フッ素系撥水撥油剤 アサヒガードEシリーズ 防汚加工用途

Res. Reports Asahi Glass Co., Ltd., 61(2011)
UDC:661.185.22:547.22
フッ素系撥水撥油剤 アサヒガードEシリーズ
防汚加工用途への展開
Fluorine Water and Oil repellents AsahiGuard E-SERIES
Development of Stain Release Application
原弘之*・杉山和典*・小野光史*
Hiroyuki Hara, Kazunori Sugiyama and Mitsufumi Ono
フッ素系撥水撥油剤の特性としては他の炭化水素系薬剤では決してかなえることの出来ない撥油
性が挙げられ、この特性を利用してアサヒガードは、撥水撥油加工剤のみならず防汚加工剤として
も利用されている。また、特殊な分子設計による防汚加工専用加工剤のグレードも販売している。
一方、最近PFOA(パーフルオロオクタン酸)が、野生生物や人の血液から検出されることが判
り、そのリスクについて懸念がもたれるようになってきた。当社はPFOAを含まない(検出限界に
て不検出)環境対応型フッ素系撥水撥油剤「AsahiGuard E-SERIES」を2006年に世界に先駆け上
市した。当社はその後も、
「AsahiGuard E-SERIES」の製品開発を続け、お客様の要望に対応し
た様々なグレードを上市している。
本稿では防汚加工の概要と加工剤について述べ、更に新たな環境対応型フッ素系防汚加工剤であ
る「AsahiGuard E-SERIES」
AG-E100とその加工例に関して概説する。
Fluorinated water and oil repellents have distinctive oil repellency that cannot be achieved
by hydrocarbon based materials. The oil repellency enable "AsahiGuard" to be used not only
as a water and oil repellent but also stain guard agents. In addition to that, stain release
specialty products with unique chemical structure are being sold to the relevant market.
Recently perfluorooctanoic acid(PFOA)is drawing increasing attention in United States,
Japan and other countries, because PFOA is found at very low levels both in the
environment and in the human blood. Under these situations, in February 2006, we began
distribution of our new line of“AsahiGuard E-SERIES”products. These new products offer
the same high performance as our existing line, but do not contain PFOA(at or above
current limits of detection)
. And we keep developing the various grades corresponding to
the demand of the customer.
In this report, the outline and the application of stain guard finish are described. And we
introduce our new fluorinated stain release agent“AsahiGuard E-SERIES”AG-E100 and its
application.
*化学品カンパニー技術開発センター商品開発室 主席(E-mail: [email protected])
AGC Chemicals R&D Center Materials Development Div. Senior Researcher
*化学品カンパニー技術開発センター商品開発室 主席(E-mail: [email protected])
AGC Chemicals R&D Center Materials Development Div. Senior Researcher
*化学品カンパニー技術開発センター商品開発室 リーダー(E-mail: [email protected])
AGC Chemicals R&D Center Materials Development Div. Reader
−19−
旭硝子研究報告 61(2011)
記2者の複合に大別される。以下これらについて簡単
にまとめ、フッ素系防汚加工剤を位置づける。
1. 緒言
1.1 背景
2.1.1 洗濯時に汚れ除去性を高めるもの
当社は独自のフッ素技術をもとに、各種フッ素系製
品を開発製造販売している。この中で、フッ素系撥水
撥油剤「アサヒガード」は1971年に上市して以来、
40年の長きにわたり多くのお客様に使用されている。
フッ素系撥水撥油剤による処理は、紙、繊維、不織
布、その他さまざまな基材に対する表面改質加工の一
つとして広く行われている。繊維に対する加工ではス
ポーツ用途などの各種衣料やアウトドア製品、カーテ
ン、シーツ、テーブルクロスなどの非衣料繊維等が最
終製品として挙げられる。これらはいずれも、私達の
生活に身近な製品であり、したがって、フッ素系撥水
撥油剤とは人々の生活に密着して存在するものであ
る。
フッ素系撥水撥油剤の特性としては他の炭化水素系
薬剤では決してかなえることの出来ない撥油性が挙げ
られ、この特性を利用してアサヒガードは、撥水撥油
加工剤のみならず防汚加工剤としても利用されてい
る。また、特殊な分子設計による防汚加工専用加工剤
のグレードも販売している。
Stain Release
最も古くから行われている加工(1)で、
加工と言われるものである。親水性物質を繊維表面に
付着させ。繊維の表面をより親水性にすることで洗濯
時の汚れ除去性を高めるものである。親水性物質とし
ては、カルボキシル基を有するポリマー(2)やポリエ
ステル、ポリアミド,ポリウレタンなどにオキシエチ
レン基を付加したもの(3)などが用いられるとされる。
また,プラズマ加工(4)やアルカリ減量(5)などによ
り繊維表面の親水性を高める方法も提案されている。
1.2 PFOA問題と環境対応
一方、最近PFOA(パーフルオロオクタン酸)が、
野生生物や人の血液から検出されることが判り、その
リスクについて懸念がもたれるようになってきた。現
在、PFOAについて米国EPAを中心として、リスク
評価が実施されており、現時点ではその結論は明らか
になっていない。
PFOAはアサヒガードの中にも意図しない不純物と
して極微量含まれることが明らかとなっている。当社
は「豊かな生活・利便性の維持と低環境負荷の両立を
価値の中心に据え、より環境負荷の少ない便利な製品
を提供していく。
」という方針のもと、PFOAを含ま
ない(検出限界にて不検出)環境対応型フッ素系撥水
撥油剤「AsahiGuard E-SERIES」を2006年に世界に
先駆け上市した。当社はその後も、
「AsahiGuard ESERIES」の製品開発を続け、お客様の要望に対応し
た様々なグレードを上市している。 本稿では防汚加工の概要と加工剤について述べ、更
に新たな環境対応型フッ素系防汚加工剤である
「AsahiGuard E-SERIES」
AG-E100とその加工例に関
して概説する。
2.1.2 着用時,使用時の汚れ付着を防ぐもの
汚れを
“はじく”
ことで防汚性を高めるもので、
Stain
Repellent(Stain Guard)加工と言われるものであ
る。以前より各種炭化水素系の撥水剤(6)を用いるこ
とで、水性着色汚れの防止として利用されたが、フッ
素系撥水撥油剤を用いることで、油性汚れの付着防止
と優れた洗濯耐久を付与することが可能となった。
AGCの撥水撥油剤においては,アサヒガードAG「AsahiGuard E-SERIES」
AG-E061(8)がこ
7000(7)、
の加工に適している。
2.1.3 フッ素系防汚加工剤
フッ素系ポリマーを用いたStain Repellent性能と
Stain Release性能とを併せ持つ複合機能加工剤であ
る。Smithらはこの特性を発現させるためには、a)
繊維表面の不規則性の減少、b)繊維の表面エネルギ
ーの減少、C)繊維の親水性の増大の3点が重要であ
ると述べている(9)。b)より得られる撥水性や撥油性
に基づくStain Repellent性能とC)の親水性に基づ
くStain Release性能は相反する性能であるが、これ
を両立させるためにFig.1が開発された(10)(11)。
Fig.1 Standard structure of block-polymer(10)(11)
2. フッ素系防汚加工剤
2.1 防汚加工の概要
防汚加工は、繊維加工における多くの機能加工の1
つであり、今までに多くの加工剤が用いられてきた。
防汚加工を分類すると、1)洗濯時に汚れ除去性を高
めるもの、2)着用時に汚れの付着を防ぐもの、3)前
−20−
2.2 フッ素系防汚加工剤の機構
2.2.1 Flip-Flop現象
Fig.1で示した構造は、1分子中にオキシエチレン
基に基づく親水成分とパーフルオロアルキル基に基づ
く撥水撥油成分を有するブロックコポリマーである。
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2.2.2 Flip-Flop現象の評価
そしてこのポリマーをコーティングした表面の空気中
と水中におけるノルマルヘキサデカンの接触角の測定
から、ポリマーのFlip-Flop現象が説明された。
Flip-Flop現象とは、空気中においてはポリマー中
の撥水撥油成分が表面に偏析することでStain Repell
Fig.2 Mechanism of Flip-Flop(10)
ent性を発現する一方、水中においては、親水性成分
が表面に偏析し、Stain Release性を示すものである
(Fig.2)(10)。
この種のポリマーは多く開発されており、例えば、
パーフルオロアクリレートとポリオキシエチレン基含
有プレポリマーの各種ブロック重合体(11)、パーフル
オロアクリレートとポリオキシエチレン基含有モノマ
ーの共重合体(12)等が例として挙げられる。これらは
いずれも、撥水撥油成分と親水成分を1分子中に有す
るハイブリッドコポリマーであることが特徴である。
フッ素系防汚加工でのFlop-Flop現象を下記のよう
なモデル実験により確認した。
試験サンプルとしては、一般的なフッ素系撥水撥油
剤、および、パーフルオロアクリレートとポリオキシ
エチレン基含有モノマーの共重合体にて表面処理され
たポリエステル繊維を用いた。評価として、空気中、
および、水中でのノルマルヘキサデカンの接触角測
定、および、液滴写真撮影を実施。Fig.3にその結果
を示す。
一般的なフッ素系撥水撥油剤ポリマーは空気雰囲気
下では、その表面自由エネルギーの関係から疎水性で
あるパーフルオロアルキル部位が表面配向する。結
果、空気中ではフッ素系撥水撥油ポリマーで表面処理
された基材は十分な撥油性を発現し、ヘキサデカンに
対する接触角も高い値を示す。逆に水中雰囲気下で
の、フッ素系撥水撥油ポリマーでの処理表面はヘキサ
デカンとの接触角は小さくなる。これはパーフルオロ
アルキル部位に対するヘキサデカンの臨界表面張力の
差よりも、水に対するヘキサデカンの臨界表面張力の
差のほうが大きいことに起因する。一方で、パーフル
オロアクリレートとポリオキシエチレン基含有モノマ
ーの共重合体にて表面処理された基材においては上述
の現象と異なる表面特性を示す。すなわち、空気中で
はパーフルオロアルキル部位が表面配向し大きな接触
角が得られ十分な撥油性を示し、水中ではポリオキシ
エチレン部位が表面配向され親水化されることから同
じく、ヘキサデカンに対する接触角は大きな値が得ら
れる。
このように、パーフルオロアルキル部位による疎水
性と、親水化合物による親水性を併せもつ構造により
発現するFlip-Flop現象は、普段の着用時ではフッ素
による汚れ付着の防止、洗濯時には親水性部位による
汚れ落ち性の向上と、優れた双方の特徴を繊維に対し
て付与できる機能性加工剤に必要不可欠と考えられ
る。
Fig.3 Contact angle of n-hexadecane in air and water
−21−
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2.3 防汚性の評価
防汚性評価は通常、汚れを試料に付着させ、洗濯
し、判定する、の3つのステップで実施される。汚れ
を付着させる段階ではStain Repellent性が、洗濯し
た後の判定ではStain Release性が評価出来る。代表
的な方法は。AATCC130法(13)のStain Release性評
価方法で、これは試料上に5滴のコーン油を滴下し、
グラシン紙をひき荷重を掛け、プレスする。その後試
料は洗濯され、除去出来なかった汚れを汚れ見本と比
較してStain Release性として等級を付与する。当社
での防汚性評価もこの方法をベースに実施することが
多い。さらに、より評価の現実性を高めるために、多
くの検討がなされている。例えば、汚れの種類として
は、コーン油に代わり、ダーティーモーターオイル、
鉱物油、さらにB重油を用いたりする方法、人工皮脂
を用いる方法、ラー油、ごま油、しょう油、ソースな
ど実際の汚れを用いる方法などが行われている。汚れ
の付着方法においては、フェルトの立方体にあらかじ
め汚れ成分を浸透させておき、これを試料と共にアク
セロレーターに入れる方法(14)や摩擦試験機を用い汚
れ成分を付着させた布で試料を摩擦する方法などがあ
る。汚れの判定法では、反射率を測定する方法(15)、
固形脂肪分を汚れ成分として用い、洗濯後の試料に付
着した固形脂肪分をDSC分析にて定量する方法など
がある(16)。このような防汚性評価方法の多様性は、
防汚加工の適用性の広がりを表していると考える。
3. 環境対応型フッ素系防汚加工剤
AsahiGuard E-SERIES AG-E100
3.1 AG-E100の概要
「AsahiGuard E-SERIES」
AG-E100は先に述べたフ
ッ素系ポリマーを用いたStain Repellent性能とStain
Release性能とを併せ持つ、複合機能による繊維用防
汚加工剤である。使用方法としては、繊維に連続的に
加工剤を付与するディップ−ニップ法が一般的であ
る。最終製品としては、各種作業着、ユニフォーム、
その他非衣料など防汚性(油性汚れをはじく撥油性お
よび、洗濯による油性汚れ除去性)が必要な非常に多
くの繊維製品が挙げられる。
3.2 AG-E100の特徴
AG-E100の性状を下記に示す。
<AG-E100の性状>
外観
:淡黄色∼黄色溶液
pH
:酸性
比重
:1.1(20℃)
固形分 :20%
イオン性:弱カチオン
揮発成分:1%以下
・優れた洗濯耐久Stain Release性を有している。
・優れた洗濯耐久撥油性を有している。
・消防法上の危険物に該当せず。
・Low VOC製品である。
上記のように、AG-E100は従来のアサヒガードシリ
ーズの性能、環境対応項目を引き継ぎ、且つPFOAフ
リー(検出限界にて不検出)を実現したものである。
3.3 実験方法
3.3.1 評価布の加工方法
評価布の加工方法は連続法によった。すなわち、所
定の処方に調整された加工浴に評価基布を1回浸漬
後、マングルで所定の絞り率に絞った後、テンター型
乾燥機にて110℃で90秒間乾燥し、引き続き170℃で
60秒間熱処理して調製した。評価布は下記の2種を
用いた。
・ポリエステルトロピカル無染色布
・ポリエステル・綿(65・35)ブロードクロス無染色布
・綿100%ツイル無染色布
3.3.2 評価方法
3.3.2.1 防汚性評価方法
防汚性の評価は、AATTC 130-190 Stain Release
性試験(13)に準じて行った。具体的な評価方法は以下
の通りである。水平に敷いた吸い取り紙の上に試験布
を広げ、使用済みエンジンオイルにカーボンブラック
を0.1質量%加えた汚れ液を5滴(約0.2ml)滴下し、
その上に7.6cm×7.6cmのグラシン紙をかけ、更にそ
の上に2.27kgの錘をのせ60秒後に錘とグラシン紙を取
り除いた。室温で20分放置した後、試験布にバラス
ト布を加えて1.8kgとし、AATCC標準洗剤100g、浴
量64リットル、浴温40℃にて洗濯を行った。洗濯後
の汚れ除去性を評価した。判定は、汚れ液の除去の度
合いを目視で観察し、下記に示す基準で等級を表し
た。等級が大きいほど汚れ除去性が高いことを示す。
なお、汚れ液の除去度合いの等級に+、−を記したも
のはそれぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示
す。
<汚れ除去性(SR)の評価基準>
1:汚れがほとんど除去されていない
2:汚れの輪郭がはっきりしている
3:汚れの輪郭ははっきりしていないが除去の程度が
低い
4:汚れが完全には除去されずに若干付着している
5:汚れが完全に除去されている
3.3.2.2 撥油性評価方法
撥油性は、AATCC Test Method 118-1997に準じ
て行った。方法としては下記に示す表面張力の異なる
9つの炭化水素系溶媒を評価布に滴下し、濡れ性を目
視にて判断する。各溶媒のうち評価布に浸透しない最
も高い数字が評価結果となる。すなわち数字が大きい
ほど撥油性が良好なことを示している。
AG-E100の特徴としては下記が挙げられる。
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3.4.2 綿素材への防汚加工性
<撥油性(OR)評価基準>
0:None(Fails Kaydol)
1:Kaydol
2:65:35 Kaydol:n-hexadecane(volume ratio)
3:n-hexadecane
4:n-tetradecane
5:n-dodecane
6:n-decane
7:n-octane
8:n-heptane
3.3.2.3 洗濯耐久性評価方法
洗濯耐久性試験のうち、洗濯は、JIS L 1092:1998
5.2 a)
3)
C法に準じて行った。評価には大栄科学精器
社製AWS-30 自動洗濯試験装置を用いた。洗剤とし
ては花王(株)製粉末洗剤(アタック)を使用した。
HL-20はそれぞれ家庭洗濯20回相当を示している。ま
た、乾燥は自然乾燥により行った。
3.4 結果
3.4.1 初期性能並びに洗濯耐久性能
Table.1にポリエステル布でのAG-E100の初期およ
び洗濯耐久での撥油性と防汚(汚れ除去性)の評価結
果を示す。Table.2はポリエステル・綿(65・35)混
紡布での評価結果となる。比較品としては、アサヒガ
ードシリーズ従来品種のうち代表的な防汚加工品種で
あるAG-780、AG-1100を用いた。撥油性能および防
汚性能に洗濯耐久性を求める場合、加工処方中に架橋
剤を併用薬剤として用いることが一般的である。ここ
では、メラミン樹脂、およびブロックイソシアネート
を併用した。結果、AG-E100はいずれの布帛におい
ても、アサヒガード従来品に劣ることなく良好な撥油
防汚性能を有していることが判明した。
ポリエステルなどの合成繊維と異なり、綿素材布帛
はセルロースによる親水特性を有していることから、
特別に防汚加工剤での処理を行わなくても、洗濯によ
る汚れの除去性は有している。しかしながら、綿素材
への機能加工となる柔軟剤や防しわ加工剤などで処理
すると、繊維表面の親油性が強まることから、特に油
性汚れに対する防汚性能が損なわれてしまう。そこ
で、このような綿素材への機能加工ではフッ素系防汚
加工剤を併用することにより、綿への機能付与を行い
つつ、防汚機能を維持させることが可能となる。ま
た、綿素材に撥油性能を付与させつつ、防汚機能を維
持する際にもフッ素系防汚加工剤が有効となる。
Table.3に、綿布帛に対して柔軟剤および防しわ加工
剤のみを処理した場合と、フッ素系防汚加工剤である
AG-E100を併用した場合の性能比較を示す。尚、本
試験においては、AATCC 130-190防汚評価での汚れ
種として、1)コーン油、2)鉱物油、3)グレープ
ジュースの3種類を用いて実施した。Table.4は本試
験の防汚評価における、加重汚し後と、洗濯後の汚れ
除去性の写真である。AG-E100の併用加工により、
撥油性の付与と併せて防汚性能が向上していることが
わかる。
3.4.3 その他の特性
AG-E100は、上記架橋剤以外も様々な併用薬剤を
使用した処方確立が可能である。例えば、先述したと
おり柔軟剤の併用により風合いの変化を求めたり、防
しわ加工剤を併用したり、さらには帯電防止剤を併用
したりすることが可能である。また、従来品同等以上
の貯蔵安定性、加工安定性、加工特性を有しており、
従来品からの容易な置き換えが可能である。
−23−
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4. 結論
̶
本稿では、フッ素系防汚加工剤の機構に関して、そ
の特徴的な分子設計の観点から紹介した。また、環境
対応型の防汚加工剤である「AsahiGuard E-SERIES」
AG-E100についてその性能、特徴を中心に概説した。
当社はPFOAフリー(検出限界にて不検出)が特徴
の、環境対応型フッ素系撥水撥油剤「AsahiGuard
E-SERIES」を2006年に世界に先駆け上市して以来、
その後も、継続的に製品開発を続け、お客様の要望に
対応した様々なグレードを上市している。これにより
従来品種が活用されていた市場の置き換え、ならび新
たな新規分野での展開を進めていく。
「AsahiGuard
E-SERIES」はこれからの世代を担うフッ素系撥水撥
油剤である。
参考文献 ̶
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