授業資料

課題について
n 学生からの問題点の指摘(抜粋)
インターネット時代のセキュリティ管理
第6回 知的所有権(2)
奈良先端科学技術大学院大学 山口英
2
課題発表
n 受講者からの発表
l 慶應義塾大学 吉田雅史さん
l 奈良先端科学技術大学院大学 秋山満昭さん
著作物のデジタル 化配信
政策・メディア研究科
吉田 雅史
3
デジタル 音楽の流通
• Online music store
– i turns store (Apple)
– 楽天ミュージックストア(楽天、USEN)
– Mora, Music Drop (レーベルゲート)
DRM管理により著作権保護
• P2P
– winny , winMX
– 日本UL自体禁止 、米国DL量に規制
使用用途によっては著作権侵害
デジタル 書籍の流通
• Google library
– 著作者が非許可 に対応
– 11月までスキャンを一時的に中止
• Yahoo!(OCA;Open content Allicance)
– 著作者の許可のみ対応
– 著作権(50年) 切れ、非営利団体
• 464.jp(古本屋)
– 立ち読みの原理
– デジタル 化し閲覧可能 にするのは違法では?
1
利用者の存在
• 著作権法に準拠したサービス
– Online music storeの成功
• 小額決済システムがあればユーザは利用
– 無料だからではなく便利だから
• 欧米諸国
– 著作権準拠したサービスを模索
• 日本
コンテンツ王国の実情
コンテンツビジネスのGDPに占める割合
• 米国
– GDPの6%↑
• 欧州(EU)
– GDPの3∼4%
• 日本
– GDPの2%
– 違法として糾弾するだけで良いのか
コンテンツビジネス
• 既得損益に影響なし
問題、解決策のまとめ
•
–例
問題
1. インターネット上に国境をひくことは難しい
2. 旧産業がコンテンツビジネスの成長を阻害
• 着うた (特別目的会社の設立)
• 既得損益に影響あり
–例
• 音楽、書籍etc.
著作物とは著作者の利権を守るべきもの
•
解決策
1. 国際的に著作権法の見解を一致
2. コンテンツビジネスを支援する法整備
既存(旧)業種がビジネスの成長を阻むは悪
ワンソースマルチユース社会
• 例
私たちはコンテンツを購入
– 音楽を購入
• CD, PC, portable player etc.
– 週刊雑誌を購入
• 単行本、Web版 etc.
コンテンツ提供メディアの増加
→購入権利を主張できる社会の仕組を考える
音楽のデジタル 化
• Internetに国境はない
– 例1;P2P
• 米国
– 著作物のDL量が多いと違法
• 日本
– 著作物のUL自体が違法
– 例2;online music store
i turns store
• 欧米ではビジネスとして成立
• 日本では欧米に遅れてサービス開始
2
Online Music store
• レーベルゲート
– Mora, Music drop
著作権を利用したビジネス
• 特別目的会社の設立
– 着うた
• Apple
– i tunes store
• 楽天、USEN
– 楽天ミュージック
• Yahoo!
• 音楽、出版物など
– 例;漫画(464.jp)
違法で終わらせて良いのか。
需要はそこにある。
– Yahoo!ミュージック
技術の独占と公開のバランス
特許権とRFC (Request For Comment
• 疑問:
「特許による利益の確保と技術の普及のバラ
ンスとは?」
奈良先端科学技術大学院大学
インターネット工学講座
秋山満昭
特許権 とRFCの性質
• 特許権
– 発明の保護
– 発明の対価の保証(実施料)
– 技術を広く普及させる
• RFC ( Request For Comment)
– インターネット関連の技術仕様・ルール
– 発案者の権利は保障されない
– 誰でも自由に技術の利用・
議論の参加が可能
⇒インターネットの発展に大きく貢献
二つのアプローチ
• インターネットにおける文化
– 技術はRFCとして標準化される
– 標準化プロセスは完全公開
• 一方で特許による保護という文化もある
(他分野:
重工業、製薬、家電などなど)
– 特許による適切な保護が技術公開 を呼ぶ
– 分野全体の発展のために特許保護とインセンティ
ブ3
3
インターネットの研究とその対価(1)
インターネットの研究とその対価(2)
• インターネットの技術発明の対価は?
– RFCでは権利を主張できない
• インターネット技術発明(開発)に関するインセ
ンティブとは?
– RFCからの派生した個別の商品販売
• 発案者はどう報われるべきか
– 特許:権利の独占
– RFC:名誉(?) ,間接的なメリット
• 問題のトレードオフ:
– 権利の主張が固有技術の広範な利用への妨
げ
– 権利の保護による発案者利益の確保
– ベンダー固有の実装という工夫
インターネットにおける知的財産
• このような疑問をもっています
– 違いは何に起因しているのだろうか ?
– インターネット分野を長期的に発展させているモ
チベーション /インセンティブ とはなんだろうか ?
講義
交換から共有へ ∼ Winnyの登場まで
n Warez交換・
配布
l ftp, WWW, Netnews を利用した違法ファイルの交換・
配布
l 規模が小さく注目を集めるには至らなかった
n ファイル交換アプリケーションの登場
P2Pのもたらすもの
∼ 新しい流通モデル
l 初期: Gnutella, Napster によるP2Pアプリケーションの登場
l 中後期: WinM X ()、KaZ aa ()としてより洗練された形へ
l ハイブリッド型P2P
n ファイル共有へと変化
l Winny (2002) の登場
l ピュアP2Pへ
l ブロードバンド化の後押しによる、より効率のいい流通形態
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4
Napster
Gnutella
n 特徴
l 所有する音楽ファイル(mp3)のリストを共有し、ファイ
ル取得を可能としたソフトウェア
l ハイブリッド型P2Pとして実現されていた
l チャット機能が実装されており、ファイル共有を目的と
したコミュニケーションツールとしても機能していた
n 特徴
l mp3ファイルに限らないさまざまなファイル形式の公開
を可能としたソフトウェア
l 管理中心となるサーバが存在せず管理主体も存在しない
l ピュアP2P型の実装
l その後のP2Pファイル交換ソフトウェアの参照モデルと
なった
n 略歴
l 2000年2月 米Nullsoft社の開発者から公開
l 2000年3月 公開
しかし公開元のAOL社の判断によって24時間
で公開停止
l さまざまなクローン版が登場している
n 略歴
l Northeastern University(
米マサチューセッツ州ボストン
)の学生 シャウン・ファニング(Shawn Fanning)氏が
1999年1月に開発
l 2000年7月 RIAAより提訴され敗訴、ネットワークを停止
l 2003年10月より、音楽配信サービスとして再生
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ファイル交換の変遷
Winny
n Winnyとは
l WinMXの後継として日本人が開発したファイル共有の
ためのアプリケーション
l 国産であることと手軽に利用可能だったことから大流行
した
クライアントサーバ
ハイブリッドP2P
中心
: Server
ピュアP2P
中心
: Server
n 略歴
l 2002年5月6日 β版公開
ピア
l 2003年5月5日 2.0β版公開
l 2004年11月28日 Winny利用者の逮捕
開発者家宅捜索 、開発の停止(2.0β7.1)
ピア
ピア
ランデブー も通信 も中 心
で行 う
ランデブー を中 心で行い、
通 信 をピア同 士 で行 う
ランデブー も通信 もピア同
士 で行う
FTPや WWWを利用した
ファイル交 換
WinMX, KaZaa
Gnutella, Freenet,
Winny
l 2004年5月31日 京都地検が開発者を起訴
著作権法違反(公衆送信権の侵害)の幇助罪
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Winny
Winnyをめぐる問題
n 特徴
l ピュアP2P型によるファイル共有ネットワーク構築ソフ
トウェア
l インストールと利用が容易だったことから大流行し、フ
ァイル共有ネットワークが構成された
l 2003年時点で20万人(ネットワーク社調べ)∼200万人
(ACCS調べ)のユーザーが存在と推定される
l 2004年11月の逮捕者が発生以前以後で、国内トラフィッ
クの1/6近くが低減した (Winnyの利用減少分?)
n 流通する情報の質への問題
l 他人の著作物の違法流通
l 偽造ファイルや詐称ファイルの流通
l ウィルスの蔓延
n ファイルの取り扱い方法に原因
l 誰もが自由にファイル発信ができる
l 発信ファイルの取り消しができない
l ファイル発信元の特定が不可能
l 目的とするファイルを正しく知る方法がない
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Winnyからわかったこと
P2P流通網 の可能性
n 潜在顧客の存在
l 適切な価格と利便性によってはコンテンツ購入の顧客と
なりうる層が存在することを証明した
n P2P流通網への期待
l 流通の中抜きによる価格引下げ
l 著作者からユーザーへの直接的な流通の可能性
l コスト問題から無視されてきたマイナー著作物の流通整
備
l 参入コストの低さによる様々な著作物の流通市場の整備
n ユーザーによる自主的な流通網の構築
l コンテンツ流通における最大のコスト要因である流通網
の整備に対しての新しい解が存在することを示した
→ 適切な技術導入による情報流通基盤としての可能
性
n P2P流通網の整備に必要とされる技術例
l ファイル保護
l ユーザー保護
l 課金
l ファイルの追跡保証
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よいところを取り出そうという試み
n P2Pネットワークの積極的利用
l 2005年10月には、タワーレコードと米Napster社が提携
しNapsterジャパンを設立
l 米Kazaa社は、プロモーションファイルの配布、有料ファ
イル配信、広告などによる収益モデルを確立
新しい著作権の考え方
∼ コピーレフト
n 著作者の権利が保護されるなら、それでいい?
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コピーレフト
コピーレフト の考え方
n コピーレフトとは
l 1984年にフリーソフトウェア財団を設立したRichard
Stallmanによって提唱された著作権概念
l 著作物の利用を縛るための著作権に対して、直作物の自
由な利用を認めるための権利主張
l 共有を前提とした、著作者と著作物の保護
n コピーレフトの仕組み
l 著作権を放 棄することで、著作物 の自由な 公開と利 用を促進 することがで
きる
l しかし、この方 法では公 開された 著作物か ら派生す る著作物 が独占的 な権
利を帯びる 可能性がある
l そこで元の 著作者が、著作物の派生物に関 しても自 由でありつづけるため
の権利を付 与するというアイデアがコピーレフトである
n コピーレフトの定義
l 創造物の使 用、コピー、再配布、改 変を制限 しない
l 改変したもの(派生物)の 再配布を 制限しない
n 知的創造活動の保護と尊重を目的とした
l 改変したもの(派生物)の 使用、コピー、再配布、改変を 制限してはならない
新しい形の権利
l コピー、再配布の 際には、その 後の使用 と改変に 制限が無 いよう、全て の情
報を含める 必要がある(ソフトウェア ではソースコード含む )
l 著作物の自由な利用を妨げないための権利
l 共有と自由な共同的な創造活動の支援と著作者の尊重
l 使用、コピー、再配布、改 変のいずれにおいても、コピーまたは派生物にコピ
ーレフトのライセンスを 適用し、これを明記 しなければならない
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コピーレフト の広まり
n インターネットでの共同作業における 権利のあり
方として広まりつつある
l コピーレフトに従った様々なライセンスが登場
» GPL, LGPL, Mozzila Public Licence (MPL)
» ソフトウェアや文章へと適用するライセンス
iTunes Music Storeが変えたもの
l オープンソース運動
» プログラムのソースファイルは開示されるべきだという運動 。ソ
ースを開示したソフトウェアの開発、配布を行っている 。
» GPLに基づいたソフトウェアのリリース
» コピーレフトに基づいて活動することで、オープンソースという
考え方そのものも伝播させている
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iTunes Music Store (iTMS) とは?
iTunes Music Store
n Apple の音楽プレーヤーソフト “ iTunes” から
利用できる音楽配信サービス
l DRM付きAAC形式の音楽コンテンツを配信
l 安価な価格設定
» 米国: $0.99 ( US)
» 日本: 90%の曲が¥150、残り 10%の曲は ¥200
l 100万曲(日本)の品揃え、品切れなし、即座に入手
n 2003年4月 米国でスタート
n 2005年8月 日本でも展開
l 15社から100万曲の楽曲提供
» AVEX、東芝EMI、コロムビアなどが参加
» SMEなどは不参加
l iTMS進出後、他の事業者も追従値下げ
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利用方法
1. Appleアカウントを作成
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FairPlayをDRMに採用
n Apple Computer の DRM 技術
l iTMSで利用
l 比較的自由な利用を認めるのが特徴
n Apple IDによるネットワーク 経由での認証
l コンピュータ上で再生しないコンテンツの
認証を解除できる
n DRMによる制限(2005年11月現在)
l PCでの同時再生: 5台まで
l 同一プレイリストの
CDへの焼き付け: 7回まで
l iPodへの転送: 無制限
l ただし、Appleは制限内容をいつでも変更できる
2.購入する曲を選択
(メールアドレス、
クレジットカードの登録 )
3.サインインして購入
4.ダウンロード
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Before iTMS
After iTMS
n コンテンツプロバイダ側:
l 権利保護のため、厳しいDRM を適用
n ゆるい利用制限
l CD焼き付け可能、携帯音楽プレーヤーへの転送回数制限なし
l きつい制限、低いユーザビリティ
n 爆発的な販売実績
» 例: CD焼き付け禁止、携帯音楽プレーヤーへの転送回数制限
n ユーザ側:
n 米国
l 2003年 開始後1週間で150万曲、16日で200万曲,
9月に1,000万曲、12月に2,500万曲突破
l 2004年3月に5,000万曲、7月に1億曲突破
l 2005年3月に3億曲、7月に5億曲突破
l P2Pネットワークでの“無料”の違法なコンテンツ流通
l (技術的な)利用の制限なし
» CD焼き付け可能、携帯音楽プレーヤーへの転送回数制限なし
n こうした現状から、神話が形成されていた
l “合法的オンライン音楽配信は成功しない”
n 日本
l サービス開始後4日で100万曲突破
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iTMS、米国でP2Pしのぐ人気確立
iTMSからの教訓
n NPD Groupの調べによれば、iTMSは
n 「
無料」サービスとの競争
ほとんどのP2Pサービスをしのぐ人気
利用世帯数による音楽ダウンロード・サイトのトップ10
(2005年3月)
6月
2005 年 :
1. WinMX(210万世帯)
判
kster裁 に
ro
2. iTunes Music Store(170万世帯)
G
M G M対 Groksterら
3. LimeWire(170万世帯)
の
る
業
め
企
認
P
求を
4. KaZaA
裁、P 2
責 任 追 2005年9月
米最高
5. BearShare
侵害 の
営停止
運
著作権
が
.com
6. Ares Galaxy
WinMX
11月
7. Napster
2005年ク の
ー
ットワ
ネ
8. Morpheus
と和解
r、P2P
te
界
ks
ド業
米Gro
9. Real Player Store
/レコー
用停止
完全運
10. iMesh
Source: NPD Group
l
l
l
l
l P2Pネットワークとの競 合
l アップル:
「iTunes 最大のライバルはPtoP」 (C|Net)
» iTunes担当バイスプレジデントEddy Cue - “最 大のライバルは
不法音楽ファイル共 有サービスのKazaaやBitTorrentな ど”
» http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20089619,00.ht
m?ref=rss
n 制約と利便性のバランス
l ゆるいDRMにより、ユーザに受け入れ可能な制限
l 利用者が受容可能な価格とコンテンツセキュリティ
» “がちがち ”なD R Mを使っ たデジタル音楽配信は成功 していない
n 高いユーザビリティが重要
l 音楽配信(iTMS)・
管理ソフト(iTunes)・携帯プレーヤー(iPod)の
垂直統合
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/USNEWS/20050608/162333/
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/06/08/7935.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0506/08/news009.html
http://hotwired.goo.ne.jp/news/business/story/20050608106.html
l コンテンツセキュリティとユーザビリティの両立
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まとめ
n 権利のあり方とは?
l 権利侵害の新たな形
l 様々な権利保護技術の登場
n 新たな運用とは?
l 権利間の調停のあるべき姿とは
l 運用方法次第で大きな利益
n 本当の権利の保護とは?
l 著作者の利益保護にはなにが重要か
l 著作物の利用者はなにを求めているのか、なにを代価に
できるのか
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