外研修プログラムに寄せて
一橋大学大学院商学研究科准教授
高岡浩一郎
6回目を迎えた 2012 年度の商学研究科経営学修士コース (HMBA) 金融プログラム海外
研修では、学生 20 名と教員・スタッフ 4 名の総勢 24 名が、経済成長著しいインドネシア
のジャカルタを訪問しました。8 月 29 日から 9 月 5 日までの研修期間中に、15 もの企業・
機関の方々からお話を伺うことができました。ご多忙にもかかわらず我々の訪問を受け入
れて下さった訪問先関係者の皆様に、心から感謝申し上げます。
私は今回初めて海外研修に同行したのですが、学生の国立での事前勉強は当初の私の予
想を超える充実ぶりでした。また、どれだけ事前に準備しても、実際に現地に行って訪問
先の話を伺ってみて初めて分かることがいかに多いか、参加学生は滞在中に実感できたの
ではないでしょうか。私自身も、企業訪問には「訪問先に関する入念な事前調査」と「訪
問時の積極性」の両方が重要だと改めて感じました。
如水会ジャカルタ支部からのご協力にも深く感謝いたします。幹事の曽我隆一郎様(昭
和 62 年商卒)から本学卒業生が所属している訪問先を何ヶ所か紹介して頂いただけでなく、
滞在期間中の金曜日の晩には如水会の皆様で懇親会も開いて下さいました。お話を伺うな
かで日本人駐在員の奮闘やご苦労に感銘を受けましたし、また参加された OB のお1人が
「商学研究科がこれほどの大人数でジャカルタを訪問してくれて、本当に嬉しい。もっと
インドネシアのことを知ってもらいたい」と熱く語っていらっしゃったのが、印象に残っ
ています。本学が卒業生の皆様から受ける支援は、質・量とも他大学では類を見ないもの
なので、現役学生や教職員はこのご好意やご期待に応えて精進を重ねていく必要があると
考えております。
今回初めて訪れたインドネシアは、人々の笑顔がとても素敵な国ですし、多民族社会に
おいて緩やかかつ着実な一体感を醸成していく知恵の蓄積が感じられました。この知恵は
現代において日本のみならず世界中がお手本にすべきだと考えます。
最後になりましたが、今年もこの海外研修にあたりみずほ証券様から多大なご支援を賜
りました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
特別論稿
【プレジデント
2012 10.29 号
ビジネススクール流知的武装講座
掲載記事】
世界第5位に転落「日本のODA」アジア最前線報告
一橋大学副学長・大学院商学研究科教授
小川
英治
今年の夏は、大学のサマースクール(Euro-Asia Summer School)と MBA 金融プログ
ラム海外研修の日程が一部重なったために、サマースクールの第 2 週が行われたベルギー
のルーベン・カトリック大学から帰国するとすぐに MBA 金融プログラム海外研修を行って
いたジャカルタに飛んだ。気温摂氏 20 度のベルギーから気温摂氏 30 度を超えるジャカル
タ入りだったので気温差と時差に悩まされながらも、学生たちとジャカルタにある企業な
どを訪問した。
インドネシアは、1997 年~1998 年のアジア通貨危機以降、経済の回復が遅れていたもの
の、2000 年代半ばになってようやく経済が回復し、近年ではむしろ経済は好調である。ま
た、東アジアの他の諸国と比較しても、インドネシア経済は、世界金融危機の影響をそれ
ほど受けず、著しい経済成長を遂げている。たとえば、世界金融危機の影響を受けた隣国、
シンガポールとは好対照である。世界金融危機直後の 2009 年の実質 GDP 成長率は、シン
ガポールやマレーシアやタイでは軒並みマイナス成長となったにもかかわらず、インドネ
シアでは 4.6%であった。また、2011 年の実質 GDP 成長率をインドネシアとシンガポール
で比較すると、シンガポールが 4.9%であるのに対して、インドネシアが 6.5%となっている。
そのためか、以前は、東京とシンガポールを結ぶフライトにフラットシートのある機材
が使用され、ジャカルタ線にはフラットシートがなかった。しかし、フラットシートのあ
る機材はシンガポール便からジャカルタ便に移ったようである。世界金融危機のシンガポ
ールへの影響とインドネシア経済の好調さが飛行機のシートにも表れている。
今回の海外研修では、例年と同様に日系や地元の金融機関や製造業を訪問した他に、ジ
ャカルタに本拠地を置いている東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局と東アジア・ASEAN
経済研究センター(ERIA)を訪問した。さらに、ERIA のチーフ・エコノミストも兼任さ
れている木村福成慶應義塾大学教授のご紹介で、政府開発援助(ODA)のプロジェクトの
現場であるジャカルタ漁港をも訪問した。
ジャカルタを訪問する直前にサマースクールでブリュッセルにある欧州連合(EU)の欧
州委員会を訪問したので、ここで EU の経済統合と ASEAN の経済統合を比較したいとこ
ろではあるが、本題の ODA の話題に入りかけてはいるものの、なかなか話が進まないので、
一言だけ触れることでとどめ、詳細は別の機会に取り扱いたい。一言で言えば、EU はリジ
ッド(硬直的)な経済統合であるのに対して、ASEAN はソフト(柔軟)な経済統合である。
そのリジッドな経済統合をめざしている EU においては、ユーロ圏の一部の諸国において
1
2010 年にギリシャで財政危機が発生し、それがポルトガルやアイルランドなどに波及して
いる。ギリシャ財政危機が発生してから 3 年が経とうとしているがなかなか終息する気配
が見られない。そのため、ASEAN 事務局は、ことのほか ASEAN は EU と違うことを強
調していた。ASEAN を EU と差別化することによって、欧州の危機が ASEAN に波及す
ることを抑えたいかのようである。
さて、本題に入ることにしよう。今回は、ODA プロジェクトの現場を実際に訪問する機
会を得たので、ODA について書きたい。先ずは、図を見ていただこう。図は、主要開発援
助委員会(DAC)加盟国の ODA 実績(支出純額ベース)の推移を示している。なお、支
出純額ベースとは、円借款の供与額-償還額を意味する。
日本は、1990 年代においてはアメリカを上回り、第 1 位の ODA 実績を誇ってきた。そ
の後、2001 年から 2005 年まではアメリカに次いで第 2 位の ODA 実績を有していたもの
の、2006 年にイギリスに抜かれ第 3 位に落ちた。さらに 2007 年以降はドイツとフランス
にも抜かれて第 5 位に転落したままである。また、日本の ODA の対国民総所得(GNI)
比率(2010 年)は 0.20%であり、DAC 加盟 23 か国の中では第 20 位であった。さら
に、国民 1 人当たりの ODA 負担額は 86.5 ドルであって、第 18 位となっている。この
ように、日本による ODA が国際的に相対的地位を低下させていることは明らかである。
ODA の形態には、二国間援助と国際機関を通じた援助(国連児童基金(UNICEF)な
どへの拠出)とに分けることができる。二国間援助は、贈与あるいは政府貸付の形態を取
「無償資金協力」と「技
る。贈与は開発途上国に対して無償で提供される協力のことで、
術協力」があります。一方、政府貸付は、将来、開発途上国が返済することを前提とし
て低金利返済期間の長い緩やかな条件(譲許的な条件)で開発資金を貸付ける援助形態
であって、
「有償資金協力(円借款)
」と呼ばれる。2010 年実績の支出純額ベースで二
国間援助の総額 74.3 億ドルの内、無償資金協力が 34.7 億ドル、技術協力が 34.9 億ド
ル、政府貸付(有償資金協力)が 4.7 億ドルであった。
日本の二国間 ODA の供与相手国別に見ると、供与額が多い順に供与相手国は、支出純額
ベースで 2010 年にはインド(9.8 億ドル)、ベトナム(8.1 億ドル)、アフガニスタン(7.5
億ドル)、トルコ(5.4 億ドル)、パキスタン(2.1 億ドル)の順番となっている。特に、ア
フガニスタンとパキスタンについては、タリバンなどのテロの脅威に対して対処するため
に、2009 年 11 月に、2009 年から 5 年間で最大約 50 億ドルの「新たなアフガニスタン・
パキスタン支援パッケージ」が発表された。この支援パッケージにおいて、治安能力向上
のための支援や元タリバン兵士の社会への再統合のための支援や持続的・自立的発展のた
めの支援が行われている。このように、ODA はその時々の世界共通の課題を解決する目的
を反映して、実施されるプロジェクトがある。一方において、地道に供与相手国の経済発
展に貢献しようという目的から ODA のプロジェクトが形成され、実施されるものもある。
後者の例としてジャカルタ漁港の ODA プロジェクトの現場を見学するために訪問をし
た。訪問した先は、1978 年からジャカルタ漁港の ODA プロジェクトに参画して、現在で
2
もジャカルタ漁港に関わっている開発コンサルタントの折下定夫氏(㈱オリエンタル・コ
ンサルタンツ)であった。
折下氏が書かれた「虹の設計-ある開発コンサルタントの記録-」によれば、日本政府
がインドネシア政府の要請を受けて、ジャカルタ漁港とその魚市場の整備計画を、国際協
力機構(JICA)の前身である海外技術協力事業団(OTCA)の調査団が 1973 年 11 月から
74 年にかけて実施し、その報告書に基づいて日本政府がジャカルタ漁港プロジェクトを円
借款で実施することを決めた。1977 年に当時の海外経済協力基金(OECF)がインドネシ
ア政府との間にジャカルタ漁港プロジェクトのエンジニアリングサービスの資金援助の円
借款契約を締結した。コンサルタント選定において入札の結果このプロジェクトを受注し
たのが、折下氏が当時、在籍していたパシフィック・コンサルタンツ・インターナショナ
ルであった。
ジャカルタ漁港プロジェクトについて、最も興味深かったのは、「たとえ援助案件であっ
ても日本の物差しをそのまま持ち込んではいけない」という折下氏の言葉であった。具体
的には、ジャカルタ漁港を建設するに当たり、総延長約 4000 メートルの護岸・防波堤を建
設する工法として、日本サイドから提案ではなく、インドネシア・サイドの提案が採用さ
れたということである。OTCA の開発調査報告書は、鋼管矢板を使用する構造形式を計画
していた。しかし、鋼管矢板は、インドネシア国内では生産されていなかっために輸入せ
ざるを得なく、外貨の支払いが必要となる。外貨不足問題に直面していたインドネシアは、
この工法は外貨を必要とするという意味で難しいと判断された。その代わりに、すでにイ
ンドネシア国内で建設した経験を持つ工法として、竹杭・竹マットを使用することとなっ
た。竹であれば、インドネシア国内に豊富にあることから、外貨を必要としない。また、
竹を伐採し、竹杭・竹マットを作成することによって、インドネシア国内の雇用創出につ
ながる効果をももたらすことも期待される。そして、実際に竹杭・竹マット工法が採用さ
れて、100 万本の竹が利用されて、ジャカルタ漁港の護岸・防波堤が建設されたのである。
護岸・防波堤の強度を高めることと、濾過効果を通じた海水の水質を保全するために、
マングローブも植えられている。自然共生型漁港としての整備も進められている。岸壁に
マングローブが育ち、マングローブの並木となれば、漁港の機能を有するだけではなく、
将来的にはウォーターフロントとして散策を楽しむこともできよう。さらに、ジャカルタ
漁港の海水の水質を積極的に浄化するために、行き止まりになりがちな漁港の奥に、潮位
差を利用して、海へ海水を戻すための水路と貯水池も作られている。環境にやさしい漁港
を作ろうと工夫されている。
日本の ODA プロジェクトの中には、「日本の物差しをそのまま持ち込」まれることもあ
ったという批判があった。しかし、そのような批判がすべての ODA プロジェクトに当ては
まるわけではないという一つの例としてこのジャカルタ漁港は大変興味深いものである。
現在、このジャカルタ漁港では、近海の魚のほかに、インド洋のマグロが水揚げされる。
日本で売られている多くのマグロは冷凍マグロが解凍されたものである。しかし、ジャカ
3
ルタ漁港で水揚げされたマグロは、冷凍せずに、生のままジャカルタ漁港からジャカルタ
空港へ輸送され、東京へ空輸される。翌日には、そのマグロが東京で食べられるのである。
ジャカルタ漁港を見学したのちに、折下家でそのマグロを食することができた。冷凍した
マグロしか食べたことのない著者には絶品であったことは言うまでもない。マグロの夢を
見ながら帰国の途についたのは、美味しいマグロを堪能できたことに加えて、生のマグロ
と夜空を飛んだからかもしれない。
図:主要 DAC 加盟国の ODA 実績の推移(支出純額ベース)
主要援助国のODA実績の推移(支出純額ベース)
(百万ドル)
35,000
30,000
米国
ドイツ
英国
25,000
フランス
日本
20,000
カナダ
イタリア
13,126
15,000
11,136
8,922
10,000
9,283
9,601
8,880
11,021
10,604
2010
2011(暫)
9,467
7,697
5,000
0
2002
2003
2004
(出典)OECD・DAC
(注1)東欧および卒業国向け実績を除く。
2005
2006
2007
2008
2009
(暦年)
(資料)外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki.html
4
研修参加者個人レポート
金融プログラムインドネシア国際研修個人報告書
cm110206
井出勝也
1.はじめに
金融プログラムインドネシア国際研修(以下、本件研修という。)は、8 月 29 日(水)~
9 月 5 日(水)の日程で実施された。実際の訪問に先立って訪問先企業等に係る調査・研究
を行い、十分な学習をした甲斐もあって、大変でありながらも非常に実りの多い研修にな
ったと考えている。本稿では、私自身が現地で感じたことや企業訪問等を通じて得られた
知見などについて、書き綴っていきたい。
2.雑感
スカルノハッタ国際空港に降り立ち、市内に向かう道中で目に飛び込んできたのは、ト
ヨタ・ホンダ・スズキ・ヤマハといった日本の四輪・二輪メーカーの広告・店舗の多さで
あった。それもそのはずで、インドネシアの四輪・二輪市場においては、日本メーカーが
圧倒的なシェアを有しており、特に二輪については日本メーカーの独占といってもよい状
況にある。ジャカルタの名物は渋滞であるといっても過言ではないほど、道路状況は悪か
ったが、広い道路が日本の自動車・バイクによって埋めつくされている様は圧巻であった。
他方で、家電についてはサムスン・LG といった韓国メーカーの方が目立ち、遠くインドネ
シアの地でも日本の家電メーカーの苦境を垣間見ることとなった。
昨年の国際研修で訪問した中国(北京)でも感じたことだが、インドネシアにおいても、
急成長している国特有の、言葉には言い表しにくい「熱気」と「歪さ」を随所に感じた。
「熱
気」の源泉の 1 つとなっているのは、中産階級の成長である。バイクの普及を例に取るま
でもなく、インドネシアの中産階級の伸びは目を見張るものがあるように思う。他方で、
貧富の差の拡大についても、様々な場面で感じることができた。高層ビルが立ち並び、高
級ブランド店が多数入ったデパートのある都心部を離れると、一般市民が暮らす古びた家
屋が並んでおり、インドネシアという国の二面性のようなものが見て取れた。
3.企業訪問等で得られた知見
本件研修では、インドネシアみずほコーポレート銀行様を訪問する機会を得た。インド
ネシアの経済環境に加え、同行の日系・非日系双方に対する融資ビジネスについても詳し
くレクチャーして頂き、大変参考になった。お話のなかで、特に印象深かったのは、イン
ドネシア現地法人銀行における外国人労働者に係る規制である。以下では、レクチャー内
容に加えて、各種資料を参照しつつ、インドネシアにおける外国人労働者規制について整
理・考察してみたい。
インドネシアにおいては、2003 年に新労働法が制定され、外国人社員に係る規制が整備
されることとなった。規制内容は多岐に亘るが、主要なものとしては、①外国人労働者の
雇用主に対する補償の義務付け、②外国人従業員雇用計画承認書の発行の 2 つが挙げられ
る。①は、インドネシア労働者の開発のための基金に対して、外国人労働者を雇用する雇
用主が補償の支払いを義務付けられるというものである。この補償の支払いは、外国人労
働者の就労許可の取得要件とされている。また、②は、外国人労働者のポジションや雇用
期間、就労地、インドネシア人労働者の教育・訓練プログラム等の所定の事項について労
働移住省宛に提出を義務付けるものである。
以上のような一般的な規制に加えて、銀行に対しては、2007 年に発された中央銀行令に
より、①銀行において外国人労働者が就ける役職の制限、②銀行における外国人労働者の
雇用期間制限(原則 3 年。1 回のみ 1 年の延長が可)、③人事部門を外国人労働者が担当す
ることの禁止、④外国人労働者からインドネシア人労働者への知識移転の保証義務、⑤外
国人労働者の雇用計画と実現に係る報告義務などが課されており、非常に厳格なものとな
っている。銀行のような金融セクターについて、このような徹底した規制が敷かれている
ケースは、あまり多くないのではないかと思われる。このような規制が(法律レベルでは
なく)当局レベルで発出されるという事実からも、インドネシアにおける法制度への対応
の難しさを思い知った。
以上からも透けて見えるように、インドネシアにおける外国人労働者規制の基本思想の 1
つは、インドネシア人労働者の育成や彼らへの技術・スキルの移転を促進することである
と思われる。インドネシアが単なる外資による投資先に甘んじることなく、将来的に自律
的な経済発展を遂げるためには、インドネシア人労働者のスキルアップや成長が不可避で
ある。この制度運用がどこまで機能しているのかについては明らかではないものの、単に
外資を「呼び込む」だけではなく外資を最大限に「利用する」という強かな戦略が可能で
あるのは、インドネシアが外資にとって(かかる厳しい規制があってもなお、進出するイ
ンセンティブがあるという意味において)魅力的であることの何よりもの証左であろう。
4.謝辞
本件研修を成功裡に終えることができたのは、多くの方のご支援・ご協力による。本件
研修をご支援頂いたみずほ証券様、お忙しいなか訪問を快諾頂き、丁寧なご説明をして下
さった訪問先企業・団体様やジャカルタ如水会の皆様、訪問前の企業調査等の段階から熱
心にご指導頂いた先生方、スケジュール調整等をはじめ、様々な場面できめ細かく心を配
って下さった事務局の皆様に厚く御礼申し上げたい。
また、各参加学生が事前調査等の段階から精力的に取組み、高い意欲をもって本件研修
にコミットしたことが、本件研修をより充実したものにしたのだと思う。各参加学生に対
して心から感謝するとともに、各参加学生が本件研修から多くの収穫を得たことを祈念し
つつ、本稿の結びとしたい。
以上
金融プログラム
インドネシア海外研修プロジェクト
学籍番号 CM110204
氏名
石川
あゆみ
1.はじめに
数ヶ月に亘る事前準備と8日間のインドネシア視察を終え、本研修が非常に有意義なもの
であったことを噛み締めている。私にとってインドネシアは正に未知の世界であった。経
済はもとより、文化も歴史も政治的背景についてもほぼ無知な状態であったけれども、新
世界への興味に突き動かされ研修への参加を志願した。それ故、曇りなき眼でインドネシ
アという国を調査し、現地を視察できた。新世界は私に数えきれない程新しい知見を獲得
させてくれた。また本研修は、一介の学生である我々が普段であればお目にかかれないよ
うな海外ビジネスの最前線でご活躍されている社会人にお会いできる貴重な機会であった。
そのような方々のお言葉には経験に裏打ちされた深みがあり、自分達の目で現実を見るこ
と以上に深く考えさせていただく機会となった。
本研修を通じて得た数多くの知見の中でも、私にとって特に印象深かったものとそれに
基づく考察の一端を以下二点にまとめ詳述する。
2.経済発展の初期段階における市場から得た気づき
本研修の最大の成果の一つとして、経済成長の初期段階にある地ならでの知見を得られ
たことが挙げられる。我々は、日々様々な理論を学び、また時には講義の一環としてゲス
トスピーカーの方のお話を伺うなどの機会を通じて自らの経営的思考の鍛錬を試みている。
しかしながら、日本という成熟市場を前提とした環境のもとだけでは、社会の新たな見方
を理解することは容易でない。世の中の事象をより大局的に捉えるためには、普段とは異
なる状況に目を向けることが我々にとって重要なことであると思われる。その点でインド
ネシアは、広い視野の醸成を促す恰好の場であったと言えよう。ここ十数年の間に他の
ASEAN諸国と比較しても、インドネシアは急速に経済成長の階段を登り始めている市場であ
る。実際、現地に身を運んでみると、まだまだ多くの不確実要素が内在されながらも、将
来の成長性から期待される無限の可能性に高揚感を覚えた。これは成熟市場の環境に慣れ
てしまった我々にとって非常に新鮮な感覚であった。さらには我々が無意識のうちに捕わ
れていた、成熟市場を前提とした固定観念から解き放たれたように思う。
また、成長段階の異なる市場を比較することにより新たな視点を獲得できた。幸運なこ
とに私は、昨年度も本研修に参加させていただき香港・北京に訪問した。近年成長著しい
アジア諸国の中でも発展段階の異なる中国とインドネシアの両地を視察できたことは、経
済の成長段階別における成長戦略を考える上で示唆に富む経験であった。経済が成熟して
いない地において企業は市場をゼロから創り上げていかねばならない。そのためには、マ
クロ環境の動向を予想することは勿論のこと、それと同時に各事業体の持つ能力を相互的
に連携させることで市場形成に不可欠な基盤を確立していくことが必要である。これは、
既に立ち上がっている市場に自分達のビジネスをフィットさせていく場合とは全く異なる。
ゼロから市場を作り上げていく作業は、経済成長の初期段階にある市場であるからこそ中
心的な課題であると思われる。具体的な例を述べるとすれば、事業会社と金融機関、政府
機関による三つ巴の連携が挙げられよう。市場を作り上げる上で、一企業が独力でできる
ことには限界がある。中でもインフラ関連は適当な例の一つであろう。まず、新たな成長
機会を求めインドネシアへ進出する事業会社が現れ、それに付随して彼等を金融面からサ
ポートする金融機関が市場形成に乗り出す。しかしながら、製造現場の動力確保や物流経
路の確保、さらには物理的な人の流動性がなければ、企業の乗り出す市場の歯車が廻り始
めることは困難である。インフラ整備が為されてこそ市場成長の歯車が動き出すのである。
インフラが整備されるまで手を拱いていては、企業は成長機会を逃してしまう。本研修に
おいて訪問させていただいたJBICジャカルタ駐在員事務所様、JICAインドネシア事務所様、
伊藤忠商事様、三菱重工様は様々な形でインフラ整備に関わっておられた。このような方々
の活動は、インフラ整備を単なるビジネスチャンスとして捉えているのではなく、インド
ネシアを市場として成長させようとする意図を内包していた。またみずほコーポレート銀
行様は、インドネシア政府と結びつきの深いインフラ整備に関わる企業・機関から弛まぬ
情報収集を行うことで、事業会社に対し融資のみならず事業展開のサポートも行っている。
このように様々な立場の方から聞いたお話から包括的に考えると、インドネシアにおける
事業展開の裏側では、事業会社と金融機関、政府機関の相互的な連携が行われているとい
う実態を知るに至った。そしてなにより、現地の日系企業・機関が新市場を攻略していこ
うという目的のもとに団結している姿勢を見て感慨深く感じた。
経済成長の初期段階にある新興市場では、経験や実績の蓄積がない分、情報・資金など
様々な点において連携が必要となる。そのような相互連携を進める上で、単眼的な思考に
陥ることなく多角的なものの見方をすることが重要なのだと改めて実感させられた。
3.日本とインドネシアの関係
本研修に参加するにあたり、我々研修メンバーは多くの時間をかけてインドネシアの経
済・政治・金融システムについて勉強してきた。日本で調べられることは日本で、そして
現地では現地でしか得られない情報・知識を得ようとする姿勢で臨むことで、本研修から
得られる経験を最大限に吸収しようと試みたのである。テレビ・新聞・インターネットな
どのメディアを通して、またアジア経済研究所の濱田美紀様のご講義を仰いで、インドネ
シアの現状に関してできる限りの情報を収集した。こうした準備の中で、インドネシアに
おいては日本製の自動車・二輪車や家電製品などが高いシェアを占めている事実を把握し
ていた。このような高シェアはインドネシア人の親日感情の表れであろうという一部意見
もあったけれども、私にとっては現実味がなく、そのような親日感情に関してさほど気に
留めていなかった。しかしながら実際想像していた以上に日本に対する興味・関心は高か
った。実際に現地の人の様子をこの目で見て、彼・彼女等と一緒に働いている日本人のお
話を聞くと、訪尼前に抱いていた以上にインドネシア人の親日感情が高いことを実感させ
られ驚いた。その反面、日本からのインドネシアに対する興味・関心は相対的に低いと感
じた。恥ずかしながら私もそうであったように、多くの日本人はインドネシアについての
情報や知識に疎いばかりか一般的な興味・関心の度合いもさほど高くないように思える。
確かに成長市場という点で、ビジネスチャンスの場として同国に関心をよせる日本企業は
増えてきている。しかしながら一般の日本人の認識レベルで言えば、一方通行の友好意識
であるのが現状であるように思われる。このままの状態であることは、日本とインドネシ
アが政治的にも経済的にも良好な関係を構築していく上で好ましいとは言えない。ビジネ
スに関しても双方向の交流が実現されてこそ、日本とインドネシアの相乗的な経済発展に
繋がると考えられる。
近年、世界中で日本企業のプレゼンスの低下が危惧されている。こうした状況の中で日
本製品が高シェアを維持している上に、多くの人が親日感情を抱いているインドネシア市
場の存在は貴重である。そのような親日感情はある意味で貴重な無形資産として捉えられ
るべきであろう。友好的な感情は両国の歴史に根ざしたものであり、一朝一夕に確立され
るものではない。両国の今後の関係性の鍵となり得るこのような「芽」の存在を知ったこ
とも、現地にて自分の目で現実を見る本研修だからこそできた発見であった。
4.謝辞
最後に、本研修に御協力下さった全ての方々に、この場を借りて深く御礼申し上げたい。
本研修をご支援してくださったみずほ証券様には、本学の活動に対する深いご理解とご支
援に対して深く感謝致したい。またご多忙の中貴重なお時間を割いてくださった訪問先企
業・機関の方々、如水会ジャカルタ支部の皆様方には自らの目で現実を確かめる機会をい
ただいた。鹿島建設の曽我隆一郎様におかれましては、如水会との架け橋となり訪問先の
アレンジや懇親会のセッティングにご尽力いただいたことに、重ねて御礼申し上げたい。
本学OBの方々のネットワークの強さを実感すると共に、このような素晴らしい先輩方に恵
まれ、本学の学生であることを改めて誇りに感じた。また本研修は、単に現地を訪問する
のみならず、綿密な準備があったからこそ我々学生と訪問先との間で活発な議論が引き出
され、その結果、有意義な経験を得るものとなった。その点において、事前準備の段階か
ら現地への引率まで長期に亘りご協力をいただいた小川先生・三隅先生・高岡先生、並び
に事務局の大和田様・福井様に、特に深く感謝致したい。このように多くの方々の温かい
ご厚意のもと成り立った本研修から得た経験を真の意味で自分達の血肉としていかねばな
らない。我々は、この貴重な機会を土台として新たな知識体系を自分達の中に確立するよ
う、今後も努力を継続していく所存である。最後に、意欲的に本研修に参加し切磋琢磨し
た仲間達に敬意と感謝の意を表し、本稿の結びとしたい。
以上
金融プログラム
インドネシア国際研修
CM110211
今藤
峻裕
1. はじめに
私が本研修に参加した理由は、社会に出る前にこれから先ますますの経済発展が見込ま
れる活気あふれたインドネシアの空気を直接肌で感じることで視野の拡大を図れる貴重な
機会をぜひ活かしたいと考えたためである。
「実際に現地に赴いて体感したことに勝るもの
はない」ということを私は常に意識して生活している。高度な情報インフラが普及した今
日では日本にいながらにもある程度の情報を入手することが可能である。しかし、そのよ
うな情報だけでは生の情報にはかなわない。今回の研修では普段の個人的な旅行では訪問
することのできない、また、お話を伺うことのできない現地でビジネスに携わっている企
業を訪問することができるという点が魅力であり、かつ、一番の収穫であるといえよう。
以下、本稿ではすべての訪問先を個別に述べるのではなく、研修全体を総括的に述べるこ
ととする。
2. 活気あふれるインドネシア
インドネシアに到着後、最初に目についたものは、自動車・二輪車ともに普段見慣れた
日系メーカーの車両があたり一面に走行していたことである。自動車だけを見れば「ここ
は日本国内ではないのであろうか?」と錯覚するくらいであった。スカルノ・ハッタ国際
空港に到着後、ジャカルタ市内に向けての移動中にすれ違う自動車や二輪車は 9 割 5 分以
上日系メーカーの車両であった。私は調査班で曙ブレーキ工業を担当していたこともあり、
インドネシア国内の自動車・二輪車シェアについて事前に調べた際にほぼ 100%日系メーカ
ーであった点に驚きを感じ、実際現地で走行している車両をみて再び驚きを感じたと同時
に誇りを感じた。
曙ブレーキ工業では、実際に工場内部を見学させていただき、従業員の方々が真剣にも
のづくりに取り組んでいる姿勢から、インドネシアでも着実に生産技術や管理能力が向上
しているのだという実感を得た。また、現地の従業員の方々の働く環境の改善を行うこと
も不良品率の低減につながる要素の一つであるということから、ヒトという経営資源を大
切にすることが大切であることを再認識した。
ジャカルタ漁港では、ジャカルタ漁港内の施設の見学に加え、建物の屋上から港全般を
見渡すことができた。港では漁船がたくさん係留されており、インドネシアの重要拠点で
あることを漁船の多さから感じとることができた。港内の施設を見ていると、まだまだこ
れから伸びしろがあると感じた。今後、インドネシアの現地の方々が主導して漁港の運営
が行えるようになるとますますの発展につながると期待されよう。ジャカルタ漁港のプロ
ジェクトに長年にわたり携わってきた折下様のお話の中で、
「プロジェクトは子どもと同じ」
と仰っていた点が特に印象に残った。関わったプロジェクトに最後まで携わるという姿勢
は今後の自分自身の生活に活かしていきたいと思う。
インドネシアの如水会の方々との懇親会では、現地で活躍されている一橋大学の卒業生
の方々の生の声を聴くことができ、現地に駐在している人の目線でインドネシアの現状に
ついてお話していただいたり、質問にも丁寧にお答えいただいたことによって、より一層
インドネシアを理解することにつながったと考える。懇親会を開催してくださった如水会
関係者の皆様に深く御礼申し上げます。
その他の企業におけるお話においても、インドネシアの経済成長は力強いものであり、
これから先中間所得層の層が厚くなってくるとますます消費が活発になるだろうという期
待感のある市場であるということが話題に上がっていた。また、インドネシアの国民の平
均年齢が 27 歳程度であり非常に若い国であり、いわゆる「人口ボーナス」が当面期待でき
る点も魅力的であるということもプラスの話題である。
今回のインドネシアでの研修を通じて感じたことは、インドネシア国内に溢れる日系メ
ーカーの製品の多さである。このような事実を知っている日本人はあまり多くないように
思う。私たちはこの事実をもう少し知っておくべきであると思う。現在は日系メーカーの
シェアが圧倒的であるものであっても、経済発展とともに外国企業などの他企業との競争
が激化していくこれからが本当の勝負となるであろう。日系メーカーがこれから先も高い
シェアを維持していくためには、インドネシアに根付き、現地でモノづくりを行う現場を
まずは重視すべきであると痛感した。いくら立派な戦略を立案したとしても、現場がうま
く機能していないと戦略はただの絵に描いた餅になってしまう。現場で働く従業員のモチ
ベーションを維持するためには、すべてにおいて日本式を押し付けるのではなく、現地の
環境に合わせた運営を行うべきであろう。
今回のインドネシアでの研修では、日本では見られないような高い潜在的な成長力が見
受けられる機会が数多くあった。今日では日本企業の進出が中国からインドネシア、タイ
などの ASEAN 地域へシフトしてきており、重要性が増す一方の国々である。インドネシ
アと日本の関係は良好であると考えられるので、これから先も良好な関係を維持し続ける
ことが日本の内需の伸びに期待できない企業にとって新たな有望な市場を確保するという
点で重要になってくるであろう。
3. 最後に
今回、このような研修を成功裏に終えることができたのも、各方面の方々のご尽力によ
るものが大きいと考える。末筆ながら、この場を借りて御礼申し上げたい。特に、本研修
に対して支援をいただいたみずほ証券様、訪問先のアレンジメントをしてくださった如水
会関係者の皆様、訪問先企業の皆様、先生方、円滑な研修を行えるようにスケジュール調
整を行ってくださったオフィスの皆様に心より御礼申し上げます。また、研修参加メンバ
ーの皆様、本当にありがとうございました。
金融プログラム個人レポート
CM110216 小口 修平
1. はじめに
私が本研修への参加を決めた動機としては、以下の 2 点が挙げられる。第 1 点目として
は、金融に関する包括的な知識の獲得が挙げられる。私は、修士論文において、M&A に関
する分野を研究対象にしようと考えていた。こうした分野を研究するに当っては、金融に
関する包括的な知識が必要とされると考えたため、本研修への参加を決めた。第 2 点目と
しては、実際の仕事の現場を自分の目で確認したかったことが挙げられる。ワークショッ
プにおいて、お世話になっている指導教授である円谷准教授より、机の上で学んでいるだ
けでは分からないことが沢山あるということをご指導頂いた。去年の研修報告書を拝見さ
せて頂くと、工場を見る機会•現場の方からお話を聞く機会が多くあるということ、つまり、
本研修が机の上では学べないことを学ぶ大変良い機会になると考えたため、本研修への参
加を決めた。以下では、こうした動機から参加した本研修を通して得た知見について詳細
に述べて行く。
2. 本研修を通して学んだこと
上述通り、本研修に参加を決めた動機の 1 つとしては、仕事の現場を自分の目で確認し
たかったことが挙げられる。そこで、本稿においては、工場見学を通して得た知見及び現
場の方のお話から得た知見について詳細に述べて行く。
第 1 に、工場見学を通して得た知見としては、コスト削減の手段として捉えられている
海外進出•海外生産の現場において、従業員に配慮する取り組みが多数なされている点が挙
げられる。日系企業が海外展開する際の動機としては、一般的に海外の低価格な労働資源•
土地を活用したコスト削減が挙げられる。それ故、暗黙的に、海外の生産拠点においては、
コストを下げるための取り組みが徹底されていると考えていた。しかし、実際に曙ブレー
キの工場を見学させて頂くと、現地の従業員に配慮した取り組みが多数なされていた。ま
ず、宗教に関連した配慮として、工場内における祈祷所の設置が挙げられる。インドネシ
ア人口の大半が信仰するイスラム教では、一日に数回神に対してお祈りをする必要がある。
こうしたインドネシア国民のために、曙ブレーキには、祈祷所が設けられていた。次に、
労働環境に対する配慮として、工場の天井を高くする取り組みが挙げられる。赤道直下に
あり、一年を通して暑いインドネシアの工場内は、極めて高い温度になる。こうした工場
において、曙ブレーキは、従業員の人々が少しでも働きやすいようにと、工場の天井を高
めに設計していた。このように、コスト削減の手段として用いられている海外の生産拠点
において、現地の従業員に配慮した取り組みがなされているということは、海外研修を通
して得られた知見であった。
第 2 に、現場の方のお話から得た知見としては、インドネシアにおけるインフラ整備が
根深い問題を抱えているといった点が挙げられる。インドネシアにおいて、インフラ整備
が進まない理由として、独立行政法人国際協力機構(以下:JICA)の松永様は、地方分権
化に伴う中央政府の政策推進能力の低下と中央政府のリーダーシップの欠如を挙げていた。
地方分権化に伴う中央政府の政策推進の能力の低下に関して、松永様は、
「首都圏投資促進
特別地域開発構想に含まれるカラワン新空港開発プロジェクトにおいて、地方自治体の認
可が下りずに計画が進んでいない」とおっしゃっていた。また、中央政府のリーダーシッ
プの欠如に関して、松永様は「中央政府のリーダーシップが欠如しているため、PPP 案件
が入札途中で国営企業案件に変更されるという方針のブレが生じている」とおっしゃって
いた。この様な現場の方のお話を通して、インドネシアにおけるインフラ整備が根深い問
題を抱えているということが再確認できた。以上、2 点が工場の見学及び現場の方のお話か
ら得た知見である。
3. 纏め
今回の研修では、金融に関する包括的知識の獲得と実際の仕事の現場を自分の目で確認
する事といった当初の目的を達成できたと考える。特に、後者については、現場を自分の
目で見ることによって、多くの知見を得られたと感じている。また、こうした目的以外に、
インドネシアの文化•政治•外交といったについても学習できたため、非常に有意義な研修
であったと感じた。
4. 最後に
最後に、本研修を御支援して下さったみずほ証券様をはじめ、ご多忙の中貴重なお時間
を割いて下さった訪問先企業の方々、丁寧なご指導をして下さった小川先生•三隅先生•高
岡先生、事務局の大和田様•福井様には、心より御礼申し上げます。
金融プログラム インドネシア国際研修
cm110238
髙橋亮介
1.本研修の参加目的
今般の金融プログラム・インドネシア国際研修(以下、本研修)に私が参加した目的と
して、以下の三つが挙げられる。
一つ目の目的は、私が所属する生命保険会社にとってインドネシアは将来有望なマーケ
ットの一つであり、その市場を自分の目で見て肌で感じることである。約 2 億 4 千万人の
人口を抱えるインドネシアの生命保険市場は近年成長を続けており、将来的にも大きな発
展が見込まれる。そのインドネシア市場を文献やインターネット上の情報だけではなく、
自分の目で見て肌で感じることができる本研修は、私にとって有益になると考えた。
二つ目の目的は、その将来有望なマーケットにおいて、先行して活躍している企業の従
業員の方の生の声を聞くことである。机上の調査によって確認できることは多々あるもの
の、実際に現地で活躍している企業の従業員の方から直接話を伺えることは大変貴重な機
会である。それが実現できる本研修は、私にとって有益になると考えた。
三つ目の目的は、本研修を継続的な英語学習をする上でのモチベーションを高めるきっ
かけにすることである。成熟した日本企業が今後成長していくための一つの鍵として、新
興国の成長を自社の成長に取り込むことが挙げられる。この問題は私が所属している生命
保険会社にとっても、非常に重要な問題である。海外に進出していく上でのコミュニケー
ションツールとして、英語は最も重要な言語である。私にとって英語の継続的な学習は必
要であり、本研修は継続的な英語学習のモチベーションを高めるきっかけになると考え、
研修に参加した次第である。
今、本研修を終え、多くのご関係者の方々にご尽力をいただき、当初の目的を果たすこ
とができた。本研修を通じて、大変有意義な時間を過ごすことができたと私は考えている。
2.本研修に参加して特に印象に残ったこと
(1)インドネシア市場は活気があり、疑いなく将来性のある市場であること
様々な文献で触れられていることであり、大変陳腐な感想になってしまうものの、イン
ドネシアに来て特に印象に残ったことは、街中に若い人々が溢れ、活気があることである。
道路は物凄い数の自動車やオートバイで占められ、多くの若者が街中を行き交っている光
景は、ジャカルタに初めて訪問した私にとって非常に印象的なものであった。さらに自動
車やオートバイの多くが新しくそのほとんどが日本製であったことから、インドネシアは
親日国であり、日本にとって非常に有望な市場であることを私は肌で感じることができた。
着実に少子高齢化が進んでいる日本と比較すると、インドネシアは対照的な状況にある。
成熟した日本企業にとって、親日派であるインドネシア国民を自社の顧客として取込むこ
とができるか否かが自社の成長を決める一つの要素になると、移動中のバスの中から、街
中に行き交う多くの日本製の自動車やオートバイを見て私は強く感じた。
(2)インドネシアには現地特有のビジネスリスクがあること
前述の通りインドネシアは疑いなく将来性のある市場である。その一方でインドネシア
特有のビジネスリスクが数多く存在することを本研修で私は知ることができた。具体的に
は、地震・津波・噴火リスク、水災・大洪水リスク、労働争議・暴動が発生するリスク、
テロが発生するリスク、鳥インフルエンザリスク等が挙げられる。これらのリスクに関し
て、PT.ASURANSI TOKIO MARINE INDONESIA 様から詳しく話を聞くことができた。
なお上記で挙げた「労働争議・暴動が発生するリスク」に関連するものとして曙ブレーキ
工業様からも貴重な話を聞くことができた。それは、同社と Astra 社との共同出資会社で
ある PT. Akebono Brake Astra Indonesia では、同社が生産・技術面を管理している一方で、
地場企業である Astra 社が人事・経理面を管理しているということである。労働者との対
話を行なう上で、人事管理者は外資企業よりも地場企業である方が問題を深く知ることが
できると思われる。これらの話から、インドネシア特有のリスクを回避するためには、進
出企業は、現地に精通した有力なパートナーと手を組み協働していく必要があると感じた。
(3)グローバルに活躍するために英語+αの語学力と物怖じしない度胸が必要であること
本研修中、英語で議論が行なわれる企業訪問の場で常々、私は自身の英語力の弱さを実
感し、継続的な英語学習が私にとって必要であると強く感じていた。本研修中にそのよう
に痛感していた私にとって印象深く感じたのは、在インドネシア日本国大使館での鹿取大
使の講演である。鹿取大使は大変ご多忙中にも拘らず、時間を割き我々に講演していただ
いた。その講演の中で二つのメッセージがあり、それらは若者に向けたものだったものの、
(若くない)私にとっても印象深いものであった。それらは、第一に、国際的に活躍する
ためには英語は出来て当たり前であり、さらに+αの語学力が必要であることである。第
二に、TPO(Time Place Occasion)を忘れてはいけないものの、相手がどのような肩書で
あろうと堂々と物怖じせずにコミュニケーションを取っていく積極的な姿勢が重要である
ことである。半年後に所属企業に戻るため、今後、業務を抱えながらになるものの、MBA
で学んだ知識をブラッシュアップするとともに、コミュニケーションスキルに関しても継
続的に磨いていきたいと鹿取大使の講演を聞き、私は強く感じたところである。
3.謝辞
最後に、本研修にご協力いただきました訪問先企業・団体のご関係者・如水会のご関係
者・三隅先生・高岡先生・布井先生・安達さん・Reza さん・事務局の大和田さん・福井さ
ん・スポンサーとしてご支援いただいたみずほ証券様・そして井出団長・石川副団長に感
謝申し上げます。また、同じ調査班の宮崎さん・高橋(淳)さん・小口さんをはじめ、大
変優秀な皆様方と研修前の準備段階から研修期間にかけての数カ月の間、ご一緒させてい
ただくことができ、私にとって大変勉強になりました。本当にありがとうございました。
以上
金融プログラムインドネシア国際研修
学籍番号:CM110240
氏名:中條優子
【謝辞】
はじめに、今回の研修プログラムを支えて下さった多くの方に心より御礼申し上げます。
訪問を受け入れて下さった各企業や如水会の皆様の御支援のおかげで無事に本研修を終え
ることが出来ました。ダイキン工業様には、訪問に関する無理なお願いを受け入れて頂き、
感謝の気持ちで一杯です。ダイキン工業様訪問のアレンジメントをして下さった森本 毅様、
竹崎 万恭様に厚く御礼申し上げます。国際協力銀行の本間 学様には、講演や質疑応答の
みならず、個人的に非常にためになるアドバイスを頂きました。本間様に言って頂いた御
言葉を忘れずに、来春からの社会人生活も頑張って参ります。
本研修にご同行下さった小川教授、三隅教授、高岡准教授、そして事務局の大和田さん、
福井さんに深い感謝を申し上げます。御手数をお掛けした際も多々ありましたが、的確な
アドバイスや手厚いサポート等本当にありがとうございました。
また、今回の研修に参加された全ての学生に感謝申し上げます。今回の研修では、国際
協力銀行・BNI 班とダイキン工業班において班長を務めさせていただき、本当に貴重な経
験を積むことができました。昨年以上に責任感を伴う立場で戸惑った部分も多々ありまし
たが、班員の方々のサポートの御陰で充実した研修を過ごすことができました。モチベー
ションの高い方々との事前調査は非常に楽しく、個人的に多くを学ばせて頂きました。誠
にありがとうございます。
多くの方に支えて頂いた本研修では、非常に貴重な経験を積ませて頂いた。インドネシ
アの魅力を肌で感じ、現地で切磋琢磨されている多くの企業の声を伺うことができた経験
は、自身の財産になったと考える。以下では、本プロジェクトを通じて自身が強く感じた
点について述べていく。
1.魅力溢れるインドネシアと同市場における日系企業の活躍
インドネシアでは、同国の満ち溢れる活気と日本企業の競争力を目の当たりにした。現
在の日本ではなかなか感じることのできないインドネシアの活気は、研修中の様々な場面
で実感することが出来た。加速するインフラ開発について事前調査を行なっていたものの、
至るところで工事が行われている光景には非常に驚いた。平均年齢が若い同国では、街中
ですれ違う人々の目が輝いているように見えた。
この活気溢れる同国への直接投資額において、日本は常に上位を占めている。インドネ
シアにおける日本のプレゼンスの高さは、本研修を通じても強く実感することができた。
ジャカルタの街を歩くと圧倒されるのが二輪車の数であり、その大半が日本製である。日
本企業が新興国のボリュームゾーンを抑えられないと言われる中で、二輪車メーカー各社
は早くから市場に参入し、二輪車市場に浸透している。その他にも、インフラ・資源開発
や増加する中間所得層に対するビジネスなど、日系企業が活躍するチャンスはインドネシ
アの至るところに存在していた。
これらの日系企業のプレゼンスの背景には、日系各社がチームとして発揮する競争力の
高さが伺えると考えた。今回訪問をさせて頂いた企業では、共通する分野の話を多く聞か
せて頂くことができた。伊藤忠商事を始めとする総合商社は、鹿島建設や三菱重工業が携
わるインフラや資源開発のオーガナイザーとしての役目を担っている。それらに加えて、
総合商社は曙ブレーキ工業が携わる二輪車事業の販売金融も行なっている。みずほコーポ
レート銀行のジャカルタ支店では、インドネシアへ進出する日系企業に対して資金サポー
トが行なわれている。国際協力銀行では、資金調達といった面のみではなく、インドネシ
ア政府への対話を含めた日系企業の手厚いサポートが行われている。インドネシア駐在を
されている日本人の方々とお話をさせて頂く中でも、同国における強固な日本人ネットワ
ークの存在を実感することができた。このように、遠く離れた土地において、日系企業が
プレゼンスを高めている背景には、各社のチームとしての連携の強さが挙げられると感じ
た。今後もインドネシア市場が更なる発展を続ける中で、日系各社のみならず、官民連携
のチームジャパン体制を最大限活かしていくべきだと考える。
2.日系企業の現地化推進に対する姿勢
本研修では、進出先国への権限委譲を進める日系企業の姿勢に大変驚かされた。進出先
国や地域に合わせた経営体制を整える重要性は認識していたものの、自身が考えていた以
上に経営面の現地化が進んでいた。
PT. Daikin Air conditioning Indonesia 社では、日本人従業員は僅か 3 名で、全員がオブ
ザーバーとしての役割を担っていた。実際の現場における重要任務は、全てローカルスタ
ッフが行っているとのことであった。企業訪問時のプレゼンテーションも、ローカルメン
バーにチャンスを与えるためということで、全て彼らに任されていた。曙ブレーキにおい
ても、日本人はアドバイザーとしての位置付けであり、人材管理や法律関係は完全にロー
カルスタッフに一任されていると伺った。同社では、日本人メンバーとローカルスタッフ
が一緒になって、生産ラインの更なる改善に励まれている。これらの取り組みは、インド
ネシアにおける曙ブレーキのコスト競争力の高さに繋がっているそうである。曙ブレーキ
でお話を伺った柄澤 正人様も「インドネシアの曙ブレーキは、もう日本人が運営する会社
ではない」と述べられていた。従業員の方々の宗教を配慮した労働環境を整えるために、
同社の工場にはモスクが設立されている。
このように、信頼関係を構築した上で、現地従業員に「任せる」という経営体制は、進
出先国における消費者ニーズを汲み取る上でも非常に有益であると考える。現在、日系企
業の多くは、各国や地域ごとに異なる消費者ニーズを吸い上げ、それらを商品に反映させ
る力において、韓国メーカーに劣っていると考える。アジアの白物家電市場全体において
も、サムスン電子や LG 電子などの韓国企業が優勢となっている。今後の日系企業が消費者
側のニーズをしっかり汲み取った経営を行う上でも、現地社員に権限の多くを委譲し、彼
らの声が通りやすい環境を整備することは非常に有益であると感じた。
3.最後に
最後に、二年連続で金融プログラムに参加し、熱い夏を過ごさせて頂いたことを大変光
栄に感じている。個人的な反省を述べるとすれば、講演をして下さる方からより深い情報
を「引き出す」という姿勢を常に持つべきであったと感じている。今回の研修プログラム
では、訪問先企業に対する提言を行い、訪問当日に社員の方々とのディスカッションを行
うという目標を掲げていた。事前調査や質問状作成の段階においても、各企業の今後の展
開に関する仮説を立て、それを訪問時に検証するという姿勢で臨んでいた。しかしながら、
訪問時のセッションにおいて、各企業の方々とのディスカッションを発展させることには、
少々難しさを実感した。自身の力不足で悔しい思いをしたものの、相手から深い情報を引
き出すために自身がしっかりと方向づけを行うことの重要性を、改めて強く認識すること
ができた。
日本国外で活躍されている方々からの数々のお話は、自身にとって大きな刺激となった。
その中でも、来春より金融機関で勤務をしていくモチベーションが非常に高まったことは、
自身にとって特に有益であった。忙しい中にも関わらず私たちのために時間を作り、貴重
なお話をして頂いた皆様には、心から感謝をしている。私自身も、いつの日か自分の仕事
について熱く語れる、そのような社会人になれるよう精進していきたい。
成長著しいインドネシア
cm110244 長沢息吹
今回の金融プログラムにおけるインドネシア研修で私が強く感じたのは、第一にインドネ
シアという国がもつ将来性の有望さ、第二にインドネシアにとっての日本の存在感の大き
さである。
インドネシアでは現在、様々な産業が着実に育ってきている。日本企業に限らず、多くの
外資系企業が参入するインドネシア市場は、規模の面でも成長率の面でも世界中から注目
を浴びている。そうした市場の拡大や産業の発展を背景として、インドネシアには数多く
の金融機関が存在している。それと同時に、インドネシアにおける金融機関の重要性が以
前にも増して増大していることは明らかである。インドネシアの金融機関は、リーマンシ
ョックの際に非常に大きな役割を果たしたということを、現地の方々とのディスカッショ
ンの中で窺い知ることができた。インドネシアという国が今後一層の成長を遂げるために、
産業を支えるインフラとしての金融機関の支援が欠かせない。将来的にインドネシアにお
ける金融インフラが整備されることで、インドネシアの経済を含めた社会がより大きく発
展することが期待される。
インドネシアでの研修期間中、現地の方々から幾度となく話しかけられることがあった。
空港、ホテルの周辺、観光地、また訪問先の企業を移動する間に、こちらが日本人という
ことを分かった上で、気さくに声を掛けてくれる。私が現地で抱いた印象は、インドネシ
アは極めて親日的な文化を持つ国だということである。他の東南アジアの国々では、多か
れ少なかれ日本人は警戒され、日本人を親しみの対象ではなくお金をくれる人としてしか
見てもらえないこともあるという。しかし、インドネシアではそのようなことはなく、基
本的に日本人というだけで非常に好感を持って接してくれる人がほとんどだった。
日本はこれまでインドネシアに対して ODA 等による援助を数多く行ってきた。また、イン
ドネシアでは日本の歌やアニメが人気で、大人から子供まで日本に親しみを持っているの
はこうした理由からだという。そのような日本がこの先インドネシアに対して担っていく
役割は大きいものである。インドネシアの経済発展が著しいとはいえ、インドネシアはま
だまだ多くの課題を抱えている国である。その最たる例として、インフラ整備が挙げられ
る。
インドネシアに滞在中、何度か交通渋滞に巻き込まれることがあった。インドネシアの道
路は、首都のジャカルタでさえも完全に整備されているわけではない。特に、朝のラッシ
ュ時や夕方の帰宅ラッシュの時間には、多くの道路がキャパシティ不足に陥ってしまう。
この大きな理由は、インドネシアにおける一人当たり年間所得が年々増加傾向にあること
で、車またはバイクの所有数が増大し、それによって交通量が増えたことである。このよ
うな事態に対して、インドネシア政府は道路のキャパシティを増やすことを中心に据えた
交通インフラ整備計画を立てているが、なかなか思うように進んでいないというのが現状
のようである。インドネシアの安定成長を妨げないためにも、インフラ整備を着実に行っ
ていくことが、インドネシア政府としての喫緊の課題であるように思われた。
インドネシアにとっての日本は、こうした政府が考案する政策の実行の際にも助けとなる
ことができるのではないかと私は考える。日本も以前はインフラの整備が十分にされてい
なかった。そうした状況から現在のようなインフラ網を構築してきたことで蓄積したノウ
ハウをインドネシアと共有するなど、日本としてインドネシアのためにできることがまだ
まだあるように思われる。
このように、今回のインドネシア研修は、これまで触れることが決して多い国ではなかっ
たインドネシアという国の将来について考えるきっかけとなった。今後、大学院を卒業し
て仕事をする際に、今回の研修で学んだことを生かしていきたいと考えている。
金融プログラム インドネシア国際研修
学籍番号 CM110256
氏名 前田 裕樹
<謝辞>
初めに、本研修にご協力いただいた皆様に感謝を申し上げたい。お忙しいところ訪問を
快諾していただき、貴重なレクチャーまでしていただいた訪問先企業及び機関の関係者の
皆様、引率だけでなく事前準備にも参加いただいた小川先生・三隅先生・高岡先生、また
研修の企画及び運営に尽力いただいた事務局の大和田様・福井様、そして本研修にご支援
いただいたみずほ証券様、その他すべての関係者の皆様に心より感謝いたします。本研修
を非常に有意義なものとすることができましたのは、ひとえに皆様のご協力とご支援があ
ったからです。本当にありがとうございました。
以下、僭越ながら本研修を通じて私自身の感じたこと、考えたことについて記述させて
いただき、本研修の報告としたい。
1. はじめに
私が本研修に参加したのは、ここ数年で新聞や雑誌等のメディアで取り上げられる機会
の急増したインドネシアへの興味からである。一部では中国・インド・ブラジル・ロシア
のいわゆる”BRICs”にインドネシアを加えた”BRIICs”という呼称も用いられるほど、日本
及び世界からのインドネシアに対する注目度は高まっている。一方で、私をはじめ多くの
日本人にとってインドネシアは馴染み深い国とは言えないのが現実である。そのような中
でこの度の研修に参加させていただき、現地の多くの企業及び機関を訪問し多くの方々に
直にお話を伺うことができたのは、非常に貴重な経験であった。加えて、私自身は昨年度
の本研修プログラムにも参加させていただいており、その際に訪問した中国(北京・天津)
と今回のインドネシア(ジャカルタ)との比較ができたことも非常に有益だったと感じて
いる。2 年続けてこうした機会を得ることができたことに関しては、重ねて関係者の皆様に
感謝を申し上げたい。
以下では、まずインドネシアの魅力と課題を整理し、その上で日本企業のインドネシア
進出について私自身の感じたこと、考えたことを述べる。
2. インドネシアの魅力
インドネシアの魅力を一言で表すならその「ポテンシャル」であろう。インドネシアは
約 2 億 4 千万人と世界第 4 位(2011 年時点)の人口を抱えながらも若年層人口が多く、綺
麗な三角形の人口ピラミッドを形成している。また 1 人あたり GDP は 2011 年に 3,000 米
ドルを突破したばかりであり、購買意欲の高い中間層人口はこれから急拡大していくとさ
れている。この実際にジャカルタの街中を眺めてみても圧倒的に若い人が多く、またショ
ッピングモール等の商業施設はどこも非常に活気に沸いている印象を強く受けた。最近に
なってこのインドネシア経済が世界から注目され始めたのは、2008 年の金融危機をきっか
けとした世界的な景気減速の影響をあまり受けずに安定的な成長を続けたためである。そ
の要因こそ、輸出に依存していない内需中心の経済構造であり、インドネシア経済が今後
も力強い成長を続けていくと予測されている根拠でもある。
3. インドネシアの課題
以上で述べたようにインドネシア経済は一見すると順風満帆なように見える。しかし、
その実抱えている課題も今回の訪問でいくつか目についた。ここではその中でも特に私の
印象に残った 2 点の課題について触れる。
1 つめは圧倒的に不足しているインフラである。今回は幸いにも研修中にひどい渋滞に巻
き込まれることはなかったものの、現地の方々に伺うとジャカルタ市内の渋滞事情は悪く
なる一方で改善の兆しが一向に見えないといった、半ば諦めたような悲観的な意見が多く
聞かれた。インドネシア政府も当然対策に取り組んでいるはずなのだが、急増する交通需
要にインフラの整備が追いついていないのだろう。
2 つめは拡大する格差の問題である。ジャカルタ市内では日本とほとんど変わらない価格
の商品が並ぶショッピングモールで買い物を楽しむ人々がいる一方で、ボロボロの服を着
て路上でゴミ拾いをしている子供や物乞いを至るところで目にした。これは昨年度の中国
でも感じたことであるが、経済成長の恩恵を授かることのできない人々をどうするのかと
いう問題は成長著しい新興国共通の課題になっている。特にインドネシアは前述のとおり
若年層に偏った人口構造をしているため、貧困・失業の問題は将来的に大きなリスクとな
る可能性が高いと感じた。
4. 日本にとってのインドネシア
ここまで概論的にインドネシアについて述べてきたが、それでは日本企業もしくは我々
のような日本のビジネスパーソンにとってインドネシアはどのように位置づけられるだろ
うか。結論から先に述べれば「インドネシアは日本企業もしくは日本のビジネスパーソン
にとって非常に活動しやすい環境である」と考える。以下、その理由として 3 点あげたい。
まず 1 点目はインドネシアが非常に親日的かつ知日的である点である。インドネシアに
おいてもアニメや某アイドルグループをはじめとした日本のポップカルチャーは広く浸透
しているおり、日本のスポーツ選手(特にサッカー)等もよく知られている。また日本の
ブランドにも親しみを持っていて、日本語を学んでいる学生も多いと伺った。歴史的にも
戦時中の日本の侵略行為が植民地支配からの解放に繋がったこともあり、少なくとも中国
や韓国といった近隣諸国のように悪い印象を持たれていない(もちろん一部では否定的な
意見も存在するが)。
2 点目は日本との関わりが非常に深い点である。インドネシアにとって日本は最大の輸出
相手国であり、非常に重要な貿易相手国である。また政府開発援助(ODA)の最大援助国
でもある。草の根レベルでの協力も頻繁に行われている。また現在の政府の要職を務めて
いる方々には、日本への留学経験のある方が多いという話を伺うこともできた。私を含め
日本人の多くにとって馴染みのないインドネシアであるが、インドネシア人にとって日本
は非常に馴染み深い存在となっている。
そして 3 点目は長いこと日本企業がビジネスを行なっている点である。グローバル化の
進展によって世界のあらゆるところで活動が可能になったことで、企業は成長著しい国・
市場に資源を投入して効率良く収益をあげることが当たり前となっている。インドネシア
もここ数年の高成長によって、日本以外の外資系企業もこのチャンスを逃すまいと続々と
現地に進出してきている。しかし、遡って 15 年前はどうだっただろうか。アジア通貨危機
でインドネシアにも深刻なダメージを受け、社会不安が広がりスハルト政権の崩壊へと繋
がった。当時インドネシアに進出していた多くの外資系企業も撤退し、特に製造業はその
後中国等にシフトした。しかし、そんな中でも多くの日本企業はインドネシアで事業を続
けてきたのである。今回訪問させていただいた伊藤忠商事様でのレクチャーの中で「日本
企業の強みは、長年インドネシアでビジネスをしてきたことで築きあげられてきた信頼関
係である」というお話を伺うことができたが、まさにそのとおりであろう。
このようにインドネシアは日本企業や日本のビジネスパーソンにとって活動しやすい環
境が揃っている。日本国内ではインドネシアへの進出に関して”チャイナリスクの分散先の
1 つ”や”BRICs に続くマーケット”という文脈で語られることがまだ多いが、個人的には日
本にとってそれ以上の存在になる可能性を感じた。それも 30 年以上にわたってジャカルタ
漁港のプロジェクトに関わっているコンサルタントの折下様をはじめ多くの日本人の方々
の努力と実績によって形作られたものである。こうした多くの先達たちの築きあげてきた
信頼という財産をこれからの日本を背負っていく我々が無駄にしてはならないという思い
を強くした。
5. おわりに
私は本年度に無事卒業できれば、金融機関に戻って業務に携わることになっている。今
回の訪問したインドネシアは金融市場の規模がまだ小さいこともあり、正直なところ昨年
度の中国訪問時と比べて金融面に関して新たに得たことは少なかった。しかし、改めて本
研修を振り返ってみると、金融という枠にとらわれることなく広い視野でインドネシアと
いう国を見ることができたのではないかと思う。私個人としては今回の訪問を受けてイン
ドネシアという国をもっと知りたい、理解したいという思いを強くした。また、ビジネス
に限らずあらゆる事業活動において効率性や収益性だけでなく”人間と人間との関係”とい
う要素も重要なのだと気付かされたという点では、昨年度以上に得るものが大きかったの
ではないかと感じている。
今回、多くの方々のご協力とご支援のおかげで貴重な体験をさせていただいた。最後に
改めて本研修に関わった皆様に感謝の意を表して、本稿の結びにかえたい。
以上
金融プログラム「インドネシア国際研修プロジェクト」
CM110262
宮崎
賢輔
1. はじめに
2012 年度の HMBA 金融プログラム「インドネシア国際研修プロジェクト」は、8 日
間の日程でインドネシアに拠点を置く金融機関・企業・政府関連団体を訪問するという
ものであった。本研修は 8 日間で 15 の企業・団体を訪問するというタイトなスケジュ
ールであったものの、それぞれの訪問先で聞く話はどれも新鮮で含蓄に溢れ、非常に有
意義な研修であったと実感している。以下では、本研修プロジェクトで訪問したインド
ネシアについて述べると共に、その中でも特に印象に残った訪問先について、私自身が
感じたことを述べていきたい。
2. インドネシアについて
インドネシアは世界第 4 位の人口を抱え、中間層 1 の拡大が続いていることから、近
年有望な市場として世界の注目が集まっている。インドネシアの 2011 年の名目GDP総
額は 8343 億$であり、タイ(3456 億$)の 2 倍以上の経済規模を誇り、中国・インド
に次ぐ規模にまで至っている。インドネシア経済の展望が極めて明るいことや、市場と
しての魅力が高まっていることを、本研修の事前準備を進めるなかで理解はしていたも
のの、実際に現地に降り立ってみると、インドネシアの活気は事前調査以上のものであ
ることを実感した。
現地でまず最初に目についたのは、新しい日本車が数多く走っていることである。事
前の調査により日本車のシェアが高いことは理解していたものの、実際にジャカルタ近
郊の道路をきれいな日本車ばかりが走っていることに驚きを感じた。事前の想定では、
走行している自動車は古い型のものばかりで、自動車よりもバイクの数の方が圧倒的に
多いのではないかと考えていたにも関わらず、古い車両はバスくらいで、乗用車はほぼ
日本と変わらない程度の新しい車両であった。また、バイクの走行量もジャカルタ中心
部では自動車とほぼ同程度かそれ以下であり、自動車の普及が進展していることが見て
とれた。ホテルに向かう途中にも、規模は日本のものほどではないものの、トヨタをは
じめ、日産・ホンダなどの日本車ディーラーが新しい店舗を構え、点在していた。現地
企業の講演で日本車のシェアが 9 割を超えているという事実を聞き、改めてインドネシ
アにおける日本車の存在感の高さを実感した。
3. インドネシアの保険事情について
本研修では東京海上インドネシアのテクニカルアドバイザーである新井氏からイン
ドネシアの保険市場についてのレクチャーを受けることができた。ここでは新井氏から
1
世界銀行によると、
「中間層」は 1 日 1 人当たり支出が 2~20 ドルと定義され、2003 年の 38%から 2010
年には 57%へと上昇している。
伺った話をベースにインドネシアの保険事情について整理したい。インドネシアの保険
市場規模は世界 34 位(損保 42 位・生保 30 位)であり、世界 2 位の日本市場の 1/30
程度の規模である。しかし、近年の著しい経済発展と共に、2010 年からインドネシア
の保険市場も急速に拡大しつつある。損害保険市場に目を向けると、インドネシアでは
火災保険のシェア(33%)が最も高く、自動車保険は 27%と未だ発展途上にある。イ
ンドネシアは 1 人当たりの GDP が 3000 ドルを突破し、モータリゼーションが加速す
ると言われているため、今後自動車保険の拡大が期待されている。
日本における自動車保険商品は対人・対物賠償が中心で、車両保険は賠償に付帯する
ものというイメージがあるが、インドネシアの自動車保険市場では車両保険が中心的商
品であり、中でも全損担保の商品の付帯率が高いという。インドネシアにおいて対人・
対物などの賠償保険が重視されず、車両保険の全損担保商品が主流となっている理由の
一つとして、ファイナンス会社が自動車保険販売の主要チャネルであることが挙げられ
る。インドネシアでは自動車購入時にローンを利用することが大半を占めており、ロー
ンを提供するファイナンス会社が保全として車両保険を販売するスタイルが最も多い
とのことであった。この点は訪問先企業の伊藤忠商事のファイナンス子会社が保険代理
店業を営んでいることでも確認された。
現在インドネシアでは日系企業の進出が盛んで、日系企業の海上保険・火災保険対応
に追われることが多いという好況な面がある一方で、保険認知度の低さや自賠責保険制
度の不備が今後の課題として挙げられた。所得が増大し、社会構造の変化が起きている
にもかかわらず、保険マインドが低いこともあり、賠償の観念が乏しいのである。また
自賠責に類似した制度は存在するものの、義務化されていないため加入率は高くない。
これらの問題を解決するためには、官民一体での取り組みが不可欠であり、自賠責保険
制度の創設による賠償意識の植え付けが肝要であるとのことであった。
4. 謝辞
訪問先企業に共通して感じられたことは、どの企業も 2014 年の大統領選挙の行方に
重大な関心を持っているということである。選挙結果次第では、現在のビジネス環境が
大幅に変化することを想定し、常にアンテナを張っているように感じられた。発展途上
国においては、政治体制の変化が経済に大きな影響を及ぼすということを改めて実感し、
経済環境だけでなく、政治動向についても学ぶ必要があることを痛感した。
最後に本研修にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。ご多用中にも関わ
らず我々の訪問を快諾いただき、貴重なレクチャーをいただいた訪問先企業・団体の皆
様、引率していただいた小川先生・三隅先生・高岡先生、本研修の企画及び運営にご尽
力いただいた事務局の大和田さん・福井さん、その他すべての関係者の皆様に心より感
謝致します。
以上
2012
金融プログラム「インドネシア国際研修」レポート
CM110266
吉田
隆
1.はじめに
本プログラムに参加した目的は、①金融知識を深める機会とすること、②アジア新興国
の現状を自分の目で直接確かめて見識を深めることの 2 点であった。①については、イン
ドネシアの地場銀行であるバンク・ネガラ・インドネシア(BNI)を担当したことから、
事前学習を通じてアジアとインドネシアの銀行セクターについて深く学ぶことができた。
②については、まさに百聞は一見に如かずの言葉通り、著しい経済成長、日本と対照的に
30 歳以下の人口が過半数を占める人口構造であるインドネシアの活気を肌で感じることが
できた。その一方で、インフラ開発の遅れや貧富の格差等の課題を抱えているインドネシ
アの現実も知ることができた。何よりも事前学習から研修旅行を通じて参加メンバー同士
で多くの議論・意見交換ができたこと、訪問企業先で現地社員の方と直接対話できたこと
は、一人では得ることができない新しい気づきをもたらしてくれたという点で非常に有意
義であった。以上のことから、当初の本プログラム参加の目的は十分に果たすことができ
たと実感している。
2.インドネシアについて
成田を出発して 8 時間後、スカルノハッタ(ジャカルタ)空港に到着した。空港からバ
スでホテルに向かう道中、多くの日本企業の広告看板を目にした。あらゆる業界において、
日本国内市場は飽和状態にあることから、アジア新興国市場に積極的に参入している多く
の日本企業が、人口 2.4 億人のインドネシアを放っておくわけはない。バスの中から改めて
そんな思いに耽っていた。
市街地に入ると、まず圧倒されたのが交通量の多さだった。事前にインドネシアの交通
渋滞について聞かされていたことから、渋滞に関する心の準備はできていたが、車と車の
間を流れる水のようにバイクが走っている光景には驚いた。朝の通勤ラッシュ時のバイク
の信号待ちの光景は、まるでバイクレースのスタート地点かと錯覚に陥るほどであった。
販売実績を知れば、誰もがこの光景に納得するはずである。二輪車の年間販売台数は、日
本が約 50 万台、インドネシアは約 800 万台という桁違いの数字である。この巨大マーケッ
トで日系企業の販売シェアは、四輪・二輪車ともに 90%を超えているため、インドネシア
に対する日系各メーカーの徹底した注力ぶりも頷ける。走っているバイクは 2 人乗りが多
く、日本の道路事情とは違って、車線に沿って規則正しく運転しているという感じはない。
職業柄、交通事故の光景を想像しながらバスの中から外を眺めていたが、7 日間滞在中に 1
度も目にすることはなかった。ジャカルタ市内を中心に結構な距離をバス移動したにもか
かわらず、なぜ事故を見ることはなかったのだろうか。たまたま遭遇しなかっただけだろ
うか。疑問は残ったままである。
ジャカルタ市内の高層ビルが立ち並ぶ市街地は、日本の都心部と何ら変わりない。走っ
ている車は日本車が圧倒的に多いが、結構な割合で欧州の高級車も走っていた。少し中心
地を離れると、信号待ちの車に物売りする少年の姿や、路上にたたずむ子供や若者、路上
の日陰で休んでいる老人の姿を多く目にした。高級車に乗っている富裕層と働き口のない
貧困層が入り混じっている情景は新興国の現状を物語っていると改めて感じた。
インドネシアの印象を一言で表現すると、「活気がある」である。インドネシアの GDP
の実質成長率はここ数年平均 5%以上で推移しており、その大半を内需が支えている点に
注目すべきである。若年層が大半を占める人口構造と著しい経済成長が「活気」を生み出
しているのだろう。東京も人口は多いが、何となく閉塞感が漂っているのは景気の低迷が
原因なのだろうか。いずれにしても肌で感じる空気感は実際に現地でしか味わえない感覚
であるため、本プログラム参加の意義は大きかったと言える。
3.企業訪問について
私自身日本では国内業務に従事しており、国際機関や他業界かつ海外駐在の方と直接対
話できる機会などがなかったため、今回のような現地での企業訪問はとても新鮮であった。
そのため、現地で働く日本人が実際にどのような仕事をしているのか、どのような感覚を
持っているのかについて興味があった。各企業を訪問して感じたことは、いかに現地の人
材と上手くコミュニケーションをとることが重要かということである。各企業とも若手で
あっても経営やマネジメントの感覚が求められるため、現地の歴史・文化を学ぶことから
スタートすることが前提であることを改めて認識することができた。業務内容については、
どこの国でも基本は同じであり、地道に着実に取り組むことが大事であることも分かった。
一橋大学 OB 会である如水会の懇親会では、銀行員の方から現地での激務の様子について
の話を聞くことができた。その方が「業務は激務であるが、国の発展に貢献している、あ
るいは経済成長に携われていることにやりがいを感じる」と語られていたことが特に印象
に残っている。
当然のことながら、この魅力あるインドネシア市場に積極的に参入しているのは日本企
業だけではない。特にインフラ開発に関しては、欧米・中国・韓国勢も貪欲に参入してき
ており、日本企業との熾烈な競争を繰り広げている。日本は官・民の連携が諸外国と比較
して劣っているようなイメージを持たれがちであるが、実際は経済産業省・外務省を中心
に JBIC、JICA と民間企業であるゼネコン、商社が連携をとりながらインドネシア政府と
のパイプを構築している状況を知ることができた。幸い、インドネシアが親日の文化であ
ることも、日本企業の参入がここまで成功している要因の一つであろう。
4.最後に
今回のインドネシア訪問は、新興国の現状を学ぶと同時にいかに日本が平和で豊かな国
であるかを改めて認識する機会となった。インドネシアでは、インフラ開発・整備を加速
させることと、貧富の格差をいかに圧縮していくかが当面の最優先課題であろう。ただし、
これらの課題はインドネシア単独で取り組むには限界がある。つまり、日本をはじめとす
る先進国にとって、インドネシアのような新興国の発展を支援することが重要な責務であ
ると言える。国レベルだけではなく、民間企業レベルでもできることは多くあることを今
回の訪問で学んだ。したがって、日本企業はインドネシアを単なる将来の潜在的な魅力あ
るマーケットとして捉えるのではなく、ともに発展するにはどうすればよいかを考える必
要があると強く感じた。
最後に、このような実りの多いプログラムを企画し、事前準備段階の各種調整を含め本
研修旅行の引率をして下さった小川先生、三隅先生、高岡先生、事務局の大和田さん、各
種サポートをいただいた福井さん、スポンサーとしてご支援いただいたみずほ証券様には
改めて感謝申し上げます。
以上
金融プログラム
インドネシア国際研修レポート
CM110271 于蕊
インドネシアは人口が 2 億 4 千万を超え、18,000 の島々からなる東南アジアの国である。
2008 年の金融危機において、世界各国は GDP の成長が低迷しているうちに、インドネシア
は 4.6%という高い成長率で成長を遂げたため、注目され始めた。2012 年まで、インドネシ
アに進出している日本企業は 3000 社を超え、インドネシアに在住している日本人は 2 万人
を超えている。日本メーカーがインドネシア進出しているとともに、日本製品は自動車、電
気製品をはじめ、インドネシアの市場に溢れており、日本はインドネシアにおいて存在感が
高い国であると言える。今回のインドネシアに行き、日本企業 9 社、JICA、ERIA、ASEAN な
どの機構組織、インドネシアの地場銀行、日本大使館に訪問し、相関担当者の話を聞くこと
で、インドネシアに対する、企業を経営する考え方に対する理解も深められ、非常に有意義
な研修である。
今回の研修を通じ、以下の問題について深く考えられ、勉強できるようになった。まず、
なぜ日本企業がインドネシアに進出するのかについてである。訪問した企業の状況によって、
理由は以下の通りに 5 つがある。第一に、インドネシアの経済が発展で、国民の収入が多く
なっているに従い、人々は最低の生存のための欲求から、より快適的な生活を追求するよう
になった。それがもたらしたのは、商品を売るチャンスである。特にインドネシアは人口が
2 億以上で、都市人口、また中間層以上の人口比率が増加していることによって、巨大なポ
テンシャルを持つ消費市場であると考えられる。そのため、空調メーカーであるタイキンは
インドネシアに世界シェアを取る、保つために重要な戦略市場として考えている。ブレーキ
メーカーである曙ブレーキは取引先であるヤマハ、トヨタ、日産、鈴木などの会社のインド
ネシア進出を支えるためにインドネシアで工場を建てた。第二に、新興国のインドネシアに
とって、さらの発展を図るために、道路・電力などのインフラの整備が基本的であると考え
られる。インフラに関係する会社にとって、三菱重工が自社の得意分野である発電事業をイ
ンドネシアに展開している。第三に、インドネシアにおいて、資源の埋蔵量が豊富である。
資源の取引を戦略的なメインビジネスとして視している商社の伊藤忠商事にとって、インド
ネシアが不可欠な拠点である。第四に、日本企業のインドネシア進出による資金調達の需要、
またインドネシア発展による資金調達の需要はみずほ銀行にとってビジネスチャンスであ
る。
しかし、発展が加速されているが、最近に注目されるようになったインドネシア市場は日
本市場ないし BRICs などの新興国市場と比べると、特徴がある。また、インドネシアは世界
最大のイスラム教徒を擁する国であるため、文化面においても、様々なチャレンジがあると
考えられる。そのため、日本企業は現地でいい会社を作るために様々な調整と努力をしなけ
ればならない。具体的に以下の 4 点が考えられる。第一に、自社の特徴と市場の特徴を分析
し、区別戦略を取ることある。タイキンは、専門な空調メーカーであり、その競合会社は総
合電機メーカーのパナソニックと LG である。そのため、大手のデーラーとの交渉力におい
てはパナソニック・LG と競争できない。したがって、タイキンは専門な空調メーカーなら
ではのシステムを売るにおいての優位性を生かし、お客様を教育することで、プロジェクト
セールと小さい工務店に重点に置くという区別戦略を取った。また、インドネシアの電力不
足と収入による購買力の現実を対応するために、安価・節電型の 1.5KW の空調を重点に置い
ている。第二に、積極的な情報の収集・分析することである。総合商社である伊藤忠商社は
インドネシア政府と密接なプロジェクトを選択し、政府といい関係を構築することで情報網
を広げている。第三に、リスクを予想し、対策を立てることである。みずほ銀行はリスクを
回避するために、インドネシア現地企業をビジネス対象とするときに、財務的に健全である
大手会社を選択している。三菱重工はコンサルタントを起用し、契約内容、支払条件などを
しっかりすることによって、リスクをコントロールしている。第四に、異文化を尊重し、従
業員を重視し、現地化を進めることである。曙ブレーキはイスラム教の従業員が祈りをする
ために、工場の敷地に祈り専用場所を作った。また、二輪で通勤する従業員の駐輪のために、
大きいな駐輪場を建てた。人事管理においても、現地のスタッフに任せ、日本人は技術の指
導を注力することで、コストの削減を実現しながら、現地管理の効率化とノウハウの蓄積を
図っている。
以上の通りに、日本企業はインドネシアのさらの発展を期待しているため、自らの対策を
取り、調整しながら展開している。一方、インドネシアのほうも、さらの発展を図るために、
改善の期待点、または努力すべき点もあると考えられる。第一に、政府が信用力を強め、あ
る程度のリスクを取り、投資をアピールする必要である。JICA の話によると、インドネシ
アの PPP の発展において、ボトルネックになったのは政府のコミットメントである。地熱発
電を例にすると、政府が前期の調査を行い、プロジェクトの確実性を増えることで、リスク
を避けたい投資家にアピールできることによって、さらの資金調達を期待できると考えられ
る。第二に、マネジメントの能力をアップすることである。JAKARTA を回ったら、管理が足
りないのも感じられる。町の落葉が清掃されなく、川のごみも整理されていない。また、ジ
ャガルタ漁港を訪問するときに、衛生面において、改善すべくという話もある。第三に、効
率化へ転換し、無駄を減少し、有限の資源を有効に使う意識を培うことである。例えば、部
屋の空調の設定温度が低すぎで、状況により柔軟に調整することで、節電ができると考えら
れる。また、遺跡の観光で有名な静かな町である YOJAKARTA に行ったのは週末であった。電
気が足りないのゆえか、夕方 6 時半ぐらい、暗くなっているものの、住民の家にはまだ点灯
されていないのが多かったが、出勤日ではない会社の前にあるいは庭に点灯されている。企
業は社会責任を持ち、無駄を抑制し、効率と節約の意識を強化することが必要である。第四
に、政府が企業・投資家からの意見を聞き、積極的な改善を行い、よりよい投資環境を作る
ことが重要である。ASEAN は投資を獲得するために、この点について積極的な姿勢を示して
いる。インドネシア政府も、意見対応をすることで、よい経験を吸収できると考えられる。
第五に、人材の育成を重視することが重要である。各領域の発展を支えるのは、経験・ノウ
ハウを持つのは、交流を行うのは人材であるため、人材を育成することで、国全体のレベル
を上げ、交流が盛んでくることができると考えられる。
中国はインドネシアと同じく、新興国であり、インドネシアで見られた問題点の多くも抱
えている。近年、沿海都市は発展を遂げたが、中西部に最低の生活水準が保障されていない
貧しい人が大勢にいる。そのため、中国は日本などの先進国から学ぶべきであるところがま
だ多くある。どうやって先進国の経験を生かし、後発者の便利を図れるのかが態度と意識の
次第であるかもしれない。外資は現地発展の動力である。外資を利用するとき、ただのもの
ではなく、考え方・理念などの中核的なものを学び、国の実情も考え、適用できるような形
にするのが大切である。また、発展しているうちに、試行錯誤が絶対にある。それに対して、
謙虚な反省態度を持つのが重要であり、意見を聞き、問題を改善する勇気も重要である。経
済の発展によって蓄積られるべきであるものは金銭だけでなく、世界を見る知恵でもある。
辞
謝
今回のインドネシア研修が成功に終わったことは多方のご協力がなくではなりません。こ
の場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。お忙しいところを丁寧にご準備・プレゼン・
質問対応をしていただいた訪問先の皆様、ご意見をしていただいた三隅先生・高岡先生・安
達さん・レザーさん、研修をアレンジ・ご調整をしていただいた大和田さん・福井さん、研
修にご同行していただいた小川先生・布井先生、事前調査をしていただいた各担当班の皆様、
また研修中、体が崩れていたときにお世話をしていただいた皆様に、お礼を申し上げます。
金融プログラムインドネシア国際研修
学籍番号
氏名
cm120275
石橋達彦
私は、2013 年度から外資系戦略コンサルティングファームに就職することになっている。
このような背景から、成長著しいインドネシア・ジャカルタの経済についての理解を深め、
その現状を実地で観察することは有意義であると考え、この研修への参加を決意した。国
際研修を終えた今、本研修が自己の今後の学習および来春からの社会人生活に対して非常
に有益なものとなったことを実感している。本研修を通じて学習したさまざまなもののう
ち、本稿では「インドネシアに対する事前・事後のイメージ」と、私が主に担当した「ASEAN
経済の実情」について述べたいと思う。
1-1
インドネシアに対する事前のイメージ
本研修に参加するに当たり、我々研修生は多くの時間をかけてインドネシアについての
調査を行った。その結果得られたインドネシアに対するイメージは以下の 3 点である。便
宜上、経済・政治・文化の 3 つに分けて述べたいと思う。
①
経済について:経済発展が著しいものの、インフラ投資が追い付かない
インドネシア経済の 2011 年の実質 GDP 成長率は 6.5%であり、その成長率は過去 3 年で
最大となっている。また、2011 年の一人あたりの名目 GDP は 3469 米ドルとなっており、
耐久消費財の普及が始まるとされる 3000 米ドルを突破したことがわかる。輸出入や諸外国
からの対内直接投資の受け入れも活発になってきており、グローバル化の流れを受けて更
なる成長が期待できることが予想される。
その一方でインフラ投資が不十分であることもわかった。道路整備については特に都市
部で追いついておらず、慢性的な渋滞に市民は悩まされているほか、電力の安定供給の問
題も解決されていない。その他港湾・空港の整備も進んでおらず、過密港・過密空港の問
題が議論されている。
②
政治について:現大統領のユドヨノ氏が政権を握って以来安定が続く
政治については、ユドヨノ政権の安定性が 2 次資料調査によく書かれていた。独裁政権
であったスハルト政権がアジア通貨危機を発端とした政治・社会不安をきっかけに崩壊し
た後、インドネシアの政治は混迷を極めていた。現大統領であるユドヨノ氏は、この政治
混迷に終止符を打ち、政治の安定化に寄与した人物であるとされる。この安定性は、先に
書いた経済成長の基盤となったとされる。
③
文化について:親日国であること
インドネシアは、第二次世界大戦中に大日本帝国が占領した地域のうちの一つである。
占領の過程において、日本はオランダによるインドネシア支配からの解放を手助けし、戦
争後には自治を認める約束をインドネシアと取り交わしたとされる。以上のような植民地
支配からの解放を支援したという経緯もあり、インドネシアは親日的であるということが
事前調査の理解であった。
1-2
①
現地視察から得たインドネシア経済のイメージ
経済について:貧富の差が激しい
上記にあげたインドネシア経済に対するイメージは、現地視察から得られた情報と合致
するものであった。ジャカルタ中心地には日本とほぼ同じだけ整備されたショッピングモ
ールが存在していた。また、幸い我々は巻き込まれなかったものの、現地の方々からはほ
ぼ毎回のように渋滞の心配をされた。
その一方で現地視察から得られた新たな情報は、貧富の差がとても激しいことである。
先ほどのショッピングモールを出てすぐのところに一般庶民のための屋台が存在し、また
ビル屋上からジャカルタ市街を見渡すと、高層ビルのすぐ隣にバラック小屋が建っていた。
経済発展が著しいことから貧富の差が激しいことは想像できたが、それらが分離すること
なく併存していることは新しい情報であった。
②
政治について:ユドヨノ政権末期の混乱が予想される。また賄賂体質である。
ユドヨノ政権が政治の安定に寄与したことは事実であるものの、任期が 2014 年までとな
っていることから、徐々に政治の先行きに不透明感が見え始めている。研修中に訪問した
企業の方がおっしゃっていた「この国が 5 年後に成長しているのは間違いないが、2014 年
までの期間は調整期間となるだろう」という言葉が、この点について非常に印象に残って
いる。
また、旧来からの賄賂体質が改善していないことも現地視察から明らかとなった。訪問
先企業の方から実際に賄賂を持ちかけられた話や、同行した現地人の方の話から、今でも
賄賂が横行していることがわかり、インドネシアという国の法治国家としての未熟さを感
じた。
③
文化について:親日的な一方で、韓国文化の浸透が見られる
事前調査のイメージ通り、インドネシアは親日的な国家であった。日本文化を紹介する
イベントに 4 万人が集まったことが現地新聞の一面に載っていたほか、現地のレストラン
には少しなら日本語のわかるスタッフが多くいた。また、インドネシアの二輪・四輪のほ
ぼ全てが日本企業製であるということには驚かされた。
このような側面の一方で、韓国文化の人気が高まっていることが見受けられた。韓国企
業の広告を中心に韓国人俳優・女優を見ることも多かった。また、講演をしていただいた
電通のかたが「K-POP のコンテンツ力は日本の比ではない」とおっしゃっており、日本文
化の浸透とともに韓国文化の浸透も進んでいることが分かった。
2
ASEAN経済の実情について
以上の現地視察から得られたインドネシアのイメージの変化に加えて、私が調査を担当
した ASEAN 事務局および ERIA への訪問から得られた情報について述べたいと思う。
ASEAN 事務局は、ASEAN 全体を取りまとめるための機関であり、また ERIA は ASEAN
事務局の活動を支援するために日本が主導して設立された研究機関である。これらの機関
への訪問を経てわかったことは、ASEAN は EU とは異なるアプローチからの統合を目指し
ているということである。ASEAN がこれまでとってきたようなアプローチは「ASEAN ウ
ェイ」と呼ばれ、今後の統合には問題点が多いと指摘する論文も数多く存在した。そのよ
うな指摘を受けているなかでもこの「ASEAN ウェイ」にこだわるのは、現場において EU
がとったような統合方法の不可能性を実感しているからであろう。事実、ASEAN の地域内
経済格差は EU よりもはるかに高く、
また、EU が経済統合を主目的に設立されたのに対し、
ASEAN は地域内安全保障を主目的に設立されたものである。このような EU との差から、
ASEAN は EU と同様の統合アプローチではなく、独自のアプローチを進化させる方向で統
合を進めていくものと考えられる。
3
まとめに代えて
実地調査を行うことの大切さ
今回の研修を通じて私が痛感したことは、実態を理解するためには実地調査がいかに重
要であるかということである。書物を通じてどれだけ膨大な情報を得たとしても、その情
報はすでに過去のものであり、実態とは異なっている可能性がある。また、他者の研究論
文における提言も、現場における実行性のないものとなっていることがしばしばある。こ
れらの問題点を解決し、実態に迫った実行性のある提言を行うためには実地調査を行わな
ければならない。このことは、来春よりコンサルタントとして働き始める私にとって、単
純ではあるものの非常に重要な学びとなった。
4
謝辞
本研修の成功はさまざまな方の協力によるところが非常に大きく、この場を借りて感謝
の意を表したいと思う。特に、本研修をご支援して下さったみずほ証券様、ご多忙の中貴
重なお時間を割いてくださった訪問先企業の方々、事前学習の段階から有意義なアドバイ
スをくださった小川先生・三隅先生・高岡先生、細部にわたるスケジュール調整を行って
くださった大和田さん・福井さんに心よりお礼申し上げます。
金融プログラム
インドネシア国際研修
CM11102220 木下謙太郎
1.
はじめに
私がこの研修に参加したきっかけについて述べたい。第一にアジア圏の中で中国、イン
ドに次ぐ経済成長を遂げているインドネシアという国の成長をこの目で見たいという思い
である。私が物心ついたときには、既に日本は先進国の仲間入りをしており、その後バブ
ルの崩壊により経済は停滞の一途を辿ったままである。どの企業も作れば売れる時代では
なく、また必死に努力すれば報われる時代ではなくなった。一方のインドネシアはまさに
今、日本の高度成長期と同じような状況にあり、活気と自信に満ちあふれた国の様子を垣
間みる事ができるのではと思ったのがそのきっかけである。第二に企業を訪問し直接現地
のキーパーソンと接する事が出来る点である。私は社会人経験者で、同業他社の企業を訪
れ共に仕事をした事はあったが、異なる業界の会社を訪れ質疑応答する機会はなかった。
本研修ではインドネシアに進出する企業の中でも勢いある企業を訪問する機会に恵まれ、
その他、普段接する機会の少ない政府系機関を訪問する事ができる点が魅力的であった。
2.
本研修から学んだこと
本プログラムを通じて学んだ点は3点ある。1点目はインフラ整備の必要性である。イ
ンドネシアにおいて、整備の緊急性の高いものは電力と交通網だと感じた。我々の滞在期
間中、停電に陥ることはなかったが、それは一般家庭への電力供給量を制限しているため
であった。家庭用電力が制限されているという事は、発電量の大きな家電製品(例えばエ
アコン、電子レンジなど)はあまり利用出来ないという事である。これは現地での市場開
拓を狙う電器メーカーにとっては、機会損失となる可能性がある。生産地として進出する
場合も、安定した電力供給を受けなければ、安定した生産もできない。実際に年に数回工
場で停電する事があると伺った。現在は自家発電設備を工業団地に設置し停電を免れてい
るようだが、いずれにしても電力の安定供給は今後のインドネシア経済の発展に不可欠だ
と強く感じた。加えて交通渋滞を緩和するための交通整備が必要である。現在のペースで
二輪車・四輪車が増えると、二輪車・四輪車のスペースで道路が埋まると言われている。
これを解消するには、道路の拡張や鉄道の増強が必要である。ジャカルタにも鉄道は敷か
れているが、本数が少なくあまり機能していないようだった。日本の電車の混雑は世界屈
指であり、それを解消するための技術やノウハウも世界屈指である。日本の鉄道技術を交
通渋滞緩和に活かせると考えられる。
今回の研修では、インフラに関わりのある多くの企業・政府系機関を訪れることができ、
ジャカルタでのインフラ整備が政府の計画通りに進まない理由について直接伺う事が出来
たのは、非常に有益であった。各訪問先で言われていた事を総括すると、インフラ整備が
進まない原因は、インドネシア政府の計画の甘さにある。つまり政府はインフラ計画を提
示しているが、投資案件としてのリスクが明確でない点や、案件の調査が進んでいない点、
中央省庁が決定した計画に地方が反対していて計画通りに進まない点など、原因の多くは
インドネシア政府自体にある。こうした問題点の解消に JICA が支援していると伺った。
今後こうした不安が払拭されインフラ整備に多く投資されることにより、インドネシア経
済発展の基盤となれば、ますます多くの日系企業がインドネシアに参入し、インドネシア
が安価な生産地としてではなく、大きな消費市場になると感じた。
本研修で学んだ2点目は貧富の差が大きい点である。これは実際にジャカルタへ赴いて
初めて気づいた点である。首都ジャカルタでは、高層ビルや高級ショッピングセンターが
立ち並び、外国人や一部のインドネシア人が出入りする一方、中心地から離れると露店が
軒を連ね、不衛生な食べ物が売られている。一人当たりの GDP が伸びているとはいえ、
まだ貧しい人は多い。日本でも昨今格差社会と叫ばれるようになったが、インドネシアの
格差に比べれば遥かに小さいと言えるだろう。今後所得水準が上がるにつれて、この格差
は次第に小さくなっていくと考えられるが、格差を発端とした暴動も時に起きており経済
格差は無視出来ない問題である。中国やインドでも同じように格差が激しく、こうした格
差がなぜ生まれるのかについて、今後理解を深めていきたい。
本研修で学んだ 3 点目は如水会ネットワークの強さである。これはインドネシアに限ら
ない話かもしれないが、研修前の段階、そして研修中において如水会の繋がりを強く感じ
た。本研修での訪問先の多くは如水会のご好意によって紹介を受けた企業である。研修中
において如水会インドネシア支部と食事をする機会に恵まれ、多くの一橋大学出身者が参
加された。普段ならライバル企業の会社同士も如水会という繋がりで、プライベートな間
柄で親しくしているだけでなく、会社間での情報交換もしているということを聞き、改め
て如水会ネットワークが強固であると感じた。仕事をしていたときも感じていた事ではあ
るが、立場が偉くなるに従い、知識や能力だけでなく人脈が大事であることを痛感した。
3.
おわりに
本研修における訪問先は、銀行・メーカー・商社・保険会社・政府系機関であり、金融
プログラムと題する研修としては純粋な金融機関の訪問は少ないように思われる。しかし
ながら、途上国のこうした業界の発展を支える上で、金融機関の役割は大きく金融プログ
ラムの一環として多くを学ぶ事ができたと考えている。金融機関の役割の大きさを挙げる
ならば、インドネシア政府はインフラ整備の半分を PPP で進めるとしており、その多くは
プロジェクト・ファイナンスが活用されると考えられる。他にも自動二輪・四輪の普及に
伴い、ローン利用者の増加が見込まれる。これらに加え当然ながら経済発展の上で、直接・
間接金融の果たす役割は大きい。私自身今後もインドネシア経済に注目し、機会があれば
また是非訪れたいと考えている。
最後に本プログラムのご支援をいただいているみずほ証券様、訪問企業の皆様、如水会
ジャカルタ支部の皆様、三隅先生・高岡先生・布井先生・安達さん、そして事務局の大和
田さん・福井さんに御礼申し上げます。今後も継続して本プログラムが催され、私が受け
たのと同じ感銘を多くの学生に受けてもらいたいと心より願っております。
HMBA 金融プログラム
インドネシア国際研修プロジェクト
cm120221
高橋 淳一
1.はじめに
本年度の HMBA 金融プログラム国際研修プロジェクトでは、近年存在感を増しているイ
ンドネシアに拠点を構える日系企業や現地企業を訪問し、様々なお話を伺うことでアジア
やインドネシア経済の現状と展望を肌で感じることが出来た。以下では、この研修を通じ
て感じたことを報告する。
2.インドネシア概観
グローバル化が進展する経済の中で、今後ますます新興諸国のプレゼンスが高まってい
くことが予想される。新興諸国の中でもアジアの新興諸国は、日本と地理的に優位な立場
にあるため、アジア新興国の動向を注視することは重要である。アジア新興国の中でもイ
ンドネシアは人口が約 2 億 4000 万人の世界第 4 位の人口大国であり、豊富な労働世代層と
中間所得層に支えられ、注目を集めている。その要因は 3 つあると考える。①底堅い個人
消費を中心とする内需が経済成長を牽引している点
行の目標範囲内で推移している点
点
②インフレ率がインドネシア中央銀
③欧州への依存度が低く、財政状況も改善傾向にある
の 3 点である。各訪問先においてインドネシアのポジティブな点を様々な側面からお
話しいただいたが、概ねこの 3 点に集約されると感じた。このポジティブな側面からイン
ドネシアは今後更なる発展が見込まれ、存在感を増していくということをご講演頂いた内
容から感じ取ることが出来た。
インドネシア経済を語る上で重要なことは、2 輪車と 4 輪車の販売状況である。インドネ
シアの 2 輪車の年間販売台数は約 800 万台と、世界第 3 位の販売台数を誇る。日本の年間
販売台数約 40 万台と比較しても顕著である。一般的に 2 輪車が広く普及するためには、一
人当たり GDP が約 3000 ドルを超えることが必要とされている。インドネシアは一人当た
り GDP が 3500 ドルと近年 3000 ドルの壁を超え、急速に販売台数が増加している。
2 輪車、
4 輪車共に、日本企業の販売シェアが約 9 割とプレゼンスが高く、日本企業にとって重要な
市場であることが伺える。しかし、2012 年 6 月から、車購入に伴うローンの頭金に規制が
導入され、販売台数が減少しているという現状がある。
2 輪車や 4 輪車のブレーキを手掛ける曙ブレーキや、自動車保険の販売を手掛ける東京海
上からご講演頂いた内容から、このローン規制の影響を伺うことが出来た。このローン規
制によって販売は一時的には減少するであろうが、増加トレンドに変わりはなく、期待も
込めて今後も成長するだろうとのことであった。特に、4 輪車においてはローン規制の影響
はさほど大きくなく、2 輪車から 4 輪車への移行トレンドも相まって、この先販売台数を大
きく伸ばすと想定される。しかし、私は、この見込みは少々楽観的であると感じた。なぜ
なら、インドネシアにおいて 4 輪車は決して便利な交通手段であると言えないからである。
今回の研修を通じて、インドネシア経済の最も重要な課題は、インフラ整備であること
を痛感した。事前準備の段階においても、インドネシアはインフラが未整備な個所が多い
ということは知ることが出来た。しかし、実際に現地に赴き、移動中の車窓から見たイン
ドネシアの雰囲気は想像を超えてきた。ジャカルタ市街地においては、高層ビルが多く立
ち並び、道路も舗装され、車線も多く、成長過程にある国であることを強く実感できた。
しかし、幹線道路には車があふれ、慢性的な交通渋滞が問題となっている。渋滞の要因と
して考えられることは、車の絶対数が多いこと、道路が少ないこと、車以外の交通機関が
少ないこと、日本と比較して運転マナーが悪いことなどがあげられる。
現在ジャカルタ市街地に置いて庶民の足と成り得る交通機関は、幹線道路を走るバス(ト
ランスジャカルタ)や、タクシー、小型バス(メトロミニ)である。これらは全て車両で
あり、専用バスレーンのあるトランスジャカルタを除けば渋滞の一因となっている。現在
ジャカルタには都市高速鉄道システム(MRT)の建設が予定されている。しかし、この鉄
道も、鉄道駅からの接続の交通機関が乏しいこと、バスやタクシーの価格が安価であるこ
となどから、庶民に多くの需要があるとは考えられず、主にジャカルタ中心地を行き来す
るビジネスマンに利用される程度で収まるのではないかと考えられる。JICA のご講演から
も MRT が渋滞解決の特効薬になるとは考えにくく、インドネシアの渋滞解消は非常に困難
であることが理解できた。つまり、インドネシアの慢性的な渋滞は、インフラ整備の面の
みからでは解決できず、現在行われている 3in1 規制のような、車の絶対量を減らすような
施策が必要になると考えられる。このような施策はインドネシアの車両販売に置いてネガ
ティブな点と成り得るのではないだろうか。今後のインドネシア経済を占ううえで、イン
フラ整備、特に交通機関の動向については注視する必要があるだろう。
3.インドネシア保険市場
今後の生保、損保保険両市場の伸びは、新興国の中でもアジアが一番高いと考えられる。
また、その中でもインドネシアは世界第 4 位の人口を背景に、10%を超える伸び率が想定
されている。損害保険市場では、火災保険が最も高い比率を占めている。これは、漏電火
災が多いことが理由の一つとして挙げられる。また、日本やマレーシアと比較して、自動
車保険の浸透度が低く、今後の大きな成長が見込まれている。生命保険市場では、生命保
険料が GDP 比 1.1%とマレーシアやタイと比べても低く、生命保険の浸透とともに市場の
急成長が見込まれている。また、インドネシアでは資本規制が段階的に引き上げられてお
り、過当競争にある保険市場は再編の時期を迎えている。したがって、資本力のある外資
系企業にとっては絶好の M&A の機会となっている。
インドネシアはムスリムの国でもあるため、今後の保険市場の動向を考える上ではタカ
フル(イスラム金融における保険商品)について考えなければならない。インドネシアは
世界最大のムスリム人口を抱えるため、イスラム金融のポテンシャルは大きいとされてい
る。しかし、インドネシアにおけるイスラム金融は歴史が浅く、現状では規模がまだ小さ
い。保険市場においても同様の傾向で、タカフルの契約高は保険市場全体の1%程度にす
ぎない。インドネシアの保険市場においてタカフルの存在感がどこまで増すかということ
はこの先興味深い。国内の保険拡大の障害として、保険という仕組み自体が避けられる傾
向にあるなど、保険の認知度が低いことがあげられる。今後経済発展と共に、生保損保と
もに需要が増すことは明らかである。保険という枠組みを選択する際に、相互扶助を意味
するタカフルの方が、より選好されやすいとするとインドネシアにおいてタカフルの存在
感が増していくだろう。
イスラム金融拡大のシナリオは二つあると考えている。一つ目は既存の金融市場を代替
する形で拡大していくこと、二つ目はこれまでイスラム金融ではない既存金融システムを
避けてきたムスリム層がイスラム金融を利用する形で拡大することである。既に一定の規
模を誇るインドネシアの金融市場において既に提供されているイスラム金融の割合は総じ
て低く、イスラム金融でなければ金融システムを利用しないという層は多くないと考える
が、今後のインドネシアのイスラム金融の動向には注視する必要があるだろう。
4.終わりに
私はこれまで新興国に行ったことはなかったため、今回の研修で新興国であるインドネ
シアに行くことが出来たのは大変貴重な経験となった。文献やデータからは新興国の存在
感が増し、この先の世界経済の牽引役になることは理解していた。しかし、現地に赴くこ
とでこのような資料からは得ることが出来なかった新興国の確かな成長性を強く感じるこ
とが出来た。
最後に、今回の研修にて我々に対して有意義なご講演を頂いた皆様、そして研修を企画・
運営して頂いた一橋大学関係者の皆様、本プログラムに御支援を頂いたみずほ証券様には
心より御礼申し上げます。
以上
金融プログラム
『インドネシア国際研修』
学籍番号:cm120223
氏
名:田口信太郎
1.はじめに
97 年アジア通貨危機、98 年スハルト政権崩壊を経て、ユドヨノ政権の下急速な経済成長
を続けるインドネシア。この度は、世界経済の牽引役として各国から注目される東南アジア
を代表し、日本とも緊密な関係にある同国を訪問するという機会に恵まれた。本研修参加を
決意したのは、低成長が続く日本経済を復活させる鍵が見つかるのではとの思いからである。
メディアや統計資料からでは、伺い知ることのできないインドネシアの実際を、自身の目で
見て感じることの意義は極めて大きい。以下では、現地訪問において印象深かった点を中心
に、研修全体を通して抱いた思いを述べることとする。
2.日本メーカーの競争力
本研修プログラムでは、多くの企業を訪問させて頂き、短時間の中に凝縮された貴重な
お話を伺うことができた。メーカーではダイキン工業、曙ブレーキを訪問させて頂いた。
両社は世界的にも優れた技術力を誇っており、インドネシアをはじめ東南アジアに注力し
ている企業である。曙ブレーキでは、実際に工場見学をさせて頂き、その生産技術におけ
るオペレーションは、現地従業員にも受け継がれていることが実感できた。現地での人材
育成といった着実な取り組みが、海外進出の成功に結び付いているのではないだろうか。
中国、韓国をはじめとした外資の新興企業が低価格を武器に台頭する中で、インドネシ
アにおける日系企業とのシェア争いは激しさを増している。確かにショッピングモールの
家電製品等を見ると、韓国、中国製品が多数並んでいた。現地の方の話からも、近年は韓
国、中国製品がかなり流通しているとのことであった。とはいえ、自動車、二輪車とも依
然として 90%以上という高シェアを維持しており、これらインドネシア人ユーザーに受け
入れられた日本製品は高い競争力を保持している。今後日本メーカーが勝ち残っていくた
めには、日本製品の強みである高品質・高サービスのみならず、現地に特化し他企業と差
別化された製品・サービスが求められるのではないだろうか。
3.インフラ開発・整備
インドネシアの経済成長は、豊富な天然資源と世界第 4 位の人口による内需の拡大が大
きく寄与している。その現れとして自動車販売台数が好調に増加する一方で、首都ジャカル
タにおける交通渋滞をはじめとしたインフラ整備等課題も残されている。幸運にも我々は大
きな渋滞に巻き込まれることは無かったが、訪問企業ご担当者の方のコメントにもあったよ
うに、交通渋滞には非常に悩まされていることが伺われた。
インドネシア政府は 2011 年、
「インドネシア経済開発加速・拡大マスタープラン」(MP3EI)
を策定し、2025 年までに同国を、世界における 10 大経済大国にすることを目標に掲げて
いる。インフラ整備に関しては、マスタープランの投資額のうち 45%をインフラ投資が占
めており、今まさに開発プログラムが進行、計画されている真只中であるといえる。本プロ
グラムにおいても、PPP(Public Private Partnership)案件に深く関わっておられる企業に
も多数訪問させて頂いた。
大きな成功例としては、鹿島建設における「スナヤン・スクウェア・プロジェクト」が挙
げられる。約 20ha という広大な土地にショッピングモールをはじめ、オフィスビルや高層
住宅が建設されており、訪問時には、高層ホテルが今まさに建設中であった。オフィスビル
屋上から施設全景を拝見させて頂く機会があり、インドネシア政府、鹿島建設をはじめ、各
関係者が描いた計画のスケールの大きさを実感した。
発電事業においても、発電分野への民間参入を促すため民間電力事業者(IPP)制度が導入
されており、今後もビジネス機会が拡大していくものと予想される。本研修でも、IPP 事業
に取り組んでおられる伊藤忠インドネシア会社及び、インドネシアにおいて多数のプラント
納入実績のある三菱重工を訪問させて頂き、事業展開について詳細に伺うことができた。エ
ネルギー関連事業となると、ポリティカル・リスク等がつきものであり、とりわけ新興国に
おける事業展開は、政策に対する柔軟な対応が求められると考える。インドネシアへの取り
組みから得た経験が、今後の日系企業の海外戦略に大いに優位性を発揮するのではないだろ
うか。
終わりに
本研修全体を振り返って抱いた思いは、グローバル化による日本企業の成長可能性であ
る。インドネシアへ進出している日系企業は 1000 社を超えるまでになっており、インドネ
シアにおける中間所得層の広がりを受けて、小売・サービス業等今後も更に進出増加が予
想される。こうした海外進出の高まりの背景としては、インドネシアの経済成長はもちろ
んのこと、両国政府をはじめ、JICA、JBIC といった関係諸機関の緻密な連携に依るとこ
ろが極めて大きいと感じた。グローバル化の中で日本企業が成長していくためには、一企
業単独での戦略に留まらず、外部とのあらゆる連携を模索しつつ日本の総合力で競争して
いくことが必要であるように思う。
最後に、ご多忙の中貴重な機会を提供してくださった訪問先企業・諸機関の皆様をはじ
め、我々を温かく迎えてくださった如水会の皆様に、心より御礼を申し上げたい。そして、
本研修において多大なるご支援を頂いたみずほ証券様、事前学習の段階からアドバイスし
てくださった小川先生、三隅先生、高岡先生、スケジュール調整等ご尽力してくださった
事務局の大和田さん、福井さんに、心より御礼を申し上げたい。
以上
金融プログラム
インドネシア国際研修
学籍番号
CM120235
氏名 秤谷 大河
1. はじめに
私が今回の研修に参加した理由として、金融業界に関心があったこと、海外を訪れたこ
とがなかったこと、昨今目覚しい経済成長を遂げているインドネシアについての知見を深
めたいと考えたことなどがある。これらの動機があって臨んだ研修を終え、今私の中に残
っているものは充実感と危機感である。本稿では、事前調査と現地で見聞したことから得
られた知見と、研修を通して得られた教訓を中心に述べる。
2. 現地の印象
インドネシアにおける経済成長は、世界第4位の人口が生み出す膨大な消費に支えられ
た内需と、豊富な天然資源の輸出とに起因しており、また現状の課題としてインフラの不
整備や経済格差などが挙げられる。このようなことは、事前調査の初期段階で分かること
である。しかしながら、現地での企業訪問や街の散策を通して、私は自身の把握していた
ことと現地の様子が大きく乖離していたことに衝撃を受けた。
首都ジャカルタを訪れた第一印象は、活気に満ち溢れているということであった。しか
し、それ以上に鮮烈な印象として残っていることが、見事にインフラ整備が追いついてい
ないという光景と、富裕層向けの高級ショッピングモールがある傍らで衛生面に問題があ
るような出店が並んでいるといった、経済格差が目の前に広がっている情景である。イン
ドネシアの課題としてしばしば挙げられるインフラの不整備と経済格差の問題の重大さ
は、私の想像を遥かに超えるものであった。特に格差問題については、「思った以上に都
会な街」と「思った以上に貧しい街」が混在している状況を目の当たりにして、日本では
見ることのない光景に衝撃を受けた。
多くの企業を訪問して強く感じたことは、講演をして下さった皆様に共通して言えるこ
とであるけれども、インドネシアの発展を疑わず、自らの企業の存在意義や役割を雄弁に
語られていたことである。言うならば、「目の色が違う」といった印象を受けた。非常に
力強い言葉が並ぶ講演とプレゼンテーターの方々の眼光、堂々とした態度は自信に満ちた
ものであり、真っ直ぐに前を向いている姿勢には、今日の日本で働く社会人の姿勢とはま
た異なる意欲のようなものが感じられた。それと同時に、その姿勢こそがインドネシアを
更なる成長へと導くための最大の馬力となっているようにも思えた。
今回のインドネシア訪問は、現地に行かなければその実情や雰囲気を完全に知ることは
できないということをまざまざと実感させられるものとなった。
3. インドネシアにおける日系企業の可能性
近年、世界中から脚光を浴びているインドネシアは、日本にとっても当然重要な取引国
である。天然ガス事業を例にとってみると、インドネシアの最大の輸出相手国は日本であ
り、日本はインドネシアから大量の天然ガスを輸入している。その天然ガス事業において、
現在、インドネシアにおける天然ガス供給量を安定させるために多くの日系企業が現地で
尽力している。天然ガス供給量が安定することによって得られる利点として挙げられるこ
とは、日本にとっては日本向けの輸出が安定することであり、またインドネシアにとって
は国内の旺盛な電力需要に応えることが可能となることである。日本は、官民一体となり、
高度な技術力を活かして効率的に天然ガスを創出することによって、供給安定を目指して
いる。訪問先で印象に残っている言葉で、「インドネシアは中国でも韓国でもなく、日本
に期待している」というものがあった。日本は、コストパフォーマンスにおいて他国に劣
る部分が多いけれども、そのような状況でもインドネシアは日本の技術力や正確に計画を
遂行する能力に期待を寄せているのである。天然ガス事業に限らず、日系企業にとって事
業を展開することのできる機会がインドネシアには多く存在している。インドネシアが今
後も経済成長を遂げる中で、日系企業はインドネシアに対して直接投資を盛んに行うこと
によって大きな利益を生み出すことができるのである。日系企業は、様々な業界において
他国に先駆けてインドネシアに進出し、その信頼力を武器に今後も積極的な事業展開を行
っていく必要があるように思う。
4. 最後に
私は今回の研修を通して非常に多くのことを学ぶことができたように思う。その中でも、
私が強く考えさせられるようになったことは、次の二点である。一つは、語学力の重要性
である。国際社会の舞台では英語を話せて当たり前とよく言われるけれども、英語での講
演やディスカッションを通して、私は自身の語学力の未熟さを痛感し、ある種危機感のよ
うなものを抱くようになった。今回の研修は、世界とまず同じ土俵に立つために必要な英
語に加え、第三ヶ国語を習得する必要性を強く認識させられる良い契機となった。もう一
つは、現実を自分の目で見ることの大切さである。現地で見聞きしたことによって、事前
調査で膨らませていたインドネシアのイメージは良い意味でも悪い意味でも払拭される
ことが多かった。学んだ理論が机上の空論にならないためにも、常に現実と擦り合わせる
必要があることを実感することができた。この研修で学んだ教訓をもとに、今後の学習態
度を再考しようと思う。
最後に、上記のような貴重な学習機会の場を提供してくださったみずほ証券様や訪問先
の企業様、ご指導を頂いた三隅先生・高岡先生をはじめとする先生方、事務局の大和田様・
福井様、その他各関係者の皆様方に深く御礼を申し上げます。
金融プログラム
インドネシア国際研修
1109192k
柳樂 明伸
私は、将来金融機関への就職を希望している。私は金融実務に関する理解を深めたいと
考え、また近年経済発展の著しいインドネシアの様子を自分の目で見てみたいという気持
ちから本研修への参加を希望した。今回、私がインドネシア国際研修に参加してよかった
と感じたことは次の二点である。第一に高い経済成長を達成しているインドネシア経済を
肌で感じることができた点である。第二に企業訪問を通じてインドネシアに進出している
日系企業が採っている戦略や施策について学び、理解できたことである。
1.
発展するインドネシア経済の現状
インドネシアの経済状況に関しては、事前の勉強会やインターネット、書籍などを通じ
て知っていたが、実際に現地に行き自分の目で経済発展の様子を見ることができたことは
非常に有意義な経験であり、自分の視野を広げることができた。
私がインドネシアに到着して初めに驚いたことが、自動車やバイクの数の多さと家電や
自動車の広告の多さであった。インドネシアは世界第4位の人口をもち、消費市場が拡大
していることは知っていた。しかし、インドネシアで目にした光景は自分の想像を遙かに
超えるものであり日本とは全く異なる光景に驚かされ、経済成長の好調さを感じ取ること
ができた。また、ジャカルタの中心部の高層ビル群やショッピングモールからも経済発展
の様子が伺え、現地に行くことでしか経験できないことを経験することができた。
また、人々の活気にも驚かされた。移動中のバスから見たインドネシアの街は、若い人々
が多く見られ、非常にエネルギーのあふれている様子であった。こうしたエネルギーにあ
ふれる人々の様子は、日本では経験をしたことがなく、データからは見えない好調な経済
発展の様子も感じ取ることができた。
こうした経済発展の様子が見えた一方で、インドネシアの直面している課題についても
見て取ることができた。つまり、インフラの整備の必要性と格差の問題である。移動の際、
交通量に比べて狭い道路や舗装されていない道路がよくみられた。また、企業訪問をした
ときにも多くの企業で渋滞の問題は指摘されており、交通面でのインフラ整備の必要性を
強く感じた。また、格差の問題も大きいと感じられた。インドネシアでは高級ショッピン
グモールで買い物をする人も見られれば、路上で物を売る人も見られた。こうした格差の
是正は今後インドネシアが経済発展する上で取り組むべき課題の一つであると感じた。
2.
日系企業の取り組み
経済発展の著しいインドネシアにおいて日系企業はどのような事業を行っているのかを
様々な企業を訪問し、お話を伺うことで理解を深めることができた。ここでは特に、みず
ほコーポレート銀行による講演と曙ブレーキでの講演と工場見学を取り上げる。
みずほコーポレート銀行では、欧米金融機関のビジネスモデルとの違いを踏まえながら、
融資やアドバイザリー業務をどのように行っているかを講演いただき、本やインターネッ
トなどでは手に入れることのできない生きた情報を知ることができ、自分の知見を広げる
ことができた。また、海外赴任した際に心がけておくことも講演いただき、将来海外で働
きたいと考えている自分にとって非常に参考になるものであった。
また、曙ブレーキを訪問した際に工場見学させていただいた。曙ブレーキでは、製造ラ
インをスムーズになるように整流化しており、カンバン方式やカイゼン活動といったトヨ
タ生産方式の生産工程が実施されていた。私は工場を見学する前は、こうした合理化した
生産方式が新興国で可能なのかと疑問に思っていた。しかし、実際に工場を見学してみる
と現地の従業員は非常にまじめに作業を行っており、自分の認識が間違っていたことに気
付かされた。曙ブレーキでは、現地の従業員のモチベーションとコミュニケーション、チ
ームワークを高めることを重視していると伺った。常に改善を促すような施策により現地
の従業員のやる気を高めているように感じた。また工場にはモスクがあり、イスラム教徒
の従業員が礼拝をしている様子を見ることができた。こうした現地の従業員への配慮が従
業員のモチベーションを高めていると感じ、日本とは異なる宗教観をもつ国での企業の取
り組みを知ることができ、知見を広めることができた。
以上のような企業だけでなく、訪問した全ての企業で他社との競争に打ち勝つための差
別化戦略やインドネシア固有のリスクに対応するための施策など普段の大学の授業では聞
くことのできないリアルな情報を得ることができた。今回の研修で得られた知見を今後の
学生生活や就職後の人生に生かせるように努力していきたいと思う。
3.
如水会ジャカルタ支部懇親会
インドネシア研修では企業訪問だけでなく、如水会懇親会が開催された。懇親会では一
橋大学を卒業し、インドネシアで活躍されている先輩方と交流する機会をいただいた。先
輩方にはインドネシアでのビジネスについてより詳しくお話をして頂いただけでなく、イ
ンドネシアの魅力や課題について具体的にお話を伺うことができた。先輩方のお話を通じ
て、インドネシアに関するより深い知識を得ることができ、将来海外で働いてみたいとい
う気持ちがよりいっそう強くなった。また、先輩方の学生時代のお話や学生時代に取り組
んでおくべきことなどのアドバイスも頂き、今後の学生生活の大きな刺激になった。この
ようなすばらしい機会を与えてくださった如水会ジャカルタ支部幹事の曽我様に心より感
謝申し上げます。また、曽我様には鹿島建設と三菱重工、東京海上の合同研修会の開催や
伊藤忠商事と日本大使館の訪問を取りはからっていただきました。こうした貴重な機会を
与えていただきましたこと、厚く御礼申し上げます。また、如水会懇親会に参加してくだ
さいました先輩方に深く御礼申し上げます。
4.
今回の研修における反省点
今回の研修で訪問した企業では、英語によるプレゼンテーションが行われた企業がいく
つかあった。私はグローバルに活躍するためには英語でのコミュニケーションやディスカ
ッションができることが必須であることは理解していたつもりでいた。しかし、プレゼン
テーションで理解ができなかった部分があるなど、今回の研修を通じて自分の英語力のな
さを痛感した。自分が目指す世界で活躍できる人材になるため、残りの学生生活の間に、
ビジネスの世界で使えるような英語力の習得に努めたいと強く感じた。
5.
最後に
今回の研修プログラムにご協力いただいた皆様にお礼申し上げたい。お忙しい中訪問さ
せていただいた企業の皆様、引率いただいた三隅先生、高岡先生、小川先生、布井先生、
研修の企画・運営をしていただいた事務局の大和田様・福井様、研修の支援をしていただ
いたみずほ証券の関係者の皆様、事前準備でのコメントをいただいた安達さん、レザさん、
心より感謝申し上げます。今回の研修が有意義なものになったのは皆様のご指導やご支援
があったからこそだと感じています。本当にありがとうございました。
金融プログラム
インドネシア国際研修
1109202m 波多野貴
私にとって、海外とは未知の世界で、怖いものだという先入観があった。
「日本の常識は
世界では非常識」、私はずっとそう考えており、外国人とは分かり合えないものだと思って
きた。しかし、今回の研修は私の考えを大きく改めることになった。現地の方々と交流す
る中で気付いたのは、なんといっても、国籍は違えど、同じ気持ちになれるのだというこ
とである。そのほか、インドネシア渡航の中での気付きを順に記述していく。
まず、インドネシアは新興国とはいえ、やはり途上国だということである。これはあく
まで私の印象であるが、交通整備の観点からそう感じた。インドネシアに降り立つと、目
に飛び込んできたのはおびただしい量の自動車とバイクである。しかも、車線の概念がな
いのであろうか、何台にも横並びになり、自動車とバイクは互いにわずかな隙間をすり抜
けていく。日本人の感覚から考えると、教習所で間違いなく怒鳴られるレベルの危険な運
転である。
なぜ、こんなに自動車が多いのか。一説によれば、インフラの未整備が原因だという。
インドネシアでは、未だに交通手段が限られている。電車や地下鉄はほとんどないため、
都市間の移動に多くの人が自動車を利用しているのである。インドネシアでは、都市交通
のインフラ整備が当然課題となっているが、現時点では計画があるものの進んでいないと
いう。インフラ整備となると、やはり初期投資が大きく、投資回収期間が長くなるため、
事業の資金調達が困難であるに違いない。
次に、インドネシアの現地の方々は非常に日本人慣れしているということである。もと
もと親日国であるとは聞いていたが、予想以上に温かく歓迎していただいた。特に印象に
残ったことは二つある。一つは、英語はもとより、日本語を話せる方が多いことである。
実際に、インドネシアには日本語を専攻している学生も多いらしい。もう一つは、日本人
だと容易に判断されるということである。街を歩いたり、観光をする中で「コンニチハ」
とか「500 円」などと声をかけられ、なぜ日本人だと一目で分かるのか不思議に感じた。例
を挙げて言うとすれば、肌の色では中国人や韓国人と見分けるのは困難なはずである。こ
れに関しては、大使館を訪問した際、インドネシアの日本文化に対する関心がとても強い
ことを伺い、少し納得できた気がした。このとき私は、日本が国際社会の中で敗戦国とし
て良くないイメージをもたれているのではないかと先入観を持っていたので、とても嬉し
く感じた。日本もインドネシアに関心をもっと持ち、今後の友好につなげるべきであり、
自分もその一役を担ってみたい、いつかまた、ジャカルタに戻ってきたいと思えた。
最後に、このプログラムを支えてくださった企業の方々、一橋大学の先生方、大和田さ
んに感謝の気持ちを述べたいと思います。本当にお世話になりました。私は、現地の食事
(特に中華料理)と当初全く合わず、ご迷惑をかけてばかりでしたが、多くの人の支えで
研修を乗り切れたことを決して忘れません。ありがとうございました。
如水会の方々にも感謝の言葉を述べさせていただきます。この度は、お忙しい中私たち
研修生のために懇親会という貴重な機会をご用意していただき、本当にありがとうござい
ました。幹事の曽我様を始めとして、如水会ジャカルタ支部の方々には感謝の気持ちでい
っぱいです。私個人の感想を述べますと、海外勤務へのあこがれが生まれ、また如水会の
場に戻ってきたいという思いが強くなりました。これまで、海外に出たことはもちろん、
海外駐在員の方々と直接お話が出来る機会は皆無に等しかったので、私の目に映るすべて
が新鮮に映りました。私は、海外とは怖いものだという先入観を持っていましたが、OB の
方々が海外でも臆することなく働いていらっしゃる姿を見て、自分もこうなりたいと思え
るようになりました。そして、インドネシアにも「一橋」という強いつながりが確かに存
在するのだということを目の当たりにでき、とても誇らしく、心強く感じた次第でありま
す。繰り返しになりますが、この度は本当にお世話になりました。またお目にかかれる日
を楽しみにしております。
インドネシア国際研修プロジェクト
個人レポート
CM112803 レザ・アリ・ウィボウォ
はじめに
インドネシア出身の小生 1 にとって今回の国際研修は一年半ぶりのジャカルタ訪問となった。
街自体は一年半前のそれに比べればそれほど変わらないが、ジャカルタに対する小生の見方が変
わった。やはり海外に住んでみて、はじめて、母国をより客観的に見ることができるだろう。本
レポートでは、筆者の関心のあるテーマの日本・インドネシア関係はもとより、今回の研修を通
じて筆者が感じたことについて書きたいと思う。
インドネシアについて
インドネシアは 1997 年にアジア通貨危機により最も大きな被害を受け、ようやく 2000 年に国
際通貨基金(IMF)の支援プログラムを卒業することができた。当時、国内総生産(GDP)ランキ
ングが 25 位で、一人当たり GDP が 700 ドル程度であり、投資の魅力がない状態だった。しかし、
それ以来、平均成長率 5%以上で経済を拡大させ、2011 年に世界 GDP ランキングでは 16 位、一
人当たり GDP が 3500 ドルの 2000 年の 5 倍となり、世界中から注目を浴びている。グローバル経
済が低迷してきている中、いったいなぜインドネシア経済が目覚ましい勢いで成長しているのだ
ろうか。
インドネシアの好調な経済成長の原動力としていくつかの点が挙げられる。まず、GDP の 6 割
を占める家系消費である。特に、ここ 10 年間に内需拡大の現象が見られる。例えば、2011 年の
二輪車及び四輪車の販売台数が 10 年前に比べればほぼ 3 倍拡大した。また、中間所得層の増加
もこの GDP 成長を牽引してきている。他に、若年層の人口も堅調な経済成長の要因となる。2011
年インドネシアの平均年齢は 27.8 歳である。最後に、天然資源の需要拡大である。
上記の好況により、2011 年時点でフィッチや S&P 等の国際格付け実施期間はインドネシアの
長期国債格付けを投資適格に引き上げた。また、2011 年に投資環境が 2010 年の 10 位から 6 位
にまでランク・アップした。つまり、現在の状況は 10 年前のそれと全く異なり、投資先として
非常に魅力的な国となった。現在のインドネシアは、50 年前の日本と似たような高度経済成長
期にあると言っても過言ではないだろう。
尚、もちろんいいことばかりではない。現在、インドネシアは貧富の差やインフラの未整備、
汚職等、深刻な問題を抱えている。今回の研修においても、鹿島建設様にスナヤンタワーに行か
せてもらった際に、綺麗な高層ビルや高級マンションが並び、最上階から見たジャカルタの街並
みは東京やシンガポール等、アジアの大都会のように感じると研修参加者の方々がコメントした。
1 筆者は、2011 年 4 月より国費研究生として一橋大学商学研究科に在学し、翌年 10 月に同大学国際企業戦略研究科(千
代田キャンパスにある英語の MBA プログラム)に入学。
しかし、ジャカルタ漁港様を訪問した際に、近くに貧困層が惨めに暮らしていることを目のあた
りにした。そして、今回の研修ではあまりなかったが、ジャカルタでは渋滞は日常茶飯事である。
筆者の経験でいえば、大渋滞のときに、1 キロの距離を進むのに 1 時間以上かかることもある。
これは、ビジネスをやる際に、無駄な時間が多く非常に非効率的であるため、投資先としての魅
力を下げるのではないか。他に、インドネシアでは、汚職が非常に大きな問題である。政府は汚
職撲滅委員会(KPK)を形成したが、なかなか汚職問題が解決されていない。なぜならば、最も
汚職が激しいのは警察官や裁判官だからである。これらの問題は今後、成長を加速化させるため
に、また、先進国になるために解決すべき問題となる。
日本とインドネシアの関係について
日本とインドネシアの外交関係は 1958 年に開設された。現在は、両国の関係は良好だが、実
はインドネシアでは 1974 年田中角栄元総理大臣がインドネシアに訪問した際に「マラリ事件」
という反日暴動が起きた。当時、1000 社以上の日本車が破壊され、多数死傷者が出た。暴動の
指導者によると、日系企業のような外資系企業がインドネシアに進出することによって、その企
業と現地提携先の華僑系企業だけがもうけ、地場の中小企業が悪影響を受け、国民がさらに貧し
くなる。尚、1976 年に問題が解決され、それ以来両国は大変良好な関係を築いてきた。
まず、経済・産業の面では、日本からインドネシアへの対内直接投資はシンガポールに次ぎ、
第 2 位である。また、日本からの投資はほとんど投機的ではなく、長期的にコミットする投資で
あり、インドネシアの経済成長や発展に貢献してきている。例えば、JICA の首都圏特別地域の
マスタープラン(MPA)等のプロジェクトで、インドネシアはインフラ整備改善のために日本から
支援を受けている。また、日本は最大の輸出相手国及び第 3 位の輸入相手国である。他に、日本
は今インドネシアへの最大の政府開発援助(ODA)の供与国となる。換言すれば、インドネシア
の経済・産業発展のために日本は重要な役割を果たしてきている。
文化の面では、日本のコンテンツ及びクリエイティブ産業は昔からインドネシアの人々に知ら
れている。例えば、日本では知られていないが、インドネシアでは大人気の五輪まゆみの「心の
友」という日本の歌がある。この歌は、第二国歌と言われるほどインドネシア人に誰にでも知ら
れている。
「心の友」のほかに、最近話題となってきている AKB48 の海外発姉妹グループの JKT48
の誕生というのもある。AKB48 は現在日本で最も人気が高いアイドルグループであり、2011 年に
インドネシアでは姉妹グループの JKT48 を発足させた。このプロジェクトを手掛けたのは日本
で最大手広告代理店の電通であり、現地の電通の責任者である大野様によると、インドネシアは
非常に魅力的であり、今後も電通は JKT48 プロジェクトに注力していく。因みに、今年中に AKB48
の中川遥香さんと上位メンバーの高城亜紀さんが JKT48 に移籍し、半年から 1 年間ジャカルタに
住むことになり、ファンの間で大きなサプライズとなった。
他に、ワンピースやドラえもん、ナルトという日本のアニメやゲームがインドネシアで人気で
あり、電通が実施した「日本と新興国 若者のライフスタイルと価値観に関する調査」によると、
インドネシアは最も日本への関心度が高く、タイやブラジル、ロシアを上回っている。やはり、
現在のインドネシアは反日国から親日国に変わったと言える。
インドネシアにおける日系企業について
インドネシアに進出する日系企業が 1200 社程度あり、最近は増加傾向にある。特に、2011 年
には 250 社程度増え、前年の進出企業に比べればほぼ 25%の増加となった。因みに、インドネ
シアに進出している企業の中では、製造業が 5 割強、自動車産業が 1 割強を占めている。
かつて、インドネシアへの進出について、安価な労働課が主な理由となっていたが、最近は今
後の成長性や内需拡大という背景にシフトする傾向にある。今回の研修で訪問した企業様を見て
も、「低賃金のためにインドネシアへ進出」ということが殆どないものの、インドネシア国内市
場をターゲットにしているため、「内需拡大により最近の業績が堅調に推移」という発言が多か
ったように思う。例えば、ダイキン様とか曙ブレーキ様とか、インドネシアの好調な市場で好影
響を受け、今後も更なる拡大を計画している。後者の場合は、四輪車及び二輪車の部品を提供し
ており、特に 2011 年にインドネシア国内四輪車及び二輪車市場が国内市場の史上最高販売台数
を記録し、前者は 2011 年からタイを抜き、アセアンの最大市場となり、後者は中国とインドに
次ぎ、世界の第三位市場を誇っている。因みに、両方の史上においては、日本製が 9 割以上を占
めており、非常に高いプレゼンスを持っている。
因みに、アセアンの中で日系企業社数が最も多い国はタイの約 5000 社である。それに比べれ
ば、インドネシアに進出している企業の 1200 社程度は圧倒的に少ない。自動車業界においても、
販売台数はインドネシアがアセアンの首位を獲得しているのにもかかわらず、生産台数はタイが
インドネシアの 2 倍の生産台数を維持している。また、タイの大洪水事件後には、タイからイン
ドネシアに移転する企業が増えている一方だが、その件数は比較的に少なく、殆どの企業がイン
ドネシアよりまだタイを選んでいる。これについて、日本貿易振興機構(JETRO)
・アジア研究所
の濱田美紀様は「その理由はやはりソフト及びハードのインフラの未整備ですね。また、日系企
業の進出に関して、インドネシアはタイになる必要があるのでしょうか。タイに進出している日
系企業の社数を超えるのにほど遠いが、インドネシアは独自の魅力を持ち、それを磨けば、例え
ばインフラの改善をすれば、もっと進出企業を増やせるのではないか」と発言している。
本研究で感じたこと
前述したとおり、やはり海外に住むと、それほど感じていなかった母国の良い所も悪い所もも
っと見えてくると思う。
まず、最も印象に残ったのは、親日度である。街を歩くと、どこにおいても日本の車やバイク
が山ほど見られる。そして、日本のコンビニや日本食レストランもどこにでもあり、日本はイン
ドネシア人にとってとても身近な存在なのではないだろうか。小生は幼いころからドラマやアニ
メを通して日本の文化に触れ、大学では日本学科にしたため、日本文化の身近さは当たり前のこ
とのように感じていた。しかし、これはやはり外国の方や日本の方にとって当たり前のことでは
ないと初めて痛感した。因みに、電通の大野様やメディアによると、インドネシアの親日さは
AKB48 の海外発姉妹グループにジャカルタが選ばれた理由の一つとなる。
そして、インフラの未整備についてである。小生は昔から勿論インドネシアのインフラが悪く、
国に対して悪影響を及ぼしているということがわかっていた。しかし、何でも便利でインフラが
非常によい先進国である日本に住んで、また本研修を通じて訪問先企業様の様々な発言を伺い、
改めてインドネシアのインフラの未整備さについて色々考えさせられた。例えば、交通機関であ
る。留学する前には、どこに行くにも車かタクシーに乗っており、車に乗ると渋滞に巻き込まれ
るかもしれないが、電車より便利だと思っていた。しかし、今回の研修の際の渋滞や交通機関を
見ると、やはりインドネシアは、電車や大量高速交通システム(MRT)等の交通手段を考えるべ
きである。また、インドネシアは車やバイクの量が多いのにもかかわらず、国土に対する道路の
面積の割合がまだ 7%未満であり、また道路の質も比較的に悪い。因みに、東京は 18.4%、ロン
ドンは 31%である。
おわりに
小生は HMBA に属する者ではないのにもかかわらず、本研修プログラムに参加させていただき
大変感謝しております。本研修に参加することにより、色々なことに気づき、日本・インドネシ
アの関係についての知識を深めることができた。本研修プログラムは、日本とインドネシアの架
け橋を目指す小生にとって、大変有意義なものになると確信している。
最後に、本研修をサポートしてくださったみずほ証券様、訪問先企業様、随行してくださった
小川教授・三隅教授・高岡准教授・布井教授、事務局の大和田様・福井様、今回の研修にご尽力
頂いたすべての関係者・参加者様には厚くお礼申し上げたい。
以上
金融プログラム
インドネシア国際研修
CM112107
安達
1.
紘二
はじめに
2012 年 6 月某日、私の指導教官である三隅先生から、
「インドネシア研修を手伝ってみ
ないか」とお誘いの言葉を頂き、私は二つ返事でお引き受けし、今回の研修へ参加させて
頂いた。勢いのある国とはどのような雰囲気を持っているのかを実際に自分の目で確かめ
てみたいという想いや、企業や各機関の第一線で活躍されている方々のお話を直接伺って
みたいという想いはもちろん持っていたが、その場の勢いで返事をしたこともまた事実で
あった。しかし、あの時躊躇無くこの研修への参加を決めて今では本当に良かったと実感
している。今回の研修は私にとって非常に意義深く、とても価値のあるものであった。
今回の研修先であるインドネシアは、2 億 4,106 万人(世界第 4 位、2011 年 12 月時点)
の人口を有し、2011 年には一人あたり GDP が 3,000 ドルを突破するなど、現在急成長を
遂げている国のひとつであり、世界中から大きな注目を集めている。今回の研修は実際に
自分の目でインドネシアを見る貴重な機会であったため、本稿では本研修を通じて特に印
象に残ったことを中心に述べさせて頂きたいと思う。
2.
研修から学んだこと・考えたこと
今回の研修に参加し、私自身が学んだこと、感じたこと等に関して、インドネシアに関
する観点とインドネシアと日本の関係に関する観点から述べたいと思う。
2.1.
インドネシアに関して
インドネシアに関して印象に残ったことは、事前学習で学んだインドネシアの特徴を実
際に目で見て感じられたと同時に様々な立場からこの特徴がどのように捉えられているか
学べたこと、そして貧富の格差である。
インドネシアは巨大な人口・急成長する購買力に支えられた旺盛な内需及び豊富な天然
資源という魅力を持つ一方で、インフラ整備の遅れや政治的リスクといった問題を抱えて
いると、事前学習を通じて理解していた。実際に現地に行ってみると、ジャカルタは非常
に活気に溢れ、発展途上の活気と若い人口構成が醸成する日本では感じたことの無い独特
の雰囲気を実感することができた。
企業訪問の際には、訪問先の方々もインドネシアの魅力と課題に関しては、事前学習で
学んだこととほぼ同様のことを指摘されていた。その際、非常に勉強になったことはご講
演下さる方々がそれぞれ、同じ事柄に対して少しずつ違った見解を持っていたことであっ
た。今回訪問させて頂いた企業及び機関の方々は、それぞれインドネシアの人・企業・政
府それぞれに異なった関わり方をされていた。そのため、インドネシアの各特徴に対して
少しずつ異なった見解を持っており、ひとつの事象を多角的に理解することができ、非常
に勉強になった。今回、ある事象に対し複数の立場から解釈することで理解が飛躍的に深
まることを学ぶことができ、この経験を今後も活かしていきたいと思う。
次に貧富の格差に関して述べたいと思う。今回研修で訪れたジャカルタは想像以上に発
展しており、中心街は日本の銀座や丸の内のように非常に発展していた。しかし、非常に
発展している大通りから少し離れると、そこはほとんど整備されておらず、生活する人々
の雰囲気も大通りとは大きく異なっていた。また、渋滞で車が良く止まるが、止まるとす
かさず何人かの人が寄ってきてお土産等を売りに来る。観光地も同様の状況であった。イ
ンドネシア如水会の方のお話を参考にすると、このような人々はその日を暮らすのもやっ
との生活をしており、平均的な所得水準は上がっているものの、貧富の差は拡大する一方
であるとのことであった。インドネシアは豊富な内需等を背景に現在世界中から注目を集
めており急成長を遂げているが、急成長の歪みがすぐ近くにあるのを目の当たりにし、急
成長の危うさとともに、近い将来このような問題に真剣に取り組んでいかなければいけな
いと感じた。
2.2.
インドネシアと日本の関係に関して
インドネシアにとって日本は、最大の輸出相手国であるとともに、輸入相手国としても
第 3 位、さらに日本にとってインドネシアは最大の円借款相手国となっており、統計上の 2
国間のつながりが深いことは良く知られている。今回現地に行き実際に自分の目でインド
ネシアを見てみると、私たちが考えている以上にインドネシアと日本のつながりが深いこ
とが実感できた。
インドネシア(特にジャカルタ)では自動車・バイクの通行量が非常に多く、渋滞が慢
性的な問題となっているが、走っているほとんどの車両が日本製であった。実際、自動車・
バイクともに市場シェアの 90%以上が日本製で占められている。また家電製品を見ても、
日本企業が比較的高いシェアを維持できており、さらに日本の文化も非常に人気があるよ
うで、日本のアニメや AKB 等も人気がある。日本ではこの事実はあまり知られていないよ
うに思うが、歴史的経緯やインドネシアの方々の国民性を背景に、上述のようにインドネ
シアは非常に親日的な国となっている。このような好感に加え、インドネシアにおける日
本に対する期待は非常に大きなものを感じた。
現在日本に注目したり、期待を寄せる国は少なくなっていると思う。その中で、日本に
これだけの期待を寄せる国は他にはほとんど無い。そのため、今後もインドネシアとの関
係を持続・発展させていくことが大事であると感じたとともに、日本をより目標とされる
に足る国にしていきたいと感じた。
3.
おわりに
今回の研修プログラムを通じて、インドネシアの今を実際に感じることができたととも
に、今後社会に出て働くにあたっての個人的な問題意識を持つことができ、非常に有意義
な研修であったと思います。
最後に、大変お忙しい中、本研修にご協力下さいました訪問先企業及び訪問先機関の皆
様・卒業生の皆様、インドネシアにて温かく私たちを迎えて下さったインドネシア如水会
の皆様に心より御礼申し上げます。皆様の多大なご厚意があったからこそ、本研修が非常
に実り多いものとなりました。
また、本研修を企画・運営下さいました小川先生・三隅先生・高岡先生、事務局の大和
田様、福井様にもあわせて御礼申し上げます。先生方の尽力が無ければ、本研修が滞りな
く進行し、これほどまで有意義な研修にはならなかったと思います。そしてこのような貴
重な機会を与えて下さり、本当にありがとうございました。
最後になりますが、特殊な立場の私を温かく迎えて下さった HMBA の皆様にも御礼申し
上げます。厳しい時間制約の中、皆様が多くの訪問先企業に対する調査を周到に行い、事
前の勉強会で報告されている姿に非常に刺激を受けるとともに、質の高い事前準備資料や
勉強会の議論から多くのことを勉強させて頂きました。また皆様との交流を通じて、本研
修から深く、そして楽しく学ぶことができました。このような貴重な機会にご一緒させて
下さり、本当にありがとうございました。皆様への感謝の言葉を本稿の結びに代えさせて
頂きたいと思います。
以上
編集後記
一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース金融プログラム国際研修(みずほ証券商学
研究科研究教育助成金プロジェクト)は今年で6年目を迎えました。本年度も、みずほ証
券株式会社様をはじめ、在ジャカルタの企業様・各種機関様・如水会関係者様には、研修
準備段階から訪問当日までの長きにわたり親身にご指導をいただき誠に有難うございまし
た。大変貴重な勉強の機会をいただきましたこと改めて深く御礼申し上げます。また、本
年度は、如水会ジャカルタ支部の皆様のご厚意により沢山の先輩方のお話をお聞きする機
会に恵まれました。諸先輩方が現地でご活躍する姿に接し、学生一同、自らの将来につい
て決意するものがあったようです。
ジャカルタから帰国してひと月後、日本政府とインドネシア政府がジャカルタでの都市
開発計画で合意したことが報道されました。現地でご担当者のお話をお聞きして帰国した
ばかりの私どもは、歴史の1ページに参加したような思いがいたしました。
訪問させていただいた企業の方からお伺いした次の言葉が心に残っております。
「東南ア
ジアで働いていて感じるのは、この国々で日本の国や企業の果たす役割の大きさ、重大さ
です。又、人々の期待の大きさを身にしみて感じます。特にインドネシアの人たちが期待
しているのは日本です。日本人が好きなんです。皆さんにはそのような期待にこたえられ
るように頑張ってもらいたいと思います。」
皆様のご厚意、エールを無駄にしないように、研修に参加した学生が今回の経験を将来
に生かしていってくれることを祈願しています。
2012 年 11 月
金融プログラム事務局
一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース金融プログラム
2012 年度 インドネシア国際研修プロジェクト報告書
2012 年 11 月発行
発行者:
一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース
金融プログラム
〒186-8601 東京都国立市 2-1 一橋大学
マーキュリータワー 3403 室
* 本報告書の内容について、無断転用・転載を固くお断りいたします。