Page 1 81 ロレンスをめぐるロセッテイの女たち" 初期のD. H、ロレンス

81
ロレンスをめ ぐるロセ ッテ ィの女たち*
中
西
弘
善
初期の D.
H.ロレンス (
D.H.La
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85
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30)の作品群 において,青年 ロレンスが
女性の登場人物 を造型す る場合, ラフェエル前派-の言及がそれ とな く頻繁 になされているこ
とに気付 く。 この種の タイプの女 は,人間性のなかの 「
動物」 を拒否 し,ロマ ンチ ックで 「
夢
,『侵入者』
みる女」 (
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)の タイプである。 よく知 られている例 をあげれば
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息子 と恋人』(
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アム (
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人物設定 をするにいたるまでにロレンス固有の概念 を確立 している。 この中心 をなす重要な場
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a面で,語 り手 は,森番のアナブル (
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)について批判的な意見 を聞か される。
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彼女 は精神的な女 にな りは じめた。彼女 はバー ン ・ジ ョウンズを装いは じめたォーターハ ウスか もしれないに非常 に似ていた-
ウオー ターハ ウスだった-
ウ
彼女は彼の描 く女性たち
≪シャロッ ト姫≫だった と思 う。
」
クリス タルベル夫人の ように,ロレンスの初期 に登場す る女性 たちは,典型的にラファエル
前派的な精神的態度 をとって女性 自身にとって唯一望 ましい状態で誇示する。 ロレンスが造型
す る男性 は,アナブル とい う原型 にならって, これ らの女性の態度が気取 って非現実的で偽善
的であると非難する。初期の男性登場人物 はこぞって,これ らの女性 に否定的な反応 を繰 り返
す。 しか し,後年 になるにつれて,男性 はラファエル前派特有の精神的態度 と苦闘・最終的に
は拒絶することになる。
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本稿では,ロレンスをめ ぐるこうした女性原型のルーツを,「ラファエル前派兄弟 国」(
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) を導いた最大の牽引者であるロセ ッテ ィ (
1
82
8
-8
2)の女性美の原型 と比較 し, と くに初期 と晩年の詩編 を検討 してみたいo ロセ ッテ ィ
とロレンスの各各の芸術家の創作手法が,現実の女性のなかに, ときには創造的な, ときには
破壊的な女性のアーキ タイプを探 し求めることにあ り,両者の生涯のテーマが理想の女性像の
神話 を提示することにあったか らである。
*本稿は,日本現代英米詩学会 第1
2
回大会
の一部に加筆訂正 したものである。
(
1
9
9
9
年1
1月2
0日,於大妻女子大学)において口頭発表 した内容
82
天 理 大 学 学 報
くロセ ッティをめぐる女のアーキタイプ)
ロセ ッテ ィの生涯 と作品 を考 える場合,彼の心 をとらえた 3人の女性 は特筆 に値する。精神
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),肉体的な妖 しい までの官能美 をた
的,理想 の女性エ リザベス ・シダル (
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,そ して精神 と肉体 の融合 タイプであ
たえたファニー .コー ンフォース (
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)である。
るジェイン ・モ リス (
まずエ リザベスは痩せていて肉感的 とい うよ り清純 な女性である○いつ も蒼 白い肌 を して,
緑青色の目,赤味がかったブロン
ドの髪 をもち,消極的で,この世な らぬ 「
修道女的純粋 さ」
(
王
)
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9
-9
6)の最高傑作の一つ
を秘めた霊的な女性である。 ミレー (
である 《オフィー リア》(
Ophe
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a)のモデルをつ とめたエ リザベスは,彼女 自身 も自分 をオ
フィー リアと重ね合わせていたようであるo ロセ ッテ ィはエ リザベスと結婚 にこぎつけるが,
彼女の生来の病弱な肉体,アヘ ン剤中毒や女児の死産 によって,その悲惨 な運命は,彼女の事
故死で幕 をとじる。 ロセ ッテ ィの彼女-の哀惜か ら,エ リザベスは霊的に変容,理想化 され,
超 自然的な恍惚で充満
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「
祝福 され し乙女」
)とい う女性像 にみご
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)少女の胸 には純粋 と処女性 の象徴 で
とに結晶する。若 くして 「
天国 に昇天 した」(
ある 「自バ ラ」がつけ られ,手 には 3本のユ リの花,美 しいブロン ドの髪 には 7つの星が きら
めいている。天国の宮殿の欄干か ら乙女は,下界 に残 された青年 と広大な空間 と次元 をへだて
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) をかわす。 うい うい しい甘美 な詩 は,後年 に措かれた
て神秘的′
な変の 「
独 自」(m̀o
同 じタイ トルの絵 にも窺われる超現実的な霊気が漂っている。
,「魂の美」 (s̀oul'sBeauty') と対比 される肉体美 をたたえたふっ くらと肥えた
ファニーは
肉感的な女性であるo彼女 を基調 とした とみ られる,ソネッ ト7
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「肉体の
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e所収)は,妖艶な性的魅惑 によって若者をとらえ,黄金
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(
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)
色の髪 を彼 に巻 きつけ,破滅においやる残忍 な魔女が奔放 に表現 されている。
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ロレンスをめ ぐるロセ ッティの女たち
8
3
「肉体の美」
アダムの最初の妻 リリス,伝説 によれば
(
エ ヴを霧わる以前 に彼が愛 した魔女,)
例の蛇以前 に,彼女はその美 しい舌で男 を惑わ し,
うっとりする髪の毛は最上の金髪であった。
この世は老いて も,彼女は相変わ らず若若 しい,
そ して,巧妙 に思いをめ ぐらして,
男 を引 き寄せて彼女が織 り込 む光 り輝 くクモの糸にみ とれ させ
そのはてに身 も心 も命 さえもとりこにされる。
バ ラとケシはこの女の花,おお りリスよ,
高い薫 りとやわ らかい接吻 となごやかな眠 りの
わなにかか らない男はいるだろうか ?
見 よ !若者の眼がお まえを見て燃 えたつ と
お まえの魔力は男 に及び, まっす ぐな首 はうなだれ
男の心臓 をただ一本の金髪が締めつける。
リリス という女性 は,ヘブライの伝説 による と,アダムの最初の妻で,誘惑者であ り,魔性
の女性であ り,あ らゆることに権利の平等 を求める強い女で
あ岩
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o ロセ ッテ ィの油彩 《レディ
・リリス≫(
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h)では,元のモデル として ファニーが起用 されている。
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「宿 の女」 ジェインとの出会いは,エ リザベ ス と婚約 中の ことである
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5
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年 の秋, ロ
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セ ッテ ィはラファエル前派 の画家 とモデルにな りそ うな s̀
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「
絶世の美女」
)探 しにか
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こつけてオクスフォー ドに芝居見物 に出かけ,ジェインを劇場で発見 した。「イギ リス女性 と
(
は思 えぬ容貌で,顔色 は青 ざめて, 目は深 く透 き通 るような灰色 を し,黒みがかった豊かな髪
6
)
は,華麗 に波打 っている」 とロセ ッテ ィは告 白 している。それ以後 もロセ ッテ ィとジェインの
交流 は,精神的にふかい関係へ と展開 してゆ く。 こうして彼 はジェインと恋 に落ちたが,責任
感か らエ リザベス と結婚す る。「
最 も純潔な男性」の一人であるロセ ッテ ィが,友人の恋人 に
求愛す ることは男の誇 りが許 さなかったのであろうか ? 1
8
5
9
年春 にジェインはウイリアム ・
モ リス (
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3
4
1
9
6
)と結婚する。 ロセ ッテ ィの 「誤 った誠実 さ」のために妻
ェ リザベスを苛立 たせ裏切 り半ば自殺 に追いやる破 目にな り,その 「
誤 った結婚」のために宿
命の恋 に落 ちたジェインを苦悶 させる結果 となる。だが,ロセ ッテ ィは,霊 肉を兼備 した女性
原型 ジェインへの妄執の愛か ら解放 されることはなかった。 ジェインもまたロセ ッテ ィの個性
に魔力 を感 じていた。
くロ レンス をめ ぐる女 の ア ーキ タイプ )
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,若 き日のロレンスの「
精神的な愛」(
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ロレンスの初期の押韻詩のなかの大部分の詩編 '
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) と 「肉体的な変」 (p̀hys
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) に関する悩み,換言すればロセ ッテ ィ的霊肉
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の詩である。
分離のギャップをうたった
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ロレンスには初恋の少女 ミリアムことジェシー ・チェインバーズ (
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天 理 大 学 学 報
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復 活」
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「
農場 の恋」
)な どには, ジェ シー- の
活純 な思慕が直接 的 に訴 えて くる ものが あ る。 だが, ジェ シー との愛 は,「エ デ ィプス ・コ ン
プ レ ックス」 (Òe
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)の 関係 を思 わせ る母 親 か らの独 占的 な母 性 に よって, ま
たその母性愛 に助長 された と考 え られ る息子 の異常 に分裂 した精神 のか らみ あ い の ため に,
「肉体 的な愛」 に よって成就 す るこ とはなか った。
しか し,即 興 詩 Vi
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「
童 貞」
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蓮 と霜 」
) な どが 示 す よ う
に,青 年の 肉体 は 「
精神 的 な愛」 だけで は満足 で きない うず く欲 情 を もって い た。 ロ レ ンス
は, ジェ シーや母親- の愛 に よって は満 た されない青年期特有 の苦痛 ,欲望 を満 た して くれな
い女性- の苛立 ちを定型詩 L̀i
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「
稲妻 」
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「
想 い出 させ る もの」
) な どに記 してい る。 また,精神 と肉体 両 面 の
神秘 的 な交感 に よって成就 され る, と くに後期 の詩 に一貫す る,真 の愛 の完成- の憧 れ を,Ì
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「ボー トのなかで」
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赤 い月の出」
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神秘 」
)な どで
何度 も絶叫 している。
彼 は ジェシーに よっては満 た され ない もの を,ヘ レン ・コー ク (
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)お よびル イ
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)に求 め ようと した。T̀heAp
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「束の間ヘ レンを訪
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) な どはヘ レンに呼 びか けた詩編 であ り,K̀
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婚約者 の手 」
) な どはル イ-ズ とい う
女性 についての きわめて官能的 な詩編 であ る。
そ して 一 種 の 機 会 詩 と み ら れ る ÀWi
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冬 も の が た り」
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「ミリアムへ の最後 の言葉 」
) は,一連 の 「ミリアム もの」 と して長 い間続 い た ジェ
シー との関係へ の 「
訣別」 を告 げる作 品であ る。
か くして 1
91
2
年春 に ドイ ツ生 まれ の霊 肉融 合 の女性 原 型 ,あの フ リー ダ (
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da) との 出
会い までの ロ レンスは,常 にア ンビヴ ァレン トで起状 に満 ちた心理状態 であ った。広大 な 「
未
知の世界」 を前 に して,充足 され ない異性 との関係 ,いわば至福 の状態 に昇華 で きず,強烈 な
欲望 を解放す るこ とがで きない詩人 の苦痛 と混乱が ,「
定型詩編」 (R̀h
y
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ms
,
)にお け
る箱 反す る愛 の詩 を作 り出 した。
くモチーフとしてのベルセポネ)
興味 ぶかい こ とに,後年, ロセ ッテ ィもロ レンス も,ベ ルセポ ネを自己表 出の主題 と した作
品 を創作 している。霊 肉一致 の女性原型 の集大 成 ともい える二人の代表作 を通 して両者 の類似
点 と相違点 を検討 してみ たい。
そ もそ もベ ルセポ ネ とは,ギ リシア ・ローマ神 話 に出 て くる最高 の支 配者 ゼ ウス (
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)
とデ メ テ ル (
De
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)の娘 で あ る。 あ る 日,ベ ルセ ポ ネ (
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neギ リシア神 話 の 名
前。 ローマ神 話 で は プ ロセル ピナ Pr
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)が, シチ リア島のエ ンナの野原 で花 を摘 んで
いた ときに,冥界 の王ハ -デス (
Had
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,別名 ブル ー ト Pl
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。 ローマ神話 で はデ イス Di
s
)
に誘拐 され る。地上へ帰 るこ とを許 されていたはず だが,地獄 の禁断の果実 「ざ くろ」 を食べ
て しまったため永遠 に地上 に戻 れ な くなった。
ロセ ッテ ィの 《プ ロセル ピナ》(
Pr
o
s
e
r
pi
ne) は, ジェ イ ンをモ デル に した絵 の代 表 的 な傑
作 であ る。油彩 の なかの プロセル ピナは, 閉 じ込 め られている地下の暗い宮殿 に照 り込 んで き
ロレンスをめ ぐるロセ ッティの女たち
85
たつかのまの光 にかつて見ていたなつか しい地上の故郷 を渇望す るようにまなざ しを向ける。
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) に閉 じ込め られたプロセル ピナのイ
デ イスにか どわか され 「
冥界の暗闇」(
メージは,夫 に縛 り付 けられ,つかのまの光の世界 しか味 わうことので きない女神 として,ロ
セ ッテ ィが見ているジェインの姿 をよ く物語 っている。絵 につけた同 じタイ トルの詩 「プロセ
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s
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r
pi
na'
)は,ロセ ッテ ィの心情 を集約 した一種の 「プロセル ピナ哀歌」 として
ル ピナ」(
(
8
) P̀r
読める。
PROSERPI
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ne!
"
「プロセル ピナ」
冷 えきった慰めをもたらすかなたの光は
この壁 に-
ほんの一瞬のことで もう存在 しない
はるか遠い私の宮殿の扉 に射 し込 んでいた。
エ ンナの野原の花花か ら遠 く離れて,
この憂 うつないまわ しい果実 を,一度 口に したため,私 はここに
幽閉された。
タ
ルタロ
ス
なつか しい地上の空か ら離れて,この冥肘の薄闇は
私 をこお りつかせ る。そ してこの繰 り返 される夜の世界は,
かつて過 ご した昼の世界 となん と隔たっていることだろう。
かつての 自分 自身か らも遠 く捨ておかれたように思われて,
ちぢ
心 は千千 に乱れなが らも,かすかな気配 にも耳 を傾 ける。
いまもなお魂 に向 き合 う心は思い こがれている。
8
6
天 理 大 学 学 報
(
私は心の耳 をそばだて,その きざ しを感 じとるの をい とわない。
絶えず こうつぶや きなが ら)
「ああ悲 しいかな,不幸なプロセル ピナ よ !」 と。
(
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他方,ベルセポネをモチーフに したロレンスの詩には,遺稿 「
バ ヴァリア りん どう」(
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「
バ ヴァリア りんどう」
だれで も家に りん どうを持 っているわけではない
穏やかな 9月,静かな悲 しい ミカエル祭 に。
ロレンスをめ ぐるロセ ッテ ィの女たち
87
バ ヴァリア りん どう,高 く暗 く,ただ暗 く
ブルー トの薄暗が りの青 く煙 る,たい まつの ように,昼間を暗 くし,
葉脈がある地獄 の ような花が まっす ぐに,その暗闇の炎 は青 くひろが り
昼の重 く白いす きま風 に,吹かれて平 らな先端 になる。
青 く煙 る暗闇のたい まつの花, ブルー トの暗青色の輝 き
デ イスの神殿 か らの黒 いラ ンプ,暗 く青 く煙 る
デメテルの淡黄色 の昼 に,暗闇,青い暗闇 を放つ
白い光が さす昼 にここに,だれをあなたは迎 えにきたのか ?
私 に りん どうをとって くれ,私 にたい まつ を くれ !
青 い,二又 になったたい まつの花で,私 を導 いて くれ
ます ます暗 くなってい く階段 を下へ,そ こは青が青 さの うえに暗 くな り
ベルセポネが行 く道 を降 りて, ち ょうどい ま,初霜の降 りる 9月に,
闇が暗黒 と結婚す る見 えない国へ
そ してベルセポ ネ自身は声だけになる,花嫁 として
見 えない暗が りが,一層深い暗黒 に包み こまれ
ブルー トの両腕の,彼が彼女 を も一度奪 い
彼女 をも一度 まった き暗闇の情熱で貫 く時
黒青色のたい まつの輝 きのあいだに,測 り知れないほ ど深 い暗 さを
その婚礼 に注 ぐ。
私 は高い茎の うえの花,そ して三つの暗い炎 を くれ,
なぜ なら私 はその結婚式 に行 き,結婚の招待客 になる
生ける暗闇の結婚で。
詩人 は 「白い光が さす昼」 (
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yり の世界か ら りん どうのたい まつ を道案内 とし
て薄暗い階段 をだんだん下 に降 りて行 く。そ こは青 い りん どうの花 の色 よりもさらに暗い黄泉
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)が執 り行 なわ
の国,冬の暗黒の地下世界である。 この暗黒 の下界で 「
婚礼 」 (
れ ようとしている。詩人 を 「
立会い人」 (
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) として,ベルセポネ とブルー トの
。上 皮」地上で誘拐 とい う手段 によって奪取 され
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ngり がそれである
「
結婚式 」 (
たベ ルセポネが,下界で 「も一度」 肉体 の交わ りによって奪取 される。地上か ら下界 に堕落 し
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) となったベ ルセポネは,その花婿 と神秘的なコ ミュニオ ン
「
堕 ちた花嫁」 (
としての男女の結合 を達成す る。か くしてベ ルセポネはブルー トと永遠の結婚 「
生ける暗闇の
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) を成就 す る。冥界の王 と女神 は,祝福 の うちに
結婚」 (t̀
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)で 「暗闇の栄光」 (G̀l
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㌦こ輝 き・詩
「
見 えない国」 (
人がそれをはっ きり見 とどける。
ロセ ッテ ィの プロセル ピナには, ロセ ッテ ィの ジェイ ンへ の愛の呪縛 を反映 してか
,「忘却
で きない,やむにや まれぬ イメージ」 (
haunt
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)が支配 してい
たo プロセル ピナの背後の壁 には う 「ツタ」の枝 は, ロセ ッテ ィとジェイ ンに 「まといつ く記
88
天 理 大 学 学 報
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Ⅳ'
) を象徴 していた。それはプロセル ピナの生命 ともい うべ き小波の よ
憶」 ち
(
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うな縮れ毛の曲線 と共鳴す るようにオーバーラ ップす る。 この作 品が持つ個人的な性格 は,刺
作 の動機 に認め られるだけでな く,作品 自体 にも明 白に認め られる。それ を証明す るかの よう
に,油彩 に添 え られ た定型詩 「プ ロセル ピナ」 は,既成 のギ リシア ・ローマ神話 (c̀
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) にみ られるコノテーシ ョンの枠 か ら寸分の逸脱 もみ られなか った。
定型詩 を脱 し自由詩の フォームで現 われたロ レンスのベルセポネは,既成の領域か らすす ん
でず りおちている。従来の神話の秩序 をね じまげることによって,新 たに根源的な生命力 を作
みち
品の基底 に吹 き込 ませ,ベ ルセポ ネがほん とうに生 きる途 を暗示 しようと してい る。従 って
「
バ ヴァリア りん どう」 は,修正 され合成 され たベ ルセポ ネ ・プル- ト神 話 「
改訂版」であ
る。それは沈潜 したムー ドのなかで真の生 (
性)の世界の可能性 を説いた詩 といえる。ベ ルセ
ポ ネの堕 落 の物 語 の小 説 版 と もい うべ き 『チ ャ タ レ イ夫 人 の恋 人 』 (
Lady Chat
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Co
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e) の行為 は,旧体制 に しがみついているひ とにとっては,確 か に堕
Lov
e
r) のコニー (
落であろ う。 しか し, コニーが既成 の人 間社会 を堕 ちる こ とに よって 「
古 い 自我」 を消滅 さ
せ,肉体的 に も精神的 にも完全 に健康 を回復 した姿 を思い出 されたい。
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)が
ロセ ッテ ィのプロセル ピナは,下界へ の全 き反擬,暗闇か らの遠心性 (c̀
強 く働 いていた。それに比べ て, ロレンスのベ ルセポネは下界 との全 き合一,暗闇への求心性
(c̀
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)が静かな信念 を もって作用 している。 肉体 の死が ロ レンスの前 に立 ちはだ
か り,切迫す る死 を自覚 しつつあるなかで うたわれた 「
バ ヴ ァリア りん どう」 は, まざれ もな
くロレンスの 「
ベ ルセポネ賛歌」 であ り, この詩人の命 の終 りの 「
結婚祝歌」 となった。
ロセ ッテ ィに しろロレンスに しろ両者は,初期 の精神 と肉体 の対立 と相克,あるいは霊肉分
衝動 にか られるように して帰着 していった。二人の芸術家の女性の移 りゆ きには,女性原型 に
み るか ぎり共通 した魂 の軌跡 が窺 える。 だが ロセ ッテ ィは 「
古 い 自我」の なかで達巡 し,「
既
婚の女」 と運命 を ともにす る道 ゆ きを用意す る ことはなか った。 もっ とうが った こ とを言 え
ば,彼 の 「
古 い 自我」のたゆたい こそが, きわめてラファエル前派的なのである。 ロレンスは
どうか と言 えば,伝統的で古典的な用語法や リズム,そ してイメジャリーか らの解放 に照応す
るかの ように, フリーダ体験 による 「
真の結婚」 の信念 に死 の床 まで も対峠 しっづ けた。 しか
もこの経験 その ものへ の誠実 さをより深 く走着 させ る新 しい言葉の探求が止 むことはなか った
のである。
反キ リス ト教的,異教の冥界 を舞台 に,è
l
e
g
y'か ら E
hy
m n'へ ,「哀歌」 か ら 「
賛歌」へ t
り
「
死 の絶望」 の淵か ら 「
回生の歓 び」へ, プロセルピナ とい う神話の女神 をモチーフに した末
と
不幸 な結婚」 に迷いつづ けた一人の古い霊魂 1
'
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新 しい天地」 を切 りさいて
廟 の詩編 には,「
生 きた もう一人の新 しい霊魂 の推移の記録 と詩人の特質が読み取 れる。
注
(1) D.
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0.バーン ・ジョウンズは,ラファエル前派の信奉者である Si
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)のことであ り,
「
眠 り姫」の主題 を扱 った連作 ≪プライア一 ・ローズ (
い
ばら姫)
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)がある。ウオーターハウス (
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49
ロレンスをめ ぐる ロセ ッテ ィの女 た ち
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-1
91
7) は,死 を予感 した女 ≪シャロ ッ ト姫≫ を主題 に した絵 を数点描 いている。 ヒロインの
感情や物語の表現 に特色がある。
(2) ポール (
Paul
)のプラ トニ ックな恋人 ミリアムが ,「
尼僧」の ように精神的で,その強烈 な
宗教心 によって普通の生活か ら切 りはなされてお り,世の中を 「
修道院の庭か楽園」 (à nun・
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) と化 して見ている女性 として描写 されていることは単なる偶然
の一致であろうか。
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'ことジェシー ・チェインバーズ (
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)
なお, ミリアムのモデルである È.
が著わ した D.
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35)は,イー
ス トウッ ド (
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wood)時代のロレンス との思い出を綴 った私記であるが, この資料 にはロ
レンスの文学的開眼の契機 となったロセ ッティの T̀heBl
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n'の詩
をは じめラファエロ前派への言及が見受けられる。
(3) TheCol
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232
-236.
(4)I
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,p.21
6.
(5) 女権拡張運動 に深 く関わ り社会運動 に も接 していたアリス ・ダックス (
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x)がモデ
ル と考えられるクララ ・ド-ズ (
Cl
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s)は,灰色の目と白い蜂蜜色の肌 とい くらかそ
りあがった上 くちびるを して,男を軽蔑 しているようなタイプの女性である。ポールが興味 を
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)にたず
もった肉感的なこの夫人は,夫 と別居 していて女性の権利の問題 (ẁo
さわっている。
(6) Da
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9.
(7) D.
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什371
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ただ し,本稿 に引用 された詩編 は,p̀r
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の英語訳である。油彩の右上 に付 け られた イタ
リア語による詩の 「
原文」は,以下の通 りである。
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6
0
1ロレンスの死後刊行 された 幅 後の詩集』(
La
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on)ならびにジュゼ ッペ ・
Po
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ms)は・友人 リチャー ト オールデ イン トン (
オリオ- リ (
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o
l
i
)が共同編集 した ものであるが,残 されたロレンスの原稿本は 2
冊あ り,「
バ ヴァリア りんどう」に関係す る詩編 も本稿で引用 した もの を含めて 4種類 の異稿
が存在する。
(
1
0) I
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, pp・9
5
8
19
6
0・F
D・
H・ ロレンス全詩集』の・
App
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x,
として同名の タイ トルの詩が収
録 されているが,この 1編は 「インキ原稿」 と 「
鉛筆原稿」か ら成 っている。それ らは浄書 さ
れのちに発表 されることになる 「
バヴァリア りんどう」 よりず っと早い段階の草稿 と考 えられ
るが,テーマやイメージを解明する手がか りを与えて くれる。
(
ll
)
ロセ ッテ ィ自身が ≪プロセル ピナ》の絵 に詩 を書 くにあたって,当時の心情 を詩人ウ イリア
Ⅶl
l
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l
i
ngham)宛の手紙 (
1
8
5
6年 3月 6日付 け)のなかで印象深い リ
ム .アリンガム (
フレインを駆使 して吐露 している。
」
「
私 はここで永久に過ごさねばならないのか/ただやるせ な くこの 『
絶望』の帝国で ?
Le
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1
9
6
5
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%7
)vo
l
.1,p.2
91を参照 されたいO