図書館の YA サービスの可能性

国際フォーラム
図書館の YA サービスの可能性―ハンブルク青少年図書館(Hoeb4U)と日本の事例から
(2012.7.4(水)14:00~
於 ゲーテ・インスティテゥート・ヴィラ鴨川)
◇講演『Hoeb4U(ヘップフォーユー) コンセプトについて』
話し手:ジャネッテ・アッハベルガー ハンブルク青少年図書館(Hoeb4U)館長
Hoeb4U は、ハンブルクの図書館組織(中央、分館32、その他)の一つである。
数年前、ドイツ全国で 13~14 歳の図書館離れが問題となった(学校とは密接な提携があり、学校からの訪問利用はある
が、それ以外の訪問がない)。そこで、彼らを再び図書館に呼び寄せることを目的として、2005 年(7 年前)にオープン。対
象者は、14~24 歳までの青少年。
開館時間は午後。これは利用者の大半が学校に行っていることと、職員の事情による。研修生・インターンが毎年4~6
名おり、彼らは午前中は勉強があるからである。
所蔵は 15000 点。そのカギは、コミック漫画を含む印刷物が50%、残り 50%が視聴覚資料である。
コンセプトの特徴として、“学習用のもの”を避けている。それは、他の図書館で間に合っている、と考えるからである。
また、図書館を学校の一部のように感じる人がいるので、学校とは違うことをアピールしている。
CD、オーディオブック、DVD(映画・ドラマ)、ボードゲーム(ターゲットに合わせ選びぬいたもの)、雑誌 40 誌(映画・スポーツ・
生き方・ファッション etc.)、ゲーム類(ターゲットの娯楽用に合わせている―全てはムリだが、ニーズに関心を持つことが大
事)など、ターゲットにあたる青少年の、求めるメディアを探る。ただし、年齢制限は厳格に守っている。
職員についてであるが、フルタイムの常勤 4 名に加え、トレーニー達が 4~6 名。3 年間の図書館での職員研修のうちの 2
年目の人が来る。なので、トレーニー達は毎年変わる。年齢は 18~22 歳で、責任を持って運営する事を学ぶ。研修職員の、
自立的で自己責任に基づく実践的活動。目標となる利用者グループ、のための、目標となる利用者グループで、対等な視
線を得られる。また、堅苦しいのとは違うスタイルを、ということで、名札は全員名前だけにしている(名字は書かない)。
アピール方法としては、ヴァーチャル青少年図書館(HP)での、新着情報・イベント案内。
また、Hoeb4 を定着させることを目標として、ロゴを作り、HP や職員制服(T シャツ)に使ったり、市内の図書館にてコーナー
を作ってもらったりしている。意味がわからなくても、このロゴがあれば自分向けのコーナー、とわかってもらえればいい。
Hoeb4U の“H”はハンブルク、“oe”は公共の、“b”は図書館、“4U”は あなたたちのための、という意味、つまり、あなたた
ちのための図書館、だからである。
また、HP だけでは十分ではないと考えて、フェイスブックも利用している。フェイスブックは、効率的に親密なコミュニケーシ
ョンがとれる。さらに、ツイッターで新着情報を発信。実際に利用者があり、有効である。
所蔵の印刷資料としては、コミック・漫画を活用している。コミック・漫画といえば、以前は、スイス・ベルギーなどのものを指
していたが、だんだん日本のものを指すようになった。現在は、韓国・ドイツのものも含まれる。図書館内でのシェアは非常
に大きく、コミックだけで埋めることも可能なほどである(そこまではできないが)。常時 1000~2000 冊で、入れ替わりが
激しい。
漫画以外の、関係したメディアも関心を呼んでいる。コミック・漫画を書いてみたい人のための本や、コスプレ、漫画を日本
語で読みたい人のための日本語教本、訳付きの(吹き替えでない)アニメ・映画や、漫画・ノベル・ゴシック、雑誌(アニメディ
ア・ピーチなど)、自由ポップ、自由カルチャー。雑誌は、職員としても、次の購入の資料として役立っている。(他に購入のヒ
ントになるような助けは少ない)
資料は、日本のものが 95%を占めており、残りはスーパーヒーローコミックやグラフィックノベル(スパイダーマンやシンプソ
ンズなど)である。
蔵書構築は、雑誌、青少年利用者からの希望(リストを持ってきてくれる人もある)、コミック店・出版社・販売店との連携、
などを参考に、若手職員(研修生)も参加して決めるが、この若手職員の参加が重要で、とても役立っている。
イベント(コミック・漫画の)は、メディアごとのイベントをしている。
作家を呼んでのイベントはあまり人気がない。よっぽど有名な作家ならよいかもしれないが、いわゆるお話拝聴ではなく参
加型イベントが人気。イラストコンクール(その場で 1 時間くらいで描いてもらう)、漫画ワークショップ(作家をよび、テクニカ
ルだけでなく、出版に至るまでの体験・経験談を話してもらう)、オーディオブック・コンピューターブックのワークショップも人
気。また、コスプレも人気がある。これはプロの写真家に撮影してもらうイベントである。ドイツではコスプレの衣装は簡単に
買えないため、ほぼ自作であり、そのために裁縫を習う人もいる。
マーケティングにおけるコミック・漫画の利用として、人気の高い、漫画の登場人物(フランツィスカ・ナディーン・マックス)を
HPやハガキなどに使用。これは、トレーニーのアイディアである。宣伝・配布資料(チラシ・ポストカード・ポスター等)にもこの
キャラクターを使っている。またHPなどで、職員も漫画で登場するようにしている。
他の図書館の、漫画をテーマにした例としては、ドレスデンの漫画ラウンジ(漫画に特化したコーナー。日本の漫画を集中的
に見ることができる)、ケムニッツのアニメナイト(定期的にコスプレイベントを開催)などがある。
2005 年のオープンから現在 7 年めであるが、Hoeb4Uは成功を収めたと言ってよいと思われる。
重要なのは、以下の二点。
◎青少年にトレーニーになってもらう
◎来なくなった青少年を再び図書館に向かわせた
青少年トレーニーの起用は、熱意のある質の高いサービスの提供につながったし、遠くからでもハンブルク市内どこでも共
通でカードを使えるので来てくれる。
◇パネルディスカッション
ジャネッテ・アッハベルガー ハンブルク青少年図書館(Hoeb4U)館長
小川剛 京都精華大学国際マンガセンター研究員
大西敏之 南丹市立中央図書館館長/京都府図書館等連絡協議会会長
土井安子 財団法人大阪国際児童文学館主任専門員
来館者に添うことが大事。
コミック・漫画の購入基準に関する質問に対してのHoeb4U館長の返答は
「一義的にはある。大人(だけ)向け、というものは買わない。試しに読んでみて採用しない、ということもある。ハンブルク
の他の分館の司書に、Hoeb4Uが把握している情報を与えて、その館の購入の参考にしてもらうこともある。」
※配布資料より
ハンブルク青少年図書館 Hoeb4U
Hoeb4U(ヘップフォーユー)
b4U
コンセプト
14 歳から 24 歳の青少年を対象にしたマルチメディア図書館。自由時間向けの資料を提供。
「ジュニア企業」というモデル(青少年が運営する会社)
研修生の自立した、自己責任に基づく、実践重視の仕事
(ターゲットからターゲットヘ/青少年による青少年のための図書館)
基本情報
設立
2005 年 12 月
開館時間
火曜日から金曜日 14-19 時、土曜日 12-16 時
収蔵資料
約 15.000
>50%書籍など印刷媒体/50%AV-媒体
>自由時間向けの資料に特化!
収蔵資料
本、CD、DVD,ブルーレイ、ボードゲーム、雑誌、コンピュータ・ゲーム
その他のゲームXbox360、ニンテンドーWii、ニンテンドーDS、
ニンテンドー3DS、PS3、PSP
2011 年の統計
貸し出し数:186.18/来館者数:49.599
設備
有料インターネットステーション3箇所/OPAC ステーション3箇所/
RFID-自動貸出システム/無線LAN
職員
常勤職員4名/研修生、インターン4~6名
イベント
ワークショップ、コンクール、インターアクティブな催し(ヴァーチャルなものも含む)等、
積極的に参加する形のイベントが中心。
実例:マンガコンクール、ゲームワークショップ、ブックスペース、コスプレなど
ヴァーチャル青少年図書館
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