景気循環論 vol.6 証券不況

景気循環論
vol.6 証券不況
小巻泰之
証券不況=バブル崩壊??
本日の講義は,証券不況とその対応策として
(1)高度成長の踊り場
(2)証券不況
(3)その対応策
を扱います.
スピード調整(1962年1月~10月)
(発端)国際収支の悪化に伴う金融引締め政策への転換(国際収支の天井)
(調整スピード)緩やか ←米国経済の回復期,為替自由化に伴う短期外資の流入
などが、輸入面への影響を緩和,消費の好調維持,オリンピックに向けた公共投資
40年不況期前後の成長分解
20.00%
いざなぎ景気
オリンピック景気
15.00%
10.00%
5.00%
0.00%
東京オリンピック関連
の公共投資が増加
国際収支悪化に伴
い、金融引き締めへ
40年不況に対する財
政面の政策変更
外需
政府投資
民間投資
GDP
▲5.00%
40年不況
なだらか調整
在庫品増加
政府消費
民間消費
▲10.00%
1961
1962
1963
1964
1965
1966
1967
1968
再度盛り上がり-オリンピック景気(1962年11月~64年10月)
(発端)金融緩和に伴う在庫投資の増加 ⇒ 設備投資ではない
①回復スピードが緩慢
・ 設備投資循環の下降期:神武・岩戸景気時に設備投資が大幅増加。その後の調整過程
・ 1960-61 年の投資ブームによる供給力の大幅増加と需要の成長鈍化(⇒転型期論)
<適正投資水準の試算>⇒ 適正な投資水準を大きく上回る
適正な設備投資比率
12.0%
10.0%
8.0%
6.0%
設備投資比率(実績)
設備投資比率(推計)
4.0%
2.0%
0.0%
5503
5701
5803
6001
6103
6301
6403
オリンピック景気の影響
②金融膨張(銀行貸出:1962 年 17%増→1963 年 27%増)
・ 大企業の設備投資需要の減退=大企業の資金需要は低迷
・ 中小企業融資の増加→流通部門で資金需要が目立つ
金融緩和度
(マーシャルのk)
7.5
7.0
6.5
6.0
マーシャルのK
トレンド55-69
5.5
5.0
4.5
4.0
5502
5604
5802
5904
6102
6204
6402
(注)マーシャルのk(=マネーサプライ÷名目GDP)と、トレンド(55-69年)の関係みたもの
(出所)内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算年報」、日本銀行「マネーサプライ」より作成
6504
6702
6804
(四半期)
40年不況(1964年11月~65年10月)
(発端)金融引締めに伴う在庫投資の減少 ⇒ 輸出好調を維持し、国際収支は悪化せず
① 投資ブームの調整過程での金融引締め
・中小企業を中心に業況の悪化 ⇒ 倒産の急増
②耐久財を中心とする消費ブームの一巡
③消費者物価と卸売物価の乖離 ⇒ 企業の利潤を圧迫
・ 労働力不足から賃金上昇率が下がらず ⇒ 消費者物価の上昇
・ 引締めの影響から製品価格は軟調
不況期の物価高
(前年同月比)
10.0%
8.0%
6.0%
4.0%
2.0%
0.0%
40年不況
▲2.0%
景気後退期
消費者物価指数(帰属家賃除)
企業物価指数(戦前基準)
▲4.0%
6001
6007
6101
6107
6201
6207
6301
6307
6401
6407
6501
6507
(年月)
(不況への対応)
① 株価下落・山一證券の破綻→信用恐慌の防止への特融、共同証券による株式の買い支え
② 金融緩和:しかし、企業の期待利潤率が低下していたため、不況の進行を止められず
③ 拡張的な財政政策(予算の1割保留措置の解除、特例国債の発行)→均衡財政の放棄
次回の講義予定
次回は,
vol.7高度成長(2)モデル
を検討します.