宮城県警察の保護の取扱いに関する訓令の制定について

共
県 本 部 各 部 課 長
県 下 各 警 察 署 長
00
00
10
永年
宮本生企第156号
殿
平成17年3月10日
宮 城 県 警 察 本 部 長
宮城県警察の保護の取扱いに関する訓令の制定について(通達)
宮城県警察の保護の取扱いに関する訓令(平成17年宮城県警察本部訓令第1号)を別
添のとおり制定し、平成17年4月1日から施行することとしたので通達する。
なお、この訓令の制定に伴 い、「宮城 県警察 保護 規程の制定につ いて(通達)」(昭 和3
5年 7 月19 日付け宮 警本防 第12 29号) 及び 「仙台保護所運営要綱 」( 昭和36年 6
月30日付け宮警本防第993号)は、廃止する。
記
第1
制定の趣旨
警 察官職 務執行法 (昭和 23年 法律第1 36 号。以下「警職法」と いう。)第3条 の
規定に基づく保護は、宮城県警察保護取扱規程(昭和35年宮城県警察本部訓令第8号)
により運用してきたところであるが、時代の変遷による価値観の多様化等により、被保
護者の権利意識等は複雑・多様化の傾向にある。したがって、保護の適正化を図るため、
保護の定義を明文化し、保護の取扱い手続、方法等に関する基本的な事項を全面的に見
直し、新たに宮城県警察の保護の取扱いに関する訓令を制定したものである。
第2
運用上の留意事項
1
趣旨(第1条関係)
警察における保護の対象は、本来、警職法の規定による保護のみであるが、児童福
祉法(昭和22年法律第164号)の規定による児童の一時保護、少年法(昭和23
年法律第168号)の規定による同行状を執行した少年の一時収容及び少年院法(昭
和23年法律第169号)の規定による少年鑑別所から逃走した者を連れ戻す場合の
一時収容、また、売春防止法(昭和31年法律第118号)及び婦人補導院法(昭和
33年法律第17号)の規定による引致状又は収容状を執行した者について、この訓
令では警職法に基づく保護と同様の取扱いとし、これに関する取扱いの手続、方法等
を定めるものである。
2
保護の責任(第4条関係)
警察署長は、保護の全般についての責任者であることを明示するとともに、保護の
直接責任者である保護主任者には、生活安全課長又は刑事生活安全課長、保護主任者
不在の場合の職務代行者には、副署長、刑事官、次長等を指名することとし、責任の
所在を明らかにすることとする。
3
(1)
保護の着手と報告(第5条関係)
「保護を要する者を発見した場合」とは、警察官が自ら発見又は届出を受理した
者が保護を要する者と認めた場合をいう。
(2)
「状況に応じた必要な措置」とは、交番・駐在所に運ぶなどの応急措置と、現場
の関係者からその事情を聴取したり、家族等の住居などを調査したりするなど現場
及びこれに直結して行われる必要な措置をいう。
(3)
これらの措置を執った場合、すべて保護主任者に報告し、その指揮を受けて処理
し、保護カードを作成し、保護のてん末を明らかにしておくこと。
4
保護の場所についての指示等(第6条関係)
被保護者の区分に応じ、適当と認められる保護の場所の基準を掲げたものであるが、
それ以外に民家、駅構内等現場付近において保護することが適切であると認められる
ときは、その施設の管理者等の同意を得て、警察の責任で、その場所において保護す
ることができるものとし、その者が病人、負傷者等である場合には、必要により医師
の診断、治療を求めるように配意しなければならない。
5
保護カード(第7条関係)
(1)
第6条第1項各号及び第20条の保護室に関する特例の場所に保護した被保護者
すべてについて、保護カードに記載するものとする。
(2)
保護カードは、保護に着手した警察官又は当該保護について事情を把握している
警察官が記載するものとする。
6
被保護者の住所等の確認措置(第8条関係)
(1) 「所持品等について、その住所又は居所及び氏名を確認するための措置を執る。」
とは、所持する財布、衣服のネーム、衣服のポケット内の名刺、定期券等について
住所等を認知することであり、これらの措置は、警職法第3条第1項第2号に掲げ
る病人、負傷者等については、本人の承諾が必要であることを明示したものである。
(2)
住所等の確認措置は、保護の場所で、保護主任者の指揮を受けた上、行うのであ
るが、被保護者を留置場内に設けてある保護室において保護する場合には、留置主
任者の指揮を受けることとする。
なお、第10条及び第14条に規定する場合の措置も、留置場に保護室を設けて
ある場合で、保護室に保護する場合は、留置主任者の指揮を受けることとしたもの
である。
(3)
本条以下の「立会人」については、被保護者が女子である場合には、可能な限り
成人の女子を立会わせるようにしなければならない。
7
事故の防止及び危険防止の措置(第9条・第10条関係)
(1)
警察官は、保護に当たって、被保護者が負傷、自殺、火災、その他自己又は他人
の生命、身体又は財産に危害を及ぼす事故を起こさないように注意するとともに、
容態の急変等異常の発見に努め、異常を発見した場合は必要な措置を取ること。
(2)
被保護者を搬送する場合は、被保護者の身体の安全と受傷事故に十分配意し、適
切な手段・方法により行うこと。
また、車両を用いる場合は、被保護者の容態の急変等に対応できるようできる限
り複数で行うこと。
(3)
危 害を防 止するため、「被保護者の行動を抑止する ための手段」と は、通常被 保
護者の腕、肩等を抑えるなどの手段、保護室にあっては施錠するなどをいうもので
あるが、場合によっては、手錠等を使用する以外に制止することができない場合も
あり得る。
しかし、これらの手段は、危害を防止して適切にその者を保護するために、真に
やむを得ず行われるものであるが、直接身体について行動を制限することであり、
特に手錠等は、被疑者に使用されるものであるという一般の観念もあるので、その
使用は、真にやむを得ない場合に限るのはもちろんのこと、使用に当たっては、被
保護者が負傷することのないように留意するとともに、公衆の目に触れないように
するなど配意して行わなければならない。
8
(1)
危険物等の保管(第11条関係)
危険物の保管に当たっては、法令によって所持することを禁止されている物を除
き、一般的には、相手方を説得して任意に提出させるものとする。しかし、正常の
判断能力を欠いている者が、危険物を所持しているときは、保管することができる
こととする。
この場合においても衣服の上から触るなどの方法によって確認することとし、身
体検査にあたることのないようにするとともに保管するものの範囲も事故防止上や
むを得ないものに限ることとする。
(2)
第2項の「紛失又は破損するおそれがあると認められる現金その他貴重品」とい
うのは、ポケットに無造作に入れてあるなどの状態で所持している現金等をいい、
これらを保管する場合は、警職法第3条第1項第2号に掲げる被保護者については、
その承諾を得て行わなければならないということである。
(3)
保管した金品については、数量その他を保護カードの所定欄に記載しておかなけ
ればならない。
9
(1)
保護勤務員の配置及び措置(第12条・第13条関係)
保護に当たる警察官は、保護主任者が指定するが、留置場内に設けた保護室に保
護する場合は、留置主任者が所要の警察官を保護勤務員に指定することとした。
(2)
留置場内に設けた保護室に被保護者を収容している間の保護についての責任は、
留置主任者にあることを明確にした。この場合でも家族等への手配、引渡しなどは、
保護主任者が行うものとする。
なお、当直時の取扱いは、すべて当直主任が行うものとする。
10
(1)
異常を発見した場合の措置(第14条関係)
「発見してなお保護する状態にないかどうかを確認する」とは、逃走した者を手
配して連れ戻すのとは本質的に異なり、保護を要すると思われる状態のまま、その
場所を離れたときにその所在を発見して、その者の状態を確認することであってそ
の結果酔いがさめていたなど保護を要する状態がなくなっているときは、それ以上
の措置を必要としないが、保護の要件を満たしている場合には、再び保護に着手す
ることとする。
なお、この措置を執ることを必要と認める時間的、場所的範囲等については、保
護の場所を離れたときの状態などから個々に検討判断されなければならないが、逃
走被疑者の手配と同視することのないよう配意すること。
(2)
前項により再度保護をした場合、その保護の場所又は時間に近接してなされた場
合を除き、後の保護に着手したときから、別の保護の時間が進行し、前の保護は、
保護の場所を離れたときに、解かれたものと考えて処理すること。
11
関係機関への引継ぎ及び保護の解除(第16条・第17条関係)
(1)
警察の行う保護は、本来の保護責任者に引き渡すまでの応急措置であるから、保
護の後、速やかに連絡して家族等に引き渡すのは当然であり、引取人がない場合で
も保護の必要性がなくなった場合は、直ちにその保護を解除しなければならない。
(2)
迷い子等で身柄引取人が容易に見つからない場合には、保護許可状を得てそのま
ま保護を継続することなく児童相談所又は福祉事務所に通告して、これに引き継ぐ
ようにすること。
12
保護室に関する特例(第20条関係)
(1)
「やむを得ない事情がある場合又は保護のため適切であると認められる場合」と
は、すでに保護している者と同室させることが不適当と認められる者を保護する場
合又は迷い子、家出人等で保護室の雰囲気になじまない者を保護する場合等をいう
のであって、これらの場合には、待合室、相談室、補導室等において保護しても差
し支えないものである。
(2)
「 留 置 場 内の 室 ( 留 置室 を 除 く 。)」 とい う の は 、 留置 場 内 に設 け ら れ た 保 護 室
をいうのであって、泥酔者、酩酊者、精神錯乱者に限り、例外的にここに収容する
ことができる。
13
許可状の請求等(第21条―第23条関係)
(1)
簡易裁判所裁判官に対する保護延長許可状請求書、簡易裁判所に対する保護通知
書及び保健所長に対する通報書の様式を統一した。
(2)
保護延長許可状の請求者は、警察署長の指揮を受けて保護主任者が行うこととし
た。
(3)
簡易裁判所への保護通知は、保護カードに記載したすべての被保護者について行
うものとする。
14
児童の一時保護等(第24条関係)
(1)
一時保護をした児童、緊急同行をした少年等のうちには、その性格、年令等から
見て保護室になじまない場合もあるので、これらについては待合室、相談室、補導
室等において保護することも検討すること。
(2)
前 記(1)の 場合を除き、 本条に規定す る者について は、同行状、収 容状等の執 行
中に一時保護室に収容するものであるから逃走しないよう施錠することも差し支え
ないものとする。
(3)
本条第1項各号に規定する者が逃走したときは、当然これを捜索しなければなら
ないのであって、その限りにおいて第14条第2項は準用する余地はないものであ
る。
15
被保護者が、非行少年であることが判明した場合等の措置(第25条関係)
本条第2項の規定による児童相談所等への通告は、保護者がいない場合などの第
16条第3号の規定による通告とは異なり、保護者に監護させることが不適当である
場合に行うものである。
16
被保護者と犯罪の捜査等(第26条関係)
被保護者と被疑者の取扱いを明瞭に区別し、保護に名を借りて、犯罪の捜査をする
ことのないよう、被保護者が犯罪者等であることが判明するに至った場合にも、保護
を要する状態にあると認められる間は、証拠の保全上やむを得ない場合のほか、被保
護者について取調べなどをしてはならないものである。このことは、第25条第1項
の規定による非行少年等であることが、明らかとなった場合についても同様である。