技術紹介 リアトーコントロールシステムフェールセーフ用ソレノイド リアトーコントロールシステムフェールセーフ用ソレノイド※ Fail-safe Solenoid for Rear Toe Control System 瀬 川 喜 治*1 Yoshiharu SEGAWA 佐々木 裕 和*1 Hirokazu SASAKI Rear toe control (RTC) is an effective function for improvement of vehicle drivability. When the RTC system fails, appropriate friction properties are required of the RTC fail-safe solenoid, a component of the RTC system. This Digest describes our activities for optimization of the structure of the solenoid in order to attain the appropriate friction properties. 1.はじめに せ,Gear2 の回転速度を遅くすることである. G e a r2 と一体化したレシーバにフリクション リアトーコントロール(R T C)システムと を発生させることで,トー角度変化が緩やか は,車両のリアタイヤトー角度を車速やハン になり,システムフェール時のリアタイヤ挙 ドル角度の情報に基づいて左右独立に操舵制 動が安定する. 本報では R T C システムに使用されている 御することにより,通常走行~限界走行領域 にかけて操舵安定性能の向上を目的とする, フェールセーフ用ソレノイドの開発について 本田技研工業株式会社が 2013 年世界に向けて 紹介する(Fig. 2). 初めて発信したシステムである.今回開発し たソレノイドは,第2世代の RTC システムに 搭載されている. RTC システムの概略を Fig. 1 に示す.モー タの回転により,Gear1 を介して Gear2 を回 転させ,台形ネジを左右に動かし,リアタイヤ のトー角度を制御するシステムである.本シ Fig. 2 Exterior appearance of solenoid ステムにおける RTC 用ソレノイドの役割は, 2.推力の成立性 モータフェール時に急激なトー角度変化が発 生しないよう,シャフトをレシーバに接触さ 本ソレノイドのフェールセーフ構造を Fig. 3 Tire に示す.RTC システムフェール時には,可動鉄 Gear1 Motor 心と一体化させたシャフトをソレノイド内部 Gear2 に組み込んだスプリングの推力により,レシー バへ直接接触させフリクションを発生させる. 本ソレノイドは,システムフェール時に適切な Trapezoidal Solenoid thread Fig. 1 フリクションを与える必要があるが,通常走行 Receiver 時はフリクションを与えないように吸引を保 持し続けなければならない.本ソレノイドは, Schematic of RTC system ※2015 年 6 月 24 日受付 *1 開発本部 第二開発部 - 44 - ケーヒン技報 Vol.4 (2015) 限られたスペースかつあらゆる環境下の中で 最低限の接触面積で張り付き力を確保しつつ, スプリング力を超えるソレノイド推力を発生 初期吸引に必要となる対面吸引力も落とさな させ,低電流でシャフトを保持し続ける高効率 いような最適設計とすることができた. の磁力特性としなければならない.スプリング Initial examination shape 力を超えるソレノイド推力については,高推力 Optimal shape Shaft を発生させるために磁路構成・コイル線径・巻 数の設定を最適化することにより,初期検討形 Moving core 状の推力に対し,22% 向上させた(Fig. 4) . Receiver Solenoid Suction face shape Flat Friction Fig. 5 Shaft Fig. 3 4.まとめ 100 Magnetic force (N) Suction face shape Moving core Structure by which friction is applied 本ソレノイドに求められるフリクション特 Optimal shape Initial examination shape 75 Suction face shape Step 性を実現するため,初期検討形状に対し,磁路 Area ratio 22%UP 50 構造の高効率化をおこなった.磁路構造の高 効率化により,電源投入時から可動鉄心を吸 引することが可能となり,通常走行時は低電 25 流でありながら可動鉄心を保持しつつ,シス 0 Extended Fig. 4 Shaft position テムフェール時には適正なフリクションを発 Retracted 生することができるフェールセーフ用ソレノ Driving force comparison イドを確立した. 3.吸引時の保持構造設定 著 者 本ソレノイドは,通常走行時において可動 鉄心が動作しないようにスプリング力を超え るソレノイド推力を維持し続ける必要がある. このため,低電流であっても高推力を発生し 続けることができるように可動鉄心と吸引部 に対し,磁力による張り付きを利用した直接 瀬川喜治 接触構造としている. F i g . 5 に示す初期検討形状では,張り付き 今回開発したフェールセーフ用ソレノイド 力が強すぎ,フェールセーフ時にシャフトが は,非常に短い開発期間であったものの,関係 動作する応答時間が遅いという事象が発生し 部門や取引先様の知恵を集結することにより, た.この事象に対しては接触面積を減少させ 迅速に問題解決が可能となり,量産につなげ る設計をおこなった.接触面に半円状の凸形 ることができました.御協力いただいた皆様 状を付けることで接触面積を減らしながら, に深く感謝申し上げます. (瀬川) - 45 -
© Copyright 2024 Paperzz