人口モデル 2014 年 8 月 池田誠作成 人口は、前年の人口に、その後1

人口モデル
2014 年 8 月
池田誠作成
人口は、前年の人口に、その後1年間に生まれた子供の人数(出生者数)を加えて、同
じ期間に死亡した人の数(死亡者数)を差し引いて、今年の人口になります。
人口(今年)=人口(前年)+出生者数-死亡者数
1年間に何人の子供が生まれて、何人の人が死亡するかは、毎年、バラバラです。
そこを何とか計算するために、人口に対する割合、出生率と死亡率を使います。
出生率=出生者数(この1年間)÷人口(前年)
死亡率=死亡者数(この1年間)÷人口(前年) で計算されます。
従って、この出生率と死亡率が決まれば、次の式で計算できます。
出生者数(この1年間)=人口(前年)×出生率
死亡者数(この1年間)=人口(前年)×死亡率
出生率と死亡率はこれまでの傾向で統計的におおよその率を決めることが一般的です。
しかし、将来の出生率や死亡率がどう変化するかは未定です。
それでは、さっそく、日本と世界の出生率を変化させて、2100 年までの人口がどのよう
になるか試してみましょう。
なお、人口のグラフにあらかじめ描かれている灰色の線は参考のためです。
日本の高位人口は国連の予測値、中位と下位の人口は国立社会保障・人口問題研究所の
高位予測と低位予測です。日本政府の予測では人口減少がかなり進むと予測されているこ
とが分かります。
世界の予測は国連の高位・中位・低位の予測です。2012 年時点で人口が少し増加傾向
にありそれを元にすると高位人口になります。HIV などの感染症が大きく影響する場合に
は低位の人口予測のようになると仮定されています。
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なお、この人口モデルでは5歳階級別の人口データをもとに各歳階級別の出生率、死亡
率を使っています。詳しくは、後述します。
しかも、モデルでは日本は1万分の1、世界では百万分の1の人間をモデル内で作成し
て、1年ごとに年を取り、出生や死亡を確率的に計算しています。そのため、出生者数や
死亡者数にはかなりバラツキがあり、ギザギザのグラフになっています。
ここまでのシミュレーション実験の結果、どのような発見がありましたか?
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日本の人口も世界の人口も、出生率を変えるだけでものすごく変化します。
出生率を2%にすると 2100 年の日本は2億人、世界は 300 億人になることもモデル
から分かります。
死亡率は、徐々に医療や公衆衛生、栄養などの改善で低下すると仮定しています。
出生率を 0.5 に低下させると、日本だけでなく世界も、人口が減少し、高齢化が急速に
進むことが分かります。
戦争や大規模な自然災害、パンデミック、食料不足の餓死など、多くの人が死ぬ危険な
状態は、これからも考えられますが、世界の人口に最も大きな影響をもたらすものは出生
率です。
では、出生率はどのようにして決まるのでしょうか?
死亡率と同じように医療や公衆衛生、栄養などの改善で増加することが考えられます。
しかし、実際には、経済が成長すると、出生率は低下しています。
多産多死の社会では、多くの子供が成人になる前に死亡するので多くの子供を出産する
必要があります。・・・略
ちょっと大げさですが、「人類の将来は一人一人の男女に委ねられている。」というのは
真実です。
その背景にある、国連や国家の様々な政策、宗教や慣習、家族制度・文化などの政治・
社会・文化的要因ももちろん重要です。
また、経済成長、教育、女性の地位向上などの要因が、少子化に大きな影響を及ぼして
いる要因と考えられています。
そこで、次に経済の面からモデルの拡張を考えてみましょう。
なお、人口の高齢化や減少は、日本だけでなく、多くの先進国や、これからの中国など
でも大きな社会・経済問題のとても大きな要因になります。
従って、日本も他の多くの先進国も中国も、人口の移動が「世界の人口問題」のとても
重要な問題になります。このような世界的な規模での人口移動については、国連の人口予
測でも各国別に様々な推計がなされています。
ここでのモデルではそこまで拡張できていませんが、あとで検討してみたい課題です。
20140707_WFE_SPHCG_178_Pop_3.model
Japan_World_2100_Population_3.model
Japan_World_2100_Population_3.binary
Japan_World_2100_Population_3.flh
以下は古いモデルからの出力です。要変更!
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改め、
人口モデル
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図 A-1
日本の人口モデル
図B
世界の人口モデル
図 A-1の推計は、少子化が継続すると仮定しています。その結果は、2050 年で約 1 億人、2100
年で約 7,000 万人となります。
(国立社会保障・人口問題研究所の高位推計とほぼ同じ)
図 A-2
日本の人口モデル
図 A-3
少子化が更に深刻化し、出産される子供の数が
日本の人口モデル
少子化対策によって、出産される子供の数が増加
更に減少するという仮定を試してみます。
に転じるという仮定を試してみます。
その結果は、2050 年で約 9,000 万人、2100
その結果は、2050 年で約 1.2 億人、2100 年
年で約 4,000 万人になります。
(社会保障・人口
で約 1.3 億人となります。この予測は、国連の高
問題研究所の下位推計とほぼ同じ)
位推計とほぼ同じです。
あなたは、どの人口予測が最も実現しそうであると思いますか?
また、どの人口予測になることが最も望ましいと思いますか?
3つの推計の、年齢別構成、出生者・死亡者数、平均寿命、出生率・死亡率・自然増加率を、人口が少
ない順に並べると次の通りです。
図 A-2a 少ない人口予測
図 A-1a 中間のケース
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図 A-3a 最も多い予測
高齢化が最も進む。
高齢化はほぼ同じ状態が続く。
2050 年頃には高齢化が解消!
モデルは、コントロール・パネルで「日本出産タイプ」を 0~3まで4段階で試してみることができ
ます。1は下位推計、2は中位推計、3は高位推計です。また、2014 年時点での年齢を入れると、
コンソール画面に各年次ごとの年齢が表示されます。
Japan_2100_POP.binary
コントロール・パネルで「日本出産タイプ」を 0 で試してみるとどうなるでしょうか?このように
指定すると、2015 年以降に出産される子供の数がゼロになると仮定することになります。その結果、
若い人が次々といなくなって、2100 年には約 300 万人で、高齢者ばかりになって平均寿命は上昇す
ることが分かります。このような極端な想定は、実際には役に立ちませんが、シミュレーション体験と
しては面白いと思います。
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この「日本の人口モデル」を作成するうえで参考にしたデータは次の通りです。このモデルでは、一
人一人の人間をパソコン内に作成して、年齢と性別で出産や死亡を計算しています。このような手法を
マルチエージェント・シミュレーションといいます。ここでは、1万分の1のモデルということで最初
は 12,670 人のエージェントをモデル内で動かしています。
シミュレーションを開始する 2000 年時点の一人一人の年齢は、次の5歳階級別人口をもとに、1
歳ごとの人口に置き換えています。
資料:国勢調査から作成
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一人一人の死亡は年齢階層別の死亡率(2000 年)をもとに、確率的に計算しています。具体的に
は、毎年、各人ごとに乱数を発生させて、その値が死亡率以下になれば死亡するというモデルです。
政府統計の総合窓口の「トップページ/統計データを探す/主要な統計から探す」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/html/GL02100101.html 2014 年 8 月 4 日参照
一人一人の出産は、年齢階層別の出生率(2000 年)をもとに、確率的に計算しています。具体的
には、毎年、15 歳以上 49 歳以下の女性について、各人ごとに乱数を発生させて、その値が出生率以
下になれば出産するというモデルです。
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一人一人の死亡や出産を年齢階層別の死亡率や出生率(2000 年)をもとに、確率的に
計算する方法は、2100 年までの長期的な予測をするためには十分な方法ではありません。
医療や育児支援など様々な技術的・社会システム的な制度や組織・体制などを考えれれば、
変化すると考える方が普通であると思います。そのため、人口モデルという最も単純なモ
デルだけでも、条件の設定などでいろいろなモデルを作ることが可能です。日本の将来人
口については、厚生省社会保障・人口問題研究所が推計した高位と下位を参照しました。
20140404_日本の人口実績と将来推計 1950_2110_10-1.xls
また、国連でも世界の人口予測を国別に行っています。その中から、日本の将来予測の
高位推計値を参照値とすることにしました。
国連資料から作成 ¥public_html¥Global_2100¥国連の人口統計¥世界と各国別人口
WPP2012_POP_F01_1_TOTAL_POPULATION_BOTH_SEXES.xls
以上の3ケースに合わせて、出生率だけを変更して、人口モデルを作成しています。
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世界人口モデル
図 B-1 下位推計
2100 年 60 億人
図 B-2 中位推計
2100 年 90 億人
図 B-3 高位推計
2100 年 170 億人
モデルは、コントロール・パネルで「世界出産タイプ」を 0~3まで4段階で試してみることができ
ます。1は下位推計、2は中位推計、3は高位推計です。また、2014 年時点での年齢を入れると、
コンソール画面に各年次ごとの年齢が表示されます。
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World_2100_POP.binary
この「世界の人口モデル」を作成するうえで参考にしたデータは次の通りです。このモデルでは、
「日
本の人口モデル」と同様に一人一人の人間をパソコン内に作成して、年齢と性別で出産や死亡を計算し
ています。ここでは、百万分の1のモデルということで最初は 6,115 人のエージェントをモデル内で
動かしています。シミュレーションを開始する 2000 年時点の一人一人の年齢は、次の5歳階級別人
口をもとに、1歳ごとの人口に置き換えています。
World Population Prospects: The 2012 Revision
世界の自然増加率(出生率―死亡率。2000 年で 13%程度)とほぼ同じ状態を日本で探してみる。
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その結果 1955 年頃の日本の自然増加率とほぼ同じで、人口構成もほぼ似ていることが分かります。
日本の5~9歳の年齢階級が突出しています。これは、戦後のベビーブーム世代です。しかし、1955
年には、このベビーブームは既に終わっていますので、出産年齢別の出生率には影響がないと考えられ
ます。
Annual total population (both sexes combined) by five-year age group
¥ United Nations, Population Division, Department of Economic and Social Affairs
World Population Prospects: The 2012 Revision, region and country, 1950-2100 (thousands)
File POP/15-1: Annual total population (both sexes combined) by five-year age group, major area,
Estimates, 1950-2010, POP/DB/WPP/Rev.2012/POP/F15-1
June 2013 - Copyright © 2013 by United Nations. All rights reserved
Suggested citation: United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population
Division (2013).
World Population Prospects: The 2012 Revision, DVD Edition.
以上のような手順で、世界の 2000 年時点の5歳階級別出生率と死亡率のデータが見つけられない
ので、その代わりに、日本の 1955 年時点のデータとほぼ同じであると仮定して、次の年齢(5歳階
級別出生率と死亡率のデータを使うことにします。
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なお、国連による世界の人口予測は次の通りです。
国連による世界の人口予測(2013 年)
United Nations, Population Division, Department of Economic and Social Affairs,
File POP/1-1: Total population (both sexes combined) by major area, region and country, annually
for 1950-2100 (thousands)
June 2013 - Copyright © 2013 by United Nations. All rights reserved
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