世界最長の全自動無人運転-軌道系交通ならではの醍醐味

特 集 ●
ドバイプロジェクトを追う― 灼熱の 2000 日 ―
世界最長の全自動無人運転
─ 軌道系交通ならではの醍醐味─
田畑 果津志 車両事業本部 車両エンジニアリング部
三好 基嗣 車両事業本部 車両設計部
ドバイの案件は世界最長の全自動無人運転電車といわ
ことのできる限界を検知して、可能な速度で電車を走ら
れる。レッド・ライン52km、グリーン・ライン24km、全線
せるよう力行、ブレーキ指令を出す。まさに運転士の代わ
複線で5両×79編成の計 395両が最高速度 90km/hで運
りである。この装置は両先頭車に各 1台設置され、どちら
用される。一足先に開業したモノレールも無人運転であ
か1台が電車を操縦し、他方はスタンバイで、互いに即時
り、こうなるとドバイは全部の軌道系交通が無人という珍
肩代わり可能な二重系で、後側の車載機が列車を操縦し
らしい地域である。
ていることも普通にある。
ちなみにドバイ空港の新しいターミナル「エミレーツ・タ
無人運転化は徹底していて、本線で万一無人運転でき
ーミナル 3」の大規模エレベーターは、普通のエレベータ
ない場合の手動運転は極低速に限定され、線路脇の信
ーを数個横に合体させた床面積が電車 1 両分ほどのもの
号機もなく、手動で本線営業運転を行う方法はない。適
であり、閉塞の概念はないが縦に動く無人運転電車にち
用範囲は広範で、車庫内大半のエリア、つまり日常の入
かい輸送力がある。
換、留置、洗車も無人運転である。
本来軌道系の乗物は軌道に拘束されてハンドルを操る
必要がなく、容易に自動無人運転ができるポテンシャルを
●簡易運転台
持っている。しかし世界では、今までこの長所があまり活
用されていなかった。運転士が運転する電車を経験せず
上で述べたように、通常は全自動無人運転であるから、
に、最初から自動無人運転に入るドバイは、軌道系交通
有人での運転は非常時もしくは基地内のみと想定されて
のこの一大長所を躊躇せず最大限に引出している。
いる。したがって、運転台は通常時は室内の一部となり、
非常時においてのみその機能を使用するというコンセプト
●システムの概要
になっている。また、室内デザイン、乗客サービスの観点
無人運転で車両を操縦するのはビークルオンボードコン
したがって、簡易運転台付近は、高架を走る列車からの
トローラーと称する車載機器である。地上信号ループと交
景色……多くの飛行機が駐機する飛行場、世界最高をふ
信して自分の制御する列車の進路と時々刻々の進行する
くむ林立する高層ビル群、緑のゴルフ場、さらには西部
から、運転台―客室間の仕切は計画段階から存在しない。
30
(95 percentile - male)
1905.0
TOR
Approx. 3530mm
●
● 00
●
20 ●
950.0
TOR
Approx. 2020mm
運転台および操作性の検討
750.0
DCH height
870.0
(95 percentile - male)
(5 percentile - female)
750.0
DCH height
870.0
H:1905mm
H:1540mm
950.0
1540.0
30
41.5
Possible fixing place
for a temporary partition
provided by RTA/Operator
近畿 車 輌技報 第15号
近畿車輌技報
第 16 号 2 2009.11
0 0 8.10
H:1905mm
30
51.8
30
H:1540mm
(5 percentile - female)
の砂漠の雰囲気……を思う存分楽しめる特等席で、列車
自体が観光名所になること請合いである。
図1 運転台カバー CLOSE状態
●簡易運転台に対する要求項目とその実現
RTA
(Roads and Transport Authority:ドバイ道路交
通局)からは簡易運転台に対し1.簡易ながらも一般の運
転台と遜色のない操作性、2.室内デザインをスポイルしな
い 形 状、3.運 転 台カバーは 着 脱 式 で は なく、 カバー
OPEN時に車体に留まる設計、という簡易運転台にして
は高次元の要求があった。
(図1、図 2)
上記条件を満たす設計を行うため、全自動無人運転時
は運転台が露出せず、非常時等にカバーを開くと内部に
図 2 運転台カバー OPEN状態
格納されている運転台が使用できる構造にすることを目標
とした。また、コンソール盤面上の配置はエルゴノミクス
直パネルの4枚で構成され、1 個のロックをメンテナンス
デザインを取入れ、操作性の優れた簡易運転台にするこ
キーで開放することにより、すべてのパネルを開くこと
ととした。これに伴いマスコンには簡易なペンダントコント
のできる構造とした。これらパネルは開放時も車体に
ローラーを使用することをとりやめ、一般車両と同様のマ
留まっている。前方カバーは日除け兼用で、運転士の
スコンを採用することを決定した。また、コンソール盤面
前方およびコンソール視界を妨げない角度としている。
の簡易モックアップを作成し、顧客立会いで操作性を確
ロック部にはリミットスイッチを配置し、悪戯により鍵
認、合意を取った。
を 壊 され た 場 合、 こ れ を 検 知 しOCC
(Operation
Control Center)
へ通報するようにしている。
●簡易運転台の特長
このように、簡易運転台については過去に例を見ない
設計、製作された簡易運転台の特長は、
顧客のレビューを受けながら設計を進めたが、我々にとっ
1.運転操作は立位で行う。エルゴノミクスデザインを取入
てよい経験が得られたと考える。
高度な要求があり、様々な角度から慎重に検討を行い、
れ、車体中央に立ち自然に右手を下ろす位置にマスコ
ンハンドルを、左手を下ろす位置にグラブハンドルを配
置した。
●おわりに
2.各スイッチ類の配置について同様の考え方を取入れ、
今後ドバイの人々は、電車とはホームドアから乗込んで
アクセス頻度や重要度に応じランク分けし、機能的な
無人運転で走り、最前部から景色が楽しめるのが当然と
配置を行った。また、盤面は見栄えがよく耐久性が高
考えるであろう。
い方法を採用した。
近代的な都会の象徴と公共交通の改善の両面で機能す
3.運転台カバーは前方パネル、右パネル、左パネル、垂
ることが期待される。
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