特別支援教育のためのヒント集 『できた!わかった!』 ∼障害のある幼児・児童・生徒への効果的な指導・支援に向けて∼ 大阪市教育委員会 平成23年(2011年)3月 はじめに この冊子は、各校園において、幼児・児童・生徒の「つまずき」を理解するとともに、個別の指導計画を もとにした実践例を紹介し、一人一人に寄り添った指導・支援が一層推進されますよう作成しました。 内容としては、子どもたちの「つまずき」への気づきを知るためのチェック項目、校園内の体制作りと連 携のあり方、特別支援学校の地域支援の活用、個別の教育支援計画・個別の指導計画について等をポイント としてまとめています。 より効果的な指導・支援に向けて本冊子が活用されますことを期待します。 また作成にあたりましては、発達障害支援体制モデル研究実施校園、特別支援学校の地域支援担当、通級 指導教室担当の先生方に作成委員としてご協力いただき、また本市特別支援教育専門家チーム・アドバイザ ーにも協力委員としてご指導・ご助言いただきました。深く感謝の意を表します。 平成 23 年(2011 年)3 月 大阪市教育委員会事務局指導部 特別支援教育担当課長 島田 保彦 もくじ はじめに 第1章 子どもたちの『つまずき』への気づき こんなことはありませんか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 子どもの『つまずき』の例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 授業の中で・生活の中で・友だちの中で・社会に出る前に 環境調整と教材の紹介1・2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 第2章 各校園の実践例から学ぶ 幼稚園での実践例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 小学校での実践例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 中学校での実践例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 高等学校での実践例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 相談できる関係機関・(ポスター)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 「大阪市の特別支援教育―あなたの学校園のニーズに応じてー」 特別支援学校での地域支援実践について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第3章 個別の教育支援計画・個別の指導計画について 個別の教育支援計画とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 個別の指導計画とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 保護者の参画について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 個人情報の管理について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 作成にあたってのタイムスケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 第4章 情報コーナー 役に立つホームページの紹介(参考) 作成委員および協力委員 大阪市立特別支援学校のセンター機能 第1章. 子どもたちの『つまずき』への気づき こ ん な こ と は あ り ま せ ん か ? ★授業の中で★ ★生活の中で★ □音読が出来ない。 □文章の意味が読み取れない。 □文字の形が取れない。 □何を言いたいのかわからない。 □繰り上がりや繰り下がりの計算が出来ない。 □マス目に文字が入りきらない、筆算のケタがずれ □身の回りが片付けられない。 □忘れ物が多い。 □姿勢が悪い。 □ボタンかけが苦手である。 □ハサミやお箸などを上手に使えない。 □注意をしても、同じような失敗を繰り返してしまう。 □時間に合わせて行動ができない。 □切り替えが苦手で、なかなか次の行動にうつる る。 □立ち歩いたり、教室を出て行ったりしてしまう。 □発言が止められない。 □ボーっとしてしまう。 など ことができない。 など 大人の「気づき」は、子ど ものつまずきを「できる」に 変えるチャンスです!! ★友だちの中で★ □場面や状況に合わせた話が出来ない。 □質問と違う答えが返ってくることが多く、会話がかみ合いにくい。 □約束や遊びのルールが守れず、友だちと上手く遊べない。 □相手の意図や気持ちを読み取ることが苦手である。 □突然会話に入ってくる、遠くにいる友だちに会話の続きを振るなど、相手の都合を考えること が苦手である。 □自分の順番が分からない。列に並べない。 □話題が尽きず、会話が終えられない。 など たとえば、こんな場面はありませんか? 整理整頓ができない=大人の気づき 片付けなさい!!(叱責) こうやって片付けるのよ!!(やり直し) 「片付けてるのに!!」(よく使うので置い ている、毎回片付ける場所が違うなど) このような経験が何度も続くと… ぼくは/わたしは、何をして も上手くできないんだ!! という、子ども自身に よる「否定感情」を育て る原因になってしまうか もしれません。 子ども自身による「否定感情」を生み出さないためには、どのような支援ができるでしょうか。 大人の「気づき」を活かし、子どもたちの「つまずき」を「できる」に変えるための支援の方法を、 一緒に考えていきましょう! -1- 子 ど も の 『 つ ま ず き 』 の 例 1.授業の中で A.文字は読めるが… 「つまずき」の背景に…… □黒板を見ながらの板書が苦手である。 □文章を読んだり、辞書や資料集の読み取り 「見る力」に弱 さがありません か? が苦手である。 □図形や漢字の視写が苦手である。 □文章のまとまりが捉えにくい。 *黒板の周りには、できるだけ物を置いたり貼ったりしないようにしてみましょう。(写真①②) *板書する範囲を決める、板書プリントを用意するなど、授業中に書写する量を減らしてみましょう。 また、書き始めや何を書くのかが分かるように、「さし棒」などを活用してみましょう。(写真③) *『点結び』や『迷路』、『曲線なぞり』などで線や形を書く練習をしてみましょう。(写真④) B.会話はできるが… 「つまずき」の背景に…… □指示や注意を聞き取ることが苦手である。 □周囲を見てから行動することが多い。 □音を聞き分けることが苦手である。 □言い間違い、聞き間違いがある。 「聞く力」に弱さ がありませんか? *授業中だけではなく、普段の生活の中でも使える、『聞く時のルール』を作ってみましょう。 *指示や授業の流れなどを、目で確認できるように黒板やホワイトボード等に書いてみましょう。 (写真⑤) *楽器などを使った『音あてゲーム』や、『ことば当て(例:「らくだ」と「だくだ」正しいのはどっち)』など のゲームを通して、音を聞き分ける練習をしてみましょう。 *授業中は、ドアや窓をなるべく閉める、音が鳴らないよう、イスの足にクッションを巻くなど、『聞く』た めの環境づくりを工夫してみましょう。 C.聞くことができているのに… 「つまずき」の背景に…… □質問に答えられない、質問を忘れてしまう。 □指示が1回では通らないことが多い。 □繰り上がりや繰り下がりの数字を忘れてし 「記憶する力」 に弱さがありませ んか? まう。 □劇などの台詞や動きが覚えられない。 *指示や質問の最後にポイントを伝え、そのポイントを復唱させてみましょう。 *繰り上がった数や、繰り下がった数を書き込む場所を決めたり、位取りが分かりやすいよう、マス目 のある計算用紙を用意したりしてみましょう。(写真⑥) *劇などでは、繰り返しの台詞を与える、移動や台詞を言うタイミングを決める、移動先が分かるよう に目印を決めるなどの工夫をしてみましょう。(写真⑦) *聞いたことや見たことを、その場でメモするように伝えてみましょう。 -2- 子 ど も の 『 つ ま ず き 』 の 例 A.声かけがあっても… 2.生活の中で 「つまずき」の背景に…… □整理整頓が苦手である。 □忘れ物が多い。 □うっかりミスが多く同じようなミスを繰り返す。 「不注意」が隠れ ていませんか? *ロッカーや机の中、掃除道具の『片付け方』を写真などを使って、図示してみましょう。(写真⑧) *持ち物をチェックできる表や、持ち物や机の中、ロッカーなどをクラス全体で確認する時間を作って みましょう。 *子ども同士の机を離す、クラスのルールを子どもに見えやすい位置に貼る、窓や本棚などにカーテ ンをつけるなど、なるべく環境的な刺激を少なくしてみましょう。 B.活動には参加できるが… 「つまずき」の背景に…… □順序だてて行動することが苦手である。 □予定が変わると、混乱しやすい。 □好きなことには熱中しやすい。 □興味・関心の幅が狭い。 「見通しを持つ 力」に弱さがありま せんか? *予定の変更がある場合は、あらかじめ先に伝えておきましょう。 *作業内容や授業内容などを、順番に示したスケジュール表などを作ってみましょう。(写真⑨) *『終了』を知らせる合図を作ったり、終了前に「あと○○分で終わります」などの声かけをしたりし てみましょう。 C.活発に動いているが… 「つまずき」の背景に…… □体の動かし方がぎこちない。 □手先が不器用で、細かい作業が苦手である。 □姿勢が崩れやすい。 □こけやすい。 「不器用さ」が 隠れていません か? *『トンネルくぐり』や『サーキット』、『リズム遊び』や『リトミック』など、体全体を使った活動をしてみま しょう。 *『手遊び』や『ペグさし』などのように、手指を使った遊びをしてみましょう。(写真⑩) *『片足立ち』や『ケンパ』など、バランス感覚を刺激する遊びをしてみましょう。 D.普段は気にならないが… 「つまずき」の背景に…… □食べ物の好き嫌いが激しい。 □微かな音や匂いに反応してしまう。 □暑さや寒さなどに気づきにくい。 □傷や虫歯の痛みを感じない。 「感覚のアンバ ランスさ」が隠れて いませんか? *食事については、味に慣れるようにシンプルな味付けのものを食べる練習をしてみましょう。嫌い なものに関しては、調理方法の工夫などで食べられる可能性もあるので、子どもが好きな調理方 法を家庭と協力して探してみましょう。 *感覚の過敏さについては、いろいろな方法(指先を拭くお絞りを置く、道具を使うなど)を通して、刺 激を和らげるようにしてみましょう。(写真⑪) *嫌な感覚を「ことば」に出して、聞いてもらうようにしてみましょう。 -3- 子 ど も の 『 つ ま ず き 』 の 例 3.友だちの中で A.友だちの輪の中に入っているが… 「つまずき」の背景に…… □その時の話題や状況に合わせた話が出 来ない。 □話があっちこっちに飛んでしまう。 □質問に対し、見当違いの返答をする。 □慣用句やたとえ話、冗談などが通じに 「コミュニケー ション」の弱さが 隠れていません くい。 *1つの話題で、『話す』、『聞く』、『質問する』などを設定して会話をしてみましょう。 *『言葉集め(例:「うさぎ」さんの特徴は?)』や、『名前当て(例:文字を書くものはなんだ?)』などの ゲームで、表現力や語い力を育ててみましょう。(写真⑫) *『しりとり』や『クロスワードパズル』など『ことば遊び』を通して、生活の中の言葉を広げてみましょう。 *子ども自身が興味を持っているものを通して、文章やことばへの関心を育ててみましょう。 B.知識は豊富だが… 「つまずき」の背景に…… □視線が合いにくい。 □遊びやスポーツのルールが分からない。 □集団行動が苦手で、マイペース。 □その場の空気を読むことができない。暗 「社会性」の弱さ が隠れていません か? 黙のルールが分かりにくい。 *分かりやすいルールのある遊びを通して、『ルールを守る』ことを教えていきましょう。 *子どもの好きなこと(例:昆虫やアニメ、電車など)を使って、友だちと一緒に遊ぶ時間を作ってみ ましょう。 *表情カードや身振りカードなどを使い、相手の表情や動作の意味を考える時間を作ってみましょう。 *アイコンタクトや表情、しぐさなどを使った遊びを多く取り入れてみましょう。 *ことばは略さずに、正しい表現方法で伝えていきましょう。 C.がんばり屋さんだが… 「つまずき」の背景に…… □我慢することが苦手。 □順番を待てず、列に割り込んでしまう。 □人の物を無断で使ったり、持って行ったり 「感情や行動の コントロール」が苦 手ではありません か? する。 □思いついたことをすぐに口にしてしまう。お しゃべりが止められない。 *『すごろく』や『しりとり』などを通して、相手を待つ練習をしてみましょう。 *『怒り方のルール(例:自他を傷つけない、物を壊さないなど)』を教えたり、『上手な気分転換の方 法(例:部屋を移動する、音楽を聞くなど)』を一緒に考えてみましょう。 *普段から、自分の行動を振り返ったり、自己理解を深めるための活動を取り入れてみましょう。 (写真⑬) -4- 子 ど も の 『 つ ま ず き 』 の 例 4.社会に出る前に A.作業学習への意欲はあるが… 「つまずき」の背景に…… □しっかり握っていても筆圧が弱い。 □姿勢がすぐに崩れてしまう。 □細かい手作業が苦手である。 □力加減ができず、疲れやすい。 「身体感覚の 鈍さ」や「不器用 さ」が隠れていませ *生活の中で、『ボタンつけ』や『調理』など、細かい指先を使った作業をたくさん行ってみましょう。 また、『彫刻』や『リコーダー』など、授業でも指先を意識した活動を取り入れてみましょう。 *体の各部位を意識した動き(ストレッチなど)を行ってみましょう。また、低学年のうちから、座る 姿勢や立つ姿勢に注意を払っておきましょう。(写真⑭) *指先や肩のコリなどを、マッサージでほぐしてみましょう。 *身体をとめる、姿勢を保持することを意識できるようにしましょう。 B.学習中は気にならないが… 「つまずき」の背景に…… □TPOに合わせた服装が出来ない。 □相手に合わせて会話の内容を変えたり、 「社会性」や「共感 する力」に弱さがあり ませんか? 話し方を変えたりすることが苦手である。 □タイミングを見計らうことが苦手である。 *『マナーガイド』や『面接練習』などを使って、人と付き合うマナーを教えてみましょう。 *相手との距離のとり方や、表情や仕草を読み取る練習をしてみましょう。 *本人の苦手な面に沿った『人付き合いマニュアル』を作成してみましょう。 C.チャレンジ精神はあるが… 「つまずき」の背景に…… □ミスが多く、注意されても同じミスを繰り返 してしまう。 □料理や掃除が苦手である。 □会話が一方的になりやすい。 □同時並行で行う作業が苦手である。 「物事を処理する 力」に弱さがありませ んか? *指示を出す際には、複数の指示を出さないように気をつけましょう。 *段取りよく作業を行えるよう、作業内容に順番をつける練習をしてみましょう。 *作業内容に関するスケジュールをつくり、スケジュール通りに動く練習をしてみましょう。 *勉強机の周りや、勉強部屋の整理整頓を心がけるように伝えましょう。 以上は、子どもの『つまずき』の一例です。これらを 参考に、子どもがどんなところで「つまずいているの か?」を考えてみてください。 -5- 環境調整と教材の紹介 1 ①:黒板周辺の支援の仕方 ②:背面の掲示(資料などは側面や背面へ) ③:さし棒の活用 ④:点結び ⑤:学習の手順の一例 ⑥:単位表 ⑦:発表者の位置を決める ⑧:片付け方の例 -6- 環境調整と教材の紹介 2 ⑨:教室移動時の持ち物提示の例 ⑩:指先を使った活動(ペグさし) ⑪:子どもが落ちつく感触の一例 ⑫:名前あてゲーム ⑬:学級で行う自己理解のための教材の例 ⑭:姿勢を意識して立つ ⑮:集団での拗音指導の一例 ⑯:ボディイメージを育てる教材の一例 -7- 第2章 各校園の実践例から学ぶ 幼稚園での実践例 幼稚園では保護者や関係機関と連携を大切にしながら、教員の気づきを生かした指導・支援に取り組んで います。気づきからつまずきの要因を探り、個別の指導計画を立案した一例を紹介します。 1.保護者との連携 保護者 特別な支援が必要な幼 との 児 に 早 期に気 づ き 、 適 切な指導・支援を早い段 階で実施するために ① 保護者と連携することで幼稚園と家庭とで一貫し との た支援ができる。 ② 保護者の悩みや不安などが解消され、保護者が 連携が 重要! 園児への適切な援助ができるようになることで、 園児の自己肯定感の向上にもつながる。 しかし、我が子を特別扱いされたくない気持ちを持つ保護者も多い。 <良好な関係を築くために> ・ 園児の良いところを伝えながら保護者との関係を築く。 ・ 少しずつ園児が困っていることに焦点を当てて、どのように援助をしていけばよいのか共に考えて いく。 2.関係機関との連携 ① 関係機関と連携することで、より専門的な支援や多面的な支援につながる。 ② 保護者にとっても専門家に相談することで不安が解消できる。 ∼区の子育て支援室との連携をすすめた事例∼ ・担任しているA児の母が通っていた子育て支援室と連携をとり、A児のことを相談する機会を もつ。その際、支援が必要と思われるB児についても園から相談した。 ・B児の保護者と関係を築いていくうちに、保護者も悩んでいたことを知り、気軽に相談できる 専門機関として子育て支援室を紹介する。 ・知りあいのA児が通っているということもあり、抵抗感も少なく子育て支援室に行くことを受け 入れられた。通ってみると近くにあり、親身になって相談にのってもらえ、専門的に実態を把 握することができた。さらに診断を受けるための他の関係機関や、保護者のサークル、療育 教室なども紹介してもらい、活用している。 ・幼稚園にも定期的に訪問してもらうことができ、担任がそこでのアドバイスを指導に生かすこと ができた。 <成果> ・担任が専門的、客観的に園児をとらえることができ、より具体的にねらいを立てて支援すること ができた。 ・不安や悩みを共感できる保護者どうしの関係を築くきっかけになった。 ・日々の話し合いから園内委員会での話し合いを行い、情報を共有することができた。 <課題> ・保護者からの相談がなければ関係機関につなぐことが難しい。 -8- 3.気づきを生かした個別の指導計画の立て方 例1.幼稚園のトイレの使用を嫌がる幼児への指導・支援 ①なぜ使えないのか原因を考える。 ・他のことでも「初めて」や「慣れない」ことには不安が強い。家のトイレと違うのでとまどいがある? ・家では一人なのでみんなと一緒にトイレに行くことに違和感がある? ・他にもいくつか「こだわり」がある。トイレもこだわりの一つ? ↓②よく観察してみると・・・ ・男児小用便器に自動で水が流れるのが怖い!「なんで?」「いつ?」流れるのかが不安。 ↓③そこで他児のいない環境を作り、自動水洗スイッチを切ってトイレ指導を開始。 ( 4 )歳 ( ○ ○ )くみ 園児名 ( ) 1学期の目標 ・担任の指示を聞いて朝と帰りの身じたくが自分でできるようになる ねらい 方法、手立て 具体的な状況 評価 ・他児がいない環境で自 ・静かな状況で先生と ・他児がいないことで落ち着い 動水洗スイッチを切るところ 一緒に確認することで て話が聞け、切るところを見せて を見せて説明し、先生と一 納得できた。 何度か確認、納得できた。 緒にトイレを確認する。 ・先生がつい ・静かな環境、スイッチを ・友だちのトイレがほぼ終わった ・先生が見守るなか、 落ち着いた状況なら洋 式トイレでできるように なった。 生 ていけば、小用 切った状態で洋式トイレを 頃に先生と行くと自分でするよう になる。 活 トイレが使用で 使用する。 きるようになる。 ・静かな環境、スイッチを 切った状態で小用トイレを 使用する。 ・立つ場所、ズボンの下ろし方 等を教え、何度か「ふり」だけを練 ・先生が見守るなか、 習したあと、なんとかできるように 落ち着いた状況なら小 用トイレでできるように ・不安が強いので見守るこ なった。 なった。 とで安心感を与える。 立つ場所を目で 見てわかるように工 夫しました。 幼稚園ではその他に もこんな工夫があります -環境調整の例- 見てわかるので、 注意することが 減ります。 例2.朝の用意を自分でできるようになるための支援 ねらい 方法、手立て 具体的な状況 ・手順表を見ながら先生と 一緒に行う。 生 ・先生に時々声をかけても ・朝の用意を らい、自分で手順表を見な 手順表を見な 活 がら自分ででき がら行う。 るようになる。 個別に必要な 場合もあります が、この園では みんなが使え るような形で 視覚支援が行 われています。 ・自分で手順表を見て行 い、最後に確認してもらう。 その他の相談は特別支援教育推進ルームへの電話または「発達障害理解のとびら」を参照してください。 -9- 小学校での実践例 学級担任と特別支援学級担任が連携して行う「通常学級に在籍する支援が必要な児童」の支援体制のあり 方と「通常学級で学ぶ特別支援学級在籍児童」の個別の指導計画についての一例を紹介します。 1.校内委員会のあり方 校内委員会 特別支援教育推進委員会 (校長・教頭・コーディネーター・学年主任・特別支援学級担当、養護教諭) →特別支援教育の方針を決定 学年会 (各学年の担任・コーディネーター・特別支援学級担当・学年担当教員) →通常学級に在籍する児童の情報収集とサポート体制の考案 ※特別支援学級に在籍する児童についての情報交換、支援体制の検討は、 通常学級担任と特別支援学級担当が日々行う。 2.通常学級に在籍する支援の必要な児童へのサポート体制 学年会 A 記録をとる。・・・記録シートの活用 B どんなことで児童が困っているのか話し合う。 C 手立てを考える。 いつ・誰が・何をする <特別支援学級担当→学級担任への支援> <学年会での記録シート例> ○○さん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 授業中の個別課題の提供・作成 個に応じた宿題の提供・作成 教科書等に読み仮名を書く 放課後の個別指導 「振り返りカード」等の支援グッズの提供 他の通常学級の実践紹介 担任+特別支援学級担当での 保護者教育相談 ・ 教育センターでの教育相談の紹介 ・ 指導部巡回相談の依頼 入り込み支援や次年度への引継ぎ 平成○○年 ○年○組 平成□□年 □年時 5/20 記録 [家] ・家でも多動だが、保護者にカウンセリングをすすめると、 「家では大丈夫」 と否定的な態度をとられる。 [学校] ・授業中、伏せて何もしないことがあり、指示が通らない。 ・平面感覚が弱いため、字が構成できず、板書を写すのに時間がかかる。 平成△△年 △年時 5/19 記録 [学校] ・離席が続いているが、文字を丁寧に書くなどの頑張りも見られる。 ・月曜日は調子が悪い。・当番活動はきちんとする。 10/16 記録 ・がんばりカードの取り組み→シールほしさにがんばる ・30 分すぎると、疲れ、集中できなくなる。興味のあるものがあると、 そちらに流れる。 平成○○年 ○年時 5/21 記録 5 時間目になると座っていられなくなる。 ・特別支援在籍を視野に、時間割・席を調整し、在籍児童と共に、国・算の 支援。 ・算数:繰り上がり、繰り下がりの計算でのつまずきがみられ、その後の計 算に影響していることがわかった。→個別の学習プリントを作成。 ・国語:宿題の漢字プリントは学年相応の物ではなく、簡単なものを個別に 用意した。 【困っている部分】 ・学習に対する逃避行動がみられ る。 ・授業中の集中力が持続しない ・学習へのストレスから他の児童 を叩いたり、いじわるをしてし まう。 - 10 - 【具体的な手立て】 平成○○年.9/15 休み時間ひまわり学 級に来て遊ぶことを楽しみにしている ため、担任と約束したこと(片づけ・漢 字の宿題)ができたら切符をもらい、ひ まわり学級で遊べるようにした。 3.通常学級で学ぶ特別支援学級在籍の児童への支援例 例:授業中立ち歩いたり、おしゃべりをしたりして課題に取り組まない児童 原因①:集団の中で一斉の指示が伝わっていない。 →活動の見通しが立たず、好きなように動いていた。 原因②:課題をいつ終えてよいのかが分からず、不安になっている。 →好きなことはいつできるの? ↓そこで、授業中のルールを作り、分かりやすく伝える指導を開始した。 児童名:〇年 〇組 名前 〇〇〇〇 指導内容 個別の短期目標 指導の手立て 達成状況 〇教室での ・授業の流れが分 ・授業の流れをメモにして、授業の始 ・メモを見せるように なってから、離席する 学習のルー かり、座って学習 めに読む。(①) ル で き る よ う に な ・課題が終った後、座ったままできる、 回数が減った。 る。 児童の好きな余暇活動を用意する。 (①) 自 ・予め何分までがんばるのか児童と約 ・先生と本人で「30 分 立 束し、その時間以降は余暇活動をした までがんばる」と約束 活 り、特別支援学級へ行ったりしても良 し、課題に取り組むこ 動 とができた。課題が済 いことを伝える。(②、③) んだ後は、静かに工作 ・一日の時間割を黒板の端に書き、見 をするようになった。 通しを持たせる(④) ・板書をノートに書く量を少なくし、 ・一日の予定が分かり どこまで書けばよいか分かるように 安心して過ごせるよう になった。 する。(⑤) ・授業中のおしゃ ・授業中のルールをメモにして机に貼 べ り は 3 回 で ま り、読めるようにする。 (⑥) で我慢する。 ・ 「すわる」 「しずかに」カードを場面 に応じて見せる。(⑦) ①児童の机の近くに置く ↓④ ・ルールを繰り返し、 読んだことで、おしゃ べりが減り、注意され ることも減った。 ↓② ③ ⑥ ⑤ 黒板に貼って、 書く量を限定 児童の机に貼る ⑦カードを見せることで、分 かりやすく、声で注意するこ とが少なくなる。 その他の相談は特別支援教育推進ルームへの電話または「発達障害理解のとびら」を参照してください。 - 11 - 中学校での実践例 障害のある生徒が学級の一員として集団参加し、その中で個別のニーズに応えるための支援体制の あり方についての一例を紹介します。 1.共通理解を目指す校内体制のあり方(特別支援教育コーディネーターの役割) 今年からコーディネーター二人体制で始動している。最大の利点は、指導・支援の方法を違う(教科・学 級担任と特別支援学級担任の)立場でとらえ相互に相談しながら進めていくことができることにある。週に一 回、管理職を交えて特別支援打合会を時間割に組み入れて情報交換している。 【特別支援教育コーディネーターの役割】 A:外部諸機関との連携、巡回相談【教職員にアンケート】、校内研修会立案 B:一人一人のニーズに合わせた支援、「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」立案 外部研修会参加報告 (コーディネーター二人体制のイメージ) コーディネーターA コーディネーターB 支援が必要な生徒 通常学級在籍 特別支援学級在籍 教科担任、 学級担任の 立場から 特別支援学級担任の 立場から 2.一人一人のニーズに合わせたサポート体制 *支援の必要な生徒の指導では以下に示す「サポート体制」と「入り込みのスタイル」を整え、 その中から一人一人のニーズに合った体制を選択している。 サポート体 制 通 常 の教 室 他の生徒と同じ学習内容 教科担任の指導 他の生徒と同じ学習内容 教科担任の指導 入り込み担当の指導 特 別 支 援 学 級 の教 室 入り込みのスタイル 一人の生徒に、一人の指導者 ・支援の必要な生徒の横に 椅子を置いてサポート ・支援の必要な他の生徒と ともにサポート ・少し離れた位置で、様子を 観察しながらサポート 一人の生徒に、複数の指導者 複数の生徒に、一人の指導者 *入り込み担当は特別支援学級担当と教科担任があたる。 *特別支援教育担当教員を中心にして担当者を固定せず、教科担任も対応する。 *ニーズに応じた支援体制をとることにより幅広い範囲で生徒に接することができ、指導する機会も増え 共通理解が深まっている。 - 12 - 3.教職員が共通理解するためのイメージ図 連 携 ・情報交換 ・「個別の教育 支援計画」 それぞれの進路 ・引き継ぎ ・「個別の教育 支援計画」 中学校 通常学級 特別支援学級 ・集団育成(支援が 必要な生徒も含む) ・入り込み指導による つまずきの実態把握 小学校 幼稚園 ・基礎学力の向上 ・コミュニケーション 能力の育成 ・自己肯定感を育てる ・個別の指導 校内の情報 保育所 専修学校 ・教科担任 ・保健室 ・クラブ顧問 ・保護者 ・スクールカウンセラー ・巡回相談 特別支援教育推進ルーム 医療機関 外部諸機関との連携 高等学校 (公立・私立) ・全日制 ・定時制 ・単位制 ・通信制 ・自立支援 こども相談センター 特別支援 学校 特別支援学校支援相談 地域関連機関 外部研修会情報 4.教科担任制の指導体制における個別の指導計画の立て方 年間 3 回の特別支援教育研修会を持ち、個別の指導計画を立てる上での一人一人の状況を話し合い共通理解 している。 第 1 回目 5 月、新学期の様子を把握する。 第 2 回目 6 月、「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の作成に向けての会議 ・全職員の討議(教科の学習状況、授業の様子、生活実態、指導の難しさ) 第 3 回目 2 月、特別支援教育研修会(巡回相談のまとめ、支援方法の再確認) 個別の指導計画 22年度 ○年 ○組 ××番 前期の様子 名前 具体的な支援対応策 学 習 の 実 態 ・国語は平仮名よりも漢字のほうが、意味の理解ができ る。文字は綺麗である。 ・計算は繰り下がりに時間がかかる。 ・どの授業もノートをとることができ、枠内に文字が書け るようになった。 ・学習時に、自分の世界に入り込んでしまうと自分では 戻ってこられない。 生 活 ・ 行 動 の 実 態 ・集団の中で行動することができる。 ・クラスの子に自分から話しかけることは少ないが、数 人の友だちと話しをする。 ・放課後に連絡帳の確認をしている。 ・時間はかかるが、自分で物事を選択できる。 ・物事の予測を立てられず、自分の世界にはいりやす い。 ・短期記憶が弱く、忘れ物がある。 ・国,数,英は特別支援学級で学習している。 ・作文ワークを使い、自分の思いを表現する学習をして いる。 ・学習時、自分の世界に入り込んだり集中できないとき に、「今何をするとき?」などの声かけをする。 長期目標 ・コミュニケーションスキルを身につけ、会話を楽しめるようになる。 短期目標 ・自分から「おはようございます」と挨拶ができる。 ・自分の意見を相手に話す。 その他の相談は特別支援教育推進ルームへの電話または「発達障害理解のとびら」を参照してください。 - 13 - 高等学校での実践例 平成 17 年に発達障害者支援法が施行されたことなどを背景として、平成 19 年度から特別支援教育が 本格実施となり、高等学校においても特別支援教育の取り組みが進められています。今回、積極的な 校内支援体制づくりに取り組んできたある高等学校における実践例を紹介します。 <校内支援体制づくり∼連携して支えるために∼> Q1.まず何から取り組みを始めましたか? 全校的に取り組むために特別支援委員会規定を作成し、本 校における特別支援教育の目的と取り組みについて話し合い ました。 (参照資料1・・・指導部ホームページ「発達障害理解のとびら」 に載せています。) 当初は、発達障害のみを対象としていましたが、現在では、 日本語指導を必要とする帰国・来日の生徒など支援を必要と する多様な生徒にも対応できるように対象を広く捉えていま す。 Q2.支援対象生徒はどうやって選びましたか? 本校では、全生徒を対象に入学直後の 2 週間程を観察期間として、全教職 員で様々な場面を通して観察して、気づきシートを提出してもらっています。気 づきシートは、誰もが付けやすいチェックシート形式にしています。 (参照資料2・・・指導部ホームページ「発達障害理解のとびら」に載せていま す。) それを特別支援委員会で集計し、担任を通して保護者や本人の意向を確 認してから支援対象生徒としています。生徒指導上の問題があるため、支援対 象にすることもあります。 Q3.支援対象生徒が単位を取れるのですか? 支援対象となった生徒については、それぞれの教科でさらに 2 週間程度の観 察期間を設けて、複数の教員で個別の評価基準を作成するシステムを導入しま した。作成された評価基準は職員会議で全教職員の承認を得ています。 それによって、障害の内容、程度によって本人の努力だけでは単位の修得が 難しい場合への対応を行っています。 - 14 - Q4.支援対象生徒の評価基準は同じですか? 支援を必要とする生徒であっても、多くの生徒は教材の工夫等によって他の 生徒と同一の評価基準で評価が可能です。しかし、これまでも何例かは特別 な評価基準を適用しなければ、単位の修得や卒業の認定が難しい生徒もいま した。そこで図1の流れに従って、個別の評価基準(図2)を用いて評価すること ができる教務関係規定を作成しています。 一例としては、教室に入ることが出来なかった生徒が職員室に登校して教科 指導を受けた時間を出席の一部にカウントして履修を認定したものや、出欠や 授業参加への配分を重視して単位を認定したもの等があります。 Q5.どのように支援計画・指導計画を作成していますか? 基本的には、本人・保護者と共に個別の教育支援計画・個別の指導計画 を作成して、指導・支援内容を個別に検討していきます。ケースによってはピ アカウンセラーといった第三者が同席する場合もあれば、本人の障害への受 容が不十分な場合は保護者と学校だけで個別の教育支援計画・個別の指導 計画を作成する場合もあります。 作成された計画はケース会議等で全教職員に知らされ、様々な教育活動 で実践していきます。 Q6.教職員間で共通理解するためにどんな工夫をしていますか? 月 1 回、定例で実施される特別支援委員会において個別ケース会議を行っ ています。さらに、各学期に 1 回、全教職員によるケース会議を開き、個別の 教育支援計画・個別の指導計画の確認と達成状況を共通理解して、必要に 応じて見直しをして日々の指導に活かしています。 Q7.卒業後の進路はどうなっていますか? 障害の状況や程度によって様々ですが、外部機関(大阪障害者職業センター、 ハローワーク、エルムおおさか、大阪市障害者就業・生活支援センター等)との連携 を図りながら、一人一人の生徒の自己実現を目指しています。 過去には自閉症 で、在学中に療育手帳を取得し、卒業後福祉施設で働いている生徒もいました。 また、平成 23 年度から大学入試センター試験特例措置の中に、「発達障害」の 項目が新たに付け加わったことで進学への道も広がりつつあります。 (http://www.dnc.ac.jp/modules/center_exam/content0023.html 参照) - 15 - 特別支援対象生徒の評価までの流れ(図1) (前期4月∼9月、後期10月∼3月の2学期制) ( ) 5 月末 11 月末 9 月末 2 月末 特別支援対象生徒の評価基準の例 (図2) その他の相談は特別支援教育推進ルームへの電話または「発達障害理解のとびら」を参照してください。 (参照資料1・2含む) - 16 - 成績提出 評価 授業期間 5 月中頃 11 月中頃 評価方法の提示 個別評価基準の提案 教務で集計 教科会︵ 評価基準の作成︶ 対象生徒の観察期間 対象生徒の把握 業 後期 4 月末 10 月末 特別支援・ 気づきシート 始 前期 相談できる関係機関 (ポスター)「大阪市の特別支援教育―あなたの学校園のニーズに応じてー」 - 17 - 特別支援学校での地域支援実践について 特別支援学校では、支援相談実施にあたって「課題の整理」を行うとともに、各学校園での取り組みに おける「大切なポイント」をともに考えて行きます。その実践例について紹介します。 1.支援相談の流れ (1)「課題の整理」 ①相談内容の整理をしましょう。 主訴を確認する 「いつ?どこで?誰が?」 ・ 子どものつまずきは? 「何に?どのように?困っているか?」 ・ 先生の困っていることは? ・ まわりとの関係は? ・ 保護者の思いは? ②情報を整理しましょう。 学習環境 日々の記録 ・ 子どものつまずきに順位をつけましょう。 ・ どのような場面でつまずくか日々の記録 得意、不得意分野の確認 をまとめましょう。 子どもが積極的に取り組める課題 ・ どのような対応をしていますか? ・ 子どもの得意なことは何ですか? (2)学校園における取り組みの「大切なポイント」 ①学校園全体で課題・情報を共有しましょう。 ・ 日々の情報を共有 実態把握から子どもの特性を理解し、学 習課題を考えましょう。 実態把握と特性理解 ・ (記録と行動の分析) 子どもにとってわかりやすい学習(教室) 環境の整備を考えましょう。 子どもの「つまずき」を共通理解 ・ 具体的な支援を考える 困った行動が見られる場合は、記録と行 動の分析を行いましょう。 対応方法の共通理解 保護者との連携 ・ 友だちとの関わりについて考えましょう。 ・ 教職員全体で対応方法を共通理解しまし ょう。 ・ 保護者との連携を大切にしましょう。 ②支援する時に大切にしましょう。 まわりから認められるための取り組み ・ 達成感、自己肯定感(自尊感情)を高める できるところを伸ばし、まわりから認められ る場面を作りましょう。 ・ 問題となる行動ばかりに目を向けず、ほ められる場面を増やしましょう。 - 18 - 2.情報の整理について 具体的な支援を検討する時、次のような情報があれば参考になります。 <子どもに関する基本的情報> <学校生活において> 身体状況、生活リズム、家庭環境、 読み、書き、計算、姿勢・運動面、 生育歴、医療機関等の関わり、 身辺のこと、手指の使い方(物の扱い 子どもの得意なことなど 方)、気になる行動など <生活や遊びのなかで> <作品や記録より> 友だちとの関わり、コミュニケーション、 子どもの描いた絵や作品、ノート、日記 感情のコントロールなど 作文、テスト、行事等のビデオなど 詳しい情報整理の項目は発達障害理解のとびらに参考資料として載せています。参考にしてください。 3.支援相談申し込みの流れと申し込み記入例について 教育センターのホームページ(特別支援教育推進ルーム)に支援相談の流れと申し込み用紙がアップされ ています。相談したい子どもの障害種に応じた通学区域の特別支援学校へ必要事項記入のうえ、てい送で お申し込みください。 ( 記入例 ) 大阪市立 (知的障害)特別支援学校 宛 支援申込票 ふり 相 談 者 内 容 概 要 名 がな ◇ ◇ 前 学校園 ◇ ◇ 区 □校園長 ◇ ◇ ◇ ◇ 中学校 記入日 平成22年 5 月 17 連絡先 ◇◇◇◇ ― ◇◇◇◇ 日 レ コーディネーター □教頭・幼稚園主任 支援の種類 レ 相談 □研修支援 □その他( レ ケース相談 ) ∼ 対象児童生徒 : 学年( 中学3年 )性別( 女子 ) □教材教具について □その他( ) 詳しく記入ください (※個別の指導計画等、児童生徒の様子がわかる資料を準備しておいてください。 ) <アスペルガー症候群の診断のある生徒の進路について> ・通常学級在籍の3年生女子∼小学校5年生でアスペルガー症候群の診断を受けている。知的な遅れ はなく、得意不得意の差はあるが平均すると学年でも中の下くらいの成績。性格はおとなしく、友達と 依 頼 のトラブルはないが、うちとけて話をしている様子も見られない。2年生の後半から遅刻や欠席するこ とも多くなっている。 内 ・将来への目標を持つことができたら、学習意欲がわいたり、がんばって登校しようという気持ちになる 容 のではないかと考えている。そのために進路指導をするには、どんな配慮が必要か。また、具体的に障 害のある生徒の進路先として、どういうところがあるのか教えてほしい。 希望時期 *できれば木曜の午後を設定してもらえれば、担当者が動きやすいです。 備 考 他の相談機関等の利用等についてご記入ください。 診断されてからは、病院等にも行っていません。 ※上記必要事項に記述及び、該当する項目にレをご記入ください。 - 19 - 第3章 個別の教育支援計画・個別の指導計画について Q1 個別の教育支援計画とは? 「個別の教育支援計画」とは、障害のある幼児・児童・生徒に関わるさまざまな関係者(教育、医療、福 祉などの関係者、保護者など)が、どのような支援を行ってきたか等の情報を共有化することと、幼児期 から学校卒業まで一貫した支援をするため教育的支援の目標や内容、関係者の役割分担などを示す ことを目標に策定した計画です。 作成にあたっては、実情に応じて、まずは学級担任が保護者との連携を図りながら情報を収集するこ とが大切です。また、保護者の積極的な参画を促し、計画の内容や実施について保護者の意見を十分 に聞きながら支援計画を作成していきます。内容については学級担任と特別支援教育コーディネータ ーが連携して具体的な支援内容を記入していきます。 Q2 個別の指導計画とは? 「個別の指導計画」は、幼児・児童・生徒一人一人の障害の状態に応じたきめ細かな指導が行えるよ う、学校園(以下「学校」という。)における教育要領・教育課程や指導計画、当該幼児・児童・生徒の個 別の教育支援計画等を踏まえ、幼児・児童・生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、より具体的な指 導目標や指導内容・方法を盛り込んだものです。 個別の指導計画は、学級担任(教科担任)と特別支援教育コーディネーターが連携して原案を作成 し、校内委員会等で確認を行い、全校で共通理解を図っていくことになります。担任の日々の観察記録 をもとに実態把握を行い、目標設定(Plan)、指導・支援の実施(Do)、評価(Check)、改善(Action)を通 して取り組みを進めていくことが重要です。 【個別の指導計画の作成と指導の流れ】 ①情報の収集 Plan ②目標の設定 ③手立ての工夫 Do 再設定 指導開始 Action ④評価 Check ⑤引継ぎ - 20 - ①情報の収集 担任が観察した様子や、保護者からの情報などから、配慮や支援の必要とする実態を把握します。 ②目標の設定 目標の設定にあたっては本人や保護者のニーズも踏まえ、取り組むべき目標を具体的に設定します。 ③手立ての工夫 目標に対する具体的な手立てを設定します。 例えば、「文節で区切り、単語をまとまりで読む」という目標を設定した場合、「授業前に文節ごとに斜線を 入れる、○で囲むなどしてまとまりとして見えるようにして授業に参加させる」というように、指導の手立てを 具体的に記述します。 ④評価 設定された目標に沿って指導した結果、どのように変わったか等について、校内委員会で評価を行い ます。そして、その評価に基づき、次の指導目標について検討します。 ⑤引継ぎ 引継ぎでは、個別の指導計画をただ渡すだけに終わるのではなく、時間をとって話し合いを持つことが 大切です。また、進学や転学などに際しては、適切な指導が一貫して行われるよう、保護者の了解のも と、幼稚園から小学校、小学校から中学校、中学校から高等学校等の進学先へといった学校園間で計 画が引き継がれていくことが大切です。 Q3 保護者の参画は必要ですか? 子どもの教育的ニーズに応じた適切な教育的支援を行うには、保護者との情報交換を通して幼児・児 童・生徒や保護者のニーズを把握するとともに、支援の方法などについて説明し、保護者の理解を得るこ とが重要です。また、保護者も「重要な支援者である」ととらえ、保護者の役割の明確化を図ることも大切で す。 保護者、本人、支援者(担任)のニーズが一致しないこともあります。そのときには子どもの実態への共 通理解と支援の優先順位について十分に話し合い、支援の具体的な目標や手立てについて共に検討し ていくようにします。 また、そのようにして立てた個別の指導計画について、保護者への説明責任 (アカウンタビリティー)が 生じることは言うまでもないことです。 Q4 個人情報の管理についてどのような配慮が必要ですか? 「個別の教育支援計画」に記載されている情報は、最もプライバシーの保護が必要とされる情報であり、 基本的人権を擁護するために、その管理や取り扱いについては万全を期すべきものであることを一人一 人が自覚する必要があります。指導の共通理解を図るために担当者間で閲覧しやすいように環境を整え ることは必要ですが、管理および保管については鍵のかかる保管庫で管理すると共に、パソコン等で作成 した電子データについてはさらに特段の配慮が必要となります。大阪市個人情報保護条例や個人情報の 取り扱いに関する通知に基づき、その管理や取り扱い方について各学校園で十分に検討して、個人情報 が保護されるようにしなければなりません。 また、幼児・児童・生徒の就学相談・進路相談、その他適正な教育支援を行うために利用するものであ っても、事前に保護者の了解のもとで利用するものとします。 - 21 - 個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成にあたってのタイムスケジュール 4 (参考例) 月 〔外部専門機関〕 ・情報提供 〔保護者〕 ・保護者の希望 (アセスメント) ・生活情報等 5 〔学校〕 ・引き継ぎ事項確認 ・実態把握 ・家庭訪問(情報収集、確認) 月 作成週間・検討週間の設定 確認会議(各学年、学級) 懇談会等にて保護者に内容を説明・検討・確認 保護者が「個別の教育支援計画」へサイン 9∼10月 中間評価週間設定 中間評価会議(各学年、学級) 懇談会等にて保護者との話し合い・修正・確認 2 月 3 月 最終評価週間設定 最終評価会議(各学年、学級) 学年末懇談会等にて保護者との話し合い・評価 次年度に向けた支援目標の整理・検討 ◎ PDCAサイクルで長期目標・短期目標の見直しを行いましょう。 ◎ 作成後は、個別のファイル等に保管し、情報の管理を行いましょう。 ◎ 参考書式については、にぎわいねっと「発達障害理解のとびら」に掲載しています。 - 22 - 第 4 章 情報コーナー 役立つホームページの紹介(参考) ホームページ URL 紹 介 文部科学省(特別支 http://www.mext.go.jp/a_menu/sho 文部科学省の特別支援教育に関するサイト。 6.3%のデータが出た調査時に使用された質 援教育) tou/tokubetu/main.htm 問紙は「今後の特別支援教育の在り方(最終報 告)」で見られる。 国立特別支援教育総 http://www.nise.go.jp/ 合研究所および発達 http://icedd.nise.go.jp 障害教育情報センタ 国立特別支援教育総合研究所メールマガジン のバックナンバー、研修セミナーの紹介、教育 コンテンツなどの紹介がある。 ー 発達障害理解のとび http://www.ocec.jp/ ら 大阪市教育センター特別 http://www.ocec.jp/ 支援教育推進ルーム 大阪市発達障害者支 http://www16.ocn.ne.jp/~hattatsu/ 援センターエルムお 教材・教具、個別の教育支援計画や個別の指 導計画の書式等を掲載。 個別の教育支援計画作成資料、教材教具コン ピューター検索システム等の紹介。 「エルムおおさか」のサービスの内容、相談の 流れ、交通アクセスなどがわかる。 おさか 大阪府発達障害者支 http://homepage3.nifty.com/actosa 援センターアクトおお ka/ さか 日本発達障害ネットワ http://jddnet.jp/ ーク 大阪府の発達障害者支援センター事業のサイ ト。大阪府内の自閉症・発達障害児・者の親の 会のネットワーク、自閉症eネットの紹介など。 JDD ネット関連の各種情報、イベントなどの情 報が得られる。 日本自閉症協会 http://www.autism.or.jp/ 自閉症ガイドブックシリーズ、自閉症の手引き (改訂版)など書籍ほか、自閉症児・者に関す る様々な情報がある。 日本 LD 学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jald/ 日本 LD 学会に関するサイト。特別支援教育士 関係の情報も現在はこちらから。 平成22年度 大阪市発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業 作成委員 百村美代子 鶴賀 一也 多田真理子 山本富士仁 山口 敬子 山田 義則 富田 淳 古沢 宏明 平部 淳一 柳川 敏美 杉本 幸一 津村 友基 彌永 美佳 西原 弘 高橋 恭子 今中 綾子 岩本 由紀 協力委員 大阪市特別支援教育専門家チーム・アドバイザー 西岡 有香
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