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PRESS RELEASE
2016/12/16
2016/4/27 改訂
おとろえぬ情熱、走る筆。
ピエール・アレシンスキー展
2017 年 1 月 28 日(土)‒ 4 月 9 日(日)
国 立 国 際 美 術 館
国立国際美術館
ピエール・アレシンスキー
©Adrien Iwanowski, 2009
《至る所から》1982 年
インク / アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 ベルギー王立美術館蔵
© Royal Museums of Fine Arts of Belgium, Brussels / photo: J. Geleyns - Ro scan
©Pierre Alechinsky, 2016
《ボキャブラリーⅠ-Ⅷ》1986年
アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016
PRESS RELEASE
おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
《ローマの網》1989 年
《鉱物の横顔》2015 年
インク・アクリル絵具、拓本、キャンバスで裏打ちした紙
アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙
作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016
作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016
開催情報
展覧会名
おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
英 語 名
Pierre
会
期
2017 年 1 月 28 日(土)─ 4 月 9 日(日)
会
場
国立国際美術館
Alechinsky
地下 2 階展示室(〒530-0005 大阪市北区中之島 4-2-55)
開館時間
10:00 ─ 17:00
休 館 日
月曜日(ただし、3 月 20 日(月・祝)は開館し翌日休館)、
主
催
国立国際美術館、毎日新聞社
後
援
ベルギー大使館
協
力
ヤマトロジスティクス、日本貨物航空、ダイキン工業現代美術振興財団
観 覧 料
(
※金曜日は 19:00 まで(入場は閉館の 30 分前まで)
一般 900 円(600 円)
)内は 20 名以上の団体料金
大学生 500 円(250 円)
高校生以下・18 歳未満無料
心身に障害のある方とその付添者 1 名無料(証明できるものをご提示願います)
同時開催の「クラーナハ展―500 年後の誘惑」もご覧いただけるお得な共通チケット(個人・一般のみ
1,900 円)を販売します(1 月 28 日(土)から 4 月 9 日(日)まで)。
国立国際美術館の窓口で当日券のみの販売。
同時開催
2017 年 1 月 28 日(土)─ 4 月 16 日(日)
「クラーナハ展―500 年後の誘惑」
展覧会会期は「おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展」とは異なります。
URL
http://www.tbs.co.jp/vienna2016/
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おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
次回展
2017 年 4 月 29 日(土)─ 7 月 2 日(日)「ライアン・ガンダー展」(仮称)
2017 年 4 月 29 日(土)─ 7 月 2 日(日)「ライアン・ガンダーによる所蔵作品展」(仮称)
一般のお客様からのお問い合わせ先
URL
国立国際美術館
TEL: 06-6447-4680(代表)
http://www.nmao.go.jp/
交通アクセス
京阪電車中之島線「渡辺橋駅」(2 番出口)から南西へ徒歩約 5 分
地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」(3 番出口)から西へ徒歩約 10 分
JR大阪環状線「福島駅」、東西線「新福島駅」(2 番出口)から南へ徒歩約 10 分
阪神電車「福島駅」(3 番出口)から南へ徒歩約 10 分
当館には専用駐車場はありません。ご来館は電車・バス等をご利用ください
心身に障害のある方で、車で来館される場合は、当館北側の有料駐車場をご利用ください
開催趣旨
ピエール・アレシンスキー(1927 年生まれ)はベルギーに生まれ、第 2 次大戦後、ベルギー、
オランダ、デンマークの若い作家たちが結成した前衛芸術グループ「コブラ」に参加して本
格的な作家活動を始めました。
「コブラ」の作家たちは、子供の絵などに触発され、主義主張
に捕らわれない自由を何よりも大切にして、それぞれのスタイルで制作を展開します。短い
「コブラ」の活動のなかでアレシンスキーは、線の要素を主にした抽象的な絵画を自らの個
性にして、間もなくパリで東洋の書道芸術を発見します。とりわけ体全体を使って床に置い
た紙に墨で書く、当時湧き起った日本の前衛書道の奔放さに共感を覚え、1955 年には来日し
て書家の森田子龍らと交流し、映画『日本の書』を作りました。日本滞在も刺激となり、生
来の優れたデッサン力を生かしたアレシンスキーの絵画は、西欧の重厚な油彩画から抜け出
し、墨、水彩、アクリル絵具などを用いて、軽快で自在な線描を軸に豊かな展開を見せてき
ました。コマ割りにした画面に海、樹、人間、怪物など、多彩な形を表しながら、画家が見、
経験した世界のあらゆる側面が集められるとともに、その個性は、版画も交えた幾種もの技
法を駆使して、いまなお限りない変奏をかなでています。
90 歳を迎えるアレシンスキーの奔放自在な筆の勢いは依然衰えることを知りません。ベル
ギーを代表し戦後のヨーロッパ絵画に大きな足跡を残すこの画家を、初期から最新の大作約
80 点をもって紹介する本展は、日本・ベルギー友好 150 周年を記念する日本で最初の大規模
な回顧展です。
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おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
本展の見どころ
・日本初の本格的回顧展
・1940 年代末から最新作までを網羅した約 80 点を展示
・日本との意外な関わりに注目
圧倒的な筆の勢いと、抽象と具象のはざま、独自の画風で勝負する画家ピエール・アレシン
スキー(1927∼)は、ベルギー現代美術を代表する作家の一人です。彼が戦後のアートシー
ンに躍り出たのは、1948 年結成の前衛美術集団コブラの活動を通じて。内面から湧き上がる
情熱を描き出したこのグループは短命に終わりましたが、彼はその精神を受け継ぎました。
また日本とも深い関わりを持ち、禅の画家・仙厓を師と仰ぎ、また前衛書道家・森田子龍と
交流し、自由闊達な筆の動きに影響を受けました。日本を訪問した 1955 年には「日本の書」
という短編映画を撮影します。さらにアレシンスキーはコミック本に刺激され、枠を設けて
描く独特のスタイルを生み出しました。また著作も多く、文筆家としても活躍するアレシン
スキーの絵画作品には、文字や言葉に対する強い思い入れが随所に見受けられるのも特徴で
す。 90 歳近い現在も常に新たな作品を発表しつづける実力派の画家ピエール・アレシンスキ
ー。本展は日本・ベルギー友好 150 周年を記念して開催される日本初の待望の回顧展です。
筆で描くことによる表現の究極にたどり着いた画家ピエール・アレシンスキー(1927∼)は、
90 歳近い今も精力的に制作を続けている。人はそのダイナミックな筆致に圧倒される。熱い
思いが火山の噴火のように噴き出した作品に接する者は、その筆の勢いに身を任さざるを得
なくなる。作品は何かを語っているかのように見えるが、理路整然とした解釈はそぐわない。
アレシンスキーの作品では、そこに描かれた未分化ともいえる表象こそが作品に奥行きを与
え、魅力となっているのである。しかも国際的名声を得たこの画家のルーツに日本の書道が
あったとは、そして彼が洒脱な禅画で知られる仙厓を師と仰いでいたということは、日本人
としてなにか嬉しくないだろうか。
コブラの経験
ベルギーのブリュッセルに生まれ、高校卒業後、市内の美術工芸学校で本の装丁の課程に入
学。ここでは芸術家としての道を拓くことになる版画も学んだ。47 年、20 歳のとき「若きベ
ルギー絵画」というグループに加わる。同じ年にブリュッセルの画廊で早くも個展を開き、
批評家の目に留まっていた。49 年、コペンハーゲン、ブリュッセル、アムステルダムの頭の
文字をとって命名されたコブラ(CoBrA)という国際的な芸術家集団にいち早く参画したのも
そんな背景があった。48 年 11 月に結成されたそのグループはまさに威嚇する毒蛇のような
プリミティブで力強い、迫力ある作品を世に問い、戦後ヨーロッパの美術の潮流を形作るこ
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おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
とになる。メンバーの中でもかなり若かったアレシンスキーは、機関誌の発行や展覧会の会
場準備の使い走りばかりさせられていたのだが、コブラのメンバーが模索した即興的な筆さ
ばきに大いに共感し、また実験制作・共同制作、国際的な活動、因襲の打破、専門外への挑
戦を目の当たりにすることも、若い彼には新鮮な経験であった。
書道との出会い
グループ自体は短命に終わり、コブラは 51 年に解散するが、アレシンスキーは彼らが目指し
たものを引き継ぎ実践していった。またこの年の冬、彼は出会いや刺激を求めてパリに移り
住んだ。一方、左利きを矯正された彼は、左手は絵を描く手、右手は文字を書く手としてい
た。絵と文字の相違点と共通点を意識する中で、50 年代初頭の作品には表象とも文字ともつ
かないものが全面を覆い尽くしている(例えば《夜》)。こうして文字に対する意識と自発的
で自然な筆さばきに対する興味は、彼を次第に書の世界に近づけていった。
《夜》1952 年
油彩、キャンバス 大原美術館蔵 ©Pierre Alechinsky, 2016
決定的だったのはパリで 52 年から通い始めた版画学校ディセットで偶然日本の前衛書道誌
『墨美』
(ぼくび)を見つけたことであった。彼は一気に書道の世界に近づくことになり、雑
誌を主宰していた書家の森田子龍と文通を始めた。日本に行くことは彼の夢となった。
それが実現したのは 55 年、妻ミッキーと共にマルセイユからの定期船で横浜に到着した。日
本では森田のほかにアレシンスキーが「画家書道家」と呼んだ江口草玄や篠田桃紅とも出会
っている。彼らは東京と京都でアレシンスキーが撮影した「日本の書」という 15 分ほどのド
キュメンタリー・フィルムにも登場する(本展会場で上映予定)。カメラを回したのは東京の
プレスクラブで会ったフランシス・ハールである。このフィルムはヨーロッパに日本の最も
新しい書を紹介した画期的なもので、ヨーロッパの現代作家の関心事であった余念を感じさ
せない自然な筆さばきの魅力を余すところなく伝えている。アレシンスキーは書の中に自ら
が追究していた自然発生的な文字の創出を見ていた。彼は書くことと描くことの見事な融合
をそこに感じたはずである。日本滞在のあと、アレシンスキーは次第に大きなサイズのキャ
ンバスや紙を書道のように床に置いて描くようになっていった。
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おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
セントラル・パークから
しかしながら油彩は即興的な制作には向いていなかった。乾くのに時間が掛かるという難点
がある。これを解決したのはアメリカで見出した速乾性のアクリル絵具の使用であった。ア
レシンスキーが初めて渡米したのは 61 年のことで、ピッツバーグの国際展への出品がきっか
けであった。既にヨーロッパ各地で作品を発表するようになっていたが、この頃からアメリ
カでも作品が展示されるようになっていた。こうして 65 年、2 度目の、そして長期のニュー
ヨーク滞在では、パリで出会って親しくなった上海出身の中国人画家ウォレス・ティンがこ
の町に住みはじめていたのでそこに滞在し、ティンにアクリル絵具の使い方を学んだ。アク
リル絵具はアレシンスキーが書道から学んだ流れるような筆さばきを実践するのにうってつ
けだった。これ以降、彼は油彩で描かなくなっていった。
このときウォレス・ティンのアトリエでアクリル絵具を使って紙に描いたのが、後に《セ
ントラル・パーク》として発表され、アレシンスキーの画業のターニングポイントに位置づ
けられる作品である。セントラル・パークを真上から見たこの絵は強烈な緑やオレンジが印
象的で、なにか顔のようにも見えるが、彼はこれをフランスに持ち帰り試行錯誤を重ね、横
150cm 程のこの絵の周りに、ちょうどコミック本のような升を作った中に墨で絵を描いた和
紙の短冊をめぐらせ、それらをすべてキャンバスに貼りつけた。こうして周囲をマンガのよ
うな小さな絵で囲むアレシンスキー独特のスタイルを完成させたのである。本展の《至る所
から》や《肝心な森》もこのスタイルであり、《写真に対抗して》もそのバージョンと考え
ることができるだろう。このスタイルにより、作品の主要部分は特別な重みを獲得し、何か
の物語が展開しているような予感を観る者に与えている。そこに整然とした脈絡があるわけ
ではないのだが、こうした重層構造により、作品はさらなる奥深さを獲得している。
《写真に対抗して》1969年
《肝心な森》1981∼84 年
アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙
アクリル絵具 / インク、キャンバスで裏打ちした紙
ベルギーINGコレクション © Pierre Alechinsky, 2016
作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016
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おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
文字と言葉へのこだわり
文字との関わりでは、アレシンスキーは捨てられた手紙や不要になった書類、帳簿、古い証
明書、地図、航海図など、焼かれる難を逃れた紙類といった文字のある反故紙を使って多く
の作品を制作しているのも特徴である。中には 19 世紀のものもあるそれらの紙類をパリや南
仏の蚤の市、古物商、古本屋などで見つけだして「再利用」し、オリジナリティー溢れる独
特の効果を生みだしている(《あなたの従僕》など)。
《あなたの従僕》1980 年
水彩、郵便物(1829 年 12 月 17 日の消印)ベルギー王立美術館蔵
© Royal Museums of Fine Arts of Belgium, Brussels / photo: J. Geleyns - Ro scan
© Pierre Alechinsky, 2016
作品自体ではなくその題名にも文字や言葉に対するこだわりが感じられるものが多く、言
葉遊びに似た命名は翻訳者泣かせとなっているが、その背景にはアレシンスキーが第一級の
文筆家であり、65 年以降、随筆を中心とした多くの著書が大手の出版社から出されていると
いうことがある。コブラの目指したものの中に専門外への挑戦があったが、まさにそれを実
践したわけであり、左手による絵と右手による文の両方で、アレシンスキーは独自の境地に
達したのである。
新たな挑戦を続けるアレシンスキー。街のマンホールに紙を当てて模様を浮き出させる拓本
のような技法を取り入れた作品や円形の作品も斬新で、本展にも近作も出品される。しかも
それらは、作家が若かりし頃の作品同様の力強さをもっている。おとろえぬ情熱、走る筆。
本展はファンならずとも興味をそそられるまさに待望の展覧会と言えるだろう。
文責
Bunkamura ザ・ミュージアム上席学芸員 宮澤政男
《デルフトとその郊外》2008年
ピエール・アレシンスキー
©Agnés Bonnot, 1986
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アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙
作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016
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おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展
関連イヴェント
講演会
2 月 18 日(土)
14:00∼
会場:国立国際美術館 地下 1 階講堂
講師:山梨俊夫(国立国際美術館 館長)
※参加無料
※先着 130 名
※当日 10:00 から整理券を配布します
ギャラリー・トーク
3 月 4 日(土)
14:00∼
会場:国立国際美術館 地下 2 階展示室
講師:中井康之(国立国際美術館 学芸課長)
※参加無料(要観覧券)
※当日 13:30 から聴講用ワイヤレス受信機を貸し出します。(先着 90 名)
広報画像
このプレスリリースに掲載した 11 点の画像を広報画像としてご用意しています。
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「広報画像申込書」は、国立国際美術館のホームページからダウンロードしていただけます。
国立国際美術館「プレスの方へ」URL http://www.nmao.go.jp/press/
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ださい。
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E-mail: [email protected]
展覧会担当
国立国際美術館
TEL: 06-6447-4671(直通)
中井康之(当館学芸課長)
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学芸課
広報担当
山本 淑子
FAX: 06-6447-4698(学芸課)