日本の漫画について B.M (中国) 理科二類 要旨:日本の漫画文化について、漫画の歴史、発展、魅力の三つの方面から述べる。 日本は昭和まで戦争を繰り返したので、戦争と関わりあった漫画はその時から盛んだっ た。数十年の発展に従って、手塚治虫のような漫画家たちが、日本の漫画文化を外国に 輸出し、世界のポピュラー大衆文化の一つになった。日本人の誇りとして進歩している 漫画はいつのまにか「コミック」と呼ばれてきた。漫画と日本人との関わりは思った以 上に奥が深い。これほど漫画が普及している国は日本をおいて他にはないだろう。 キーワード:紙芝居、手塚治虫、漫画文化、コミック、差別感情、雰囲気 1.はじめに 漫画は日本人の大きな娯楽の一つであると同時に有史以来、日本が海外に輸出した文 化の一つでもある。私たちは至る所で漫画を見かける。年齢、性別を問わず受け入れら れており、人々に少なからず影響を与えている。これほど漫画が普及している国は日本 をおいて他にはないだろう。私は現代漫画を“よい意味であれ、悪い意味であれ、手軽 に様々な場面を疑似体験できるもの”として位置づけ、幅広く受け入れられる背景があ るのではないかと考えた。そこで、これまでの日本の漫画について述べたい。 2.日本の漫画の歴史 日本は昭和まで戦争を繰り返した。その時、少年たちに大人気のあった『のらくろ』 は昭和 6 年(1931)に掲載され、約 50 年間連載された。作者の「子供たちに夢を与え、 励ましたい」という思いが『のらくろ』誕生の大きな力となったと言われる。また、明 治末期から続く街頭紙芝居も昭和 5 年(1930)の『黄金バット』のヒット以来、テレビが 普及するまで子どもの娯楽として定着していた。 『のらくろ』は失敗ばかりするけれど、 落ち込むことなく明るく前向きに生きる姿に多くのファンレターが寄せられ、子供とと もに一喜一憂していた。軍国主義的な思想にわかりやすい漫画という形で触れることは やはり、子供たちのその後の考え方にも大きな影響を与えたのではないだろうか。この 当時、漫画家も戦争と関わりあったところでしか漫画を描けないであったということが 分かる。 現在の漫画界では、手塚治虫の人気は「天才」、 「漫画の神様」などと形容され、手塚 治虫なくしては現在の漫画は語れないといっても過言ではない。戦争中は思想統制が行 われていたので、若者たちの、いろいろな情報を手に入れたい、発信したいという欲求 が戦後一気に花開き、次々と漫画家が現れた。戦争に負け希望がない時代、漫画に明る い未来を求めたのである。手塚作品はどの作品にも通ずる手塚流のヒューマニズムを取 り入れ、読むたびに問いを投げかける。それまでなかった演劇を基にした斬新な表現法、 内容の深さ、幅広さと面白さは多くの人々を魅了し、のちの漫画家に大きな影響を与え た。 日本は諸外国から輸入した文化が多くあるが、逆に、日本から外国に輸出した文化の 一つに“漫画文化”がある。手塚治虫が日本の漫画家たちに影響を与え、それらが外国 に輸出されるとき、手塚作品は世界のポピュラー大衆文化に重要な影響を与えていると いえる。 1 3.「漫画」と「コミック」のニュアンス 日本人の多くは、日常の中で漫画のことを何の気なしに「コミック」と呼ぶ。書店に 行っても、漫画が置かれている所は「コミックコーナー」であり、漫画専門の出版社は 「コミック出版社」である。マンガ本と呼べばいいものをわざわざ「コミック雑誌」と 呼び、中には、漫画家と呼べばいいものを「コミック作家」などと呼んだりするメディ アもある。では、いったい漫画とコミックの間にどんなニュアンスがあるのか。考えて みれば、それは、日本人が「漫画」という日本語の言葉に対する差別感情が根底にある のではないだろうか。 昔から日本の大衆文化の中で、小説家や詩人に対して、漫画家は下等な職種として扱 われ、「漫画的」という言葉は、「幼稚」の同義語となってきた。そのときの漫画家や 漫画の編集者たちは、クレジットカードを作る時も相当悩んでいた。こういった世間の 偏見をなくすために、漫画商品を扱っていた人々は、やむを得ず「漫画」という言葉の かわりに「コミック」という耳触りのいい言葉を多用するようになってしまったのでは ないだろうか。よって、現在の日本には、「漫画」という言葉よりも、「コミック」と いう外来語が一般化されてしまった。 しかし、実は今日、日本の漫画は海外で素晴らしい評価を受けているのだ。アメリカ の「COMICS」より日本の「MANNGA」のほうが人気を得ているのである。従って、 私の考えでは、日本人は自国が生み育てたこの大切な大衆文化を、もっと誇りをもって、 「コミック文化」ではなく正真正銘の「漫画文化」を世界に輸出し、日本国内でも自信 をもって誇ったほうがいいのではないだろうか。 4.なぜ漫画が好きなのか よく電車で見られる風景であるが、漫画一冊を持って興味津々と読んでいる人は小学 生だけではなく、普通の会社員や大学生もたくさんいる。年齢と性別を問わず漫画を好 むのは日本人の共通点と言っても過言ではないだろう。日本人はもちろん、日本にいる 外国人も漫画に目がない人は少なくない。では、なぜ漫画がそんなに好まれているのか。 考えてみると、人びとは漫画を読むとき、いろいろな情報を知りたい、現実では有り 得ない世界観や現世では感じられない雰囲気を疑似体験したい、などのさまざまな欲求 を持っている。自分とは違う人生や他の人の生き方を見るのは楽しいであろう。楽しさ の上に、胸にグッとくる場面とか思わず感情移入しまった場面なども漫画の中にはたく さんある。 「その通りだ」と心から感じられる気がして、気持ちいい感じがいつもする。 それに、漫画というものは、小説のようではなく、主人公の姿や事態の発展を絵で、読 者の目の前に生き生きと表すことができる。従って、漫画を読むときは十分楽しめる。 また、漫画は映画や小説よりも短時間にどこででも読めるので誰でも気軽に手に取りや すい。そして手元に残し何度も読むことができる。若者にとっては、漫画の影響力はも っと強いと思われる。漫画に良く出ている言葉は友達の間で流行っているから、時代遅 れになりたくない人も少なくないだろう。 しかし、あまり漫画に夢中になると、漫画の世界を現実と混同してしまい、現実から 逃避したくなるのではないか。確かに、絵で直接的に表現するほうが、活字を読んで想 像するよりも現実との区別が付きにくいので、人々が本や映画などで暇をつぶす理由の 一つは、一時的に現実の騒ぎから逃げ出したいからではないだろうか。そうすると小説 も漫画も映画も現実逃避というところでは共通しているのである。大切なことは逃避に しろ理想にしろ、漫画を漫画として楽しむことが大事だと思われる。 2 5.おわりに 漫画は決して良いものばかりであるとは言い切れない。最近暴力シーンがたくさん出 ている漫画もあるので、未成年の子供の成長に不利なことをもたらす恐れもあると思わ れる。しかし、それはただ単に漫画を悪いものとして否定するのではなく、良い面と悪 い面を知っていかなければならない。法律で取り締まるより、社会が追放していき、育 てていくという考えに私は強く共鳴する。 日本の漫画文化は、思った以上に奥が深いものであり、本稿で触れたのはそのほんの 少しであったかもしれない。人々が生きている時代を顧みるとき、漫画は時代を知る、 身近で分かりやすい道しるべであることを、強く感じられるのではないだろうか。 参考文献: ·http://masaro.at.webry.info/ 明るい出版、漫画村 (2005 年 7 月下旬のアクセス) ·『架け橋をつくる日本語 中国武漢大学の学生たち』 文芸社 3
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