聖十字架教会ナント

№1 人間とは何か
○人間と動物の違い
言葉、思考、道具、社会、政治、経済 =文化←自己を超える運動(本能)
○「自己を越える運動」の2側面
否定面:不安定、不満足、抑制の欠如
肯定面:独立した存在、自由、想像
純粋,新鮮,自己充足
○人間を人間たらめる「知識」
自分を自分で意識する
自覚、反省
自分と対話
→ 自己を越える運動
自分を変更
○人間性への問いの非完結性
その時代の状況
個人的状況
↓
人間性への問
変更
↓
問に応じた答
№2 現代社会と青年期
○青年期の特徴
・心理的離乳:
「第二の誕生」(ルソー)…親からの精神的自立
・不確定で不安定な心
強い自己意識,感受性
感情の起性
相反するものの同居
・マージナル・マン(レヴィン)
子供でも大人でもない中途半端な状態
○青年期の重要性
自分自身に対する葛藤
・能力の発達(肉体的、知的、感性的)→ 自己形成・現実の基礎作りの時期
○青年期の存在:歴史,文化により規定
○現代社会と青年
知識、技能の高度化
社会の多様性
仮想空間の拡大
モラトリアム人間
ピーターパン・シンドローム
青い鳥症候群
○青年と社会
自己形成:個人の実現と社会化の両立
№3 環境と適応
○環境…生物を取り巻く諸条件
人間の場合:自然環境と社会環境
○適応…生物が環境と調和すること
人間の場合:積極的、主体的に適応可能
○自我の目覚め
自己の発見
他者=拘束者
(第二反抗期)…既成の価値・文化への反発
○友人と異性
開かれた自分の関わる相手:敬愛,信頼,愛情,競争,共同
○第二次性徴
性差
生物学的性差(先天性)
:第一次、第二次
心理学的性差(後天性)
:文化的、社会的
№4 パーソナリティーの形成
◎個性化の意味
○個性化…個人の独自性の形成
○社会化…社会の習慣、ルールの学習 = 文化的伝統の継承
○自我(自己意識)ego self consciousness
・意識された自分
・個々の規定
・すでにある
○自己…無意識
○パーソナリティー(人格)
その人の人となり,その人らしさ
◎マズローの欲求の五段階説
・生理的欲求
↓
生理的欲求
・安全の欲求
(生存に不可欠)
↓
・所属と愛情の欲求
↓
・自尊の欲求
社会的欲求
↓
(社会生活、自己実現に必要)
・自己実現の欲求
○欲求と防衛機制
欲求不満
合理的解決
攻撃反応
防衛機制
抑圧・合理化・同一視・投射・反動形成
逃避・退行・おきかえ(代償・昇華)
№5 豊かな人間性
青年期…生理的、精神的激動の時,葛藤を通して人間形成
○アイデンティティ(自己同一性)の確定
・自分が自分であること:個人的、社会的に自分に責任が持てる
自己のかけがえのなさの発見
自分の人生に納得
○エリクソンのライフサイクル(人生の諸段階)
Ⅰ 乳児期
(得る−返す)
Ⅱ早期児童期 (保持−放出)
Ⅲ 遊戯期
(まねる,遊ぶ)
Ⅳ 学童期
(作る、まとめる)
Ⅴ 思春期
(アイデンティティ)
Ⅵ若い成人期 (自分の他人の中に失い、発見)
Ⅶ 成人期
(存在を作り、世話をする)
Ⅷ 成熟期
(あるがままに存在、非存に直面)
№6 哲学の誕生
○神話的世界観
・宇宙、世界、人間の起源や振る舞いを神々や精霊といった超自然的な
物事に説明 (象徴的・詩的言語)
○哲学の誕生
B.C.6C 頃 自然や物事を物理的に探求
ロゴス…理法、法則、論理、言葉、理性
◎テオーリアと哲学的態度
○自然哲学
万物の起源(アルケー)を探求し、様様な現象をアルケーによって説明
イオニア地方で興隆
① タ レ ス
「アルケーは水」
②ピ タ ゴ ラ ス 「アルケーは数とその比」
③ヘラクレイトス 「アルケーは火」「万物は流転する」
④エンペドクレス 「アルケーは土、空気、水、火」
⑤デ モ ク リ ト ス 「アルケーはアトム(原子)
」
○哲学的態度
理性による冷静な観察 = テオーリア(観想)
その場その場の有用性、即物性を脱却
◎自然から人間へ
○ソフィスト(知者):政治的教養の教師
B.C.5C 民主政府の確立を背景に出現
社会、政治、人間を理性に探求
○プラトゴラス:
『人間は万物の尺度である』:相対主義
弁論術の重視→詭弁(こじつけの議論)
№7 ソクラテス
○問答法
自明の事柄を前提とし、同意によって議論を展開
=ロゴス(論理)を共有
→対話者は心理の共同の探求者
○無知の知
知らないことを知ること → 無知の自覚、人間の知の限界の自覚:『汝自身を知れ』
知の所有ではなく知の探求の重要性
知っているという思い込み(ドクサ)との闘い
知を求め、大切にすること:『愛知=哲学』
○善く生きること
愛知…善美の事柄の研究
『魂への配慮』…徳に従って生きること(善く生きること)
○徳の性質
・知徳合一…「善」を知ることによって、始めて徳は実現される
・知行合一…「善」を知れば、行わずにいられない
・福徳合一…「善」が実現されて、始めて幸福になれる
№8 プラトン
○イデアへの憧れ
イデア:完全、永遠不滅、理想
理性で掌握=真の実在
現象:不完全、生成流転、現実
経験可能、仮の現れ
※洞窟の比喩…経験、感覚の制約
○想起説とエロース
・イデアの認識…魂の故郷(イデア界)を魂が思い出すこと(=想起)
・エ ロ ー ス…イデアに対する憧れと愛慕
○善のイデア
イデアがイデアとして価値を持つ根拠となるイデア:(最高のイデア、イデアのイデア)
○魂の三分説と四元説
認識・断行=理性→イデアの認識=知恵の徳
魂
行為・決断=気概→行為の正しさ=勇気の徳
感覚・欲求=欲望→欲求の正しさ=節制の徳
理性が気概と欲求を指導 → 知恵と勇気と節制の調和 = 正義の徳
○理想国家
魂の三分説との類似
・知恵を愛する理想的な人:哲人=統治階級
・勇気を重視する気概の人:武人=防衛階級
・節制を発揮する欲望の人:庶民=生産階級
哲人王→正義の重視、理想国家
№9 アリストテレス
○形相(エイドス)…も の の 形
真の実在、本質
個々の物事に内在
現実の事物
○質料(ヒュレー)…ものの材料
物事を構成する素材
形相は質料を通して自らを完成さ
せる
(可能態→現実態)
現実は理想の現実の場
イ デ ア 論:静的、超越的
エイドス論:動的、内在的
○徳
知性的徳…正しい判断、知恵、思慮
性格的徳…現実の生活の中で習慣によって身につく、倫理的、習慣的
人間のよい状態、よい機能をつくりだす、実現すべき価値
○中庸
過多と不足の両極端を避けた適度さ
・無謀と臆病 :勇気
・放縦と禁欲 :節制
・放漫と卑下 :矜持(自負)
・道化と野暮 :機知
・短気と意気地なし :穏和
○徳の実現
◎友愛と国家
○「人間はポリス的(政治,社会的)動物である」
共同体を維持する原理 = 友愛と正義
○正義
共同体構成員間はつりあいのとれた平等を実現するもの
分配的正義:名誉・報酬
調整的名誉:取引・裁判
№10
…最高善=幸福
○国家観
王政―独裁政
貴族政―寡頭政
共和政―衆愚政
ヘレニズム時代
○時代背景
・マケドニアによるギリシア支配
・アレクサンドリア帝国の成立
ポリス的結びつきの喪失
個人的生き方の研究
◎エピクロス派
始祖:エピクロス
快楽主義─精神的にわずらいがないこと
『アタラクシア』(魂の平安)
◎ストア派
始祖:ゼノン
禁欲主義─理性によって禁欲を制御
『アパテイア』
(不動心)
→「隠れて生きよ」
→「自然に従って生きよ」
宇宙の理法(ロゴス)に従う
世界市民思想
№11
古代ユダヤ教
○へプライズムの原型
・自然神からの脱却
・唯一神観
・神と人との宗教的契約による民族の統一
○ユダヤ教の発展
原型 → 制御,離散 → 信仰の抽象化
↓
・厳格な生活の規律(律法主義)
・選民、メシア思想
・終末論、最後の審判
№12
○
ユダヤ教
批判
民族宗教
怒り裁く神
律法主義
継承
一 神 教
終 末 論
メシア思想
書物(旧約聖書・タルムーン)
学問の重視
イエスの教え
キリスト教
改革
世界宗教
愛し救う神
法律の内面化
○信仰義認観
『人間は神の愛への信仰によってのみ義(正しい)と認められる』
深刻な罪の意識
‖
人間の有限性への自覚 →律法主義による救済の否定
○エロースとアガペー
神への愛
神
人間
隣人愛
神の愛
・エロース…上昇的愛・利己的愛
価値のあるものへと向かう愛
・アガペー…下降的愛・利他的愛
価値のないものへと向かう愛
精神の無償的愛
父なる神→罪人としての人間
№13
キリスト教の誕生
○死復活の思想
十字架にかけられて処刑 → 3日後に復活→昇天
・人間の罪を贖うためにイエスは死んだ
・その行いにより復活し、救済された
イエス→キリスト(救世主)
・イエスを信じ、イエスに近づくことが救済への道
キリスト教の思想の核
○教団の成立
ペテロを中心に『原始キリスト教』が成立→ローマ帝国内に伝道
№14
パウロ
○原罪:人間に備わる根源的な罪
しょくざい
○ 贖罪 :十字架上のイエスへの信仰 →原罪の象徴
○イエスの三元徳
神の愛への信仰,救済に対する希望,隣人への愛
№15
2C
4C
『新約聖書』の成立
ローマ帝国の国教化
キリスト教の発達
…4 つの福音書・書簡類・黙示録
◎アウグスティヌス
最大の教父、異教・異端との論争
おんちょう
恩寵 …救済は神の恵み
教会は地上における神の代理者
◎トマス=アクィナス : スコラ哲学(キリスト教神学)の大成者
理性と信仰の調和をはかる
『恩寵は自然(理性)を破壊せず、かえって完成させる』
○ローマ=カトリック
・ローマの中心
・三位一体
・アタナシウス派
№16
父なる神
子なるキリスト
精霊
イスラム…『コーラン』の教え
○時代背景
・血統を神聖視する閉鎖的で排外的な部族中心主義
・偶像崇拝の栄える多神教
・刹那的快楽主義への逃避
○イスラム教の成立
ムハマド(マホメット)の宗教改革:・アラビアの伝統の否定
・ユダヤ教、キリスト教を元にした一神教
・世界宗教
迫害とメディナ移住(聖遷 622 年)
:信仰共同体(ウンマ)の設立
メッカ奪回(630 年)
:イスラム教の成立
○イスラム教の教え
・厳格な一神教:アッラーへの絶対的帰依、偶像崇拝の厳禁
・開かれた共同体:平等で相互扶助的な信仰の関係
・
『コーラン』
六信…アッラー・天使・経典・預言者・来世・天命を信じる
五行…アッラーへの信仰告白・メッカ巡礼・一定期間の断食
1 日 5 回のメッカ礼拝・貧者への喜捨
政教一致のもとに全生活を律する
№17
古代インドの思想
B.C.24〜17 インダス文明 [都市国家・青銅器・トラヴィタ人]
B.C.15C アーリア人の侵入
12C ヴェーダ文献・バラモン教
7C ウパニシャッド(奥義書)文献
6〜5C 反バラモン教思想の登場・仏教・ジャイナ教
○古代インドの社会
・カースト制…固定的な身分制度
バラモン
(司祭者)
クシャトリャ(武士・貴族)
ヴァイシャ (庶民)
シュードラ (奴隷)
パリア
(不可触民)
・バラモン教
バラモンを中心とする呪術的な多神教
○ウパニシャッドの思想
・輪廻思想
人間
霊魂…不滅
肉体…死滅
業(カルマ)によって生まれる(因果応報・自業自得)
救済=輪廻からの解脱
○梵我一如
梵(ブラフマン)…宇宙の根本的原理
我(アートマン) …人間の実体
苦行(禁欲・ヨーガなど)→ 梵我一如の境地=悟り・解脱
№18
ブッダの思想
○仏陀の名称
・ゴータマ・シッダッタ…個人名
・釈迦(しゃか)…部族名(釈尊釈迦牟尼)
・仏陀(ぶっだ)…自覚めた者(覚者)
○ブッダの生涯
・誕生…『天上天下唯我独尊』
・四門出遊…求道の決意
・成道
・説法
・入滅
○ブッダの悟り
・人生の現実としての苦
おんぞうえく
あいべつりく
ぐふとくく ごうんじょうく
『四苦八苦』…生・老・病・死・怨憎会苦・愛別離苦・求不得苦・ 五蘊盛苦
・縁起説と四法印
『縁起説』…苦の原因の解明
無明→煩悩→苦
※大乗仏教…実体主義的世界観の否定
『四法印』…法=真理
一切皆苦・諸行無常
ねはんじゃくじょう
諸法無我(法=存在)・ 涅槃寂静 (煩悩の火が消えた状態)
○四諦と中道…悟りの内容を分かりやすくまとめ悟りの方法とともに説いたもの
・四諦…
苦諦…一切皆苦
集諦…諸行無常・諸法無我・縁起説
滅諦…涅槃寂静
道諦…八正道による中道
・八道…正見,正思,正語,正業,正命,正精進,正念,正定
○慈悲の精神:一切の衆生に対する慈しみと同情
№19
※慈…与楽
悲…抜苦
仏教の展開
○仏教教団
説法
出家者 (和尚,比丘,比丘尼)
在家者
食料・衣服
○部派仏教(B.C.3C 頃)
・上座部(11 派)…保守的・形式的
・大衆部( 9 派)…進歩的・現実的
※この時代に仏典の文字化,海外への伝播,思想の発展
○大乗仏教の成立:紀元前:大乗仏教運動
・在家主義…一般の人々に即した考え方
・多仏思想
・菩薩思想…「悟りを求める者」
・空思想…色即是空・空即是色・絶対主義的世界観の否定
・小乗…自己救済を目指して修行
阿羅漢が理想
仏陀=歴史上の一人物
・大乗…一切衆生の救済を目指して利他行
菩薩が理想
仏陀=人間の理想像
○その他の大乗仏教の展開
いつえ
・一切衆生悉有仏性
・竜樹…空の思想
・世観…唯識思想
→無執着
№20
孔子と儒教の思想
○周の封建制度
・周公且の時期(B.C.11C 頃)に確立
・天子としての国家の下に一族・功臣が土地(封土)と人民を世襲的に支配
・血縁関係の確認のために、氏族共通の祖先をまつる儀礼
○孔子の理想
・社会秩序の回復と人心の安定
‖
『道』の実現 …人間の真の生き方・究極の真在・真理
↑
仁(礼を支える実質)と礼(社会規範)の現実
○ 仁 …人間存在の根拠
人間を人間たらしめる最高の徳
根源的な愛
個別的な表現
(孝・悌・忠・信・怒)
○徳治主義
・仁の現実
『克己復礼』…欲に流されやすい自己自身に打ち勝って礼という客
観的な規律に自覚的に従う
・政治思想 『修己治人』…徳治主義
№21
諸子百家
○春秋時代末期〜戦国時代
時代の転換期
封建制度の崩壊=社会の解体の危機
○様々な思想の輩出
諸侯の人材登用
既成のしくみにとらわれない自由な精神
儒家・道家・兵家・陰陽家・名家・農家
法家(韓非子)…法治主義『信賞必罰』
墨家(墨子) …兼愛・非攻
№22
孟子と荀子
○孟子…性善説
・善へのはたらきかけ,良心(良知・良能)
そくいん しゅうお じじょう
ぜひ
・四端… 惻隠 ・ 羞悪 ・ 辞譲 ・是非
↓
↓
↓
↓
(四徳… 仁 ・ 義 ・ 礼 ・ 智)
○荀子…性悪説
・人間の利己性の直視
・内面的,主体的な仁よりも、外面的,客観的な礼を重視
法家に影響
№23
朱子学と陽明学
○経学
訓古学(漢)…五経中心の字句解釈
朱子学(宋)…四書中心の解釈学
陽明学(明)…
〃
○朱子学
『理気二元論』
※理…存在の秩序原理
気…万物を構成する素材
・探求の方法
持敬窮理、格物致知
○陽明学
・朱子学の理の客観的性格を批判
・心即理=唯心論 → 到良知・知行合一
№24
道家の思想
○老子の道
じゅうじゃくけんか
・儒教の道(仁と礼)は人為的で不自然
・宇宙の摂理
無為自然・ 柔弱謙下
小国寡民…自給自足の小共同体
○荘子の思想
・人間の世界:善悪、美醜、是非からの対立差別
・ありのままの世界:対立差別のない『万物斉同』
しょうようゆう
人為を去り自然のままに身をゆだねる = 逍遙遊 …理想としての真人
№25
近代人と理性
○古代ギリシア人…自然の秩序をロゴス(理性)的に探求
○キ リ ス ト 教…信仰が理性より優位
ex.天動説と地動説
○ル ネ サ ン ス…科学的世界観の広がり
自然の数量的把握
○近
代
社
会…理性的人間観
・科学技術の進歩
・近代市民社会
№26
理性と人間への疑問
○人間の理性に対する過信 → 化学兵器・環境破壊
○『神は死んだ』(ニーチェ)
世界を秩序づける理念や価値の消滅
人間の生き方を導く目標の喪失
‖
ニヒリズム(虚無主義)
№27
意識の底にあるもの
○マ ル ク ス:唯物論…生産力が社会構造を決定
○フ ロ イ ト:超自我
自我…意識
エス…無意識
無意識による意識の支配
○ユ
ン
グ:集合的意識…神話宗教に含まれる超個人的な願望
○ソ シ ュ ー ル:人間は言語体系に組み込まれている
言語が人間の思想を規制
№28
理性の権威への批判
○ニーチェ
人間は絶えず自己超克をはかる
「権力への意志」
化学的精神も権力への意志の道具
○ベルグソン
自然は持続的な生命の躍動である
「純粋持続」
→ 理性はこの意志を抑圧している
本体の「生」を歪曲
→
理性は躍動を固定化抑制している
ゼノンのパラドックス(逆説・矛盾)
○フーコー
人間は自己超克を目指す多様な存在 = 人間の多様性
↓
理性は多様性を「狂気」として排除し人間を同質化する
○フランクフルト学派 (ホルクハイマー,アドルノ)
近代人は理性によって自然と自己自身を支配する
近代的理性=道具的理性
↓
自然・人間自身と理性の分離
№29
科学技術とヒューマニズム
○古代の技術
学問・芸術を含んだ全人間的な営み
物を形にする
↓
近代の技術(道具的理性の営み) →
人間の独立
→
逆に人間のほうが従属
○構造主義 (ソシュール,レヴィ=ストロース)
各文明は言語的・論知的思考以前に構造を持つ ※構造=自然との調和
自然との共存を構造として持たない文明は野蛮である
「自己中心的ヒューマニズム」
(人間中心主義)
№30
状況を生きる人間
○具体的状況の重視
『状況内存在』
(ヤーパス)←一人一人異なる
・具体的問題を解決する有用性が心理(プラグマティズム)
・人間は自らの責任において行為する自由をもつ(サルトル:人物)
『実存は本質に先立つ』
○価値観の対立
・寛容の心で価値観の対立を容認し、自らの仕事を理解し果たす重要性 (ウェーバー)
・明瞭な言葉を共有し、共通の課題を共に論じる姿勢の重要性(ウィトゲンシュタイン)
№31
対話的理性
○対話的理性(ハーバマス:人物)
価値観の対立 → コミュニケーションの回復の必要性
対話における理性
Ⅰ言語として理解可能
Ⅱ事実に対応
Ⅲ規範に適合
Ⅳ誠実
権威主義の克服
○未来への模索:価値観の多様性の容認と相互批判のある対話
№32
核家族化の進化
○日本の家族形態
変化:・高度経済成長期に核家族や単独世帯の増加
・安定成長期にも増加傾向
原因:・産業構造の変化→若者の都市流入→拡大家族の減少
第1次産業→第2,3次産業
・「家」制度の崩壊→両性平等と個人の尊重
○家族機能の縮小
都市化,産業構造の高度化
家族生活の多様性
生産は企業が、教育は学校が行うものとする傾向
・現在果たすべき機能
子供の社会化(養育と社会教育)
パーソナリティーの安定化
№33
現代家族の課題
○現代家族の課題
・家族機能の外部化 → 家族の絆の希薄化
・単身赴任や塾通い → 家族のふれあいの減少→孤独感
・女性の社会進出 → 家族労働の分担
男女雇用機会均等法・育児介護休業法
→ 家族の在り方の見直しの必要性
№34
高齢化社会の問題点
○日本の急激な高齢化
・平均寿命の伸長,生活や医療水準の向上
・晩婚化などによる出生率の低下
○問題点と対策
・高齢者の経済問題 → 再雇用問題や年金制度の見直し
・介護問題 → 介護基盤整備やノーマライゼーションの追及
・生きがい問題 → 生涯学習の保障
№35
情報化社会の発展
○情報化社会
情報の価値が重視される社会
あらゆる人間の活動に情報管理
欠かせない社会
・産業の情報化…あらゆる産業に情報機器の導入
・情報の産業化…情報を商品として生産販売
・生活の情報化…日常生活にも情報が不可欠
○ニューメディアの普及
メディア…情報の媒介
コンピューターやデジタルの技術によりマルチメディアの登場
○情報化社会の問題点
・ささいな器機の故障 → 被害の拡大
・器機操作からくるストレスや人間関係の不調
・知的所有権の侵害
・プライバシーの侵害 → 個人情報保護法
・情報操作の危険性 → 情報公開制度や知る権利の確立
№36
○大衆社会
大量生産による生活の平均化
マルチメディアの発達
教育の普及
大衆化の進展
→
大衆が政治・経済・社会・文化の全分野に進出
○大衆社会の問題点
・マスメディアの強い影響 → 主体性の喪失
・官僚制の発達による管理強化 → 人間疎外の進展
・都市化の発展 → 伝統的社会の崩壊
№37
ボーダーレスの時代と国際化
○ボーダーレス時代
物・金・人・情報が地球規模で移動する時代
文化の相互理解の必要性 → エスノセントリズム(自民族中心主義)の克服
○国際化と開かれた社会
・真の国際化…人と人との交流に民俗化
・開かれた社会…共に生きる隣人
ex.NGO
№38
人間の発見
○中世の特徴
・カトリック教会の政治的思想的支配
・神中心の世界観 ex.天動説
○近代への転換
きっかけ…ルネサンス・宗教改革
西洋文明の源泉への復帰
ルネサンス…古代ギリシャ・ローマの文化
宗 教 改 革…原始キリスト教
単なる復古運動ではなく「個人意識の覚醒」 =(近代的)人間の発見
№39
○起源と社会背景
東西貿易の活発化
都市の発達=市民階級
ルネサンス
北イタリアの都市
自由都市
○万能の人
人間の能力の無限性への確信
自由を創造,生の喜び
レオナルド=ダ=ビンチ
ミケランジェロ など
○思想内容(ヒューマニズム)
人文主義…ギリシャ・ローマの古典研究
人間中心主義…人間への関心
○人文主義者
・エラスムス…カトリック教会の偽善を風刺
・ピコ=デラ=ミランドラ…人間は自分のあり方を自由に選ぶ力を持っている
・マキャヴェリ…『君主論』宗教や道徳を政治から分離
・トマス=モア…『ユートピア』社会矛盾の批判
№40
宗教改革…ルター
○中世カトリック教会
○ルターの行動と思想
ローマ教皇を頂点としたピラミッド型位階制 ・
『95 ヶ条意見書』…教会の腐敗を告発
政治・学問などすべての領域を支配
・信仰義認観「ただ信仰のみ」
一部で宗教的堕落 ex.免罪符
・聖書中心主義
・万人司祭主義
№41
予定説と職業召命観…カルヴァン
○カルヴァンの行動と思想
ジュネーヴで一種の神政政治
予定説…人間の運命は最初から神により決定されている
人間の救いは人間の行いには関係ない(神の恩寵の強調)
職業召命観…自らの職業は天職(神の召命)
禁欲・勤勉・正直と言う職業倫理
営利活動の承認
↓
資本主義や市民革命の精神の育成
№42
宗教改革の意義
近代的信仰の確立…信仰の場所として個人の内面性を重視
世俗の活動の信仰の立場から位置付け
→ 政治・社会の近代的変改を促す
№43
ベーコン
○経験論:・経験の重視
・観察 − (帰納法) → 一般法則
○イドラ(幻影):・種族のイドラ…感覚での錯覚のような人間本性にねざす
・洞窟のイドラ…好悪のような個人的立場に捕われる事によって生じる
・市場のイドラ…言葉の不適切な使用からもたらされる
・劇場のイドラ…権威を盲信することから生じる
№44
デカルト
○良識…理性
・理性の重視−合理論
こうまい
・
『 高 邁 の精神』…情念に左右されず、正しく真偽を判断する能力
・原理−(演繹法)→個々の判断
○方法的懐疑:人間の思考=確実な第一原理
確実なものの探究 → 疑えるものは全て疑う → 疑っている自分自身は確実に存在する
『われ思う、ゆえにわれあり』
№45
近代的自我の確立
○近代的自我の確立
「考える」という精神の働き(理性)=人間の本質
→ 人間の自己=「考えるもの」=精神的自我
①神や教会といった人間を超越したものへの疑い
②自由で平等な存在としての人間
○物体と精神
考えられる対象と考えるわれの存在
=物心二元論… 物と心
客観と主観
物体と意識
身体と精神
№46
機械(論)的自然観
↑
問題:自然破壊・心身問題
モラリスト
○モラリスト
あるがままの人間を見つめ人間の有限性への洞察に基づき、人間の生き方(モラル)を追求
・モンテーニュ:『エセー』(随想録)
「私は何を知りうるか」→人間の限界の自覚
批判的精神と真理に対する謙虚さ
・パスカル:
『パンセ』(瞑想録)
「人間は考える葦である」→人間は偉大と悲惨の中間者
《繊細の精神》を主張
※デカルトの「考える」…「幾何学的精神」・単純・抽象的
№47
カント(科学的思想)
○科学的思想の基礎付け
『純粋理性批判』
・批判主義の由来
認識能力を吟味検討し、経験論と合理論の総合
・コペルニクス的転回
認識が対象に従う
違う
→

対象が認識に従う:意識の形式=自然法則
○自由『実践理性批判』
・人間の自由…理性的に自分の意志を自発的に決定する = 自律
※他律…外的原因によって引き起こされる
自律…自己の法則にしたがって行為する
実践理性=道徳法則
№48
カント(道徳法則)
○道徳法則と義務:経験の制約を越えたものに関わる善意志によって生ずる
・仮言命法:「もし〜ならば…せよ」という条件付の基準
→不自由,他律,結果を重視
・定言命法:「〜すべし」という絶対無条件の基準
→自由,自律,動機を重視
○人格の定義
・自律的な自由意志の主体としての人間
・尊厳を持った目的そのものとして尊重されるべき存在
○目的の王国
互いに全ての人格を目的として尊重しあう理想の社会 → 永久平和の必要性
№49
ヘーゲル(弁証法)
○ドイツ観念論の完成
カントの自由論,道徳論は主観的
→自由や理性は客観的な制度や法律として具体化,現実化されるべき
○弁証法
現実の事物,社会の運動の法則
定立(正)→反定立(反)→総合(合)
○絶対的精神
現実=弁証的運動
その原動力が精神
現実の歴史の発展は絶対精神が自らの実現する過程
№50
ヘーゲル(人倫)
○人倫…人間の共同体
○倫理学
共同体は道徳(主体性)と法(客観性)の弁証的統一
人倫は精神の実現の場
家族 自然な情愛
市民社会 個人の利益追求
国家 情愛と全体の利益
○歴史哲学
自由の政治的実現が歴史の究極的目標
近代=歴史の完成(古代→中世→近代)
№51
キルケゴール(実存主義)
○実存の規定
・論理的,客観的には把握不可能
・今ここに生きる自己
・本来の真実の自己
・代替されない自己
・主体としての自己
○実存の三段階
①美 的 実 存…感覚的享楽を求める
倦怠と不安の中で絶望
②倫理的実存…他者への義務に誠実に生きる
責任を果たし得ない人間の有限性に絶望
③宗教的実存…絶望を直視し単独者として神の前に立つ
信仰の飛躍によって本来の自己を回復
○「死にいたる病とは絶望のことである」
№52
ニーチェ(実存主義)
○「神は死んだ」
・神,キリスト教を否定
・キリスト教道徳=弱者の自己正当化
ルサンチマン(怨恨)に基づく奴隷道徳
○「超人」
・権力(力)への意志の体現者
えいごう かいき
・ 永劫 回帰(永遠の繰り返し)における自己否定
・運命愛
№53
ヤスパース(実存主義)
○限界状況
死・苦悩・争い・責め(責任・罪)に直面
↓
自己の有限性の自覚 → 実存の覚醒 ― 自由の自覚
超越者(自由の根拠)を覚知
○実存的交わり
限界状況における孤独 → 実存どおしの真の交わり
それぞれの自由の意味を問いかけあう
「愛しながらの戦い」
№54
ハンディッガー(実存主義)
○世界内存在
人間(現存在)のあり方
過去性:世界に既に投げ出されている
現存在
未来性:本来の自己を取り戻しうる
○「ひと」と死への存在
「ひと」…現存在の日常的あり方
↓
死の自覚…私一人の死,不可避,時期不明
↓
本来的な実存…死への覚悟
№55
サルトル(実存主義)
○「実存は本質に先立つ」
実存(人間の存在)は本質(規定)より先である
「人間は自由の刑に処せられている」
○アンガージュマン(社会参加自己拘束)
自由による自己決定 → 自己のあり方に責任 → 全人類に対して責任
№56
新しい自然観と思考方法
○近代科学の成立条件
・実験観察に基づいた経験的事実を重視
・自然現象を数量的に観察、表現(自然法則→数式)
・考える主観(心)と考えられる客観(物)の分離
機械論的自然観
自問による「モノ」としての
自然の改変
○近代科学の先駆け
・ベーコン…イドラの排除,経験の重視
先入見を排除して自然をありのままにとらえる事によってこそ、人
間は自然を支配する力を持っている
・デカルト…物心二元論
「考える私」を主張する一方、身体を含め自然界の諸物を人間の理性
によって把握されるメカニズム(機械)とみなした
・カ
ン
ト…コペルニクス的転回,自然法則=認識の形式
「認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う」
№57
実証主義と進化論
○コント(実証主義)
人間の精神の三段階進化
検証可能な経験的な事実に限られるとき、人知は最高の段階に達する。自然科学の方法に
よって社会秩序の改良と再編の原理をさぐり、実証科学としての「社会学」を創始した。
○ダーウィン:『種の起源』
進化論…適者生存という自然選択(自然淘汰)によって生物は進化してきた
○スペンサー
進化論を人間の社会にも当てはめ、社会も生物と同じように進化すると主張した。適者生
存という思想(社会有機体説)は、自由競争で勝利したものが生き残るという資本主義の考
え方に通じるものであった。
№58
心理の有用性
○プラグマティズム(実用主義)
実際生活や行動に役立つものを重視 (19 世紀末のアメリカで誕生)
科学的認識によって現実社会の理解を深めることにより、環境を改善して人間生活の矛
盾を解決しようとした。そこには、科学技術の進歩を信頼し、明るい未来を切り開こうと
する
アメリカ人の開拓者精神が示されている。
○パース
あらゆる概念の意味は頭の中に求めるべきではなく、それが引き起こす行為や結果に求
め
るべきだとした。(⇔カントの動機説)
○ジェームズ
真理を「実生活における有用性」を見なす立場に立つ
№59
デューイ(道具主義)
○デューイ…人間は行動によって環境との関係を調整し改良して生きる存在と見なし、人
間の知性はよりよく生きるための道具となるものであると考えた。(道具主義)
このような道具として役立つ創造的知性(実験的知性)によって社会を改良し、
人間生活の明るい未来を創造していくことを主張し、教育の重要性を説いた。
№60
現代における生命倫理
○近代のバイオテクノロジーの発達
従来の生命観では対処できない問題
脳死,臓器移植,末期医療,安楽死,尊厳死,遺伝子操作,体外受精
姓名の人為的操作の可否
→ インフォームド=コンセント(説明と同意)
リヴィング=ウィル(生前に効力を生じる遺言書)
№62
社会契約説
○自然状態…国家や社会成立以前の状態をいい、自然状態における権利を自然権という。
○社会契約説…自然権を守るため各人の自由意志に基づいて契約を結び、社会を形成する。
絶対主義の王権神授説に対抗(中央集権的専制君主制)し、市民革命の理論と
なる
№63
自然法と自然権
○自然法
ス ト ア 派…宇宙を支配する理法があり、人間はそれに従って生きるべきである
キリスト教…神の定めた永遠の法として人間理性によってとらえられたもの
社会契約説…人間の本性(理性)から導かれた法
現実に施行されている(実定法)の思想的基盤
自然権の擁護(基本的人権[生命,財産,身体の自由])
№64
ホッブズ
○ホッブズ…人間を「自己保存の欲望をどこまでも追求する存在」ととらえた。各人が自ら
の自由を勝手に行使するような自然状態は「万人の万人に対する戦い」であり、
共通の権力、法、正義の欠如につながる。
理性の命令としての自然法は、各人に平和を求めさせ、全ての人が同時に、一
人の人間または合議体に、各人の力と意志の全てを譲渡せよと命ずる。
この命令が人々に承認され、人民相互の契約(社会契約)によってつくられたも
のが国家である。社会契約によって国家がつくられると、それはリヴァイアサ
ンのような強力な権力を持たなくてはならない。
№65
ロック
○ロック…自然状態を基本的に平和な状態と考えた。「所有権」(自分だけの物)の不可侵を主
張したことに基づく。自然権は無制限ではなく、そこには他人の生命・財産など
を侵害してはならないという自然法が働いている。
自然権をよりよく維持するためには、各人は互いに契約を結んで国家を作り、国
家の代表者である政府に私的な制裁権を委託しなければならない。
権利者が権利を侵害した場合に限り、抵抗権・革命権を行使することができる。
この思想はフランス革命などに影響を与えた。
№66
フランス啓蒙思想
○啓蒙…「無知の状態からの解放」を意味する。伝統的な権威や偏見・迷信など不合理なもの
を批判し排除する。
①モンテスキュー 『法の精神』:三権分立(立法,行政,司法)
②ヴ ォ ル テ ー ル 宗教的寛容と表現の自由のための文筆活動
③ディドロ 『百科全集』
④ル ソ ー 文明批判を通して人間性の回復を目指す
№67
自然的自由と市民的自由(ルソー)
○自然状態…人間は自己保存の欲望(自己愛)と思いやり(あわれみ)の感情を持ち、自由で平
等に生存する。しかし、私有財産が生まれ、欲望が膨らむと、文明社会(文明状
態)が
生まれた。利己の搾取から不自由と不平等が生まれた。
○社会契約
世論
全体意志:特殊意志(一人一人の利益を目指す意志)の総和
一般意思:一人一人が公共の利益を目指すことによって生じる意志
一般意思により市民的自由の実現 ← 全人民の政治参加の必要(直接民主主義)
№68
○功利
功利主義(ベンサム)
幸福にとって有用なものが価値をもつ
人間の本性:快楽を求め苦痛を避ける
↓
幸福=快楽の増大,苦痛の減少
道徳
幸福を増大させるもの=善
幸福を減少させるもの=悪
№69
○快楽計算(量的功利主義)
『最大多数の最大幸福』
個人は平等に数えるべき
‖
民主主義的改革の促進
功利主義の修正(J.S.ミル)
○質的功利主義
快楽に質的差異
精神的快楽の重視 ①個性の自由な発展
②他者の幸福を願う良心
№70
尊厳の感覚
私益と公益
○私益の自由な追求の否定
・ベンサム…公益は私益の総和
・アダム=スミス…私益の追求→市場原理による公益の増大
○資本主義の矛盾
産業革命の進展 → 過度の競争,景気変動 → 労働の非人間化,貧富の差の拡大
↓
社会主義の成立
・生産手段の公有
・富の不公平是正
・労働の人間化
№71
社会主義
○初期の社会主義…空想的
①トマス=モア 私有財産制の批判
②サン=シモン 能力に応じた労働と報酬
③フ ー リ エ 生産と消費の協同組合的な生活共同体
④オ ー ウ ェ ン 労働条件の改善による勤労意欲の向上、ハーモニー村の建設
○人間疎外
科学的社会主義…マルクス,エンゲルス
・人間の本質 人間は働くことで生産物に自己を表現し、他者に所有されること
に喜びを感じる(自己表現としての労働)
・資本主義下では人間疎外が必要
生活のための労働
労働力の商品化
労働者と資本家の対立
№72
○社会
唯物史観
上部構造:政治,道徳,宗教
下部構造:生産力
生産力は増大する傾向
上部構造は固定化の傾向
社会矛盾の発生 → 階級闘争による改善の必然性
№73
社会主義の理想と現実
○資本主義の発展
・帝国主義
国内:独占化
国外:植民地獲得
・社会主義の部分的実現
労働運動の高揚→労働条件の改善,選挙権の拡大
№74
非マルクス的社会主義
○フェビアン協会
福祉政策の充実による漸進的改革→イギリス労働党
○社会民主主義
議会で労働者階級が多数を占め社会主義への移行→ドイツ社会民主党
№75
マルクス主義の継承
○レーニンによるロシア革命
→ 共産党独裁による国家建設 → 理想からの逸脱 →ゴルバチョフのペレストロイカ
№76
日本の自然的環境
○恵み豊かな自然
反面:自然災害の頻発
水田耕作を中心とし、外部に海人や山人などの生活
○日本風土と人間類型 《和辻哲郎『風土』
》
モンスーン型:中国、インド、東南アジア [受容的、忍従的]
砂
漠
的:アフリカ、アラビア、モンゴル
[能動的、戦闘的]
牧
場
型:ヨーロッパ [自発的、合理的]
・日本の特徴:モンスーン型 [同時に台風的特性] = 戦闘的、激情的、淡白
№77
村落共同体
○村落共同体
前近代において平地で営まれた生活の中心
内部…日常生活、田畑耕作に従事する場
辺境…内と外の接点、奉仕・墓・堂
外部…非日常生活の場、高山や海原、神仏の世界、作物の豊凶を左右、死後の世界
№78
神
○祟り神
村落共同体の人々にとって神
外来神→八百万神
○神の二重性格
さまざまな災厄をもたらす神
きょうおう
(祭祀=神々の 饗 応 ) → 豊穫・富・安穏をもたらす神
№79
生と死
・高 天 原:神々の世界
・葦原中国:人間の世界
・黄 泉 国:死者の世界
№80
清き明き心
○清明心…欺いたり偽ったりしない心
⇔濁心
神の意志にかない一致している心
みそぎ
○ 禊 …身体に付着した穢れを洗い清めること
はら
正直・誠の重視
○ 祓 い…「罪」を償うこと
№81
自然
○花鳥風月といった自然の情景への親しみ
人々のはかなさを映し出す鏡
循環するときを祭祀によって象徴される
№82
祭祀と和歌
○政治と宗教の不可分
祭り:年中行事
まつりごと 祀り:宗教儀式
における歌→神の言葉・さまざまな願望への応答
政り:政治
祭祀の中で儀礼化 → 文学として独立 → 和歌の成立
○夢幻能
起源としての祭祀(神樂・田楽・延年)→ 室町時代:観阿弥・世阿弥による能の成立
夢幻能:神仏・死者の霊魂・草木の精霊
神仏を祀る存在・旅する隠遁者
○文化の重層性
・伝統的な神への儀礼
重なり合いつつ存在
・仏教や儒学などの外来の思想
№83
外来思想の土着化
○仮名文字の発生
漢字の伝来(4,5C) → 万葉仮名 → 平仮名・片仮名の形成(平安時代)
日本独特の思想の発展
○神仏習合
外来の仏を日本と融合させて受容 ex.本地垂迹説
№84
仏教の移入
○仏教伝来
6 世紀半ば
神・客神 → 聖徳太子により受容
「三経義疏」
「十七条憲法」…「和をもって貴しとなす。逆らうことなきを宗となせ」
為政に携わる人々は、相互に和やか(和)であることが望ましい。
○奈良仏教
鎮護国家:災厄をしずめ国家を安泰にする
聖武天皇…国分寺・国分尼寺を国ごとに建設
鑑真…授戒制度の確立(戒律=僧の規則)
南都六宗の形成…三論・成実・法相・倶舎・華厳・律
私度僧…朝廷の承認なしに出家し僧侶と称する人々(⇔官僧)
№85
最澄と空海
○最澄…日本における天台宗の開祖
比叡山に延暦寺を建立
「一切衆生悉有仏性」…すべての人に仏となる可能性が備わっている
○空海…真言宗の開祖
高野山に金剛峯寺を建立
「即身成仏」…現に生きているこの身のまま仏になる
№86
末法思想と浄土信仰
○末法思想…平安時代末期に広まる
末法は教だけが残っている時代
えんり え ど
ごんぐ じょうど
浄土信仰…厭離穢土・欣求 浄 土
(欲望や執着にとらわれない眼前の世の中を厭い捨てて、西方の極楽浄土に生
まれるように願い求めること)
№87
法然と親鸞
○法然…浄土宗の開祖
「専修念仏」…極楽浄土に往生するためには念仏(南無阿弥陀仏)を称える(称名念仏)
だけでよい。
能力と努力に基づく多くのさまざまな修行が要求される難行と違い、専修念仏
は誰にでもできる易行として多くの人々の心をとらえた。
○親鸞…浄土真宗の開祖
法然の思想を徹底化
「悪人正機説」…「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」
善人でさせ浄土に往生できるのだから、悪人は言うまでもなく浄
土に往生できる
「煩悩具足の凡夫」としての自覚
じねんほうに
→ 自己救済の断念 → 絶対他力の信仰
№88
※他力:阿弥陀仏の力=自然法爾
栄西と道元と日蓮
○栄西…臨済宗の開祖,公案(禅問答)の発達
禅宗による鎮護国家につとめた
たとえ末法の時代に生まれ、素質は劣っていても、戒律を厳しく守って身も心も清
浄となり、もっぱら坐禅を修するならば、自己の内なる仏の知に目覚め、自己のみ
ならず他者も安楽にする。
○道元…曹洞宗の開祖
しかん だ ざ
「只管打坐」…心身脱落(身も心も自由になる)
修行とは、全てを投げ打ち、身と心を尽くしてひたすら坐禅につとめ
ること。修行するならば、誰でも自己に備わる仏の知を明らかにする
こと
ができる。
○日蓮…日蓮宗(法華宗)の開祖
法華経の最重視→唱題(南無妙法蓮華経)と題目を唱えることによる救済
「立正安国論」…法華経による国家守護
「四箇格言」…激しく他宗派を攻撃
№89
○鎌倉新仏教の意義
旧仏教
天台宗・真言宗など
深遠な教説の研究
国家仏教
鎌倉新仏教
鎌倉新仏教
特に親鸞・道元・日蓮など
複雑な教えの単純化
仏教の日本化→仏教の大衆化
№90
仏教と日本文化
○西行…平安末期の歌人
美的無常観
ex.「山家集」
○造仏聖円空…遊行僧として全国行脚
数多くの仏像
○一遍…時宗の開祖(遊行上人)
踊念仏→念仏踊→盆踊り
○良寛…詩作と書道を楽しみ、文人や子供と交わる
清貧の生涯
№91
近代日本の思想
○文明開化
西洋近代の技術や社会制度の移入
→富国強兵・祭政一致(神仏分離令・廃仏毀釈)
○啓蒙思想
明六社の『明六雑誌』
西洋近代思想の導入→封建制度・道徳の批判
№92
福沢諭吉
○福沢諭吉…近代的な国家や国民の創出
・天賦人権説…「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」:自由・平等の人間観
・独立自尊…西洋近代文明の精神(自立した市民)
東洋儒教主義にないもの
有形:数理学・人間普通日用に近い存在
無形:独立心
・一身独立して一国独立…個人の独立ができて国家の独立
→ 民権に対する国権の優位 → 脱亜論(脱亜入欧論)
№93
自由民権思想
○自由民権思想…明治 10 年代の民主化運動
・中江兆民:東洋のルソー
英仏…恢復的民権:為政者が人民に恵みを与える
日本…恩賜的民権:人民が自ら獲得する
日本は恩賜的民権を育てて恢復的民権を目指すべき
・植木枝盛:政府の民権侵害に対する人民の抵抗権
民権の国権に対する優位
№94
平民主義と国粋主義
極端な欧化主義や西洋崇拝への批判
○平民主義…徳富蘇峰ら
維新以来の西洋化が上からの官僚的国家主義によるものであることを批判し
国民の生活向上と自由の拡大の為の平民による下からの西洋化の必要を主張
○国粋主義…三宅雪嶺ら
日本に固有な物質的・精神的伝統の良いところを重要視
○岡倉天心…西洋近代の原理たる力に対抗して、東洋の原理たる美と精神を説き、「アジア
は一つ」と説いた。
№95
教育勅語
○西村茂樹…儒教の欠点である進取の気風の欠如や尊卑の別の過度の強調を補うために西
洋哲学を取り入れつつ、儒学に基づく国民道徳を説いた。
○教育勅語…天皇の名において忠と孝を中心とする国民道徳を定めた。
№96
内村鑑三と新渡戸稲造
○内村鑑三…キリスト教の神の前に立つ一人の人として、内面的独立と平和を説いた。内村
にとって、二つの J すなわちイエス(Jesus)と日本(Japan)は切り離してとらえる
ことのできないものであった。
「私は日本の為に 日本は世界の為に 世界はキリストの為に そして全ては神
の為に」→愛国論・非戦論
○不敬事件…内村は教育勅語の奉読式のとき、勅語に示された明治天皇の署名を神格化し
礼拝することを拒否し、教職を追われた。
→「教育と宗教の衝突」
○新渡戸稲造…日本にキリスト教が育つためには、道徳の原理としての武士道が思い起こ
されなければならないと主張した。
№97
北村透谷とロマン主義
○北村透谷…自由民権運動の挫折を経て、キリスト教に入信し、ロマン主義を唱えた。見る
ことの出来る政治的現実としての「実世界」の功利的事業や幸福に対して、見
ることの出来ない観念としての自己の内なる「想世界」の自由と独立を説い
た。
「恋愛は人生の秘鑰なり、恋愛ありて後人生あり」
○与謝野晶子…歌集「みだれ髪」において自己の情感や官能を肯定し情熱的な短歌を発表。
№98
自然主義
○自然主義…既成の道徳・因習の束縛を捨てて、ありのままの自我や社会を直視する。
国木田独歩、島崎藤村、田山花袋など。
○石川啄木…「一握の砂」を著す。「働けど働けど 猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」
感情的な生活詩から出発したがのちに論文を書いて社会主義に傾斜していっ
た。
№99
夏目漱石と森鴎外
○夏目漱石…日本の近代化は外からの圧力による外発的開化であって、自己の内面から発
する内発的開化ではないと批判。漱石が自らに課したのは、西洋近代を始めと
する一切の他への依存を捨てて自己本位であること。晩年に、自己本位を越え、
則天去私(天に則り、私を去る)に到達した。
○森
鴎
外…小説「舞姫」の中で、ドイツに留学し西洋近代の自由な空気を吸って近代的
自我に目覚めた青年が、社会を離反して生きられないことに気づく姿を描い
た。
№100 社会主義思想の移入
産業革命が急速に進み、労働問題や社会問題が生じたが、これらの問題の解決を主張し労
働者の生活を擁護する社会主義の運動が起こった。幸徳秋水や堺利彦は中江兆民の自由民
権論の流れをくむ社会主義運動の指導者であり、片山潜や安部磯雄・木下尚江はキリスト教
的人道主義から出発して社会主義を主張した。
しかし大逆事件により、社会主義運動は徹底的に弾圧され、衰退した。
№101 西田幾多郎
○西田幾多郎…西洋哲学と東洋哲学の融合
禅を体験的に把握
○純粋経験…直接・具体的であり、しかも最も根本的な経験。真の実存に直接触れている経
験。真の自己が成り立たせている。無限統一の実体。真の自己から善が生まれ
る。善とは、人格の実現であり、個としての自己の最も深い要求を満たすもの
である。
「色を見る刹那、音を聞く刹那」
○主客未分…主観と客観との区別はない。また知・情・意も分かれていない。自分と対象が統
一された状態。
○絶対無の場所…全ての事物や事象の根底にあり、全ての事物や事象を成立させていると
ころ。
№102 和辻哲郎
○間柄的存在…「人間」とは個人を示す言葉でなく、人と人との関係において生きていると
ころの間柄的存在を示す言葉である。