好塩性細菌ハロモナスを利用した海水・かん水・にがり中の重金属浄化

平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
助成番号 0610
好塩性細菌ハロモナスを利用した海水・かん水・にがり中の重金属浄化
仲山 英樹
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
概
要
タイの塩土から同定された好塩性細菌ハロモナス(Halomonas elongata)は、海洋中にも存在し、0.3~21%
NaCl、pH 5~10 の広範囲の環境に適応可能である。そこで本研究では、高塩環境適応能力に優れたハロモナスに着目
し、海水、かん水などの製塩過程にみられる、高塩濃度かつアルカリ性環境水圏の重金属浄化への応用を目指す。特に
本研究では、実際の食塩やにがりの製造過程で海水やかん水に溶存する重金属類に対して、細胞表層工学技術によっ
て重金属浄化能力を強化した好塩性細菌ハロモナスを用いた重金属浄化技術の有用性を検討することを目的とした。
まず、海水やかん水に代表される高塩濃度かつアルカリ性環境下でのハロモナスの各重金属(Cu、Cd または Zn)に対
する耐性と蓄積能力を詳細に調べた結果、重金属耐性を示したハロモナス細胞の重金属の蓄積量は低く抑えられている
ため、現状では耐性と浄化能を両立することが困難であることが示された。そこで本研究では、細胞表層工学技術により、
ハロモナスの細胞表層で重金属を捕捉して重金属浄化能を高めることを試みた。ハロモナスの細胞表層に重金属を捕捉
する戦略により、細胞内に重金属を取り込むことなく、重金属耐性を維持したまま重金属浄化能を高めることができるため、
飛躍的な浄化効率の向上が期待される。本研究では、人工金属結合ドメインとして、システイン(C)やヒスチジン(H)に富
んだペプチド配列を提示したをアーミングハロモナス細胞
を作製した。その結果、高塩濃度かつアルカリ性の環境
中では、H に富んだペプチド配列は金属浄化能が低いの
く、海水やかん水における重金属浄化に有用であることが
判明した。また、酸性アミノ酸であるグルタミン酸(E)やア
スパラギン酸(D)が隣接したペプチド(EC6 または DC6)を
提示した細胞では、特に Cu の浄化能が高いことが示され
た(Fig. 1)。
Metal accumulation (μmol/g DW)
に対し、C に富んだペプチド配列の方が金属浄化能が高
7
今後は、既存の製塩プロセスに重金属浄化能を高めた
全な食塩およびにがりの生産・供給に貢献できると期待さ
Cu
Zn
5
4
3
2
1
0
アーミングハロモナス細胞を活用した海水・かん水からの
重金属浄化プロセスを追加することによって、より安心・安
Cd
6
Vector
HA
EC6-HA
DC6-HA
GC6-HA
HC6-HA
Fig. 1 Accumulation of heavy metals in H. elongata displaying
synthetic peptides, XC6.
れる。
1.研究目的
究では、高塩環境適応能力に優れたハロモナスに着目し、
現代は、重金属による海域汚染が深刻化することにより、
海水、かん水、にがり溶液などの製塩過程にみられる、高
海産物や天然海水塩の安全性が懸念されるという危機的
塩濃度かつアルカリ性環境水圏の重金属浄化への応用
事態に陥っている。そのため、効率的な海水からの重金
を試みる
属浄化技術の開発が期待される。タイの塩土から同定さ
刻化により一部の天然海水塩で汚染が報告された
れ た 好 塩 性 細 菌 ハ ロ モ ナ ス ( Halomonas elongata
CODEX 食用塩規格の有害 5 元素である銅(Cu)、カドミウ
OUT30018 株
(1)
)は、海洋中にも存在し、0.3~21% NaCl、
pH 5~10 の広範囲の環境に適応可能である。そこで本研
(2)
。本研究の最終到達目標は、海水汚染の深
ム(Cd)、鉛、水銀、砒素に代表される重金属類の浄化に
ハロモナスを利用した新規バイオレメディエーション技術
- 123 -
平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
の開発である。特に本研究では、実際の製塩過程におけ
は、海水やかん水に代表される高塩濃度かつアルカリ性
る海水・かん水・にがりに溶存する重金属類に対して、細
環境下でのハロモナスの各重金属に対する耐性と蓄積能
胞表層工学技術によって重金属浄化能力を強化した好
力を詳細に調べることにした。その結果、ハロモナスの金
塩性細菌ハロモナスを用いたバイオレメディエーション技
属に対する耐性は、細胞外の塩濃度や pH によって変化
術の有用性を検討することを目的とした。
し、Cu に対してはアルカリ性 pH の条件下で耐性となるが、
Cd に対してはアルカリ性 pH の条件下で感受性となり、pH
2.研究方法
の影響が顕著であることが示された。一方で、Zn に対して
2.1 使用菌種とプラスミド
は pH の影響は少なく、塩濃度の影響が顕著であった。こ
Halomonas elongate OUT30018 株を使用した。遺伝子
のように、添加した金属の種類に応じて異なる応答性を示
構築の大腸菌宿主として、Escherichia coli DH5α を使用
したが、金属が過剰に存在する条件下で耐性を示した細
した。H. elongata への接合伝達のヘルパーとして、E. coli
胞では、共通して金属蓄積量が低く抑えられていることが
HB101(pRK2013)を使用した。H. elongata でのタンパク質
明らかとなった(Fig. 1)。これにより、単細胞である細菌の
発現用には、シャトルベクター pHS15N
(3)
を使用した。
細胞内に金属を高蓄積するのには、量的な限界があるこ
2.2 使用培地
とが示された。しかしながら、海水やかん水に代表される
金属添加実験用の培地は、重金属類が不溶化するの
高塩濃度かつアルカリ性の環境条件下では、ハロモナス
を防ぐため、リン酸をほとんど含まない MJS 培地を基本と
は高い重金属耐性を示すことが明らかとなった。しかしな
し、海水様の条件としては 3% NaCl を、かん水様の条件と
がら、重金属耐性を示したハロモナス細胞の重金属の蓄
しては 6% NaCl を添加した改変 MJS 培地(3%または 6%
積量は低く抑えられているため、細胞の重金属浄化能(蓄
NaCl, 15 mM Tris, 50 mM NaCl, 20 mM NH4Cl, 1 mM
積能)は低く、現状では耐性と浄化能を両立することが困
KCl, 1 mM MgCl2, 0.1 mM CaCl2, 0.05 mM MnCl2, 0.8%
難であることが示された。
(wt/vol) Casamino Acids, 0.4% (vol/vol) glycerol, 0.005%
3.2 金属結合ペプチドを提示したアーミングハロモナス
(wt/vol) thiamine)を使用した。ここで、15 mM Tris を添加
細胞の作製
することで MSJ 培地は室温でおよそ pH 8.4 になるため、
高塩濃度かつアルカリ性環境中で重金属耐性を示す
培地の pH を調整するために 15 mM Tris を添加した。さら
ハロモナスは、重金属に汚染された海水やかん水におい
に中性条件で実験する際には、HCl を添加して pH を調整
ても旺盛なバイオマス生産力を維持することができるため、
した。また、耐性試験や浄化試験のための標的の金属とし
重金属浄化に有用であると考えられる。しかしながらが、
て、ZnCl2,CdCl2,CuCl2 を組みあわせて培地に適宜添加
上述のとおり、現実的には細胞の重金属耐性と重金属蓄
して使用した。
積量(浄化能に相当)は負の相関関係があるため、飛躍
2.3 ICP 発光分析
的な浄化能の向上は期待できない。そこで本研究では、
ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析は、IRIA
細胞表層工学技術により、ハロモナスの細胞表層で重金
Intrepid ICAP(Thermo electron)を用いて行った。各金属
属を捕捉して重金属浄化能を高めることを試みることにし
の波長は、それぞれ、Cd 2144、Cu 3247、Zn 2062 を用い
た。ハロモナスの細胞表層に重金属を捕捉する戦略によ
た。解析は、TEVA CID Software を用いて行った。
り、細胞内に重金属を取り込むことなく、重金属耐性を維
持したまま重金属浄化能を高めることができるため、飛躍
3.研究結果
的な浄化効率の向上が期待される。
3.1 ハロモナスの重金属耐性と重金属蓄積量に及ぼ
す細胞外塩濃度と pH の影響
これまでに、我々はハロモナス細胞の外膜リポタンパク
質をアンカーとして利用することで、目的のペプチド配列
これまでに、好塩性細菌であるハロモナスが高塩濃度
を細胞表層に提示させるに成功した
(4)
。実際に、エピトー
かつアルカリ性の環境中で天然ミネラル成分である亜鉛
プタグ(HA)を提示した細胞を蛍光標識抗体で免疫蛍光
(Zn)や Cu に耐性を示し、特に 20 μM 程度の低金属濃度
染色すると、細胞表層に提示された HA が蛍光標識抗体
条件下での Cu および Cd の蓄積能力(すなわち浄化能
を捕捉することにより細胞表層に蛍光のシグナルが検出さ
力)に優れていることが示唆された。そこで、まず本研究で
れた(Fig. 2A)。そこで、重金属浄化能力を強化するため
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平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
A
Cu-tolerance
Cu-accumulation
2.5
2
3% pH 8.4
6% pH 8.4
1.8
1.6
1.4
1.2
6% pH 7.2
1
umol / g DW
MJS media with 1.5 mM Cu
OD600
MJS media with 1.5 mM Cu
0.8
1.5
1
0.5
0.6
0.4
3% pH 7.2
0.2
0
・6% NaCl => Cu-tolerant
B
6%
pH
8.4
7.2
pH
3%
・pH 8.4 => Cu-tolerant
6%
12
pH
9
Time (h)
3%
6
7.2
3
pH
0
8.4
0
・High tolerance => low accumulation
Zn-tolerance
Zn-accumulation
4.5
MJS media with 0.2 mM Zn
4
3.5
6% pH 7.2
OD600
0.8
6% pH 8.4
0.6
umol / g DW
MJS media with 0.25 mM Zn
1
3
2.5
2
1.5
3% pH 8.4
0.4
1
0.5
0.2
3% pH 7.2
0
・ 6% NaCl => Zn-tolerant
Cd-tolerance
8.
4
pH
Cd-accumulation
MJS media with 0.4 mM Cd
25
MJS media with 1.5 mM Cd
20
6% pH 7.2
1.2
1
0.8
3% pH 7.2
0.6
umol / g DW
1.4
OD600
7.
2
・High tolerance => low accumulation
・pH 8.4 => Zn-tolerant
C
6%
3%
pH
pH
Time (h)
6%
12
pH
9
3%
6
2
3
7.
0
8.
4
0
15
10
0.4
0
7.
pH
6%
4
8.
2
7.
pH
3%
pH
12
6%
9
4
6
Time (h)
8.
3
pH
0
2
0
5
6% pH 8.4
3% pH 8.4
3%
0.2
・pH 8.4 => Cd-sensitive
・6% NaCl => Cd-tolerant
・High tolerance => low accumulation
Fig. 1 Metal-tolerance is negatively correlated with metal-accumulation in H. elongata.
A: Cu-response in H. elongata. B, Zn-response in H. elongata. C, Cd-response in H. elongata.
- 125 -
平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
A
Arming
H. elongata
Peptide display
(HA-tag)
Outer membrane
lipoprotein
(HeLipop5)
H. Elongata expression vector
pHS-HeLipop5-HA
HeLipop5
: HA-tagged HeLipop5
: Alexa488-conjugated
HA-antibody
HA
promoter
B
Zn2+
Cu2+
Cd2+
Cu2+
Zn2+
Cd2+
Zn2+
MBD HA
Zn2+
Cu2+
Arming
H. elongata
Cd2+
HeLipop5
promoter
Cd2+
Cu2+
?
Metal Binding Domain (MBD)
His-rich peptide, XH6
XHXHXHXHXHX
or
Cys-rich peptide, XC6
XCXCXCXCXCX
Zn2+
Cd2+
Cu2+
Fig. 2 Cell-surface display system in H. elongata.
A, H. elongata cells displaying HA-epitope tag on the cell-surface.
B, H. elongata cells displaying synthetic metal-binding peptides on the cell-surface.
に、この細胞表層工学技術を活用し、金属結合ドメイン
ロモナスの重金属浄化能が増加することが示された。その
(MBD)として機能することが予想されるシステイン(C)や
一方で、高塩濃度かつアルカリ性の環境中では、H に富
ヒスチジン(H)に富んだペプチド配列を提示したをアーミ
んだペプチド配列(HD6, HE6, HG6, H12)は金属結合能
ングハロモナス細胞を作製することにした(Fig. 2B)。
が低く、C に富んだ配列(EC6, DC6, GC6, HC6)の方が金
本研究では、どのような配列のペプチドが金属結合能
属結合能が高く、海水やかん水における重金属浄化に有
に優れているのかを調べるため、金属と直接作用するアミ
用であることが判明した。また、酸性アミノ酸であるグルタミ
ノ酸である H および C の繰り返し配列をもつ合成ペプチド
ン酸(E)やアスパラギン酸(D)が隣接した EC6 や DC6 を
を用いた実験を行った。また、C や H の近傍のアミノ酸配
提示した細胞において、特に Cu に対する浄化能が高いこ
列によって、金属の結合特性が変化するかどうかを調べる
とが示された。さらに、人工の金属結合ペプチドである
ため、H または C に富んだ 8 種類の人工金属結合ペプチ
EC6 および DC6 は、海水の 2 倍程度濃縮したかん水様の
ド(EC6, DC6, GC6, HC6, HD6, HE6, HG6, H12)を設計し、
6% NaCl 濃度の条件下で、Cu に特異的な浄化能が高い
それらを細胞表層に提示したハロモナスを作製した。そし
ことが明らかとなった(data not shown)。
て、海水程度の 3% NaCl 濃度の条件下において、3 種の
3.3 多重コピーの金属結合ペプチドを提示したアーミン
グハロモナス細胞の作製
重金属を等量混合した培養液中から細胞により回収され
た金属量を ICP 発光分析により定量化した(Fig. 3)。その
さらに、ハロモナス細胞の重金属浄化能を向上させるた
結果、C に富んだドメインを細胞表層に提示したときにハ
め、提示するアンカータンパク質1分子当たりの金属結合
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平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
とが示された。しかしながら、EC6 では 2 コピー数、DC6 で
試みた(Fig. 4)。その結果、重金属の結合量は金属結合
は、3 コピー数程度の条件で Cu の結合能に閾値があるこ
ペプチドのコピー数の増加とともに上昇する傾向があるこ
とが示された。
A
Synthetic metal-binding peptides
XCXCXCXCXCXC (XC6)
pHS
HL5
EC6
DC6
GC6
HC6
HD6
HE6
HG6
H12
ペプチド(EC6 または DC6)のコピー数を増加させることを
HXHXHXHXHXHX (HX6)
Cell-surface display of synthetic
metal-binding peptides in H. elongata
CBB
Western blotting (WB)
ICP analysis
3% NaCl MJS培地(pH8.4)
WB
20 µM metal (Cu/Cd/Zn)
HL5=HeLipop5
B
ICP analysis
8
MJS media with 3% NaCl (pH 8.4)
7
Cd
µmol/g(dry weight)
Cu
6
Zn
5
4
3
2
1
0
pHS
HL5
EC6
DC6
GC6
HC6
HD6
HE6
HG6
H12
Fig. 3 Generation of arming H. elongata cells displaying synthetic metal-binding peptides.
A, Synthetic metal binding peptides, Cys-rich XC6 or His-rich XH6, were designed and displayed on the
cell-surface of H. elongata.
B, Cell-surface display of Cys-rich XC6 peptides actually function as metal-binding peptides in H.
elongata under seawater like condition.
- 127 -
(DC6)4
(DC6)3
(DC6)2
(DC6)1
HL5
pHS
(EC6)4
(EC6)3
(EC6)2
(EC6)1
HL5
pHS
(DC6)4
(DC6)3
(DC6)2
(DC6)1
HL5
pHS
(EC6)4
(EC6)3
(EC6)2
HL5
MW (kDa)
200
120
95
68
50
pHS
A
(EC6)1
平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
36
27
20
10
CBB
WB
B
3
Cd
Cu
Zn
2.5
umol/g DW
2
1.5
1
0.5
0
pHS
HL5
(EC6)1
(EC6)2
(EC6)3
(EC6)4
(DC6)1
(DC6)2
(DC6)3
(DC6)4
Fig. 4 Cell-surface display of multi-copies of EC6 or DC6 peptides in H. elongata.
A, Production of the arm protein fused with multiple copies of EC6 or DC6 peptides in H. elongata.
B, Accumulation of heavy metals in H. elongata OUT30018 displaying multiple copies of synthetic
metal-binding peptides, EC6 or DC6.
4.考 察
ているといえる。
実際の塩やにがりの製造過程で重金属汚染が懸念さ
本研究では、人工金属結合ペプチドを表層に提示して
れている海水やかん水の浄化には、本研究で用いたハロ
いるが、遺伝子組換え技術の安全性を危惧する世論の問
モナスのように、重金属や塩が濃縮された環境に適応し
題から、外来の塩基配列を導入するのは好ましくない。よ
た好塩性生物でなければ適用できない。しかしながら、ハ
って、人工金属結合ペプチドに加えて、ハロモナスに内在
ロモナスは重金属を細胞内に取り込まないことで耐性を獲
性の金属結合タンパク質に存在する金属結合ドメインの
得しているため、重金属を浄化する効率には限界がある。
ペプチド配列を活用することも重要な戦略であると考え
そこで、本研究では、細胞内に重金属を取り込んで蓄積
る。
する戦略とは異なり、細胞表層工学技術により金属結合
ペプチドを提示したアーミングハロモナス細胞を作製し、
5.今後の課題
細胞表層で重金属を捕捉して細胞の表面で蓄積する戦
今後は、Cu 以外の汚染金属に対応するために、その
略を選択した。アーミングハロモナス細胞を使用した重金
他の重金属に対しても有用な金属結合ペプチドを探索し
属浄化技術は、細胞内に重金属を取り込む必要がないた
て活用するとにより、種々の金属汚染に対応できる浄化能
め、金属耐性と金属蓄積量の向上を両立できる点が優れ
を備えたアーミングハロモナス細胞の開発が今後の課題
- 128 -
平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
である。実際の汚染現場の環境に応じて最適化されたア
of the 18th annual meeting of the Thai Society for
ーミング H. elongata は、重金属浄化のツールとして有用
Biotechnology.
であるだけでなく、また、金属回収・再資源化のツールとし
2.国際学会発表
ても重要な技術としての発展が期待できる。将来的には、
(1) Nakayama, H., Shinmyo, A., and Yoshida, K.:
既存の製塩プロセスに対して、実用的なアーミングハロモ
Cell-surface engineering of Halomonas elongata for
ナス細胞を用いた海水およびかん水の重金属浄化プロセ
metal-bioremediation at high salinity sites. The 18th
スを追加することによって、より安心・安全な食塩およびに
annual meeting of the Thai Society for Biotechnology.
がりの生産・供給に貢献できることが期待される。
Bangkok, Thailand. (November 2-3, 2006). (Oral
presentation).
(2) Nakayama, H., Shinmyo, A., and Yoshida, K.:
文献等
1.参考文献
Bioremediation of metals in high salinity environments
(1) Ono, H., Sawada, K., Khunajakr, N., Tao, T., Yamamoto,
using the moderate halophile Halomonas elongata
M., Hiramoto, M., Shinmyo, A., Takano, M. and
OUT30018.
Murooka, Y. (1999) Characterization of biosynthetic
Environmental Biotechnology Leipzig 2006. Leipzig,
enzymes for ectoine as a compatible solute in a
Germany. (July 9-13, 2006). (Poster presentation).
moderately
halophilic
eubacterium,
Halomonas
elongata. J. Bacteriol. 181:91-99.
The
International
Symposium
on
3.国内学会発表
(1) 仲山英樹, 小笠原直毅, 新名惇彦, 吉田和哉: 中度
(2) Nakayama, H., Shinmyo, A. and Yoshida, K. (2006)
好塩性細菌 Halomonas elongata OUT30018 株のゲノ
Bioremediation of metals in high salinity environments
ム情報を活用した細胞表層工学技術の開発と重金属
using the moderate halophile Halomonas elongata
浄化への応用. 第 1 回日本微生物ゲノム学会年会.
OUT30018.
2007 年 3 月 2 日, P-081. 千葉県木更津市(かずさア
Proceedings
of
the
International
Symposium on Environmental Biotechnology Leipzig
2006, Germany.
カデミアホール内). (2007). (ポスター).
(2) 仲山英樹: 好塩性細菌 Halomonas elongata の細胞
(3) Vargas C, Fernandez-Castillo R, Canovas, D., Ventosa,
表層工学技術の開発と重金属浄化への応用. 第 43 回
A. and Nieto, J.J. (1995) Isolation of cryptic plasmids
好塩微生物研究会. 2006 年 12 月. 奈良県奈良市(帝
from moderately halophilic eubacteria of the genus
塚山大学学園前キャンパス内). (2006). (口頭).
Halomonas. Characterization of a small plasmid from H.
(3) 仲山英樹, 新名惇彦, 吉田和哉: 中度好塩性細菌
elongata and its use for shuttle vector construction. Mol.
Halomonas elongata OUT30018 株を利用した細胞表
Gen. Genet. 246:411-418.
層工学技術の開発と塩類集積環境の重金属浄化への
(4) Nakayama, H., Shinmyo, A., and Yoshida, K. (2006).
応用. 日本生物工学会第 58 回大会. 2006 年 9 月,
Cell-surface engineering of Halomonas elongata for
1I15-1. 大阪府豊中市(大阪大学豊中キャンパス内).
metal-bioremediation at high salinity sites. Proceedings
(2006). (口頭).
- 129 -
平成18年度助成研究報告集Ⅰ(平成20年3月発行)
No. 0610
Heavy Metal Remediation of Sea Water, Brine, and Bittern Using the Moderate
Halophile Halomonas elongata
Hideki Nakayama
Graduate School of Biological Sciences, Nara Institute of Science and Technology,
8916-5 Takayama, Ikoma, Nara 630-0192, Japan
Summary
Metal pollution is a growing threat to the environment and human health. High salinity and metal pollution
are often observed together because inorganic metals and mineral salts are concentrated simultaneously in nature.
Therefore, the key to a successful metal-bioremediation is to develop a remediation technology that can be used in
high-salinity environments. Halophilic bacteria are typical inhabitants of high-salinity sites such as marine
environments and salt fields. Halomonas elongata strain OUT30018, a moderate halophile isolated from
high-salinity soil from Khon Kaen, Thailand, can survive heavy metal-stress under high salinity and alkaline
conditions. Using H. elongata OUT30018, we aim to develop superior biotechnology for metal-remediation.
We have developed a cell-surface engineering system for H. elongata OUT30018 using its own outer-membrane
lipoprotein as an anchor. Expression of the synthetic phytochelatin (PC), EC8, composed of (Glu-Cys)8Gly
peptide fused to the lipoprotein anchor on the surface of H. elongata OUT30018 resulted in improved
bioaccumulation of Cu, Cd and Zn in medium containing each metal separately, while in medium containing
mixed metals (Cu, Cd and Zn), Cu is the main metal accumulated. Furthermore, to test the effect of charged
amino acid residues next to Cys on metal-binding selectivity of PC-like peptides, we expressed alternative PC-like
peptides, XC6, composed of (Xaa-Cys)6 peptides (Xaa = Glu [E], Asp [D], Gly [G], or His [H]) fused to the
lipoprotein anchor on the surface of H. elongata OUT30018. In the H. elongata OUT30018 cells displaying
PC-like peptides with acidic amino acid residues (EC6 and DC6), bioaccumulation of Cu was greatly improved.
Therefore, cell-surface engineered H. elongata OUT30018 is a promising tool for decontamination of heavy
metals in salty water such as seawater and brine.
- 130 -