第3章 計画の内容 基本目標Ⅲ 性別や職種に関わりなく個人の能力を発揮し、 働き続けることのできる社会を目指します 少子高齢化が進んでいる我が国において、労働力不足が見込まれている中、女性の就労 者が増えてきており、能力と意欲のある女性の活躍が大いに期待され、職場における女性 の役割もますます大きくなっています。 意識調査結果でも、女性回答者の約6割が就業していました。 しかし、女性を取り巻く就労環境をみると、女性は補助的な仕事を担ってきたという経 緯や、高度経済成長期においては「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」といった考え方 が広く一般化されてきたこともあり、職場における昇進、賃金など待遇面における男女格 差や固定的性別役割分担意識などがいまだに見られます。 男女雇用機会均等法∗1では、これら性別における差別を禁止しているにもかかわらず、 男女間の差別や不当な取り扱いは解消されていないようです。(図4) 職場における男女平等を実現し、働く女性が性別により差別されることなく、充実した 職業生活を営むことができるようにするためには、企業・事業所や労働者に対し、労働に 関する法律や制度を周知、啓発するとともに、女性が職場で能力や個性を十分に発揮でき るための支援体制の整備が必要です。 また、働きやすい環境とは、男女差別のない職場環境が整うことだけではなく、仕事と 家庭や個人生活との調和がとれ、働き甲斐があり能力を十分に発揮できる社会環境である と考えられます。 仕事中心の生活や、仕事を持ちながら家事や育児、介護を行うことに負担を感じている 女性は多く、意識調査結果からも、女性が仕事をしやすい環境を整えるためには「育児・ 図4 職場での女性に対する差別の有無 (総計、性別) 0% 10% 総 計 21.8% 女 性 22.4% 男 性 21.4% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 57.1% 8.5% 54.8% そのようなことはないと思う 90% 11.7% 59.5% 差別されていると思う 80% 14.7% わからない 100% 9.3% 9.5% 9.0% 無回答 志布志市男女共同参画に関する意識調査結果より(平成18年度実施分) ∗1 男女雇用機会均等法:昭和47年7月1日に施行され、正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の 確保等に関する法律」といいます。雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図 るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進 することを目的とする法律となっています。 29 第3章 計画の内容 介護休業制度の普及」 「家族や夫の理解・協力」 「子育て環境の整備充実」 「労働条件の整備」 が必要との回答が上位を占めました(図5)。 仕事と家庭が両立し、働き甲斐のある職場と生き生きした暮らしを送るための環境づく りには、男性も女性も家事や育児、介護の責任をともに担い、仕事と生活の調和(ワーク・ ライフ・バランス∗2)を図ることを推進するとともに、企業・事業所に対しては、仕事を しやすい環境を整えるために労働時間の短縮、ワークシェアリング∗3やフレックスタイム 制∗4の普及、在宅勤務、SOHO∗5など労働条件の整備を促進する必要があります。 また、就労し続けたいと希望する女性は増加していますが、結婚や出産、子育て、介護 などの理由により退職する女性も少なくありません。 実際、我が国の労働力を年齢別に見てみると、男性は生涯にわたり就労できるのに比べ、 女性の場合は、結婚、出産、子育てを期に低下しており、本市においてもその傾向が見ら れます(図6)。 図5 女性の就労環境の整備に必要なこと(複数回答) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 育児・介護休業制度の普及 39.9% 家族や夫の理解・協力 39.0% 保育所・放課後児童クラブ(学童保育) など子育て環境の整備充実 労働条件の整備(労働時間短縮、 フレックスタイム制の普及) 35.4% 22.3% 雇用機会の創出・再雇用制度の促進 21.7% 税制や年金等社会制度を見直す 14.4% 「男は仕事、女は家庭」といった 固定的性別役割分担意識をなくす 14.2% 上司や同僚などの理解 10.9% ホームヘルパーなどの在宅福祉の充実と 特別養護老人ホームなどの施設福祉の充実 9.9% 結婚退職、出産退職の慣行をなくす 9.3% 女性自身の就業意識の向上 8.6% 職場における女性の積極的な活用 6.6% 昇進や賃金、教育訓練など 職場における男女平等の徹底 その他 わからない 無回答 45% 5.8% 1.0% 6.4% 5.5% 志布志市男女共同参画に関する意識調査結果より(平成18年度実施分) 30 ∗2 ワーク・ライフ・バランス:仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発、趣味、社会貢献など様々な活動について 自らが希望するバランスで展開できる状態のことをいいます。全ての労働者が仕事とそ れ以外の活動との両立ができるような働き方を実現することが求められています。 ∗3 ワークシェアリング:雇用の維持・創出を目的として労働時間の短縮を行うもので、雇用・賃金・労働時間の適切な 配分を目指すことをいいます。労働者同士の労働を分け合い、おのおのの労働条件を短くする ことです。 ∗4 フレックスタイム制:労働者が1日の始業・終業時刻を自分で決めることのできる制度のことをいいます。ただし、 総労働時間が1か月以内の一定の期間の総労働時間に達することが条件となります。 ∗5 SOHO:Small Office/Home Office の略で、一般的には勤め先に出勤せず、自宅で、情報通信ネットワークを利用 して業務を行うワークスタイルのことをいいます。 第3章 計画の内容 働き続けたい女性に対しては、育児休業制度・介護休業制度の普及や利用の啓発、労働 時間の短縮などを推進し、就職、再就職を望む女性に対しては、情報提供や就業相談、再 雇用制度の普及啓発などを積極的に推進していく必要があります。 また、高齢者や障害者の意欲と個々の適正と能力に応じた就労に対する支援も必要です。 農山漁村における男女共同参画の推進として、経営の意思決定に男女が共同して参画で きる仕組みづくりや、女性の役割が適正に評価されるように家族経営協定∗6の締結を推進 していく必要があります。 図6 女性の年齢階層別労働率(志布志市、国) 100% 80% 60% 40% 20% 0% 志布志市(2006年) 国(1975年) 国(1995年) 国(2005年) 志布志市男性(2006年) 志布志市男女共同参画に関する意識調査結果より(平成18年度実施分) 取り組みの方向 ∗6 家族経営協定:家族農業経営にたずさわる各世帯員が、意欲とやり甲斐を持って経営に参画できる魅力的な農業経営 を目指し、経営方針や役割分担、家族みんなが働きやすい就業環境などについて、家族間の十分な話 し合いに基づき、取り決めることをいいます。 31 第3章 計画の内容 重点課題1 雇用の機会と待遇における男女平等の推進 施策の方向(1) 就労に関する各種法制度の周知と活用の促進 市内企業・事業所に対し、労働関係の法制度について啓発及び普及を促進します 市民に対し、労働関係の法制度について啓発及び普及を促進します 具体的施策 企業が法律を遵守するよう啓発 促進 性別にとらわれない人事・採用の 徹底 法律・制度の周知徹底 施策の方向(2) 実施事業内容 担 当 ■市報、市ホームページでの周知・啓発 及び情報の提供 企画政策課 □事業所への育児・介護休業法、次世代育 成支援対策推進法等に関する広報・啓発 企画政策課・福祉課・ 港湾商工課 □企業への男女雇用機会均等法等の広報・ 啓発 企画政策課・港湾商工課 ■市報、市ホームページでの周知・啓発 及び情報の提供 企画政策課 女性の職業能力開発支援 女性の雇用促進や再就職のための就労支援、女性が職場で能力や個性を十分に発揮できるた めの情報提供・学習会を開催し、就労機会の拡大を促進します 具体的施策 職業能力の開発、向上支援 再就職のための就労支援 エンパワーメントに対する情報の 提供と学習会の充実 32 実施事業内容 担 当 ■県や 21 世紀職業財団、他団体が主催する 能力開発に関する講座の案内 企画政策課 ■ハローワークとの連携 企画政策課・港湾商工課 □就労に関する情報の提供 企画政策課 ■エンパワーメントに関する情報の提供 企画政策課 □キャリアアップセミナー等(生涯学習 講座等)の開催 企画政策課・生涯学習課 第3章 計画の内容 重点課題2 仕事と家庭の両立支援 施策の方向(1) 仕事と家庭の両立支援と労働条件の整備の促進 職場と家庭生活をバランス良くできるように労働条件の整備を促進し、男女問わず育児休業 を取得しやすい職場環境整備の啓発を行います 具体的施策 実施事業内容 担 当 労働条件の整備促進 ■市報、市ホームページでの周知・啓発 及び情報の提供 企画政策課 柔軟な雇用形態の促進 □企業・事業所等への広報・啓発 企画政策課・港湾商工課 保育サービスの充実、職場内保育の 普及 ■育児休業制度等の利用の促進 企画政策課・福祉課 休暇制度の周知及び休暇取得の 推進 □情報の提供(事例紹介) 企画政策課・総務課 施策の方向(2) ワーク・ライフ・バランス意識の推進 職場と家庭生活及び地域活動がバランスよくできるよう、ワーク・ライフ・バランス意識を 啓発、推進します 具体的施策 ワーク・ライフ・バランスに関する 啓発、情報提供の推進 実施事業内容 ■市報しぶしでの周知・啓発及び情報の 提供 企画政策課 □市ホームページによる関連サイトの周知 企画政策課 ■「仕事と家庭を考える月間」の周知 企画政策課 企業・事業所等に対してのワーク・ ■企業・事業所等への広報・啓発 ライフ・バランスの推進 男性の家事・育児等参加の推進 担 ■男性を対象にした家事・育児等講座の 実施 当 企画政策課・港湾商工課 生涯学習課・企画政策課 家族でお互いに協力し合って、家 事も育児も共同で行うことで、お互 いに時間を有意義に活用でき、その ことで精神的・物質的に余裕が生ま れ、結果、家族にゆとりが出るよう になるでしょう。 33 第3章 計画の内容 重点課題3 個人の能力を発揮し働くことのできる体制づくり 施策の方向(1) 女性のチャレンジ支援 新しい分野に挑戦したり、就職・再就職を望む女性に対し、情報提供、相談、啓発を行いま す 具体的施策 実施事業内容 担 当 □21 世紀職業財団実施事業の紹介・情報の 提供 企画政策課 ■ハローワークとの連携 企画政策課・港湾商工課 □企業・事務所への広報・啓発 企画政策課 チャレンジ支援のための情報提供 □市報、市ホームページを利用した情報の 提供 企画政策課 能力発揮の場の確保 ■女性のための起業支援(アグリビジネス∗1 支援等)の推進 企画政策課他関係課 再就職が可能な雇用体制の拡充 再雇用制度の普及 施策の方向(2) 高齢者の就労に対する意欲と能力に応じた就労支援 高齢者の就労に対する意欲と能力に応じた雇用の促進、人材育成を支援します 具体的施策 実施事業内容 担 当 高齢者雇用の促進 ■ハローワークとの連携 企画政策課・港湾商工課 シルバー人材センターの活用 ■シルバー人材センターとの連携 福祉課 技術と経験の伝承の場の確保 ■生涯学習まちづくり知恵袋伝承事業によ る技術と経験の伝承の場の確保 生涯学習課 施策の方向(3) 障害者の適正と能力に応じた就労支援 障害者の適正と能力に応じた雇用の支援、援助の推進を行います 具体的施策 34 実施事業内容 担 障害者の職業的自立の促進 ■企業・事業所との連携 福祉課 障害者雇用機会の拡大の促進 ■障害者職業センター・障害者相談支援 センターとの連携 福祉課 障害者雇用の支援、援助の推進 ■ジョブコーチ∗2の活用促進 福祉課 当 ∗1 アグリビジネス:農業関連産業のことをいいます。農業機械産業から食品加工業まで農業に関わる幅広いビジネスを 意味し、農林水産業による「農政改革大綱・農政改革プログラム」によって、農業法人の規制緩和 が進み、商社や食品会社などによる農業関連産業への新規参入や、バイオテクノロジーを利用した 有機農産物の生産など、従来の農業から企業主導の新しいビジネスモデルへと移行しつつある農業 関連産業を指して使われています。 ∗2 ジョブコーチ:障害のある人と企業との橋渡し役であり、就労全般についての障害のある人と企業双方のサポーター のことをいいます。 第3章 計画の内容 重点課題4 農山漁村における男女共同参画の推進 施策の方向(1) 経営の意思決定に参画できる仕組みづくり及び男女のパートナーシップ の確立 男女共同参画経営を推進するために、女性の役割が適正に評価されるような環境を構築し、 男女の対等なパートナーシップを確立するための意識啓発、推進を行います 具体的施策 男女共同参画の視点での農業経営 推進 施策の方向(2) 実施事業内容 担 ■家族経営協定締結の推進 農政課 ■女性農業経営士の推奨 農政課 ■女性認定農業者の育成 農政課 当 男女共同参画の意識の醸成 農山漁村における男女共同参画を推進するために、男女共同参画意識を醸成します 具体的施策 実施事業内容 男女共同参画に関する研修・勉強会 の開催 □農山漁村における男女共同参画に関する 研修・勉強会の開催 企画政策課 ■市報での周知・啓発 企画政策課 □市ホームページによる関連サイトの周知 企画政策課 ■「農山漁村女性の日」の周知 農政課・畜産課・ 林務水産課・企画政策課 男女共同参画に関する広報・啓発 男女共同参画に関する情報の提供 担 当 家族経営協定は、家族全員が 意欲と生きがいをもって農業に 取り組めるよう農業経営のやり 方や報酬、休日、生活上の諸事 項などについて取り決めを行い、 家族一人ひとりが役割と責任を 明確にし、意欲を能力を十分に 発揮できる環境を構築すること を目的に行われます。 志布志市で、家族経営協定を 結んでいる家族の数は58組です。 (平成19年11月現在) 家族経営協定調印式の様子 35
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