ノロウイルス完全撲滅に向けて

ノロウイルス完全撲滅に向けて
全国老施協
2006.12.18
◆ノロウイルスとは
直径が25~35nm(1nmは1/100万nm)という電子顕微鏡でしか見えな
い極小さな球形ウイルスで、1972年に胃腸炎集団発生の患者から発見されました。
わが国では、主に1~3月の冬季に、生牡蠣による食中毒として頻発します。
老人施設では、ほぼ全員が感染し職員も7割近くが感染したという例もあります。
〔感染経路〕
1.牡蠣等の二枚貝の中にこのウイルスが蓄積されていて、それを生、又は不十分な加
熱調理で人が食べると、人の胃腸内で増殖し発生します。原因食材が特定できない
場合もあります。
2.感染した人が調理すると手指を介して、食品を汚染する場合もあります。
3.その他、人と人の直接接触によって感染する場合や、嘔吐物・排泄物も感染源とな
ります。
〔症状〕
症状の持続は1~3日と短いですが、激しい嘔吐が特徴で、加えて下痢、発熱など
がみられます。(個人差もあるます)
普通は食べてから24~48時間後に、これらの症状がでてきます。後遺症は残り
ません。まれに、1日に20回以上の下痢症を呈し脱水状態になることもあります。
この場合は、入院と点滴などの特別な処置が必要となる場合があります。
症状がおさまっても、2~3週間は、排便の中にウイルスが見つかることがありま
すので、油断は禁物です。自覚症状がないままウイルスを保有し、排泄している場
合もあります
〔予防法〕
症状は短期間(1~3日)で治りますが、ウイルスの排泄は2週間ほど続くことが
ありますので、調理に当たっては徹底した手洗い等、下記の予防法が重要です。
1.食材の加熱調理
2.手洗いの励行
3.食材を調理した器具の洗浄・消毒
4.直接汚物に触らない
このウイルスは「次亜塩素酸ナトリウム」消毒が効果的
ウエルパス(塩化ベンザルコニウム)等の消毒薬は効果がありません。
〔検査法〕
患者の糞便を処理して直接、電子顕微鏡で観察する方法や、糞便からSRSV遺伝
子を取り出して増幅したものを観察してSRSVの存在を確認する方法などが用い
られます。(検査は、基本は便で嘔吐物も可能)
〔その他〕
◎この感染は、短期間で終了するが、2次的なことに注意が必要です。脱水による
発熱・嘔吐による誤飲なども心配です。
◎給食従事者が、感染し食べ物から感染が広がると「集団食中毒」となるので注意!!
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ウイルス撲滅までのみちのり
大切なのはウイルスの撲滅。
ウイルスを撲滅させるには「消毒」を徹底して行なう事です。
「乾燥」は、天敵。
室内を乾燥させるとウイルスは、空気中を飛び回ります。
十分な「加湿」を!!
大切なお年寄りを守るために徹底して、
行なわなければなりません!
職員全員で取り組みましょう!
一人の職員、たった1回の「まあいいか!!」が、
ウイルスを瞬く間に広げてしまう結果となります!!
お年寄りには1日1500ccの水分を!!
水分不足は、抵抗力を弱め、脱水につながります。
症状が現在出てない方にも、大切です
水
分
強
2
化を・・・
◆消毒の徹底
1)掃除
掃き掃除⇒除菌クリーナーをいれたもので拭き掃除⇒塩素系
漂白剤噴霧⇒ふき取り(使い捨て)
※汚れているところを、いくら消毒しても効果はありません!
2)洗濯
塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)に浸ける⇒洗濯
⇒乾燥機(加熱)
※色落ちのしないものを探しましょう。
3)調理
加熱処理です(85℃以上 1分以上)
◆万一、発生が疑われる事態になったら・・・?
○調理室関係は別区画隔離する(厨房内にウイルスを持ち込まない)
〔職員〕
1.給食(調理)職員は、厨房からでない事!
・申送り等も出席せず
・内線電話で必要事項を伝え合う事
・玄関は給食の玄関から出入りする事
2.栄養士は、お年寄りの栄養状態の把握をする。
・調理とのやり取りは、内線でおこなう
3.衣類の消毒
・通勤着と仕事着をわける。
⇒仕事着は、塩素系漂白剤(色落ちなし、人畜無害)につけた後、洗濯
⇒乾燥機にかける
・クリーニングに出す。
4.手指消毒
・食材に触れる前、調理の前には石鹸で必ず十分手洗い
5.スリッパ
・除菌クリーナー入りタオルできれいに拭く
・塩素系漂白剤を浸したタオル等でふく
※タオルは使い捨てが良いが、使い捨てにできない場合は洗濯
3
〔食べ物〕
1.感染者は、粥食に切り替える
ノロウィルスにかかると胃腸が弱ってしまうため
2.感染者は、牛乳は中止
3.全体的に生ものは禁止(加熱調理する)
※ウイルスは大腸で繁殖する。その抑制効果が乳酸菌にあるため、牛乳を、乳酸
菌に変えることもよい。
4.経管栄養の物品は、使い捨てに切り替える。
5.使い捨てできないチューブ等は塩素系漂白剤で消毒を行なう
6.栄養を利用者におとす場合は、手洗い・消毒をその都度おこなう。
〔消毒〕
1.厨房内の消毒を行う
・はき掃除
・除菌クリーナーでブラシをかける
・塩素系漂白剤を噴霧する
・その後液をのばす(使い捨てのものを使用)
(モップ使用の場合は、使用したモップは洗濯の基本を参照)
2.感染者の食器は塩素系漂白剤全体に噴霧した上で洗浄
⇒消毒は通常の食器洗浄機でよい(高温処理できる場合)
3.配膳車の消毒も行う
・厨房内に配膳車が入る時は、タイヤ・持ち手等の消毒を行ってから中に入れる
・配膳車の中は、使い終わったあと汚れを落とし塩素系漂白剤で消毒。
○掃除の仕方
〔床掃除〕
・掃き掃除
・拭き掃除⇒除菌クリーナーでモップがけ
・塩素系漂白剤を噴霧し、専用のモップ(使い捨て)でのばす
〔ベッド・家具等の拭き掃除〕
・拭き掃除⇒除菌クリーナーで拭き掃除
・塩素系漂白剤を4倍に薄めたものを噴霧する。
・ふき取り
・その後乾燥させる。
※ 手すり等、利用者・職員が触れる回数が多い場所は特に念入りに
※ 車椅子の掃除―消毒も忘れずに
※ 洗面所も・・・蛇口は特に頻繁に
〔トイレ掃除〕
床掃除の場合
◎掃き掃除
◎拭き掃除⇒除菌クリーナーでモップがけ
塩素系漂白剤を噴霧し専用のモップ(使い捨て)でのばす
4
便器・手すり等の掃除
◎拭き掃除⇒除菌クリーナーで拭き掃除
塩素系漂白剤を噴霧し専用のタオル(使い捨て)でのばす
※
※
午前・午後必ず行なう。但し下痢等の排泄が確認された時は、その都度行なう
便器等の掃除は、使用するたび(トイレ介助)に行う
〔お風呂掃除〕
・入浴は、感染がおさまるまで行わない
・入浴を再開する前には、徹底的に掃除、消毒を行う
・掃除方法は、
・はき掃除
・除菌クリーナーでブラシをかける
・塩素系漂白剤を噴霧する
・その後液をのばす(使い捨てのものを使用)
(モップ使用の場合は、使用したモップは洗濯の基本を参照)
・脱衣室も同様
※ 入浴を再開して後は、入浴後の掃除は上記の通リおこなう
〔その他〕
・食堂のテーブルは食事が終わるごとウエットティッシュで拭く
・塩素系漂白剤を、噴霧しのばす
○おむつ交換
1.おむつ交換はゴム手袋着用し、一人終わるごとに交換する
2.清拭は使い捨て
3.汚れたオムツは、床に直接置くことはしない。
(1回ごと小袋へ)
4.おむつ交換用のビニールエプロンを着用
(エプロンは、塩素系漂白剤の噴霧)
(1日1回は、洗濯の基本参照)
○食事・おやつに関する事
1.食事・おやつの前は、ウエットティッシュで拭くか、手洗いを行う
2.おしぼりは使用せず、ウエットティッシュを使用する
3.エプロンは、塩素系漂白剤につけてから洗濯、その後乾燥機をかける
4. 入浴を行わない事から、手洗いはこまめにおこなう(爪切りも頻繁)
5. 食器等は、塩素系漂白剤につける(おやつのコップ等)
6. 職員は食事介助用のエプロンを着用
※ 職員用エプロンの洗濯は、生成水につけてから洗濯。その後乾燥機
※ 下痢が続くと脱水になります。十分に水分補給をする。1500cc
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○感染と思われる嘔吐物の処理
1.ゴム手袋とマスクを着用
2.新聞紙をぬらして、嘔吐物をとる
3.ビニール袋に入れる
4.汚れた衣類は、他のものと一緒にせずビニール袋に入れる
5.塩素系漂白剤を床に多めに噴霧、5 分間放置しその後ふき取る(使い捨て・・・)
6.汚れたリネンは、汚れをおとしそのまま出してよい
(業者に場合は確認する)・・・但し、ビニール袋に入れる。
7.衣類・タオル等の洗濯するものは、前出方法にて洗濯。
○その他、注意事項
・ ユニット職員は、ユニット玄関を使用する
・ 厨房への出入りは禁止
(配膳車は、給食入り口で受け渡しを行うため、取りに行く。)
○職員に感染してしまったら・・・
・ 日中夜間問わず、嘔吐等があった職員は、すぐに帰宅
・ 連絡ルートをはっきり決めておく
・ 感染職員は、基本は 1 週間以上出勤させない
・ 面会はシャットアウト
・ 実習・見学等も安全地帯か、日程をのばす等の対応をする
※
特養の感染が疑われる場合は、給食へのことも考えユニットと本館を分断する。
(安全地帯と危険区域を分けるため)
※ 全ての情報を集める、隊長を決めておく
※ 利用者の状態の記録と、対策委員会の記録、消毒の記録等を残す
○保健所への報告
・ 感染者(又は疑いの方)が出た場合は、保健所・都道府県及び市町村へ報告し適
切な指示を仰ぐことも必要(報告義務は 10 人以上)
・ 家族等への個々人の状況報告をその都度行なう。
※塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)は、その用途に応じて使い分けるとよいです
※取扱い説明書をよく読んで使用しましょう。
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