宇宙工学講座 平成 20 年度 「宇宙環境」クイズ 回答編 5 Dec. 2008(五家) 1.答えは 100km。国際航空連盟(FAI)は、高度 100km 以上を宇宙と定義。現在約 500 50Mile(80.5km)以上を宇宙と定義して いたので、1960 年代に実験用航空機 X-15 で 8 名の軍籍パイロットと 3 名の NASA パイロ ット(ごく最近に後付で認定)が宇宙飛行士として認定されていた(旧ソ連は不明)。 名が宇宙飛行士に認定した。以前、米軍は高度 2.答えは紫外線と放射線。有害な短波長の紫外線はオゾン層で吸収されるので、その波 長域(約 200nm 以下)の紫外線を真空紫外線という。放射線は、地磁気と大気の 2 つのバ リアによって遮蔽され減衰される。 3.答えは約 10 m。ガリレオが空気に重さのあることに気付き、その弟子のトリチェリが 大気圧は水銀柱 76cm と等価であることを実測(1643 年)。(76cm に水銀の密度 13.6 をか けると約 10.3m となる) 。 またパスカルが 1465m の山頂の大気圧が低いこと (水銀柱 7.6cm 低い)を実測した。そのパスカルの名前が圧力の SI 単位となった。1Pa(Pascal)=1N/m 。 2 70-80 万年前。この磁気反転時には、地磁気強度は、完全にゼロ強度ではな く、岩石の残留磁気の測定結果から、数千年間、現在の地磁気強度の約 1/10 程度に留まっ た状態で推移したと考えられる。この反転時期には、原人(北京原人など)がいたはずである。 4.答えは約 5.答えは平均で約 11 年周期。この周期で太陽の持つ磁気モーメントの極性も反転する。 6.答えは太陽の赤道付近で平均 27 日。太陽の緯度(赤緯)50 度では 30 日。 自転周期=26.90+5.2 sin 2 φ、ここで、赤緯をφ。衛星障害で、27 日周期の現象があ れば、太陽起因の宇宙環境をまず疑ったほうが良い。筆者もこの知識で ETS-VI の地 球センサのスパイク・ノイズの原因を太陽起源であることを究明できた。 7.答えは 1.5 億 km、光速で 8 分 19 秒間の距離、この距離を 1AU(Astronomical Unit) という。地球赤道半径(約 6378km)を R で示すと約 2.4 万 R の距離。 8. 答えは 1 月。 地球公転軌道の離心率は 0.0167 で、 静止衛星の太陽電池発生電力で±3.3% の変動を与える。筆者は日本初の静止衛星(自国打ち上げでは世界 3 番目)の「きく 号(ETS-II)」を主担当し約 1 年間運用したが、この発生電力差を実感した。 9.答えは、平均 38.4 万 km、光速で 1.3 秒の距離。 2 10.答えは、地球赤道半径を R で示すと約 60R の距離。 11.答えは、35,786km。「珊瑚が悩んでいる」と暗記する(元理研の和田先生の教え)。 12.答えは、地球赤道半径を R で示すと約 6.6 R の距離(この知識はよく使う)。 13.答えは、23 時間 56 分 4 秒で、1恒星日である(24 時間は1平均太陽日に注意)。 14.答えは、88 回で、春分の前後 44 回と秋分の前後 44 回で、毎夜に地方時の深夜を中心 に挟み、最大 1 時間程度。以前、放送衛星や通信衛星(Ni-Cd 電池使用時)は、食時 に運用を休んでいたので、その時間帯を遅くずらすため、東経 110 度に静止させた(「ワ ンテン」の由来、現在はニッケル水素電池に代え、食時も運用可となっている) 15.答えは、約 3.07km/s。 16.答えは、約 10 倍。 17.答えは、約 7.79km/s(高度 185km 円軌道の例)以下。 18.答えは、約 1/3(1/2 と間違えないように注意)。 19.答えは、約 6000 個。詳細は 2007 年度末現在で 5942 機(うち静止衛星が 784 機) 国・機関別では、旧ソ連/CIS が 3248(138)、米国が 1854(272)、日本が 126(44)、中 国が 104(24)、インテルサットが 68(65)、ESA が 68(25)、仏が 51(11)、英国が 39(12)、独 が 41(4)、インドが 43(19)、カナダが 29(19)、ユーテルサットが 26(26)、インドネシアが 14(13)、伊が 23(4)、ルクセンブルグが 12(12)、ブラジルが 14(8)、インマルサットが 11(10)、 オーストラリアが 13(8)、スエーデンが 11(4)、NATO が 8(8)、スペインが 11(7)、韓国が 10(4)などである(2007 年末現在、()内の数値は静止衛星の数を示す) 20.答えは、2007 年度末で 約 784 個。多くは商用衛星で通信・放送が主である。現在運 用中の静止衛星は約 250 機以上、うち商用衛星は約 150 機以上。 21.答えは、約 30km/s。 22.答えは、木星、土星、天王星、海王星。 23.答えは、地磁気と大気が存在する条件。 24.答えは、正 12 面形に丸みを持たせた形となり、地球と月はお互いを縫うような軌跡(兄 弟衛星型)となる。いわゆるサイクロイド型ではなく、歯車型にもならないことに注意[1]。 下記の図は軌跡部分を強調している。正確にはすべて外に凸の形状となる[1]。 25.天体の半径をR、人工衛星の角速度をω、周期をTとする。衛星の角加速度の大きさ: Rω2=(2π)2(R/T2)は遠心力に比例する。 一方、衛星に働く引力はM/R2に比例するので、cを定数とし、遠心力と引力が等しい関 係式R/T2=c(M/R2)すなわちT=(cR3/M)1/2をうる。 この式に月と地球の半径比と質量比を入れると、月対地球の衛星の周期比は9対8になり、 月の衛星周期の方が長い。(月の周期の計算結果は約 分。月の半径は地球の 1/4 94.5 分に対し地球の周期は約 84.3 よりも、実際は、もう少し大きいが、その実際の値を入れても 月は約 107 分となり月の周期の方が長い結論は変わらない)。(注)最後の式で、周期は 天体の平均密度に反比例を示す。平均密度が等しい天体は周期が等しい[2] 26.答えは、20200km で、12 時間周期軌道。地上のどこでも 4 つの GPS が同時に見える。 27.答えは 2 秒。長さLの振り子の周期Tは、振幅が小さい近似で、g:重力加速度とする と、T = 2π(L/g) となる。1901 採択の標準重力加速度:g = 9.80665 [m/s2] は、π = 9.86960 と近似的に等しい。この振り子(「秒振子」という)は、古代バビロ ニアの時代から長さの基準に使われ、さらに秒振子の長さ基準案は、1670 年にフランスの 天文学者ムートン、1673 年のオランダの学者ホイゲンスの提案にデンマークの天文学者ロ エーメルが賛同[3]。その後も秒振子は、メートル法制定のメートルの長さの基準として、 政治家のタレーランがフランス革命の翌年の 1790 年に国民議会に提案し承認された。しか し、フランス科学アカデミーは、最終的に、パリを通る地球の子午線の 1/4(北極から赤道 まで)の長さの 1 千万分の 1 の定義を選んだ(1799 年)(現在は Kr-86 の波長で定義)。 1/2 2 参考文献 質問と回答の全体は、五家建夫著、宇宙環境リスク事典、丸善出版による。個々の出典は以下。 [1] ロゲルギスト著、第5物理の散歩道、岩波書店、pp.154-168、日月問答(I2 今井功) [2] 過去の「数学セミナ」の雑誌の「エレガントな答え」の欄の問題と答え。 [3] 小泉袈裟勝著、歴史の中の単位、pp.43、pp.150、総合科学技術出版
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