時代をリードする優れたデザインの力 専門性と総合性の両面からデザインを学び 自分で考え行動できる人材を 長岡造形大学 視覚デザイン学科長/教授 松本 明彦 本学の視覚デザイン学科では先ず、広告、ポ スター、イラストレーション、アニメーショ ン、CI(企業文化を、統一されたイメージデ ザインで伝えていく戦略)、WEB(ネット上 の表現方法)、写真、ゲーム、本の装丁など、 ビジュアルデザインを広範囲に学び、その後、 学生自らが希望するジャンルを専門的に学ぶス プロフィール Akihiko Matsumoto タイルをとってきましたが、公立大学法人化を コマーシャルや雑誌などの写真を数多く手掛け、現役 の写真家としても活躍中。専門分野は写真、デジタルフォ ト。米国のCGの国際会議・展覧会“SIGGRAPH”や欧 州のデジタル映像の祭典“IMAGINA”、国内では東京 都写真美術館などで作品を多数発表。主な著書に、写 真集「TOKYO ARTISTS」、専門書の「ディジタル映像 表現」「デジタルフォト独習辞典」などがある。 機に、デザインの幅広いジャンルを横断的に学 POINT 「表現デザイン」とは、創造性すなわちクリ これまでの視覚デザイン学科 エイティビティを高度化しながらデザインの深 イラスト レーション 広告 装丁 CI アニメー ション WEB ン」という切り口から、より高度なデザイン学 習を行うことになりました。 度を深めるアプローチ手法で、もう一方の「伝 マンガ 写真 びながら、「表現デザイン」と「伝達デザイ 達デザイン」とは、コミュニケーションという ゲーム 目的から視覚に訴えるデザインを作り出してい く手法を学ぶことを目指しています。 いずれも社会のニーズに呼応したもので、視 覚デザインで社会のお役に立つ人材を育成して それぞれの専門分野で デザインを研究学習 いこうというものです。 これからの視覚デザイン学科 伝達デザイン イラスト レーション 広告 装丁 表現デザイン CI アニメー ション WEB マンガ 写真 ゲーム より柔軟な社会人基礎力と 視野の広い横断力を育成 社会に役立つ人材の育成強化については、社 会人基礎力を身につけることに重きをおいてい 専門性と総合性を両立しながら 高度なデザインを学ぶ ます。多様な状況に対応可能な柔軟性や、デザ インを社会に定着させるノウハウなど、長岡と ホクギンMonthly 2014.6 いうフィールドでの現場実習を通じて経験を積 むことで、実践的なスキルの構築を目指しま す。 現役のトップクリエーターと交流し 表現の可能性と方法論を学ぶ さらに、デザインの多様性が学生の可能性を 3年次以降の専門学習については、創ること 広げるという観点から、学内での横断的な学習 だけを目標にせず、見て評価されることを糧に を各年度に用意。視野が広く、自主的に考え行 して成長を続けることをテーマとしています。 動に移せる人材を育成します。 さらに、東京で活躍するクリエーターを講師に 招き、講義や展示会を開催することや、県内の クリエーターによる講義など、実際のデザイン の現場を通して、デザインとコミュニケーショ ンの可能性について学びます。 首都圏及びアジアの大学との合同発表会にも 力を入れて、長岡で世界を学ぶスタンスを維持 しつつ、時代が求めるデザイナーや人材の育成 に取り組んでいきます。 ▲授業風景 (平成26年5月1日寄稿) デザインを総合的に学びながら 各自のスペシャリティを育む 本学の特徴の一つとして、学科の壁を超えて 多様なデザインを学ぶという点が挙げられます が、総合的にデザインを学ぶことに関しては、 1年次の学部共通実習、2年次の学科内実習を 含め、クロス学習により、総合力を蓄積したう えで、各自の専門分野へとフィードバックする ことを重要視しています。 長岡では、視覚デザインへの期待も高く、地 ▲演習作品 「飲料水広告ポスター」 (大堀楓) 元の企業や行政の皆さまとの協働実習も積極的 に取り入れながら、総合力と専門スキルの両方 を高めることを目指していきます。 ホクギンMonthly 2014.6 ▲卒業研究作品 「あまざさけ」 (佐々木あずさ) 時代をリードする優れたデザインの力 長岡造形大学「美術・工芸学科」 ~ 学びの特徴とカリキュラム ~ 長岡造形大学 美術・工芸学科長/准教授 長谷川 克義 アートとクラフトから世の中とのつながり を学び、多様な場面で役立つ人材を 本学の美術・工芸学科は、デザインの大学に ある美術系の学科です。他の美術大学との違い は、デザインを学ぶ中において欠かせないアー プロフィール Katsuyoshi Hasegawa 金属工芸を専門とし、鋳金技法による器物造形の探 求および古代鋳造技術の研究に取り組む。日本鋳金家協 会、アジア鋳造技術史学会、日本工芸会東日本支部新潟 研究会に所属。主な著書に『古代青銅の流通と鋳造』 (共著)がある。「財務省」銘板制作スタッフ、トキめき 新潟国体炬火受け台制作、佐野ルネッサンス鋳金展第3 回大賞他、東日本伝統工芸展入選、伝統工芸日本金工 展入選、個展開催1回、グループ展には、多数出展。 ト(美術)とクラフト(工芸)を探求する点に あります。デザインをベースに創造力を蓄え、 新しい表現を研究しています。 また、創造の追求だけでなく、人間的な成長 や、社会への適応力を身につけることができる よう、多くの美術系大学と異なり、専門性だけ でなく、横断的な研究により、社会が求める能 力を養い、多様な職種で力を発揮する人材を育 成しています。 思うようにいかない制限を 自らの力で乗り越える 横断的に学ぶことは、素材に触れることから 始まります。絵などを描くための描画材や木、 金属、ガラス、ファブリック(生地や織物)な ▲長谷川克義 展 -METAL CASTING Metal Art Museum Hikarinotani 企画展 より どの素材に触れ、その世界と出会い、各素材の 持つ制限を知って、イメージ通り思うように表 現できないことを、いかに知恵を絞って完成さ せるか。それらを身を持って体験することで、 表現するためのプロセスを自主的に創りだせる よう導いていきます。 異素材を組み合せる表現においては、自ら趣 ホクギンMonthly 2014.6 効率性・経済性に疲れた心を解き放つ 役割がアートやクラフトにはある 現代では、企業活動だけでなく、市民の暮ら しまで、経済性や効率性を求める傾向が強く なっています。だからこそ、アートやクラフト の持つ役割はとても重要であると思います。 アートやクラフトには、常に緊張した心を解 き放つ力があります。人間は、優れた作品を目 の前にした時、自然と肩の力が抜け、開放され た気持ちになり、感動することさえあります。 ▲制作風景 このような本質を理解し、社会に役立つ能力を 身につけること。また、公立大学法人化によ 向する世界だけでなく、異なる世界の制約を取 り、地域社会との連携がさらに強まっており、 り入れながら表現手段を構築するため、コミュ 世の中とつながり価値を生み出せること。 ニケーション力や完成までのマネジメントも学 それが美術・工芸学科の使命になります。 ばなくてはなりません。 (平成26年5月1日寄稿) 答がない世界で、常に自分で考え、 何故を大切にして創作する 美術・工芸学科では、横断的な研究学習の基 本に「考える」こと、そして、「何故」と疑問 をもつことを大切にするよう、常に指導してい ます。与えられた課題に対して、“どうしてこ れなのか?”を考える。さらに、制限のある中 で、想い描いた表現を実現する術を自ら発見す る。つまり、答のない世界において、常に自問 自答し、能動的に動き、自らの力で成長してい く意志を持って行動できる人材を育成していま す。 また、創作だけでなく、様々な局面で問題を 解決できる能力を身につけることで、業種・職 種を問わず、卒業後の進路は大きく広がること でしょう。 ホクギンMonthly 2014.6 ▲演習作品「金属とガラスによる照明器具の制作」
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