会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案の概要 第1

会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案の概要
第1
制定の趣旨
会社計算規則(平成18年法務省令第13号)は会社法(平成17年法律第
86号)とともに平成18年5月1日に施行されたところ,その後の企業会計
基準委員会における会計基準等の変更に伴い,会社計算規則において対応を行
うべき事項が生じている。
また,会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)及び会社計算規則に
ついては,平成18年5月1日の各省令の施行以降,関係各方面から様々な見
直しの要望が寄せられている。
本改正省令案は,このような事情を踏まえて,会社法施行規則及び会社計算
規則の改正等を行おうとするものである。
第2
1
改正の内容
会社法施行規則関係
(1)
「特定関係事業者」の定義
当該株式会社に親会社が存しない場合に対応するための修正を行うも
のである(2条)。
(2)
議決権行使書面等の行使期限
株主総会等における議決権行使書面等の行使期限を「日」単位で計算
することを明確化するものである(9条・63条・153条・172条)。
(3)
会計監査人選任議案に関する株主総会参考書類
当該候補者につき開示を要する非監査・証明業務に係る報酬等の範囲
を明確化するものである(77条)。
(4)
事業報告に記載すべき「株式会社の現況に関する事項」
他の会社の株式等の「処分」についても,その「取得」と同様に,公
開会社における事業報告の開示事項とすることとするものである(12
0条)。
2
会社計算規則関係
(1)
株式交付費等の資本控除の見直し
新株発行の場合等における資本金等の増加額に関する「株式会社に対
して払込み又は給付をした財産の額 」(会社法445条1項)の算定にあ
たって,株式交付費等を控除することができる旨の規定(37条1項2
号,40条1項3号,41条1項2号,53条1項1号ハ,74条1項
2号,75条1項3号)を,当分の間,適用しないこととするものであ
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る(改正案附則11条)。
(2)
組織再編行為の計算規定の見直し
イ
共通支配下の取引等のうち子会社と孫会社の合併等の会計処理
いわゆる子・孫会社間の吸収合併についても,親・子会社間の吸収合
併におけるのれんの計上・株主資本の算定規定の適用対象となる(た
だし,少数株主持分の取扱いは異なる)ものとして整理するものであ
る(改正案14条・58条2項4号 )。親・子会社間の分割型吸収分割
におけるのれんの計上・株主資本の算定規定についても,同様の整理
を行う(改正案18条・63条2項4号)。
ロ
共通支配下の吸収合併等における抱き合わせ株式の会計処理
共通支配下の吸収合併における抱き合わせ株式(存続会社が有する消
滅会社の株式)について,消滅会社の株主資本の額から抱き合わせ株
式の帳簿価額を控除した上で,のれんの額・資本金等の変動額を算定
することとするものである(改正案13条1項・58条2項2号)。共
通支配下の取引等の会計基準が適用される新設合併についても,同様
の整理を行う(改正案22条1項・77条)。
ハ
共通支配下の吸収合併等のうち無対価のものの取扱い
共通支配下の無対価の吸収合併について,現行61条と同様の資本金
等を適当に定める会計処理をすることを可能とする(ただし,消滅会
社の資本金・資本準備金は存続会社のその他資本剰余金となり,消滅
会社の利益準備金は存続会社のその他利益剰余金となることとする)
ものである(改正案59条 )。新設合併(改正案78条)及び無対価の
吸収分割についても,同様に資本金等を適当に定める処理を許容する
(現行66条・改正案64条)。
なお,これに伴い,共通支配下の取引等のうち親会社と子会社の分割
型吸収分割の規定の適用範囲(18条)についても調整を行う。
ニ
吸収合併等において自己株式を処分した場合の取扱い
吸収合併・吸収分割・株式交換の際に,自己株式を処分し,吸収型再
編簿価株主資本額が零未満となる場合に,払込資本に相当する金額を
新株対応部分・自己株式対応部分に区分して計算することに対応する
現行計算規則の規定(現行59条2項等)を削除するものである。
ホ
資本金の増加限度額についての規律の調整
増加する資本金等の額を複数の部分に分けて計算することとしている
現行計算規則の規定(現行60条1項1号ロ・ハ等)につき,これら
の部分を合算した上で,増加する資本金等の額を計算するものとする
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よう改めるものである(改正案58条2項3号等)。
へ
吸収合併等の株主資本の算定規定の条文構成の整理
吸収合併に際しての株主資本の算定規定に関して,①パーチェス法が
適用される場合(現行58条 ),②共通支配下関係にある場合(現行5
9条 ),③親子会社間の合併等の場合(現行60条 ),④持分プーリン
グ法が適用される場合(現行61条 ),⑤その他の場合(現行62条)
と,適用される会計基準の類型ごとに条を分けている現行計算規則の
規定について,前記①∼③・⑤の類型の規律を1条にまとめて規定す
ることとするものである(改正後58条 )。吸収分割に際しての株主資
本の算定規定についても,同様の整理を行う(改正後63条)。
(3)
分配可能額等の算定に関する規定の見直し
剰余金の額(会社法446条)及び分配可能額(会社法461条2項)
の算定における,会社計算規則44条の規定により増加したその他資本
剰余金の額の取扱い等に関し,所要の修正を行うものである(178条
・186条)。
3
施行時期
施行時期については,来年1月ころを予定している。
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