「爺さんの空」 生徒配付資料 裏

劇団アルファー
青少年劇場
作・演出 時風静恵
<あらすじ>
元特攻隊員の露木一郎は「橘旅館」の大女将、ゆきえが危篤との
<主な登場人物>
知らせを受け、九州に行きたいと申し出る。高齢の一郎の体を気
露木一郎・・・元特攻隊員、特攻出撃するも愛機の不調から
遣い「一人ではやれない! 」と反対する家族。意外なことに同行を
南海の島に不時着、結果として生き残る。終戦後、かつ
申し出たのは、定職に付かず家族の「厄介者」となっていた孫の
て「青春」を過ごした特攻基地、鹿屋を訪ねる。
「翔(しょう)」であった。
翔・---・・一郎の孫、交通刑務所を出た後は働きもせず
かつて「特攻隊員」として青春をすごした鹿屋の地に立つ一郎-
父の直樹とはたびたび衝突、家族の厄介者的存在だった
昔の面影のままの「橘旅館」 -走馬灯のように当時の記憶がよみ
が、ひょんなことから一郎の鹿児島行に同行することに
がえる。若い隊員たちの「母親代わり」であった女将さんのこと、
なる。 (回想では一郎を演じる)
マドンナだった娘のゆきえさん、伸の良かった隊員の山本や片岡
片岡 正-一郎の戦友、鹿屋で再会するがアルツハイマ
たちこと-初めて聞く祖父の「青春」 -それは孫の類の心にも大
ーで記憶が無い。付き添いの孫、勲は告げる「お爺ちゃ
きな変化をもたらすことになる。
んの記憶は終戦の時から止まっている」
<上演にあたり 時風静恵>
山本(回想・特攻隊員) -本名は李向春、 「祖国のため
戦後68年・・・あの戦争が「人づての話」として語られるようにな
と割り切れたらどんなに気が楽か-」複雑な思いのまま
るのもそう先ではないと思います。
迎えた出撃前夜、自分の祖国は朝鮮だと告げる。
若くして散っていった多くの命- 「特攻」という、確かにあって
女将(回想) -橘旅館の主人。若い隊員たちの母親的存
はいけない戦法ではあるが、純粋に生きた若者たちを思うと「愚
在。 「明日は女将さんのために往きます!」という山本
かなこと」として片付けるにはあまりにも忍びない。彼らの生き
に形見のお守りを渡す。
様に触れるにつけ、その「純粋さ」に心打たれるのは、今を生き
橘ゆきえ(回想) -女将の一人娘で隊員たちのマドンナ
ている私たちがそれを求めているからでしょうか。 「戦後」とい
的な存在。一郎に想いを寄せる。出撃前夜、一郎にせが
う「節目」から180度の転換を余儀なくされた日本人。同じ「DNA」
まれ「おはら節」を唄うがこみ上げるものから最後まで
を受け継いでいるはずの若者の確かな変わりよう-時代が人間
唄えず、その場を飛び出す。
を形成すると一言で片付けるのは簡単ですが、それだけではない
岡本大尉(回想) -一郎たちの隊長。部下たち-の配慮
ような危機感を感じているのも事実ではないでしょうか。本音で
から家族との面会を断り続けていたが、隊員たちの配慮
ぶつかることの少なくなった人間関係。今を生きる私たちが失い
から橘旅館の二階で「面会」を果たす。
かけている大切なものを考えてみたいとの思いから、家族の為、
愛する人の為、自らの命をかけて純粋に生きた若者たちの姿を描
ある特攻隊員の遺書
いてみました。
神風特別攻撃隊とは?
昭和19年10月フィリピン、レイテ島上陸のアメリカ軍に対抗し、大西
待ちに待った晴れの出陣を、明日に控えました。
突然でいささかあわてましたが、大いに張り切っておりますので、何とぞご安
滝治郎中将らの発案で、爆弾を抱えたまま敵艦隊に突入する「神風特別攻
心下さい。生を享けて、ここに二十二年になります。何の恩返しも出来ず誠に
撃隊」が編成された。日本国存亡の危機に際して平均20歳の若者が日本
申し訳ありません。何とぞお許し下さい。国家のために敵って往くことを、最大
古来からの武士道思想を心に留め、父母兄弟のため人間爆弾となって赦艦
の孝行としてお受け下さい。私が戦死したと聞きましたら、赤飯を炊き.黒い
に飛び込み散っていった。終戦の昭和20年8月15日に航空艦隊長官宇
着物など着ず、万歳と叫んで富んで遺骨を迎えてください。多分骨はないもの
連結中将自らの「特攻」まで、 1298機(陸軍は1185機)の飛行機がこの
と思いますから、体操シャツを一枚送ります。これは昭和十七年七月十一日
作戦に謬如しだと雷われています。
土浦航空隊に天皇陛下が行幸されたときに使用した記念すべき品です。私と
思って大切にしてください。今となっては別に言い残すことはありません。とに
かく命のあるうちは徹底的に頑張り抜く覚悟でおります。必ずや、敵空母の
一隻やこ隻は沈めてみせるつもりです。取り急ぎ乱筆になりました。感無量で
何もかけません。これでペンを置きます.ずいぶんとお元気で.いつまでも暮
らしてください。小父さん.小母さんたちによろしく。ではご機嫌よう。さような
ら。母上様