軟弱地盤と地盤改良 ※教科書p.145参照 3 表層排水工法 ☆工法説明 盛土施工前の地盤にトレンチを掘削して、地表水を排除し、同時に地盤表層部の含水比を 低下させ、施工機械のトラフィカビリティを確保するものである。 4 ☆工法の特徴 (1) 軟弱層の圧密のための上部排水層の役割を果たす。 (2) 排水層となって盛土内の水位を低下させる。 (3) 盛土および軟弱地盤対策工の施工に必要な重機のトラフィカルビリティを良好にする。 (4) 軟弱層が地盤上部にあって、しかも薄い場合には、サンドマット層の施工だけで地盤 処理の目的を果たすこともある。 トレンチの構造 トレンチの寸法は、一般に幅0.5m、深さ0.5~1.0m程度とする。 盛土に先立って、トレンチは良質の砂、砂礫などで埋戻し、地下排水溝とするのが望ましい。 またトレンチに穴あき管などを埋設する場合は、フィルタ-材で保護する必要がある。 トレンチ 幅0.50m深さ0.5~1.0m 良質の砂・砂礫 穴あき管 5 6 敷設材工法(表層被覆工法) サンドマット工法 ☆工法説明 軟弱地盤上に厚さ0.5~1.2m程度のサンドマット(敷砂)を施工機械に必要なトラフィカルビリティを確 保するために、下表で示した施工機械の接地圧や地盤表層部の支持力を考慮して決定されなければ ならない。 一般にサンドマットの厚さは表層部のコ-ン支持力qcを目安に定めることが多く、 表層部のqcに値が10~20N/cm2の場合は50~80cm 表層部のqcに値が10N/cm2以下の場合は80~120cm 表層部のqcに値が20N/cm2以上の場合の場合でも50cm程度の厚さが必要であるとされている。 ただし、超軟弱地盤や改良深さが大きく大型の施工機械を使用する場合には、サンドマットのみでトラフ ィカルビリティを確保しようとすると、厚さが大きくなり不経済となる場合がある。 その様な箇所では、表 層排水工法や敷設材工法を併用したり、施工機械の荷重分散を目的とした敷鉄板を補助的に用いる。 ☆工法説明 敷設する材料のせん断力および引張力を利用して施工機械のトラフィカルビリティを確保 すると共に、盛土荷重を均等に支持して地盤の局部的な沈下および側方変位を減じ、地 盤の支持力の向上を図ることを主目的としている。 ☆工法の特徴 敷設材としては古くから、そだ・竹枠などが用いられてきたが、入手の難易姓、施工の迅速 性などの面から近年ではジオテキスタイルなどが用いられる。 表層被覆工法は、被覆形態から、敷布(シ-ト)工法、敷網(プラスチックネット)工法、ロ- プやネットの組合せ(ロ-プネット)工法に大別される。 7 表層安定処理工法 トレンチャー式混合施工法 粉体系工法※1、スラリー系工法※2 表層安定処理工法は、軟弱地盤のシルト・粘土や河川・湖沼に堆積する低質土(ヘドロ)の固化処理 を原位置で行う改良方式です。 小分類として粉体系工法※1とスラリー系工法※2があります。 ※1、※2については下記を参照。 軟弱地盤の表層約3mまで固化処理する事が可能です。施工能力、改良品質とも◎ 8 掘削置換工法 ☆工法説明 軟弱土を掘削し良質土を埋め戻す入換工法であり、比較的施工が容易で短期間に軟弱層を 処理できる。一般に置換材としては、水浸によっても支持力が低下しにくい粗粒土を用いる。 なお、排水して施工する場合は必ずしも粗粒土でなくてよいが、十分な締固めを行う必要がある。 ☆工法の特徴 軟弱層の分布形態と掘削箇所との関係より、全面掘削置換工法と部分掘削置換工法に分けら れる。 全面掘削置換工法 盛土敷全幅に渡って軟弱層を対策が必要としない地層まで掘削し、良質土で置換するものであ り、軟弱層が3m以下と浅く、かつ盛土を短期間に完成させようとする場合に適する。 特に、計画盛土荷重のみでは軟弱層の圧密による強度増加が期待できない低盛土では、路面 が地盤の不均質さの影響を受けやすく、盛土を介して交通荷重が地盤の変形を生じさせるので、 本工法を採用することより路面の変形を防ぎ、長期にわたる安定を確保することができる。 (工法概要) バックホウの先端に取り付けたトレンチャー(撹拌機)を用いて所定の改良深度まで堀起こしながら、 改良材と原土の攪拌混合を行う地盤改良工法です。(改良深度は約3mまで。)現場の条件,環境およ び改良目的に合わせ、表面散布方式(フレコン)、スラリー連続供給方式が選べます。 (適用土質) あらゆる軟弱土(バックホウが進入出来る事が条件)に対応可能です。 ※1改良材を地盤表面に撒布し、バックホウ・スタビライザーで攪拌混合した後に転圧し、地盤を固結強化させます。 9 ※2プラントにおいて調整した改良材スラリーを施工機に圧送し、地盤に攪拌混合して表層を固化させます。 強制置換工法 ☆工法説明 図に示すように盛土自重によって軟弱層の一部を強制的に押し出し、良質 な盛土材と置換える工法である。盛土自重により押し出される土地の量と範囲は、盛土荷重や 基礎の傾斜、地盤の強度、盛土幅、軟弱層厚などが関係する。 軟弱土の押出しにあたって は、それを助長・促進するために側方に隆起した土を取り除いたり図-2のように積極的に盛土 側方部を削除する工法がとられる。 さらに、盛土にサ-チャ-ジを加えたり、必要があれば ウォ-タ-ジェットを地盤中に吹き込んで軟弱層の押出しを助長し、置換を促進させることもあ る。 ☆工法の特徴 11 本工法は施工中すべり破壊をおこした盛土の復旧対策工法として採用されることがある。 10 バーチカルドレーン工法 ■工法の概要 すべての構造物は、安定した基盤が必要である。日本の平野部には軟弱な沖積層の土地 が多く、世界でも有数の軟弱地盤国と言える。しかし、国土の狭さを考えると、建設立地に適 さない軟弱地盤を克服して有効に利用しなければならない。 軟弱地盤の改良工法には、軟弱な粘土層から水を排除することにより、圧密を促進し、地 盤強度を増加させるバーチカルドレーン工法、軟弱層を良質な砂で置き換える置換工法、軟 弱層に石灰石やセメントなどを添加混合する固結工法などがある。 バーチカルドレーン工法は他の工法と比較して、残土処理がない、工事費が安価であるな どの特徴をもち空港建設、工業用地の造成、鉄道道路の建設、人工島の建設、宅地造成な ど面的な整備において数多くの実績のある軟弱地盤改良工法である。 そのファククーは、土質の不透性、堆積物の濃度や基礎(土台)のサイズ、荷重の増加量 が大きく関係してくる。安定性を評価要素とするためには、 おそい消散は土質強度での遅延 を意味する。 沈下時間を縮めるには、間隙水のための流動路の長さを短縮することが必要である。これ は土質に普通幅の縦ドレーンを打設することで可能になる。ドレーンの存在の為、与圧され た間隙水は、最も近いドレーンに向って平行方向で流出し、ドレーンに沿って自由に排水行 動する。縦ドレーンの働きで圧密沈下期間、周期終結が顕著に減り、半分となる。これは圧 密沈下が工事段階の間に終結されることを意味する。 12 ★ドレーンの必要性 圧縮、水性飽和した土質での荷重は地盤の圧縮沈下と いう結果となり、ゆっくり間隙水を絞り出すために生じる 圧密沈下は長時間に渡り、地盤安定には、10年から50 年に、さらにもっと続くことがある。 ぺ-パードレーンによる土質安定処理は、粘土やシル ト粘土のような圧縮性のある場所や飽和土のある所で 使用される。 これらの土質は、非常に弱い土粒子や大きな間隙によって構成されており、いつも間隙水 で一杯である。荷重が、道路(用)堤防、載荷盛土、堤などが、粘土やシルト粘土のような所 に配置されると、土質は庄密沈下を生じ重大な問題を引き起こすことになる。 ★ペーパードレーンは圧密沈下を促進させる ”縦ドレーン”の打設は間隙水のための流動道の長さを縮める役割を果たす。圧力を受けた間 隙水は、最も近い”縦ドレーン”に向かって平行方向に流動する。そして、ドレーンに沿って自由 に排出し、その結果、大きな沈下促進となる。また縦ドレーンの打設は、しばしば臨時の載荷 重と併用されて施工される。 13 14 サンドドレ-ン工法 バーチカルドレーン工法は、軟弱な粘性土地 地盤中に人工のドレーン材を鉛直に設置して、 過剰間隙水の排水距離を短縮することにより、 圧密を促進する工法です。サンドドレーン工法は 連続した砂柱を土中に造成して、軟弱地盤の間隙 比を減少させ、圧密促進をはかり地盤の強度を増 加させる工法です。 施工には振動式SCP工法の打設機を、そのまま 使用することができます。バーチカルドレーン工法 は地盤改良工事で最も実績の多い確実な工法で す。 ★圧密沈下の課程 荷重における初期増加では、土質の間隙によって土中水は直ちに吸収される。この間 隙液体増加と不透水性土質の圧力は、液体が圧力を加えられたゾーンから徐々にに流 れ去ってゆくように、ただゆっくりと消散してしまう。間隙庄がゆっくり減少している時より 多くの荷重は除々に土質本来の性格に近づく。 荷重増加に従う、ゆっくりとした間隙水の放出は圧密沈下として表われる。不透性土質 に於ける間隙水圧が平衡に到達するには、増加した荷重の下では何年もの圧密時間が 必要である。 15 盛土荷重載荷工法 16 地下水位低下工法 ☆工法説明 盛土荷重を用いて圧密沈下を促進させるとともに強度増加を図り、盛土上あるいは隣 接して設置される舗装または構造物、あるいは盛土内に埋設される構造物に生じる有 害な沈下および破壊を防止するため用いられる工法である。 盛土荷重を載荷する場合は、地盤の破壊を起こさない程度で行い、地盤の支持力に 余裕がなければ、他の工法との併用を必要とする。 ☆工法の特徴 盛土荷重載荷工法は、サ-チャ-ジ工法とプレロ-ド工法に区別される。 ☆工法説明 地盤中の地下水位を低下させることにより、有効応力を増加させて軟弱層の圧密促進を図るもの である。地下水位低下の方法としてはウェルポイント、ディ-プウェルなどが一般的である。 ☆工法の特徴 すべり破壊が生じるおそれのある軟弱地盤に対して、直接載荷を行わないか、もしくは載荷重を軽 減することが可能となり、盛土をより安定な状態で施工できる。 本工法は、粘土層の上部・中間部に砂層が分布している地盤に適用されるものであるが、粘性地 盤でもサンドシ-ムが水平方向に数多く発達している場合にも有効である。 サ-チャ-ジ工法 一般の盛土部において、計画盛土高以上に載荷し放置期間後に余分な荷重を除去する。 プレロ-ド工法 構造物部において構造物の施工に先立って盛土荷重などを載荷し、ある放置期間後に載荷重 を除去する。 プレロ-ド プレロ-ド 枕 ジョイント 17 18 サンドコンパクションパイル工法 大気圧載荷工法(真空圧密工法) ☆工法説明 この工法は軟弱改良区域に不透気のビニ-ル膜などで完全に被覆密閉した後、真空ポンプを用 いて膜と地盤との間に負圧を生じさせ、大気の圧力を載荷重として地盤改良を行う。 ☆工法の特徴 1. 基礎地盤の側方移動が生じないために地盤の破壊が生じない。 2. ドレ-ンを通しての圧密による排水を効果的にするため真空ポンプを用いる。 3. 載荷の影響は改良区域のドレ-ン打込み範囲内のみ。 4. 真空ポンプの運転経費が高いので、長時間載荷することには適さない。 ☆施工手順 施工は透水性のよい敷砂(厚0.5~1.0m)の中に集水用パイプを設置し改良層の周辺を溝堀り( 1.0~1.5m)し、被覆をかぶせ、その端末部をこの溝にいれて埋戻し、空気漏れのないように注意し てシ-ルを行う。真空度を管理するには、排水ポンプのブルドンゲ-ジの他にフィルタ-層中にも 水銀マノメ-タ-を設置しビニ-ルシ-トの下をめぐらせて観測室で管理する。真空度のチェック は昼夜管理要因を2~3交替で配置する必要がある。 ☆工法説明 衝撃荷重あるいは振動荷重によって砂を地盤中に圧入し砂杭を形成させるものであ り、緩い砂質地盤に対しては液状化の防止のために、粘性質地盤では支持力を向上さ せたり沈下量の減少を図る目的で用いられる。 ☆工法の特徴 本工法の原理は、砂質地盤と粘土質地盤とで異なる。 砂質地盤 打設時の振動による締固め効果と砂の圧入による締固め効果を併用したもので、砂 質地盤の間げき比を減少させ、密度を増してせん断強さの増大を図るものである。 粘土質地盤 軟弱な粘土質地盤中に多数の砂杭が打ち込まれると、砂杭と粘性土により構成され た複合地盤となる。この複合地盤上に載荷すると、パイル砂と粘性土とはその物理的、 力学的な性質が異なるため、載荷重は砂杭に多く分担される。 その結果、粘性土に 加わる応力は軽減し、圧密沈下量も小さくなる。また、せん断強さは粘性土より砂の方 が大きいので、粘性土と置き換えた分だけ地盤の強度は増加する。 この他にバ-チカルドレ-ンと同様に排水柱としての効果も期待できる。 19 20 重錘落下締固め工法 1 2 3 4 5 6 7 ☆工法説明 重量100~250kN、底面積2~4m2程度の重錘を大型クレ-ンで10~30mの高さから自 由落下させ、その時に地盤に与えられる衝撃力と振動により、地盤を圧密し締固める工 法である。 ☆企業の工法紹介 緩衝機 振動機 ホッパ ケ-シングパイプ 重錘落下よる地盤改良工法 関西国際空港 岩砕埋立地盤の改良工事 サンドマット ウォ-タ- ジェットノズル 写真提供:日本国土開発(株) 写真提供:日本国土開発(株) 軟弱地盤 サンドコンパクションパイル 砂の栓 21 石灰パイル工法 ☆工法説明 生石灰を粘土質地盤中にサンドドレ-ン工法と同様な方法でパイル状に打設し、 生石灰の消化吸水と続いて起こる水和物生成と毛細管吸水作用により粘性土中の 含水量低下を図り、ひいては地盤の強度増加および沈下量の低減を期待するもの である。本工法は上載荷重を必要とせず、しかも短期間にその効果を発揮する長所 を有するが、滞水砂層に貫入したり、地表面に触れている場合はその効果を著しく 減ずる他、吸水作用により高熱を発するのでその取扱い、貯蔵について衛生および 保安上の注意が必要となる。 ☆工法の原理 生石灰を使用した場合の含水比低下は、生石灰が消石灰に変化する砕に生ずる 消化吸水反応と、生成された消石灰が周辺の土より吸収する毛管吸着吸水とによっ て起ると考えられている。消化吸水反応においては、生石灰重量の32%に相当する 重量の水を吸水して反応し、生石灰実堆積は約2倍になる。また、生成された乾燥 状態の消石灰は周辺土と平衡状態になるまで毛管吸着吸水を続け、湿潤状態の消 石灰となる。 ☆施工方法 石灰パイルの施工は穿孔と消石灰の充填であり、基本的な手順はサンドドレーン と同じである。 特 長 改良可能深度は、10~15mであり、重錘重量および落下高さに影響されるといわれている。 岩砕、砂礫、砂、廃棄物(ゴミ)など、広い範囲の地盤に適用。 シンプルな工法のため、他の地盤改良工法に比べて経済性に優る。 巨大な瞬発エネルギーが、地震に対して強い安定した地盤をつくる。 施工方法としては、主に次のものが用いられる。 オーガ式 オーガ式は、スクリューを取付けたパイプを駆動装置により回転させながら所定深度 まで貫入後ホッパを通して生石灰をケーシングパイプ内に投入し、その後空気圧縮で ケーシングパイプ内を圧気した状態でパイプを逆転しながら引抜くことで、地中にパイル を造成する方法である。 本方式は、施工中の振動・騒音および周辺地盤変位が小さく、また、地盤の乱れを押え ることができるという長所があるが、施工速度は遅い。 オ-ガ式施工順序 1 2 3 4 5 モ-タ- ホッパ- 生 石 灰 投 入 軟弱地盤 23 22 回転 サンドマット 静 か に 引 き 抜 く 石灰パイル 24 薬液注入工法 深層混合処理工法 ☆工法説明 塊状、粉末状あるいはスリラ-状の主として石灰、セメント系の安定材を地中に供給して、 原位置の軟弱土と強制混合することによって原位置で深層に至る強固な柱状体、ブロック 状または壁状の安定処理土を形成する工法である。 ☆工法の特徴 柱体状改良の強度は、原位置の軟弱地盤の強度に比べてかなり大きくなり、他の工法と 比べても改良強度は群を抜いている。 ☆深層混合処理工法の種類 攪拌方式 安定材 セメントミルク 機械攪拌方式 セメントモルタル セメント粉 工法分類 工法名 セメント系深層混 合処理工法 CDM 粉体噴射攪拌工法 DJM 単管式グラウト噴 射方式 CCP、MM 二重管式グラウ ト・エア-噴射方 式 JSG 三重管式水・グラ ウト・エア-噴射 方式 CJG ☆工法説明 砂質地盤中に注入材(薬液、セメントミルクなど)を圧入して固結土を造成し地盤の浸透 性を低下させる とともに、地盤の強度増加を図る工法である。 ☆工法の特徴 ●多様な種類の注入方法・材料があり、あらゆる地盤や目的に最良のものを選ぶ事ができる。 ●地盤は程よい固さで固結するので、目的を十分に達成し、後工事に支障がない。 ●コンパクトで軽量な機械と設備なので、狭い場所や高さに制限のある場所でも、自由度の高い 作業を行う事ができる。 ●数十万件の施工実績があり、どのような地盤にでも、最適な技術を提供することができる。 ●360°の方向で施工が可能であるから、他工法では不可能な向きなども十分対応できる。 石灰粉 噴射攪拌方式 セメントミルク 水ガラス系薬液 利用分野 25 26 押え盛土工法 矢板工法 ☆工法説明 主として施工中に生じる盛土のすべり破壊に対して所要の安全率が得られない場合、盛土本体の 側方部を押えて盛土の安定を図る工法である。 ☆工法の特徴 この工法を適用すると、下図のように盛土敷幅が著しく増すので、盛土のり面を緩くした場合と同様 な効果が期待できる。すなわち、押え盛土のない場合に生じる①の臨界すべり面の位置は、②のす べり面に移動しすべり面に沿う滑動モ-メントの減少や抵抗モ-メントの増大が図られるので、盛土 の安定性が向上する。 この工法は当初から設計・施工されることも多いが、施工中に著しく不安定になった盛土やすべり 破壊を起こした盛土の応急対策、また復旧対策として極めて有効であり適用例も多い。 ☆工法説明 盛土の側方の地盤に矢板を打設して、本体盛土の滑り破壊を防止するとともに、地盤の 側方変位を減じて盛土の安定を図る工法である。 この工法によって周辺地盤の膨れ上り や盛土の沈下も減じられる。 ☆工法の特徴 この工法は、タイロッド方式と自立方式に分類される。 タイロッド方式 下図に示すように鋼矢板またはコンクリ-ト矢板の上部をアンカ-でとったタイロッドと連 結し、根入れ地盤(基盤)とタイロッドにより矢板を支持する方法である。 押え盛土の有無によるすべり面 ② グラウンド アンカ- タイロッド タイロッド ① 盛土 盛土 盛土 軟弱層 控え杭 鋼矢板 ③ ①押え盛土がない場合の滑り面 ②押え盛土がある場合の滑り面 ②押え盛土部の滑り面 基盤 27 自立方式 自立方式は、矢板の先端を基盤に深く打込むことにより、土圧などの荷重を矢板の曲げ 剛性または根入れ部の横抵抗で支持する補助的な方式である。 上部に砂層がある場合 は、横方向の拘束があるので効果がある。 ただし、タイロッド方式に比べると矢板の頭部 変位が大きくなる。 根入れ地盤(基盤)とタイロッドにより矢板を支持する方法である。 28 カルバ-ト工法 ☆工法説明 軟弱層が厚い地盤で高架形式を採用すると、基礎の根入れが深くなり工費が極めて高く つくような場合に、カルバ-トを連続して並べることにより軽量で地盤の挙動に対応しう る構造体をつくる工法として用いられる。 ☆工法の特徴 橋台背面の荷重を軽減して橋台に起る変位を少なくし、橋台取付け部の盛土の沈下を 減少させる。あるいは変位を起こした橋台背面の荷重低減のために採用される。 高架形式の代替としてのカルバ-ト工法は、経済性、盛土取付け部とのなじみに優れて いるが、杭基礎を設けないので、カルバ-トの荷重に耐えられるだけの、基礎地盤処理 を行う必要がある。一般に基礎地盤処理は、プレロ-ディング工法が用いられることが 多い。 カルバ-ト 軟弱層 29 30 くい工法 ☆工法説明 盛土などの上載荷重をくいを介して基礎地盤に伝えることによって支持力の増大と沈 下の抑制を図る工法である。 ☆工法の特徴 一般的には、杭群の頭部に、コンクリ-ト製のスラブ、コンクリ-ト製のキャップ、また はジオテキスタイル、鉄筋などを組合せて用いるこの方法は、一般に工事費が高くなる ため軟弱層が数m以上の泥炭質地盤、または極めて軟弱な粘土質地盤において早期 に盛土を立ち上げる場合および取付け盛土部などに用いられることが多い。 また、盛土による不同沈下、周辺地盤の変位および交通振動の抑制という目的で用 いられる。 パイルネット工法 プレキャクストコ ンクリ-ト版 コンクリ-ト スラブ 盛土 杭頭部の連結鉄筋と ジオテキスタイル 盛土 緩速載荷工法 ☆工法説明 軟弱地盤における盛土の施工にあたっては、地盤が破壊しない範囲に盛土速 度を制御することが基本である。 緩速載荷工法は、できるだけ軟弱地盤の処理を行わないかわりに、時間をかけて ゆっくり盛土を行う工法である。 ☆工法の特徴 本工法は地盤の圧密進行に伴い、逐次変化する地盤のせん断強さの増加のみ を期待する。 したがって、圧密に要する時間は排水距離の2乗に比例することか ら、軟弱層が厚い場合は圧密に長時間を要するので、バ-チカルドレ-ン工法と 併用して用いられる。 しかし、軟弱層の厚さが薄い場合や、軟弱層中に何層もの 砂層を挟み実質的な排水距離が短い場合には、比較的圧密が早く進むので、単 独で適用される場合もある。 盛土 ☆盛土載荷の方法 盛土の施工を除々に行う漸増盛土載荷と、段階的に行う段階盛土載荷とがある。 通常は漸増盛土載荷とする場合が多い。 軟弱層 31 (1)漸増盛土載荷 サンドマットを含めた盛土施工の全期間を通じて、所定の安全率以上のものが確 保できる速度で盛土を設計する。 盛土施工期間 盛 土 高 放置期間 32 (2)段階盛土載荷 安全率が所定の安全率近くに達するまでサンドマットを含めた第1次盛土He1を 設計する。その後、盛土を放置して基礎地盤の圧密による強度の増加を図る。 舗装 盛土施工期間 Hef 盛 土 高 He2 放置期間 舗装 Hef He2 放置期間 He1 沈 下 量 沈 下 量 S S ΔS 安 全 率 ΔS 安 全 率 Fs Fs 時間t 時間t 33 34
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