エビのアレルゲンコンポーネント

アレルギー最前線
®
エビ イムノキャップ の改良による
エビは、食物アレルギーの原因として小児から成人まで頻度の高い食品です。また、重篤な症状を
引き起こしやすく、
食品表示義務に指定されています。2012年7月から、
イムノキャップ®特異的IgEの
エビ原料が改良され、より感度が優れた製品となりました。
今回、日本皮膚アレルギー学会・接触皮膚炎学会理事などを務めておられ、
日本アレルギー学会専門医・指導医として、豊富な臨床経験を有し、
研究を精力的に進められている、兵庫県立加古川医療センター 皮膚科部長
足立厚子先生にエビアレルギーについてお話を伺いました。
兵庫県立加古川医療センター
皮膚科部長
足立 厚子 先生
聞き手 ● ファディア株式会社 クリニカルセールス&マーケティング 北村 薫
重要性
教
。
原因 起
、
A2 ①即時型
小児、成人
原因
頻度
高 、摂取後1時間以内
症状 起
。
患者99例 対象
摂取時 症状
、蕁麻疹
皮膚症状 最
調査
報告 3)
多 、続
口腔内 咽頭
粘膜症状、呼吸
困難
呼吸器症状 高率
。2臓器以上
症状 発現
61 例(61.6%) 発症 、
中
至
2例(2.0%)
認
。
原因 即時型症状
重篤 症状 呈
例
珍
、負荷試験 行 際
、
対応 十分 注意 必要
。
②食物依存性運動誘発
(FDEIA)
、FDEIA 原因食品
小麦 次
多
。FDEIA 、食
症状 起
、
食
運動
症状 誘発
疾患
。食物
診療
、IgE 関与
食物
特殊型 分類
。国内
比較的
疾患
、発症年齢 10〜20歳代 多 、
4)
。FDEIA
、症状 誘発
重篤 症状 引 起
表1 食物
年齢別原因食品
年齢
0歳
1歳
2、3歳
症例数
1,270
699
594
454
499
366
3,882
第1位
鶏卵
62.1%
鶏卵
44.6%
鶏卵
30.1%
鶏卵
23.3%
甲殻類
16.0%
甲殻類
18.0%
鶏卵
38.3%
第2位
牛乳
20.1%
牛乳
15.9 %
牛乳
19.7%
牛乳
18.5%
鶏卵
15.2%
小麦
14.8%
牛乳
15.9 %
第3位
小麦
7.1%
小麦
7.0 %
小麦
7.7%
甲殻類
9.0%
10.8%
果物類
12.8%
小麦
8.0 %
5.2%
果物類
8.8%
小麦
9.6%
魚類
11.2%
甲殻類
6.2%
6.2%
果物類
9.0 %
7.1%
果物類
6.0 %
5.9 %
牛乳
8.2%
鶏卵
6.6%
4.6%
小麦
5.3%
魚類
7.4%
第4位
魚卵
6.7%
第5位
甲殻類
果物類
5.1%
第6位
第7位
各年齢群
5%以上 占
4〜6歳 7〜19歳 20歳以上
記載
合計
魚類
4.4%
。
患者
他 甲殻類
A3
、
起
主要
甲殻類
図1 エビ イムノキャップ®現行品と改良品の相関
?
(UA/mL)
100
、 、
軟体動物、
、貝類、
共通抗原性
。
患者
対
症状 起
割合 65%、軟体動物
3)
。
7〜20% 報告
®
特異的IgE
、臨床的感度 変
(n=30)
10
1
0.35
改良
0.1
0.1
?
0.35
1
10
現行品
A4 当科 受診
患者30例(平均年齢
®
30歳、男5例、女25例) 対象 、
現行品 改良品 用
特異的IgE 測定 、臨床的感度
比較
。
結果、
1以上(特異的IgE濃度
56.7%、改良品
66.7%
≧0.35UA/mL) 、現行品
。現行品 陰性
13例
4例 、改良品
1以上
(図1)
。
結果
、
®
方 臨床的
改良
感度 高 結果
。
®
使用
原料 、現行
(甘
;
科)
、改良版
新
3種(
、
、芝
) 加
(図2)
。新
加
3種
、日本
食
科
。
、
科
科
、
(AK)
100
(UA/mL)
日常診療で使用されるアレルゲン検査キットに用いら
れている卵白のオボムコイドや小麦のω-5 グリアジン
などは、アレルゲンの構成成分のひとつです。これらは
アレルゲンコンポーネント(以下コンポーネント)と呼ばれ、
そのIgE抗体の測定は、アレルゲンの特異的IgE抗体の
測定に比べて、臨床上より有用な情報が得られるため、
多くのアレルゲンでその開発が望まれています1)。
近年、多数のコンポーネントが同定され、その臨床応用
が検討されており、これらはWHO/IUIS※アレルゲン命名
委員会で管理されています。
エビの主要コンポーネントとしては、トロポミオシンが
最もよく知られています。トロポミオシンは筋原線維の
タンパク質で、加熱しても抗原性が減弱しないため、エビ
の重要なコンポーネントとして理 解されてきました 2)。
下の相関図をみると、抗トロポミオシンIgE抗体が陰性
または低値の例でも抗エビIgE抗体が高値を示す例が
多数認められることから、トロポミオシン以外にも重要な
6)
。抗原性 異
抗原性 異
報告
2科
原料 用
、 高感度 特異的IgE
測定
可能
思
。
特異的IgE 陽性
症状 起
限
、
即時型 食物
、特異的IgE 産生
前提
、
特異的IgE 有無 確認
診断
重要
。特 甲殻類 原因
食物
、症状 重篤
多
、
症状 起
患者
検査
®
検出
必要
。今回、
改良
、 感度 高
、診断
®
質 向上 繋
思
。病歴 聴取、
IgE測定
食物
用
即時型
診断
必要
。
十脚目
亜目
(根鰓亜目)
下目
科
図 抗トロポミオシンIgE抗体と抗エビIgE抗体の相関
表 エビのアレルゲンコンポーネント
例)ブラックタイガー(
100
Tropomyosin
属
属
亜目
(抱卵亜目)
下目
下目
下目
下目
異尾下目
短尾下目
科
属
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
1)今井孝成:アレルギー・免疫 17(6)
:998-1003, 2010
2)食物アレルギー診療ガイドライン2012
3)富川盛光他:アレルギー 55(12)
:1536-1542, 2006
4)相原雄幸:アレルギー 56(5)
:451-456, 2007
5)足立厚子:アレルギーの臨床 25(5)
:414, 2005
6)宮沢博他:アレルギー 54(3,4)
:403, 2005
■
(
)
■
■
(
)
●■
長尾類
(
)
等
等
等
異尾類
短尾類
(
)
)
Pen m 1
トロポミオシン
Pen m 2
アルギニンキナーゼ
Pen m 3
ミオシン軽鎖
Pen m 4
筋形質カルシウム結合タンパク
Pen m 6
トロポニンC CBP*
10
1
IgE
CBP*
CBP*
*CBP:カルシウム結合タンパク http://www.allergome.org
0.1
0.1
1
10
エビIgE
100
(UA/mL)
参考文献
●:現行品 原料 用
■:改良品 原料 用
属
※International Union of Immunological Societies
(UA/mL)
ファディア社内資料
図2 エビの種類とエビ イムノキャップ®の原料
コンポーネントの存在が示唆されます。また、エビのトロ
ポミオシンはエビが属す甲殻類だけでなく、クモ類(ダニ
を含む)、昆虫類などの節足動物や貝類、イカ、タコなど
の軟体動物のトロポミオシンとの強い交差性が知られて
います2)。
エビのアレルゲンコンポーネントには、トロポミオシン
以外のコンポーネントも登録されています(下表)3-5)。
その他にもヘモシアニン6)、70kdタンパク7)などの報告が
あり、それらの臨床応用が検討されています。トロポミオ
シンをはじめとするいくつかのエビコンポーネントについ
ては、エビアレルギー診断におけるIgE抗体測定の有用性
がすでに報告され、臨床応用が期待されています8-10)。
ファディア社では、現在、研究用の特異的IgE測定用の
コンポーネントを販売しており、アレルギー診断における
有用性を多くの先生方と共同で検討し、日常検査での
応用を模索しております。
[兵庫県立加古川医療センター皮膚科提供]
トロポミオシン
?
運動
(散歩、
、入浴等) 症例
異
、運動誘発負荷試験 実施
再現性 低
症状
場合
。
、
患者
症状 発現
状況
十分 問診
行
、
特異的IgE検査 感作
特定
、正確 診断 有用
。
③接触蕁麻疹
、摂取
以外 殻 剥
皮膚 痒
接触蕁麻疹
Protein Contact
Dermatitis(PCD) 原因
多 報告
。
接触蕁麻疹
PCD 場合
、特異的IgE 関与
即時型
場合 、特異的IgE 関与
非免疫
的機序
、
遅延型
3通
考
。診断 際
、血中特異的IgE検査
、
5)
。従来
皮膚
行 必要
®
特異的IgE
、
原料 加熱
使用
、熱 弱
対
特異的IgE 検出
場合
。
今回、
改良
、原料
生
含
、 高感度 特異的IgE 検出
可能性
、
期待
。 接触蕁麻疹
患者
中
食
症状
人 、
食
症状
人 2通
。個々
患者
病歴
把握
必要
。
改良品
A1 食物
子供 病気
印象 持
方 多
、成人
学童期
同 割合 食物
存在
考
1)
。
日本 消費量 多 、生食、加熱調理食品
加工食品
、広 食
。
甲殻
類 、食物
原因
頻度 高 、小児、成人
上位 入
。厚生労働省研究班 調査
、甲殻類 食物
原因食品
、2、3
歳児
第5位 、4〜6歳 児
第3位、7〜19歳
20歳以上
第1位 上
(表1)2)。
、甲殻類 中
、
原因
最
多
。
エビのアレルゲンコンポーネント
トロポミオシンだけが主要コンポーネントではない
エビ即時型アレルギー の診断向上
食物
ア
アレルギーの診断と検査
1)Borres MP et al:Pediatr Allergy Immunol 22(5)
:454-461, 2011
2)Marknell-DeWitt A et al:Mol Nutr Food Res 48(5)
:370-379, 2004
3)Garcia-Orozco KD et al:Int Arch Allergy Immunol 144(1)
:23-28, 2007
4)Shiomi K et al:Int Arch Allergy Immunol 146(2)
:91-98, 2008
5)Ayuso R et al:J Allergy Clin Immunol 122(4)
:795-802, 2008
6)Piboonpocanun S et al:Mol Nutr Food Res 55(10)
:1492-1498, 2011
7)原田晋他:皮膚臨床 54(1)
:79-82, 2012
8)Albrecht M et al:J Allergy Clin Immunol 124(2)
:328-336, 2009
9)Gamez C et al:Allergy 66(10)
:1375-1383, 2011
10)Ayuso R et al:Clin Exp Allergy 42(2)
:293-304, 2012
アレルゲンコンポーネントの命名
分類上の属名の最初の3文字に種小名の最初の1文字に登録
された順に番号を付ける。
ブラックタイガーの場合、属名(
)の最初の3文字
Penに種小名(
)の最初の文字mを付し、1番目に
登録されたトロポミオシンであればPen m 1と命名される。
エビのトロポミオシンについては研究用試薬にて測定可能です。
詳しくはお問い合わせ下さい。
記事に関するイムノキャップ ® で
測定可能な主な項目
エビ、ロブスター、カニ、イカ、タコ
お問い合わせ先
[食物アレルギー診療ガイドライン2012]
0120-489-211
1206-MD-304-1
発行
URL:http://www.thermoscientific.com/phadia/ja
ファディア社発行 ALLAZiN Summerより