ウリナスタチン注射用製剤の品質評価に関する検討 中村 仁美 1, 木下

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ウリナスタチン注射用製剤の品質評価に関する検討
○中村 仁美 1, 木下 充弘 1, 掛樋 一晃 1(1 近畿大学薬学部)
【緒言】糖タンパク質は糖鎖組成の違いにより、グライコフォームと呼ばれる不
均一性を生じる。したがって、糖タンパク質性医薬品の品質評価の指標として糖
鎖の評価は極めて重要である。本研究では急性膵炎および急性循環不全治療薬と
して局方に収載されている糖タンパク質性医薬品ウリナスタチン(UTI)について、
タンパク質分子を指標とする同等性評価法ならびに糖鎖を指標とする評価法につ
いて検討した結果について報告する。
【方法】UTI の同等性評価 製造元の異なる 2 種の UTI 注射用製剤を日本薬局方
試験法に準じ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法により測定し、さらに
SDS-PAGE および MALDI-TOF MS により分子量を評価した。またセルロースアセ
テート膜電気泳動法及びキャピラリー電気泳動(CE)により均一性を評価した。
UTI 中の糖鎖分析 UTI を N-グリカナーゼ F 及びコンドロイチナーゼ ABC 消化
し、遊離した N 型糖鎖及び不飽和二糖を蛍光標識し、CE および MALDI-TOF MS
を用いて解析した。
【結果・考察】SEC 及び SDS-PAGE による分析の結果、両法とも UTI の理論分子
量より高値が得られたのに対し、MALDI-TOF MS では理論的分子量に相当する分
子量が観察された。セルロースアセテート膜電気泳動法及び CE による分析では製
品間ならびにロット間において大きな差は観察されなかった。糖鎖分析の結果、
ウリナスタチン中にはシアル酸を 1 及び 2 残基有する複合型 2 本鎖糖鎖が主要な
N-型糖鎖として観察され、製品及びロット間において糖鎖組成に誤差が観察され
た。一方 UTI 中のコンドロイチン硫酸鎖に由来する 2 糖として GlcUA-GalNAc 及
びその 4 位硫酸化体が主要な成分として観察された。ウリナスタチンのように糖
含量の高い糖タンパク質性医薬品の品質評価法を行う場合、従来のタンパク質分
析法では同等性の評価が難しく、糖鎖を指標とする糖タンパク質性医薬品の品質
評価法が必要であることがわかった。