スコールラインの水収支解析 - 暴風雨・気象環境研究分野

スコールラインの水収支解析
京都大学大学院 理学研究科
地球惑星科学専攻
暴風雨・気象環境研究分野
石塚 隼也
2009 年 1 月
2
論 文 要 旨
スコールラインの構造・水収支は,環境場(湿潤プロファイルや風の鉛直シア)の影響を受け
て大きく変化する.湿潤プロファイルのみ,或いは風の鉛直シアのみを変化させてスコールラ
インの水収支の変化を調べた研究はあるが,双方を変化させて水収支の変化を定量的に示した
研究はない.また,水収支は使用する微物理過程の影響を大きく受けるため,異なる微物理過
程を使用した研究を単純に比較することはできない.本研究では湿潤プロファイル・風の鉛直
シアを様々に変化させ,環境場の変化がスコールラインの構造と水収支に及ぼす影響について
領域気象モデルを用いて調べた.
National Centers for Environmental Prediction(NCEP)/The National Center for
Atmospheric Research(NCAR)で開発された WRF モデルを用い,雲微物理モジュールで計算
される異なる水物質間の変換量を積算出力する機能を加えた.これを用いて,下層水蒸気量,
鉛直シアを様々に変化させた 24 タイプの中緯度スコールラインの 2 次元数値実験を行い,以
下の結果を得た.
<環境場変化がスコールラインの構造に及ぼす影響>
環境場の変化に伴い再現されたスコールラインをコールドプール強度と鉛直シアを用いて
Upshear,Erect,Downshear 構造に定量的に分類し,解析を行った.鉛直シアが強くなるに
つれ,ストームは Upshear,Erect,Downshear 構造をとることが再確認され,下層水蒸気量
が多いほど,鉛直シアを強くしても Erect 構造から Downshear 構造になりにくい.
<環境場変化がスコールラインの水収支に及ぼす影響>
下層水蒸気量が多いほど,凝結量,降水量,蒸発量は増加する傾向がある.また,Upshear,
Erect 構造では下層水蒸気量が同じであれば,鉛直シアが強くなっても凝結量はほとんど変化
しないが,蒸発量(特に雲水の蒸発量)が減少するため降水効率は高くなる.一方,Downshear
構造では鉛直シアが増加するほど,凝結量,蒸発量,降水量は減少し,降水効率も低くなる.
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
3
目次
要旨
目次
第1章
1.1
序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
スコールラインについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
1.1.1
スコールラインの定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
1.1.2
中緯度スコールラインの発生環境場 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
1.1.3
中緯度スコールラインの構造と力学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
1.2
先行研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
1.2.1
風の鉛直シアとストーム構造の関係についての研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
1.2.2
風の鉛直シアと降水効率の関係についての研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
1.2.3
湿潤プロファイルと降水効率の関係についての研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
第2章
2.1
数値モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
数値モデル(WRF)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
2.1.1
2.2
基本方程式系・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
雲微物理スキーム(WSM6スキーム) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
2.2.1
WSM6 スキーム概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2.2.2
水物質のカテゴリー変換の分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2.2.3
雲氷の数濃度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2.2.4
水物質混合比の生成・消滅項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
実験設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
第3章
3.1
実験設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
3.1.1
モデル設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
3.1.2
環境場の初期値・境界値設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
第4章
4.1
実験結果・解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
スコールラインの構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
4.1.1
スコールラインの外観 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
4.1.2
コールドプール強度の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
4.1.3
スコールラインの構造分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
4.1.4
ストームの構造と対流セル構造の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
4.2
スコールラインの水収支 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
4.2.1
水収支の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
4.2.2
降水効率の定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
4.2.3
スコールラインの水収支と降水効率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37
2009 年 1 月 修士論文
4
4.2.4
第5章
水物質変化量の鉛直分布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
ストームの構造と水収支の関係に関する考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
5.1.1
ストームの構造と降水効率に関する考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
5.1.2
ストームの構造とコールドプールの形成についての考察・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
第6章
まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
6.1
環境場変化とストームの構造の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
6.2
環境場変化と水収支の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
謝辞
参考文献
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
5
第1章 序論
1.1
スコールラインについて
スコールラインとは,広義には対流セル(積乱雲)が線状に並んだ線状メソ対流系を指す.熱
帯海域やアメリカ中西部での観測例が多く,線の水平スケールが数 100km に及び数時間持続
することもある.熱帯スコールライン・中緯度スコールライン共に本質的には同様の構造を持
つ.一方,日本やその近海でのスコールラインの観測例は少なく,亜熱帯スコールラインの一
般的な構造はよく理解されていない.本研究では,スコールラインの構造と環境場の感度を調
べるにあたり,構造が明確であり,かつ環境場プロファイルを調節しやすいことから,中緯度
でのスコールラインを対象として実験・解析を行う.
本章の 1.1.1−1.1.3 は小倉(1997,1999)に基づいてスコールラインの定義や特徴について述
べる.
1.1.1
スコールラインの定義
小倉(1997,1999)によると,対流セルとそれに伴う層状の雲が合わさってメソスケールの大き
さになるものを一般にメソ対流系(mesoscale convective system)といい,Table.1.1 のように分
類される.このうち線状メソ対流系は,鉛直シアに直交し比較的移動速度の速いスコールライ
ン型と鉛直シアに平行で移動速度の遅い非スコールライン型に分類され,前者をスコールライ
ン(squall line),後者をレインバンド(reain band)と呼ぶ.しかし,どの程度以上の速度で伝播
すればスコールラインと呼ばれるのか定義はされていない.
本研究では,雲列の移動速度に関係なく,線状メソ対流系が線に直交して移動するものをス
コールラインと呼ぶ.日本の梅雨期などで見られる線状降水帯はレインバンドの特徴を持ち,
本研究のスコールラインの定義には含まれない.
団塊状
組織化されていないマルチセル型(気団性雷雨)
組織化されたマルチセル型
スーパーセル型
メソスケール対流複合体(MCC)
線状
スコールライン型(急行型,鉛直シアに直交型)
非スコールライン型(鈍行型,鉛直シアに平行型)(レインバンド型)
Table.1.1 メソ対流系の分類(小倉 1997)
1.1.2
中緯度スコールラインの発生環境場
アメリカ中西部では春季にスコールラインがよく発達し,観測例も多い.Fig.1.1 にスコール
ライン発生前の典型的な大気環境場を示す.これを見ると,地上から 770hPa まで湿った対流
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6
混合層があり,その上の 770hPa から 700hPa までは逆転層(安定層)となっていることが分か
る.さらに,安定層より下は湿潤な混合層で占められ,一方安定層より上では大気は乾燥して
おり,
対流不安定の強い環境であることが見てとれる.
このように最下層に湿潤な大気があり,
その上に乾燥大気がある対流不安定の強い状態は,スコールラインのような対流系が発生する
のに適した環境場である.
Fig.1.1 スコールライン発生前の大気プロファイル(Ogura and Liou,1980)
1.1.3
中緯度スコールラインの構造と力学
一般的な積乱雲の寿命は 30 分から 1 時間程度の短寿命であるのに対し,一般的にスコール
ラインは長寿命である.例えば,1976 年 Oklahoma でのスコールラインの観測では,少なく
とも 4 時間は持続していた(Oguran and Liou,1980).Fig.1.2 を基に,スコールラインが長時
間持続するメカニズムを構造と共に述べる.
スコールラインの先端部には対流セルの並ぶ対流領域(convective region),その背後の中層
から上層には層状の雲から成る層状領域(stratiform region)がある.対流雲からの降水が蒸発
することで雲底下にはコールドプールが形成される.冷たく重い空気塊は地表面にぶつかりス
コールラインの前後に広がり,ガストフロントを形成する.スコールライン先端部のガストフ
ロントでは境界層内の高相当温位の大気が持ち上げられ,新たに対流雲が形成される.形成さ
れた対流雲はスコールラインに相対的に後方に流され,後に衰退して層状雲となる.このよう
な対流雲の世代交代が繰り返されることでスコールラインは長時間持続される.理想的な環境
場であれば,理論上スコールラインは半永久的に持続する.
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7
ここで,Fig.1.2 で示されるようなスコールラインの構造は,対流が定常状態にあるのではな
く,対流雲が形成・衰退する周期的な準定常状態であることに留意しておく.
Fig.1.2 中緯度スコールラインの構造模式図(Houze et al,1989)
1.2
先行研究
スコールラインは他のメソ対流系と比べてそれほど頻繁に出現する気象現象ではない.
1974 年に実施された熱帯海域の観測プロジェクト GATE(Global Atmospheic Tropical
Experiment)の観測期間では,観測された雲クラスターのうちスコールラインと同定されたも
のは約 10%であった(小倉,1997).にもかかわらず,スコールラインは一度発生すると,対流雲
が周期的に発生し長時間維持するという興味深い特徴を持つため,好んで研究対象とされてき
た.特に,発生環境場(風の鉛直シアや湿潤プロファイル)がスコールラインの形状・強度に及
ぼす影響は興味深く,これまでに数値実験を主とした数々の研究がなされている.
1.2.1
風の鉛直シアとストーム構造の関係についての研究
Rotunno Klemp and Weisman(1988)(以下 RKW),Weisman and Rotunnno(2004)(以下
WR04)は,数値実験の解析結果からスコールラインのストームの構造が形成されるコールドプ
ールの速度(C)と風の鉛直シアの強さ(⊿U)のバランスにより決まることを示した.つまり,⊿
U に対して C がかなり小さい時には形成されるストームは Downshear 構造を,⊿U と C が同
程度の時には Erect 構造を,⊿U に対して C がかなり大きい時には Upshear 構造をとる
(Fig.1.3).
ただし,どの程度以上の⊿U と C であれば Erect 構造をとるかといった閾値についての議論
はなされていない.
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8
Fig.1.3 とストームの構造とコールドプールの速度(C)及び風の鉛直シア(⊿U)の関係
(Weisman and Rotunno,2004)
1.2.2
風の鉛直シアと降水効率の関係についての研究
Fovell and Ogura(1989)(以下 FO89)は,中緯度スコールラインの 2 次元数値実験により,鉛
直シアが強くなるにつれ降水量は増加するが,降水効率はほぼ一定であるとする結果を得た.
一方で,Ferrier et al(1996)(以下 F96)は,中緯度スコールラインの 2 次元数値実験において,
ある程度までは鉛直シアが強くなるにつれて降水効率が増加するが,さらに鉛直シアを強くす
ると降水効率は減少するという結果を得ている.また,WR04 は中緯度スコールラインの 3 次
元数値実験を行い,特に議論はされていないが,その結果から降水効率を算出すると,ある程
度までは鉛直シアが強くなるにつれて降水効率が増加するが,さらに鉛直シアを強くすると降
水効率は減少する傾向が見てとれる.ここで,各々の研究において用いられた温度・湿潤プロ
ファイル,数値モデルや微物理スキーム等が異なることを補足しておく.また,FO89 と WR04
では鉛直シアの強さが変化しても鉛直シアの深さは変化しない与え方を,一方で F96 は鉛直シ
アが強くなるとシアの深さも深くなる与え方をしている.また,降水効率は使用する微物理ス
キームの影響を受ける(FO89).
F96 は,鉛直シアと降水効率の関係を,モデル雲微物理スキーム中の水物質の変換量を求め
ることで,ストームの傾きに関連付けて説明した.つまり,鉛直シアが強ければストームは直
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9
立し(Erect 構造,Fig.1.4,b),雲域と中層の乾燥域との接触面積が少なくなるため,相対的な蒸
発量は減少し降水効率は高くなる.一方で,鉛直シアが弱ければストームは上層ほど進行方向
と逆方向へ傾き(Upshear 構造,Fig.1.4,c),雲域と中層乾燥域との接触面積が多くなり,相対
的な蒸発量は増加し降水効率は低くなるとする解釈である.
Fig.1.4 対流の Downshear,Erect,Upshear 構造と降水効率の関係模式図(Ferrier,1996)
1.2.3
湿潤プロファイルと降水効率の関係についての研究
Lucas et al(2000)(以下 L00)は,熱帯での観測に基づいた風の鉛直シアと熱帯プロファイル
をベースとした温度・湿潤プロファイルのそれぞれを変化させた 2 次元数値実験を行った.そ
の結果,熱帯の風の鉛直シアでは最下層 500m より上層の湿度を増加させると,降水効率が高
くなることを示した.一方,FO89 で用いられた鉛直シアプロファイルでは,最下層 500m よ
り上層の湿度を増加させると凝結量・蒸発量・降水量は増加するが,降水効率はそれほど変化
しないとする結果を得た.
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10
1.3 研究目的
先行研究に示されるように,スコールラインの構造・水収支は,環境場(湿潤プロファイルや
風の鉛直シア)の影響を受けて大きく変化する.
風の鉛直シア変化と降水効率の関係を調べた研究では,鉛直シアが強まると降水効率が高く
なるとする研究結果(F96,WR04)と鉛直シアに依らず降水効率はほぼ一定であるとする研究結
果(FO89)があり,見解が一致していない.次に,湿潤プロファイルの変化と降水効率の関係を
調べた研究は,熱帯プロファイルでの最下層 500m 以上の湿度を増加させても降水効率はほぼ
一定とする研究結果(L00)のみである.また,降水効率と雲微物理スキームでの水物質の変換量
に着目して,環境場変化による降水効率の違いを説明した研究は F96 のみである.
よって湿潤プロファイルのみ,或いは風の鉛直シアのみを変化させてスコールラインの水収
支の変化を調べた研究はあるが,
双方を変化させて水収支の変化を定量的に示した研究はない.
また,水収支は使用する微物理過程の影響を大きく受けるため,異なる微物理過程を使用した
研究を単純に比較することはできない.
本研究では,環境場の変化がスコールラインの構造と水収支に及ぼす影響について調べるこ
とを目的として,水収支を解析するにあたり水物質のカテゴリー変換量を再定義した上で,下
層水蒸気量,鉛直シアを様々に変化させた 24 タイプの中緯度スコールラインの 2 次元数値実
験を行った.
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第2章 数値モデル
2.1
数値モデル(WRF)
本研究での数値実験には,National Centers for Environmental Prediction(NCEP)/The
National Center for Atmospheric Research(NCAR) で開発された領域気象モデルである
Weather Research and Forcasting(WRF)Model Version 3.0 (以下 WRF)を用いた.
WRF は完全圧縮形,非静力学モデルであり,鉛直座標系は Terrain-following 静力学気圧座
標をとる.格子点には Arakawa C-grid が採用されている.数値計算では,水平・鉛直方向と
もに Runge-Kutta の 2 次と 3 次の時間積分,
及び 2 次から 6 次の移流スキームを含んでいる.
以降,本論文では水蒸気,雲粒,雲氷,雨粒,雪,霰をそれぞれ v,c,i,r,s,g で表すこ
とがある.
2.1.1
基本方程式系
WRF は地形に沿ったη座標系(Terrain-following 静力学気圧座標)をとる.η面は,
Pdh
Pdht
(2.1)
,
d
で定義される.ここで,Pdh は乾燥大気の静水圧,Pdht はモデル上端の乾燥大気の静水圧,μd
は乾燥大気の質量を表す.
風の水平・鉛直成分(u,v,w),η座標系での鉛直速度(ω),温位(θ),水物質の混合比(qm=qv,
qc,qi,qr,qs,qg)はμd を用いてフラックス形で表せる.
U
d
u ,V
d
v ,W
d
w,
d
,
d
, Qm
d
qm .
水平・鉛直フラックス(U,V,W),温位フラックス(Θ),乾燥大気の質量(μd),ジオポテンシ
ャル高度(Φ;Φ=gz),水物質フラックス(Qm)は時間発展方程式で表現される式(2.2)-(2.8).
U
t
Uu
x
Vu
y
u
d
p
x
p
d
x
FU
(2.2)
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12
V
t
Uv
x
Vv
y
W
t
Uw
x
Vw
y
t
U
x
V
y
U d
x
d
t
1
t
U
d
Qm
t
U
v
p
y
d
w
p
p
g
(2.3)
FV
y
d
(2.4)
FW
d
d
V
d
F
(2.5)
d
(2.6)
y
x
qm
x
V
V
(2.7)
gW
y
qm
y
qm
(2.8)
FQm .
ここで,αd は乾燥大気の比容(αd=1/ρd,ρd は乾燥大気の密度),αは水物質を含んだ比容(α
=αd /(1+qm)),F*はコリオリ力,屈曲項,乱流拡散,モデルで生じる強制力(雲微物理過程での
水物質の生成・消滅)を含んでいる.
αd 及び水蒸気を含んだ大気の圧力 p は,
d
p
p0
Rd
p0
(2.9)
d
m
(2.10)
,
d
により,診断的に求められる.ここで,Rd は乾燥大気の気体定数,θm は仮温位( θm=θ
[1+(Rv/Rd)qm]≒ θ (1+1.61qm)), Rv は湿潤大気の気体定数), p0 は基底圧力(典型的には
1000hPa),γ=(Cp/Cv)=1.4,(Cp は定圧比熱,Cv は定容比熱)である.
水平・鉛直の圧力勾配や浮力の計算時に生じる打ち切り誤差・丸め誤差を減らす為,静水圧
平衡している状態を基準状態とし,そこからの偏差を摂動として表す.摂動は, p,Φ,α,
μd に適用される.
p
p
p ,
京都大学大学院 理学研究科
,
,
d
d
d
.
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13
コリオリ力(F*cor)は,鉛直方向へのコリオリ力も考慮して以下の式で表される.
FUcor
fV
eW cos
FVcor
fU
eW sin
FWcor
e U cos
r
(2.11)
r
(2.12)
r
V sin
ここで,αは y 軸と経線の間の局所的な回転角,ψは緯度, f
r
(2.13)
.
e
sin , e
e
cos ,
Ωe は地球の自転角速度である.
屈曲項(F*cur)は,以下の式で与えられる.
uW
re
FUcur
FVcur
FWcur
(2.14)
vW
re
uU
(2.15)
vV
re
.
(2.16)
ここで,re は地球の半径である.
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14
2.2
雲微物理スキーム(WSM6スキーム)
雲微物理スキームは,数値モデルの中で水物質(水蒸気,雲水,雨粒など)の微物理過程(凝結,
蒸発,衝突併合など)や降水過程を解くスキームである.一般的なバルク法の雲微物理スキーム
では,水蒸気凝結物を雲粒,雨粒などのカテゴリーに分類し,それらを混合比のみ或いは混合
比と数濃度を用いて表し,その時間発展を解いている.
WRF(Version3)には 9 種類の雲微物理スキームがあり,数値実験でどの雲微物理スキームを
使用するかを選択できる(Table.2.1).Fig.2.2 に微物理スキームの予報変数の相関関係を示す.
スコールラインを形成する対流雲の上層は氷相過程を含むことを踏まえ,Lin,WSM5,WSM6,
Eta New(Ferrier)の 4 スキームで数値実験を行い,再現結果を比較した.WSM5,WSM6,
Eta New(Ferrier)スキームでは計算開始から約 4 時間でスコールラインに特徴的な対流セルの
準定常状態が再現された.Lin スキームでは対流セルの準定常状態が再現されず,時間ととも
に上層の層状雲が拡大していく結果であった.本研究では予報変数数が最も多くスコールライ
ンの再現性が良い結果を得た WSM6 スキームを雲微物理スキームとして用いる.
微物理スキーム名
予報変数の数
予報変数の種類
Kessler
3
水蒸気,雲水,雨粒
Lin
6
水蒸気,雲水,雨粒,雲氷,雪,霰
WSM3
3
水蒸気,雲水,雨粒
WSM5
5
水蒸気,雲水,雨粒,雲氷,雪
WSM6
6
水蒸気,雲水,雨粒,雲氷,雪,霰
Eta new(Ferrier)
2
水蒸気,水蒸気凝結物
Thompson
7
水蒸気,雲水,雨粒,雲氷,雪,霰、ice の
数濃度
Gsfcgce
-
-
More two moment
-
-
Table.2.1 WRF に含まれる微物理スキームの比較
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http://www.mmm.ucar.edu/wrf/users/tutorial/200707/WRF_Physics_Dudhia.pdf
Fig.2.1 微物理スキームの予報変数相関図
WSM6 スキーム概要
WSM6 スキームは水物質の混合比として,水蒸気,雲水,雲氷,雨粒,雪,霰の計 6 変数を
扱う雲微物理スキームである.雲氷,雪,霰が氷相過程として含まれている.また,WSM6 ス
キームで用いられる微物理過程のパラメタリゼーションの詳細は Hong et al(2004)に記されて
いる.
2.2.2
水物質のカテゴリー変換の分類
WSM6 スキームでは微物理過程による,水物質(水蒸気,雲水,雲氷,雨粒,雪,霰)の間で
のカテゴリー変換量が計算される.
スコールラインの水収支を解析するにあたり,それに伴う水物質のカテゴリー変換量を出力
する必要がある.しかし,WSM6 スキーム内で各微物理過程が計算されるものの,その際の水
物質のカテゴリー変換量は出力されない.また,微物理過程の計算では[雲水の凝結生成]/[雲水
の蒸発]といったカテゴリー変換は 1 つ式で同時に取り扱われ,どちらのカテゴリー変換かは正
負の値で分類される.よって本研究では,各微物理過程で扱われる水物質のカテゴリー変換量
を,カテゴリー変換の分類を行ったうえでモデル output に出力するようにした(Table.2.2).
2.2.3
雲氷の数濃度
雲水,雲氷,雨粒,雪,霰の数濃度は予報変数に含まれていない.ただし,雲氷の数濃度(Ni)
のみ雲氷混合比(qi)の関数として診断的に算出される(2.17).
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16
Ni
5.38
qi
0.75
(2.17)
.
ここで,ρは大気密度である.
2.2.4
水物質混合比の生成・消滅項
雲微物理過程により計算される水物質混合比(qv , qc , qi , qr , qs , qg)の生成・消滅項
( S qv , S qc , S qi , S q r , S q s , S q g )を式(2.18)-(2.23)に示す.
(a) 水蒸気混合比(qv)の生成・消滅項; S qv
S qv
[ REVP ] [ SEVP ] [GEVP ] [ ISUB] [ SSUB] [GSUB] [WCND ]
(2.18)
[ RCND ] [ IDEP] [ SDEP] [GDEP] [ IGEN ]
(b) 雲水混合比(qc)の生成・消滅項; S qc
S qc
[WCND ] [ IMLT ] - [WEVP ] - [ IHMF ] - [ IHTF ] [ RAUT ] [ RACW _ R ]
[ AACW _ R ] [ AACW _ SG ]
(2.19)
(c) 雲氷混合比(qi)の生成・消滅項; S qi
S qi
[ IDEP] [ IGEN ] [ IHMF ] [ IHTF ] [ ISUB] [ SAUT ] [ IMLT ]
(2.20)
[ RACI _ S ] [ RACI _ G ] [SACI _ S ] GACI _ G ] [ IFALL]
(d) 雨粒混合比(qr)の生成・消滅項; S q r
S qr
[ RCND ] [ RAUT ] [ SMLT ] [GMLT ] [ SEML ] [GEML] [ RACW _ R ]
[ AACW _ R ] [ REVP ] [GFRZ ] [ IACR _ S ] [ IACR _ G ] [ SACR _ S ]
(2.21)
[ SACR _ G ] [ RFALL ]
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(e) 雪混合比(qs)の生成・消滅項; S q s
S qs
[ SDEP ] [ SAUT ] [ IACR _ S ] [ RACI _ S ] [ SACI _ S ] [ SACR _ S ]
[ AACW _ SG ] / 2 [ SEVP ] [ SSUB ] [GAUT ] [ SMLT ] [ SEML ]
(2.22)
[ RACS _ G ] [ SFALL ]
(f) 霰混合比(qg)の生成・消滅項; S q g
S qg
[GDEP] [GFRZ ] [GAUT ] [ IACR _ G ] [ RACI _ G ] [ RACS _ G ]
[ SACR _ G ] [GACI _ G ] [GACR _ G ] [ AACW _ SG ] / 2 [GEVP ]
(2.23)
[GSUB] [GFALL ]
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Symbols
Trancefor-
Definition
mation
WCND
v->c
雲水の凝結生成(Condensation of CLOWD WATER)
RCND
v->r
雨粒の凝結生成(Condensation of RAIN)
IDEP
v->i
雲氷の昇華生成(Deposition of ICE)
SDEP
v->s
雪の昇華生成(Deposition of SNOW)
GDEP
v->g
霰の昇華生成(Deposition of GRAUPEL)
WEVP
c->v
雲水の蒸発(Evaporation of CLOUD WATER)
REVP
r->v
雨粒の蒸発(Evaporation of RAIN)
SEVP
s->v
雪の融解蒸発(Evaporation of SNOW)
GEVP
g->v
霰の融解蒸発(Evaporation of GRAUPEL)
ISUB
i->v
雲氷の昇華消滅(Sublimation of ICE)
SSUB
s->v
雪の昇華消滅(Sublimation of SNOW)
GSUB
g->v
霰の昇華消滅(Sublimation of GRAUPEL)
IGEN
v->i
昇華核形成(Generation of ICE)
IHMF
c->i
均質凍結核形成(Homogeneous freezing of CLOUD WATER)
IHTF
c->i
不 均 質 凍 結 核 形 成 (Heterogeneous freezing of CLOUD
WATER)
GFRZ
r->g
雨粒の凍結(Freezing of RAIN)
RAUT
c->r
雨粒の Autoconversion (Autoconversion of RAIN)
SAUT
i->s
雪の Autoconversion (Autoconversion of SNOW)
GAUT
s->g
霰の Autoconversion (Autoconversion of GRAUPEL)
IMLT
i->c
雲氷の融解(Melting of ICE)
SMLT
s->r
雪の融解(Melting of SNOW)
GMLT
g->r
霰の融解(Melting of GRAUPEL)
SEML
s->r
雪の強制融解(Enhanced Melting of SNOW by WATER)
GEML
g->r
霰の強制融解(Enhanced Melting of GRAUPEL by WATER)
IACR_S
r->s
雲氷による雨粒の併合 (Acceretion of RAIN by ICE)
IACR_G
r->g
雲氷による雨粒の併合 (Acceretion of RAIN by ICE)
RACW_R
c->r
雨粒による雲水の併合(Acceretion of CLOUD WATER by
RAIN)
RACI_S
i->s
雨粒による雲氷の併合 (Acceretion of ICE by RAIN)
RACI_G
i->g
雨粒による雲氷の併合(Acceretion of ICE by RAIN)
RACS_G
s->g
雨粒による雪の併合(Acceretion of SNOW by RAIN)
SACI_S
i->g
雪による雲氷の併合(Acceretion of ICE by SNOW)
SACR_S
r->s
雪による雨粒の併合(Acceretion of RAIN by SNOW)
SACR_G
r->g
霰による雨粒の併合(Acceretion of RAIN by SNOW)
GACI_G
i->g
霰による雲氷の併合(Acceretion of ICE by GRAUPEL)
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
19
GACR_G
AACW_R
AACW_SG
r->g
c->s,g
c->s,g
霰による雨粒の併合(Acceretion of RAIN by GRAUPEL)
雪と霰による雲水の併合(Acceretion of CLOUD WATER by
SNOW and GRAUPEL)
雪と霰による雲水の併合(Acceretion of CLOUD WATER by
SNOW and GRAUPEL)
IFALL
i->-
雲氷の地表への降水(Precipitation of ICE)
RFALL
r->-
雨粒の地表への降水(Precipitation of RAIN)
SFALL
s->-
雪の地表への降水(Precipitation of SNOW)
GFALL
g->-
霰の地表への降水(Precipitation of GRAUPEL)
Table.2.2 カテゴリー変換項の説明
x->y は x から y へのカテゴリー変換を示す
2009 年 1 月 修士論文
20
第3章 実験設定
3.1
3.1.1
実験設定
モデル設定
スコールラインの線に直角な方向を x 軸、平行な方向を y 軸とすると,スコールラインは線
状に組織化された構造を持つため,y 軸方向にはほぼ同様の構造を持つ.よって本研究では,y
軸方向には一様な構造を仮定し,スコールラインの線に直角な x-z 断面での鉛直 2 次元数値実
験を行う.
数値実験で使用したモデル(WRFV3)の実験設定を Table.3.1 に示す.水平区間は 1km×
600grid で 600km,鉛直には高度 20km までに層厚約 250m 間隔で 80 層に分割される.スト
ームにおおよそ相対的な風の場を想定して環境場を作る都合から,地表面摩擦は 0(スリップ面)
としている.また,対流を発生させるため,初期場の領域中央に水平半径(長径)4km,高さ半
径(短径)1.5km,中心で+3K,外側にいくほど大気環境場と温度偏差が小さくなる楕円型サーマ
ルを置いている(Fig.3.1).
Model
WRF(Version3.0)
X range
1km×600grid
Z range
80level (top 20km)
Time step
10s
Run time
6h
Microphysics
WSM6(3-ice phase)
Coriolis
None
Surface friction
None
Radiation sheme
None
Boundary layer sheme
None
Table.3.1 モデルの実験設定
Fig.3.1 数値実験の計算領域と初期擾乱(サーマル)の位置
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
21
3.1.2
環境場の初期値・境界値設定
(a) 温度・水蒸気の鉛直プロファイル
数値実験で用いた熱・水蒸気プロファイルの初期値・境界値は,Weisman and Klemp(1982)
で用いられた中緯度の対流不安定な大気プロファイルを想定した式に基づいて作成し,水平一
様に与えた.
温位(θ(z)),相対湿度(RH(z))の鉛直プロファイルは,
0
(
tr
( z)
tr
Rh( z )
z
0)
z tr
g
exp
(z
c p Ttr
3 z
1
4 z tr
0.25 5/4
, z
z tr
(3.1)
z tr ) , z
z tr
5/ 4
, z
z tr
, z
z tr
,
(3.2)
で示される(Weisman and Klemp.1982)(Fig.3.3,Fig.3.4).ここで,ztr,θtr,Ttr,θ0 は,対流
圏界面高度(ztr=12km),対流圏界面温位( θ tr=343K),対流圏界面温度(Ttr=213K),地表面
(1000hPa 面)の温位(θ0=300K)とする.
ただし,WRF の初期値・境界値データ(input_sounding)
は水蒸気の鉛直プロファイルを水蒸気混合比(qv[g/kg])で与える必要があるため,実際には式
(3.2)で計算した相対湿度を水蒸気混合比に変換し用いる(Fig.3.2).
本研究では,
大気下層の相対湿度がスコールラインの構造・強度に与える影響を調べるため,
大気境界層付近の水蒸気混合比の取り得る最大値(Qv)を 12,14,16,18(g/kg)と変化させ 4 タ
イプの湿潤鉛直プロファイルを作成した.
通常,大気混合層では水平風速,温位,水蒸気混合比はほぼ一定になる.1976 年に Oklahoma
で観測されたスコールラインの発生前環境場の大気混合層は約 2km であった(Fig.1.1)(Ogura
and Liou(1980)).しかし,本研究での環境場設定では特に混合層の影響は考慮していない.
2009 年 1 月 修士論文
22
Qv=12,14,16,18
Fig.3.2 水蒸気混合比(qv)の初期値・境界値鉛直プロファイル
左から Qv=12,14,16,18
θ
θe
Fig.3.3 温位(θ)・相当温位(θe)の初期値・境界値鉛直プロファイル
θe は左から Qv=12,14,16,18
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
23
Fig.3.4 湿度(Rh)の初期値・境界値鉛直プロファイル
左から Qv=12,14,16,18
(b) 水平風の鉛直プロファイル
水平風(U(z))の鉛直プロファイルの初期値・境界値は,Weisman and Klemp(1982)の式(3.3)
を基にして,式(3.4)で与えた.
U ( z ) Us tanh( z / zs )
(3.3)
U ( z ) Us tanh( z / zs ) Us .
(3.4)
ここで,Us は下層と上層での鉛直シアの最大値を調節する役割をする.また,zs は鉛直シア
の深さを調節する役割をする.式(3.4)は地面摩擦を 0(スリップ)とすることで,地表面が−Us
で移動している状態を擬似的に作り出している(Fig.3.5).これにより,式(3.3)で求められる水
平風の鉛直シアを保った状態(Fig.3.6)のまま,再現されるストームはほとんど移動せずに同じ
箇所に留まり続ける.
本研究では,風の鉛直シアがスコールラインの構造・強度に与える影響を調べるため,式(3.4)
の Us を 5,10,15,20,25,30(m/s)の 6 段階に変化させた.また,ストームの構造と関係
の深い下層に鉛直シアを作成するために全てのケースで zs=2.5 とした.
2009 年 1 月 修士論文
24
Fig.3.5 水平風(U)の初期値・境界値の鉛直プロファイル
左から Us=30,25,20,15,10,5
Fig.3.6 式(3.3)で求まる水平風(U)の鉛直プロファイル
左から Us=5,10,15,20,25,30
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
25
本研究では, Qv を変化させた 4 タイプの湿潤鉛直プロファイルと,Us を変化させた 6 タ
イプの水平風の鉛直プロファイルの全組み合わせ,計 24 タイプの環境場を用いることで 24 ケ
ースの数値実験を行った(Table.3.2).
今後,例えば,大気下層の水蒸気混合比の取り得る最大値(Qv)が 14g/kg,水平風の鉛直シア
(Us)が 15m/s であれば,実験ケース名を Qv14_Us15 のように記述する.また,水平風の鉛直
シア(Us)のことを単に鉛直シアと記述する。
Qv12
Qv14
Qv16
Qv18
Us5
Qv12_Us5
Qv14_Us5
Qv16_Us5
Qv18_Us5
Us10
Qv12_Us10
Qv14_Us10
Qv16_Us10
Qv18_Us10
Us15
Qv12_Us15
Qv14_Us15
Qv16_Us15
Qv18_Us15
Us20
Qv12_Us20
Qv14_Us20
Qv16_Us20
Qv18_Us20
Us25
Qv12_Us25
Qv14_Us25
Qv16_Us25
Qv18_Us25
Us30
Qv12_Us30
Qv14_Us30
Qv16_Us30
Qv18_Us30
Table.3.2 実験ケースの組み合わせと,ケース名
2009 年 1 月 修士論文
26
第4章 実験結果・解析
環境場を変化させた 24 ケースについて,初期状態から 6 時間の数値実験を行った.本章で
は,各ケースで再現されたスコールラインの構造と水収支について述べる.
以下,計算開始から x 時間後を,t=xh のように表記する.また,再現されたストームの風上
側(右側)をストームの前面,風下側をストームの後面(左側)と呼ぶことにする.
4.1
スコールラインの構造
4.1.1
スコールラインの外観
Fig.4.1,4.2 に数値実験で再現された t=6h でのスコールラインの外観を示す.
ストームの傾きに着目すると,鉛直シア(Us)が強くなるにつれ,Upshear (ストームが上層
ほど進行方向の後方へ傾斜)から Erect (ストームがほぼ直立),さらに Downshear (ストームが
上層ほど進行方向の前方へ傾斜)になる様子がわかる.また,Qv が増加するほど,ストームの
規模(雲域)は大きくなる.
各ケースにおけるストームの構造を定量的に分類するために,コールドプール強度と鉛直シ
ア(Us)を用いてた区分を行った.
4.1.2
コールドプール強度の定義
スコールラインの構造は,コールドプール強度と鉛直シアのバランスで決定される(RKW,
WR04).
RKW はコールドプールの速度(Uc [m/s])を近似的に式(4.1)で示した.
Uc
2
H
0
(4.1)
( B )dz .
ここで,H はコールドプールの高さ,B はコールドプールの持つ浮力を示す.
これを基に,本研究ではコールドプール強度(CI:Cold pool Intensity)を以下のように定義
した.
CI
2
xn
x0
H
0
(4.2)
( B )dzdx ,
ここで,x0 と xn はそれぞれ,スコールラインの線に直角な方向での求めるコールドプール領域
の先端と終端である.また,浮力 B は Takemi(2006)で用いられた式(4.3)で与えるものとした.
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
27
ここで,CI はコールドプール内の浮力を 2 次元堆積積分した値を反映しているが,CI の単位
は[m(3/2)/s] (=[(m2・m/s2)(1/2)])となり,物理的な意味合いは持たない.
B
g は重力加速度,
qv
g
1.61 q v
qv
qw
.
1 qv
(4.4)
と はそれぞれ温位の偏差と温位の基準状態, qv と q v はそれぞれ水蒸
気混合比の偏差と基準状態,qw は凝結物の混合比和(qw=qc+qi+qr+qs+qg)を示す.基準状態は,
ある高度で水平方向に平均した値である.また,B の単位は[m/s2]である.
コールドプールの領域は実験ケースにより異なる.本研究では,スコールラインの進行方向
から見て,スコールライン先端部の最下層で始めて B < −0.1 になった点をコールドプールの
先端(x0),先端から後方に 20km を全ケースで一律に終端(xn)とした.これは,スコールライン
先端部でのコールドプール強度が対流発生に重要な役割を持ち,後方のコールドプール強度ほ
ど対流に関与する割合が減るためである.また,コールドプールの高さ H も B < −0.1 であ
る高度までとした(Fig.4.3).
また,本研究ではスコールライン(ストーム)の傾きの構造指標(STI:Storm Tilting Index)
を以下の式で定義した.
STI
0.01
CI
Us
(4.5)
ここで,Us は式(2.3),(2.4)で示した鉛直シアの強さである.
Fig.4.3 Qv14_Us20,t=6h のスコールライン前面のコールドプール
雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (黒コンター),浮力(シェード),B< −0.1 の領域(赤コンター)
2009 年 1 月 修士論文
28
Q12_Us5
Q14_Us5
Q12_Us10
Q14_Us10
Q12_Us15
Q14_Us15
Q12_Us20
Q14_Us20
Q12_Us25
Q14_Us25
Q12_Us30
Q14_Us30
14km
400km
Fig.4.1 t=6h,x=100-500grid の雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (コンター)と
降水物質(qr+qs+qg) (シェード).Q12_Us5-30(左),Q14_Us5-30(右)
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
29
Q16_Us5
Q18_Us5
Q16_Us10
Q18_Us10
Q16_Us15
Q18_Us15
Q16_Us20
Q18_Us20
Q16_Us25
Q18_Us25
Q16_Us30
Q18_Us30
14km
400km
Fig.4.2 Q16_Us5-30(左),Q18_Us5-30(右)で Fig4.1 に同じ
2009 年 1 月 修士論文
30
4.1.3
スコールラインの構造分類
Table.4.1 に,準定常状態となりコールドプールが十分に発達した t=4-6h で平均したコール
ドプール強度(CI),スコールラインの構造指標(STI),および t=4-6h の最大鉛直風速(Wmax)
の時間平均値(Ave_Wmax)を示す.
本研究では,STI が 3 以上を Upshear 構造,1~3 までを Erect 構造,1 未満を Downshear
構造として再現されたスコールラインの構造の分類をした(Fig.4.4,Table.4.2).
ストームの構造と Table.4.1 を比較すると,ストームが Upshear 構造から Erect 構造では
Us が増加するほど CI と Wmax は増加する傾向があること,Downshear 構造では Us が増加
するほど Wmax は減少傾向にあるが,CI とはあまり相関がないことがわかる.
CASE
CI
STI
Ave_Wmax
Qv12_Us5
1815
3.6
7.5
Qv12_Us10
3399
3.4
8.1
Qv12_Us15
3972
2.6
11.6
Qv12_Us20
1670
0.8
16.7
Qv12_Us25
0
0.0
12.5
Qv12_Us30
0
0.0
10.8
Qv14_Us5
2420
4.8
7.1
Qv14_Us10
3523
3.5
12.0
Qv14_Us15
4422
2.9
13.7
Qv14_Us20
4591
2.3
17.1
Qv14_Us25
866
0.3
16.7
Qv14_Us30
1084
0.4
12.7
Qv16_Us5
2741
5.5
7.9
Qv16_Us10
3282
3.3
8.3
Qv16_Us15
4265
2.8
13.9
Qv16_Us20
4660
2.3
18.4
Qv16_Us25
1451
0.6
26.4
Qv16_Us30
1512
0.5
16.0
Qv18_Us5
3376
6.8
11.6
Qv18_Us10
3707
3.7
10.7
Qv18_Us15
4413
2.9
15.2
Qv18_Us20
4771
2.4
17.3
Qv18_Us25
3697
1.5
25.9
Qv18_Us30
1814
0.6
18.7
Table.4.1 t=4-6h で平均したコールドプール強度(CI[m(3/2)/s]),
スコールラインの構造指標(STI),t=4-6h で平均した最大鉛直風速(Wmax[m/s])
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
31
Fig.4.4 STI の比較
Qv12
Qv14
Qv16
Qv18
Us5
Upshear
Upshear
Upshear
Upshear
Us10
Upshear
Upshear
Upshear
Upshear
Us15
Erect
Erect
Erect
Erect
Us20
Downshear
Erect
Erect
Erect
Us25
Downshear
Downshear
Downshear
Erect
Us30
Downshear
Downshear
Downshear
Downshear
Table.4.2 再現されたスコールラインの構造分類
2009 年 1 月 修士論文
32
4.1.4
ストームの構造と対流セル構造の比較
Fig.4.5-4.7 に Qv14_Us5(Upshear 構造),Qv14_Us20(Erect 構造),Qv14_Us30(Downshear
構造)の雲域(qc+qi+qr+qs+qg)と降水物質(qr+qs+qg)の t=240-260min における 4 分毎時間発展図
を示す.
Fig4.6 から周期的な対流セルの形成・衰退の様子が見て取れる.スコールラインの前面で発
生した対流セルが発達しながら後方へ流され(Fig.4.6,t=240-244min),新たな対流セルがスコ
ールラインの前面で形成される(Fig.4.6,t=248min).新しい対流セルは発達しながら後方へ流
されていき(Fig.4.6,t=252min),そしてまた新たな対流セルがスコールラインの前面形成され
る(Fig.4.6,t=256min),この時最初に着目した対流セルは崩壊し,層状雲の一部となっている.
スコールラインに特徴的な対流セルの周期的な形成・衰退により,
準定常状態が再現されている
ことがわかる.
Fig4.5-4.7 より Upshear,Erect,Downshear 構造での対流セルの構造と形成周期を相対的
に比較する.Upshear 構造では,スコールラインの前面で比較的強い対流セルと比較的弱い対
流セルが不規則に形成され,対流高度は 8km 程度である.また形成周期は他の 2 構造に比べ
て短く,同一時刻に 3~6 個の対流セルが存在する.Erect 構造では,スコールラインの前面で
ほぼ同じ強さの対流セルが規則的に形成され,対流高度は 10km に達する.また形成周期は
Upshear 構造よりも長く,
同一時刻には 2~3 個の対流セルが存在する.
Downshear 構造では,
スコールラインの後面でほぼ同じ強さの対流セルが形成され,対流高度は 9km 程度である.
また,形成周期は他の 2 構造と比べて長く,同一時刻に 1~2 個の対流セルが存在する.
また,形成される個々の対流セルの水平間隔は,Upshear,Erect,Downshear 構造共にお
よそ 5~15km 間隔であるが,Upshear,Erect,Downshear 構造の順に対流セルの存在個数が
多いため,この順に対流セルの水平存在距離は長い.
以上をまとめると,次の通りである.
・ Upshear 構造:比較的強い対流セルと弱い対流セルが不規則に形成され,対流高度は 8km
程度と低い.形成周期は短い.
・ Erect 構造:強い対流セルが規則的に形成され,対流高度は 10km 程度と高い.形成周期
は中程度.
・ Downshear 構造:強い対流セルが規則的に形成され,対流高度は 9km 程度.形成周期は
長い.
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
33
Fig.4.5 t=240-260min,x=280-380grid,Q14_Us5(Upseahr 構造)の
雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (コンター)と降水物質(qr+qs+qg) (シェード)
2009 年 1 月 修士論文
34
Fig.4.6 t=240-260min,x=230-330grid,Q14_Us20(Erect 構造)で Fig.4.5 に同じ
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
35
Fig.4.7 t=240-260min,x=180-280grid,Q14_Us30(Downshear 構造)で Fig.4.5 に同じ
2009 年 1 月 修士論文
36
4.2
4.2.1
スコールラインの水収支
水収支の定義
本研究では,水蒸気が凝結物に変化する量を source,凝結物が水蒸気に変化する量及び降水
として地表に落下する量を sink と見なして,この収支を水収支とする.
モデル計算領域はスコールライン全域を広くカバーしており,またスコールラインに相対的
な風を想定しているためスコールラインの移動はほとんどない.よって,モデル中で凝結した凝
結物(雲水,雲氷,雨粒,雪,霰)がモデル領域外に流出することはほとんどない.そのため,
数値実験の計算結果を用いて以下の水収支が成り立つ(F96).
C
E
R
(4.6)
S.
ここで,凝結量(C)は全計算時間・全領域での水蒸気の凝結量,蒸発量(E)は全計算時間・全
領域での凝結物の蒸発量,降水量(R)は全計算時間・全計算領域での降水物質の降水量,浮遊量
(S)は計算終了時点でモデル領域中に存在している凝結物量を示す(Table.4.3).
式(2.18)に示すように,凝結量への寄与項は,雲水の凝結形成[WCND],雨粒の凝結形成
[RCND],雲氷の昇華形成[IDEP],雪の昇華形成[SDEP],霰への凝結形成[GDEP],氷晶核形
成[IGEN]の 6 項である.また,蒸発量への寄与項は,雲水の蒸発[WEVP],雨粒の蒸発[REVP],
雪の融解蒸発[SEVP],霰の融解蒸発[GEVP],雲氷の昇華[ISUB],雪の昇華[SSUB],霰の昇
華[GSUB]の 7 項である.
凝結量
(Condensation)
蒸発量
v→x の変化量の総和
(v:水蒸気,x:雲水,雲氷,雨粒,雪,霰)
x→v の変化量の総和
(Evaporation)
降水量
地表に落下した雲氷,雨粒,雪,霰の総和
(Rainfall)
浮遊量
計算終了時点における,モデル領域内に存在する凝結物の総和
(Suspended)
Table.4.3 凝結量,蒸発量,降水量,浮遊量の説明
4.2.2
降水効率の定義
凝結した水蒸気(或いは雲に流入した水蒸気)がどれだけ効率的に降水に要せられたかを示す
指標として降水効率がある.本研究では,水蒸気凝結量が降水になった割合を降水効率とし,
降水効率(PE:Precipitation Efficiency)の定義は式(4.2)で与えるものとする(F96),
PE
京都大学大学院 理学研究科
(4.7)
R/C ,
石塚
隼也
37
4.2.3
スコールラインの水収支と降水効率
Table.4.4 に全計算時間(t=0-6h)を時間積分・全領域で空間積分した凝結量,蒸発量,降水量,
及び全領域で空間積分した浮遊量の値と降水効率を示す.
(c) 水収支
同じ鉛直シア(Us)で下層水分量(Qv)の変化を比較すると,Qv が高いほど凝結量,降水量,蒸
発量は増加する.浮遊量も Qv が高いほど増加する傾向が見られるが,Us10 における Qv14
と Qv16,Us15 における Qv16 と Qv18 では減少している.しかしながら,浮遊量はある時刻
でのモデル中に浮遊する凝結物量の瞬間値であり,対流セル形成・衰退周期はケース毎に異な
るため,浮遊量は他の量に比べて解析時刻に左右されやすい.
同じ Qv で Us の変化による凝結量の変化を比較すると,どの Qv でもある Us までは凝結量
に大きな差は見られないが,さらに Us が強くなると凝結量が大幅に減少する傾向が見て取れ
る.ある Us の値は,Qv12 では Us15,Qv14 と Qv16 では Us20 ,Qv18 では Us25 である.
ストームの構造と関連づけてみると,凝結量に大きな差が見られないのは Upshear 構造から
Erect 構造をとる弱い Us の場合,凝結量が大幅に減少するのは Downshear 構造をとる強い
Us の場合であることがわかる.
(d) 降水効率
同じ Qv で Us の変化による降水効率の変化を比較するとある Us までは Us が強くなるにつ
れ,降水効率は高くなり,それ以上 Us が強くなると降水効率は低くなる傾向が見て取れる.
ある Us の値は Qv12 では Us20,Qv14~18 では Us25 である.
Fig.4.8 にコールドプール強度 (t=04-06h 平均値)と降水効率の対比を示す.Upshear 構造と
Erect 構造ではコールドプール強度が強いほど,降水効率は高くなる傾向が見て取れる.一方,
Downshear 構造ではコールドプール強度と降水効率の対応は良くない.
以上をまとめると,
・ Qv が増加すると,凝結量,降水量,蒸発量は増加する傾向にある.
・ Upshear,Erect 構造では下層水蒸気量(Qv)が同じであれば,鉛直シア(Us)を強くしても凝
結量はほとんど変化しないが,蒸発量(特に雲水の蒸発量)が減少し降水効率は高くなる.
・ Downshear 構造では鉛直シア(Us)が強くなるほど,凝結量,蒸発量,降水量は減少し,降
水効率も低くなる.
となる.
2009 年 1 月 修士論文
38
CASE
CND
RAIN
EVP
SPND
PE(%)
Qv12_Us5
58.3
14.9
39.2
4.1
25.6
Qv12_Us10
64.1
19.6
40.8
3.7
30.6
Qv12_Us15
66.6
24.8
36.5
5.2
37.3
Qv12_Us20
43.7
17.6
20.3
5.8
40.2
Qv12_Us25
23.7
7.7
12.9
3.1
32.6
Qv12_Us30
21.1
5.6
12.9
2.5
26.5
Qv14_Us5
96.8
26.8
64.8
5.2
27.6
Qv14_Us10
99.3
34.5
58.7
6.0
34.7
Qv14_Us15
89.1
34.4
49.2
5.4
38.6
Qv14_Us20
95.1
40.7
47.6
6.7
42.8
Qv14_Us25
65.1
30.5
30.4
4.2
46.8
Qv14_Us30
53.5
21.1
28.2
4.0
39.5
Qv16_Us5
125.5
41.6
77.8
6.0
33.2
Qv16_Us10
122.1
41.8
74.4
5.8
34.2
Qv16_Us15
123.1
47.3
67.3
8.4
38.4
Qv16_Us20
119.1
54.7
56.6
7.8
45.9
Qv16_Us25
101.2
47.2
44.8
9.1
46.7
Qv16_Us30
76.6
30.2
39.4
6.9
39.4
Qv18_Us5
136.4
48.4
81.5
6.4
35.5
Qv18_Us10
140.8
53.4
81.1
6.2
37.9
Qv18_Us15
138.3
54.2
76.4
7.6
39.2
Qv18_Us20
144.8
62.6
74.0
8.0
43.2
Qv18_Us25
138.8
67.3
59.4
12.1
48.4
Qv18_Us30
104.9
44.2
52.4
8.1
42.2
Table.4.4 凝結量,降水量,蒸発量,浮遊量(それぞれ単位は[105kg/m])と降水効率(%)
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
39
Fig.4.8 コールドプール強度(t=04-06h の平均値)と降水効率(PE)の対応
灰丸が Upshear と Erect 構造を,赤丸が Downshear 構造を示す
4.2.4
水物質変化量の鉛直分布
(a) 凝結量・蒸発量の鉛直分布
Fig4.9-4.12 に各ケースにおける全計算時間で時間積分・x 方向に積分した凝結量,蒸発量の
鉛直分布を示す.Fig.4.9-4.12 の横軸の単位[kg/m/m]は[(質量)/(単位 y)/(単位 z)]である.
全ケースで高度 3.5km 付近に凝結量が最大となるピークがあり,
Us が増加すると,
高度 5km
付近にも小さいピークが現れる.また,蒸発量は Qv12_Us10 を除いた Upshear・Erect 構造
をとるケースでは,高度 1.5km 付近に最大となるピークがあり,高度 3.8km 付近に次に大き
いピークがある.Downshear 構造をとるケースでは,Qv12_Us20-30 ケースでは高度 1.5km
に逆センスのピークが,それ以外のケースでは高度 1.5km 付近に最大となるピークがあり,ど
ちらも Upshear・Erect 構造のケースで見られた高度 3.8km 付近のピークは弱くなるか消える.
Fig.4.13 に,総凝結量がほぼ同じ値である Qv14_Us5(Upshear 構造)と Qv14_Us20(Erect
構造)の凝結量の鉛直分布の対比を示す.高度 0.9km-4.65km では Qv14_Us5 の方が凝結量が
多く,高度 4.65-12km までは Qv14_Us20 の方が凝結量が多いことがわかる.
2009 年 1 月 修士論文
40
Fig.4.9 時間積分(0-6h)・水平積分(x 方向)した凝結量・蒸発量の鉛直分布(Qv12_Us5-30)
白丸は凝結量,黒四角は蒸発量を示す
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
41
Fig.4.10 Qv14_Us5-30 で Fig.4.9 と同じ
2009 年 1 月 修士論文
42
Fig.4.11 Qv16_Us5-30 で Fig.4.9 と同じ
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
43
Fig.4.12 Qv18_Us5-30 で Fig.4.9 と同じ
2009 年 1 月 修士論文
44
Fig.4.13 時間積分(0-6h)・水平積分(x 方向)した凝結量の鉛直分布
白丸は Qv14_Us5(Upshear 構造)の凝結量,黒丸は Qv14_Us20(Erect 構造)の凝結量を示す
(b) 凝結寄与項の鉛直分布
Fig.4.14-4.17 に各ケースにおける全計算時間で時間積分・x 方向に積分した凝結量への寄与
項の鉛直分布を示す.Fig.4.14-4.17 は棒グラフであるが,z 区間での積分はない.よって,縦
軸の単位は Fig.4.9-4.12 と同様に[kg/m/m]であることに注意する.ただし,z 方向積分区間の
単位 z は最下層で 275m,それより上空では 250m 等間隔であるため,z 方向に積分してもグ
ラフの分布自体にほとんど変化はない.
全ケースにおいて,地上から高度 6km 付近までの凝結量に主に寄与している項は雲水の凝
結形成[WCND]であり,地上から高度 3.5km 付近まで増加,それより上では減少する.高度
5km~9km 付近にかけて雲氷の昇華形成[IDEP],霰の昇華形成[GDEP],雪の昇華形成[SDEP]
の寄与が大きくなる.また,高度 8km 以上では,雲氷の昇華形成[IGEN]の寄与が大きくなる.
雨粒の凝結形成[RCND]は高度 3~5km 付近に少し見られるがほとんど寄与していない.
(c) 蒸発寄与項の鉛直分布
Fig4.18-4.21 に各ケースにおける全計算時間で時間積分・x 方向に積分した蒸発量への寄与
項の鉛直分布を示す.縦軸の単位は Fig.4.18-4.21 と同様に[kg/m/m]であることに注意する.
地上から高度 4km 付近にかけて雨粒の蒸発[REVP]が分布し,
蒸発量に大きく寄与している.
地上から高度 8km 付近にかけて雲水の蒸発[WEVP]が分布するが,その寄与量はケースにより
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
45
大きく異なる.高度 2km~4km にかけて霰の融解蒸発[GEVP]が,高度 4km~10km 付近にか
けて雪の昇華[SSUB]と霰の昇華[GSUB]が,高度 4km~12km 付近に雲氷の昇華[ISUB]が分布
し,これらの寄与量はケースによる差が少ない.また,雪の融解蒸発[SEVP]は高度 4km 付近
に分布しているが,その寄与量は他に比べてかなり少ない.
2009 年 1 月 修士論文
46
Fig.4.18 時間積分(0-6h)・水平積分(x 方向)した凝結量寄与項の鉛直分布(Qv12_Us5-30)
灰:雲粒の凝結生成[WCND],紫:雨粒の凝結生成[RCND],黄:雲氷の昇華生成[IDEP]
赤:雪の昇華生成[SDEP],橙:霰の昇華生成[GDEP],緑:昇華核形成[IGEN]
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
47
Fig.4.19 Qv14_Us5-30 で Fig.4.18 と同じ
2009 年 1 月 修士論文
48
Fig.4.20 Qv16_Us5-30 で Fig.4.18 と同じ
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
49
Fig.4.21 Qv18_Us5-30 で Fig.4.18 と同じ
2009 年 1 月 修士論文
50
Fig.4.22 時間積分(0-6h)・水平積分(x 方向)した蒸発量寄与項の鉛直分布(Qv12_Us5-30)
灰:雲水の蒸発[WEVP],紫:雨粒の蒸発[REVP],緑:雪の融解蒸発,
青:霰の融解蒸発[GEVP],黄:雲氷の昇華[ISUB],赤:雪の昇華[SSUB],
橙:霰の昇華[GSUB]
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
51
Fig.4.23 Qv14_Us5-30 で Fig.4.22 と同じ
2009 年 1 月 修士論文
52
Fig.4.24 Qv16_Us5-30 で Fig.4.22 と同じ
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
53
Fig.4.25 Qv18_Us5-30 で Fig.4.22 と同じ
2009 年 1 月 修士論文
54
第5章 ストームの構造と水収支の関係に関する考察
本研究では,環境場変化によるスコールラインの水収支の違いを調べることを目的として数
値実験を行った.実験結果より,スコールラインの水収支は環境場変化が作り出すストームの
構造に強く依存することがわかる.
本章では,Qv14_Us5(Upshear 構造),Qv14_Us20(Erect 構造),Qv14_Us30(Downshear
構造)を比較し,ストームの構造と水収支の関係について解析と考察を行う.
5.1.1
ストームの構造と降水効率に関する考察
実験から,Upshear 構造,Erect 構造をとるストームでは,下層水蒸気量(Qv)が同じであれ
ば鉛直シア(Us)が変化しても凝結量はほとんど変化しないという結果を得た.しかし,凝結量
の鉛直分布を比較すると,Upshear 構造では Erect 構造よりも下層に凝結量が多く,Erect 構
造では Upshear 構造よりも中層に凝結量が多い.そしてその主な寄与項は雲水の蒸発量である.
また,蒸発量を比較すると,Erect 構造では他の蒸発量の寄与項に比べて雲水の蒸発量が小さ
いことがわかる.よって Upshear 構造から Erect 構造にかけて降水効率が高くなる理由は,凝
結量自体には変化しないが,Upshear 構造では蒸発量のうち雲水の蒸発量が増加することであ
る.
Fig.5.1 , Fig.5.2 に Qv14_Us5(Upshear 構 造 ) と Qv14_Us20(Erect 構 造 ) ,
Qv14_Us30(Downshear 構造)の,t=5-6h で平均した雲水の凝結生成量[WCND]と雲水の蒸発
量[WEVP]を示す.ここで,雲水の凝結生成量及び雲水の蒸発量は,ある time step でのカテ
ゴリー変換量であるため,瞬時値は存在しない.ここでは 30 time step(300s)で変換される積
算量の t=5-6h 平均値を示している.また,Fig.5.1,Fig.5.2 に示す雲水の凝結生成量及び雲水
の蒸発量は層厚zでの単位面積あたりの質量であり,単位[g/m/m]は[(質量)/(単位 x)/(単位 y)]
である.ここで,カテゴリー変換量を時間積算した混合比で見ても,分布はほとんど変わらな
いことを補足しておく.
Fig.5.1 から各構造ともに対流セル形成箇所に対応して雲水凝結量が多くなることがわかる.
また Fig.5.2 から Upshear 構造では雲水凝結域と同じく対流セルの形成箇所に強い雲水蒸発域
がある.一方,Erect 構造では対流セルの形成箇所に雲水蒸発域があるがその量は少ない.
下層水蒸気量(Qv)が同じである状態で Upshear 構造と Erect構造で凝結量が変化しない理由
は,対流セルの構造と発生周期の違いに関連付けて説明できる.つまり,Upshear 構造の対流
セルは,対流高度が低く,個々の対流セルの発生に関する凝結量は少ないが,対流セルの発生
周期が短いために対流セルの発生個数は多い.一方,Erect 構造の対流セルは,対流高度が高
く,個々の対流セルの発生に関する凝結量は多いが,対流セルの発生周期が長いため,対流セ
ルの発生個数は少ない.よって,トータルの凝結量としてはあまり差が生じない結果になると
考えられる.また,Upshear 構造の対流セル高度は低く,Erect 構造の対流セル高度は高いこ
とから,凝結量の鉛直分布は Upshear 構造では下層での凝結量が多くなり,Erect 構造では中
層での凝結量が多くなる傾向があると考えられる.
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
55
Fig.5.1 t=5-6h で平均した雲水の凝結生成量 (シェード)と雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (コンター),
上から,Upshear 構造(Qv14_Us5),x=200-400grid,
Erect 構造(Qv14_Us20),x=200-400grid,
Downshear 構造(Qv14_Us30),x=150-350grid
2009 年 1 月 修士論文
56
Fig.5.2 t=5-6h で平均した雲水の蒸発量 (シェード)と雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (コンター),
上から,Upshear 構造(Qv14_Us5),x=200-400grid,
Erect 構造(Qv14_Us20),x=200-400grid,
Downshear 構造(Qv14_Us20),x=150-350grid
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
57
5.1.2
ストームの構造とコールドプールの形成についての考察
Fig.5.3-Fig.5.5 に Qv14_Us5(Upshear
構 造 ) と
Qv14_Us20(Erect 構 造 ) ,
Qv14_Us30(Downshear 構造)の,t=5-6h で平均した相当温位,蒸発量,浮力を示す.ここで,
蒸発量は全ての蒸発項の 30 time step(300s)で変換される積算量の t=5-6h 平均値を示している.
Fig.5.3−Fig.5.5 より,Upshear,Erect 構造ではストームの前面と後面の中層から乾燥大気
(低相当温位大気)が,Downshear 構造ではストームの前面のみから乾燥大気が流入しているこ
とがわかる.
Fig.5.2 及び Fig.5.3 より,Upshear,Erect 構造ではこの前面の乾燥大気の流入により主に
雲水の蒸発が,後面からの乾燥大気の流入により主に雨粒の蒸発が,Downshear 構造では前
面からの乾燥大気の流入により,雲水・雨粒の蒸発が促進されていると考えられる.Upshear
構造は多量の雲水蒸発量があるにもかかわらず,コールドプールは Upshear,Erect 構造とも
に雨粒の蒸発域にほぼ対応している.これは,Upshear 構造のストーム前面の雲水蒸発域では
また同時に多量の雲水の凝結生成が起こっているため,大気が冷やされる効果よりも熱せられ
る効果が大きくなっていると考えられる.Downshear 構造で強いコールドプールが形成され
ないこともまた,雲水の凝結域と雲水・雨粒の蒸発域が重なっているため,大気が冷やされる
効果と熱せられる効果が打ち消しあっているためと考えられる.
2009 年 1 月 修士論文
58
Fig. 5.3 t=5-6h で平均した相当温位 (シェード)と雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (コンター),
上から,Upshear 構造(Qv14_Us5),x=200-400grid,
Erect 構造(Qv14_Us20),x=200-400grid,
Downshear 構造(Qv14_Us20),x=150-350grid
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
59
Fig.5.4 t=5-6h で平均したと総蒸発量(シェード)と雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (コンター),
上から,Upshear 構造(Qv14_Us5),x=200-400grid,
Erect 構造(Qv14_Us20),x=200-400grid,
Downshear 構造(Qv14_Us20),x=150-350grid
2009 年 1 月 修士論文
60
Fig.5.5 t=5-6h で平均したと浮力(シェード),雲域(qc+qi+qr+qs+qg) (黒コンター),B<−0.1 領
域(赤コンター).上から,Upshear 構造(Qv14_Us5),x=200-400grid,
Erect 構造(Qv14_Us20),x=200-400grid,
Downshear 構造(Qv14_Us20),x=150-350grid
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
61
第6章 まとめ
環境場変化に伴うスコールラインのストームの構造と水収支の変化について調べるため,水
物質のカテゴリー変換量を再定義し,下層水蒸気量(Qv),鉛直シア(Us)を変化させた 24 タイ
プの中緯度スコールラインの 2 次元数値実験を行い解析した.
その結果,スコールラインの水収支は,環境場の変化によるストームの構造の変化と関係が
深いことが再確認され,以下の結果を得た.
6.1
環境場変化がスコールラインの構造に及ぼす影響
スコールラインのストームの Upshear,Erect,Downshear 構造を,本研究で定義したコー
ルドプール強度(CI)と鉛直シア(Us)を用いた指標 STI を用いて定量的に分類した.環境場変化
がスコールラインの構造に及ぼす影響をまとめると,
・ 鉛直シア(Us)が強くなるにつれ,
ストームは Upshear,
Erect,Downshear 構造をとる(F96,
WR04 と同様の結果).
・ 下層水蒸気量(Qv)が多いほど,鉛直シアを強くしても Erect 構造から Downshear 構造に
なりにくい.
となる.
6.2
環境場変化がスコールラインの水収支に及ぼす影響
下層水蒸気量(Qv)変化がスコールラインの水収支に及ぼす影響をまとめると,
・ 全てのケースにおいて Qv が高いほど,凝結量,降水量,蒸発量は増加する傾向がある.
となる.
鉛直シア(Us)変化とストームの構造に関連づけた水収支の関係をまとめると,
・ Upshear,Erect 構造:下層水蒸気量(Qv)が同じであれば,鉛直シア(Us)を強くしても凝結
量はほとんど変化しないが,蒸発量(特に雲水の蒸発量)が減少し降水効率は高くなる.
・ Downshear 構造:鉛直シア(Us)が強くなるほど,凝結量,蒸発量,降水量は減少し,降水
効率も低くなる.
となる.
2009 年 1 月 修士論文
62
謝辞
本研究を進めるにあたり,
直接ご指導を頂きました京都大学防災研究所 気象水象災害研究部
門 暴風雨・気象環境研究分野 石川 裕彦 教授に心より感謝申し上げます.修士課程の 2 年間
にデータ解析からモデル実験まで様々なテーマに取り組ませて頂き,またその都度適切な助言
を頂いたおかげで,実に内容濃く充実した研究生活を送ることができました.また,竹見 哲也
准教授に感謝申し上げます.モデル実験の基本から,研究に関することまで多くの助言を頂き
ました.また,計算機関連やゼミにおいて適切な助言を頂いた堀口 光章 助教,衛星画像の見
方から計算機の設定,プログラミングまであらゆる研究の支援をしてくださった奥 勇一郎 特
任助教,ゼミでの助言及び下地島での観測プロジェクト参加に御尽力してくださった京都大学
流域災害観測センター 林 泰一 准教授,下地島での観測プロジェクト参加及び CReSS の講習
会を受講させて頂いた名古屋大学 地球水循環研究センター 気象学研究室 坪木 和久 准教授,
学会等で学生生活全般を支えてくださった暴風雨気象環境研究分野事務 戸田 嘉子 氏に感謝
申し上げます.
暴風雨・気象環境研究分野 博士課程後期 宮本 佳明 氏,流域災害観測センター 博士課程後
期 津島 俊介 氏,暴風雨・気象環境研究分野並びに流域災害観測センターの OB・OG である
梶野 瑞王 氏,山根 悠介 氏,十倉 崇行 氏,阿部 良 氏,佐藤 和歌子 氏,南 宏樹 氏,玉
井 恭平 氏に深く感謝申し上げます.
そして,修士課程の 2 年間を共に過ごした同期の上西 未起 氏,中道 啓輔 氏,流域災害観
測センター 川端 康弘 氏,隈部 康晴 氏,災害気候研究分野 櫻井 渓太 氏に深く感謝申し上
げます.
また,後輩である大野 洋 氏,田中 基裕 氏,日比野 研志 氏,吉田 龍二 氏,流域災害観
測センター 伊藤 正樹 氏,康 アルム 氏に深く感謝申し上げます.
最後に,これまでの学生生活・研究生活を支え続けてくれた家族に深く感謝します.
平成 21 年 1 月
京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也
63
参考文献
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2009 年 1 月 修士論文
64
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京都大学大学院 理学研究科
石塚
隼也