ラクゴ・ザ・フューチャー二周年記念号

TA N A K A H I R O F U M I
P R E S E N T S
RAKUGO
THE
FUTURE
RAKUGO THE FUTURE
JAPANESE TRADITIONAL
ENTERTAINMENT
文:田中啓文
第 25 回:ラクゴ・ザ・フューチャー二周年記念号
ぱんぱかぱーんぱんぱんぱんぱんぱ
これもひとえに、どんなくだらない
たので、ついにこれでラクゴ・ザ・ 「こんにちは」
かぱーん。
ことを書いても私を野放しにして放置
フューチャーの一人勝ちとなった。う 「お、おまはんかいな、こっちはいり。
ガイナックスのホームページの片隅
しておいてくれたガイナックス統括本
はははははははははははははははは
で連載をはじめてついに今回で二十五
部長武田氏のおかげである。毎回、四
回目。ラクゴ・ザ・フューチャー二周
百字詰め原稿用紙で十枚という約束な
え? 今回が二十五回目なら、二周
年である。
のだが、守ったことはほとんどない。
年は前回のはずではないかって?
「じんべはん、わたい、あれでんねん」
長いようで短い二年間、艱難辛苦の
たいがい十五枚から二十枚、ひどいと
忘れていたのである。
「 あ れ? あ れで は わ か らん が な 。
二年間、花も嵐も踏み越えての二年間
きには三十数枚というときもあった。
ところで、このラクゴ・ザ・フュー
であった。
しかし、いくら長く書いてもそれが削
チャーというタイトルは、私ではな 「ほら、あれ……何ていうか、あの……
よくもまあこんなあほなことを延々
られたりせずに掲載されるところがイ
く、ガイナックスがつけたものなのだ
と毎回毎回書いたものである。最初
ンターネットの長所なのである。
が、その昔、スピルバーグの「バック・ 「何とか症? 何症やねん」
は、あーでもないこーでもないといろ
こういう内容のエッセイ(?)は、絶
トゥ・ザ・フューチャー」という映画 「えーとね、えーとね……ここまで出
いろ考えたものだが、連載第二回にし
対に本にまとまったりしないだろうか
があったのを覚えておられることと思
かかってまんねんけどなあ……覗いた
てはやくも「こんなもん誰も読んどら
ら、これからも好き勝手に書いていき
う。あるとき、友人同士で「バック・
ら見えまへんか」
ん」とひらきなおり、好き勝手にする
たいと思うので、乞うご期待。
トゥ・ザ・フューチャー」の話をして 「見えるかい、そんなもん。はよ、思い
ことにした。それが功を奏したという
しかし、たまに前に書いたやつを読
いると、ある男が振り返り、
「ことわざ
か失敗したというか、一部の業界人や
み返すと、
「なんというあほげなこと
修ちゃん、て誰?」と言った。
RAKUGO
(友野笑い)
。
ま、あがんなはれ。ん? なんや目が
赤いやないか。鼻水も垂らして、どな
いしたんや」
はっきり言いなはれ」
何やら言いまっしゃろ。何とか症て」
出せ」
「うーん……うーん……あ、そうそう、
好事家(具体的にいうと、我孫子武丸、 を書いとるんや」と自分であきれかえ
大森望、喜多哲士、ケダちゃん、田中 ることも多い。私の知る限りでは、月
これはいわゆる「聞き間違い」とい
哲弥、冬樹蛉など。敬称略)の間以外
今回は、聞き間違いが異常に多い人 「笑い話症……ちゃいまんなあ。笑い
刊ブロスに連載されていた牧野修氏の
には話題にもあがらず、細々とこうし 「悪魔辞典」と並ぶあほらしさなのだ
て続けることができている。
が、向こうは今月号で連載終了になっ
うやつである。
物が登場する話である(おいおいエッ
セイちゃうんかい)
。
笑い話」
「笑い話?」
話の最後にたいがいついてる言葉ね」
「笑い話の最後についてる? おまえ
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の言うてること、わからんわ。たとえ
文:田中啓文
第 25 回:ラクゴ・ザ・フューチャー二周年記念号
どないしたんや」
「あのな……なんで笑い話の最後に 「はあはあなるほど」
ば、『隣の空き地に囲いができたで』 「それですわ。わたいの病気。ぎゃふん
『へー』……おまえの言いたいのは、 症ですわ」
ぎゃふんというか、と言うたらやな 「信用したか」
『へー症』か?」
は、これを『ぎょふん』と言うたんや」 「やっぱりな」
RAKUGO
「それも言うなら、花粉症やろ」
「あほなことをこれ。そんな特殊な笑 「お医者の先生は、ぎゃふん症や言い
い話を例にしたらあきまへんわ。もっ ましたで」
と、普通のやつ」
「普通やと思うけどなあ。ほなら『この
「おまえの聞き違いや。ほんまは花粉
症言うねん」
帽子ドイツんだ』
『オランダ』……おま 「そうでっか……? ぎゃふん症やと
えの言いたいのは、
『オランダ症』か」 思うけどな。ところで、じんべはん、笑
……もとは『ぎゃふん』やなかった。昔 「まさか」
「ぎょふん?」
「魚粉と書いて、ぎょふん、と読む。魚
して、ほっとしてまんねん。これから
の粉のことやな。……これでわかった
は梅雨で、雨の季節でっさかい、花粉
やろ。さ、帰り」
も下火になりますわ」
「帰り、て、あんた。なんで笑い話の最 「雨か。あんまりどしゃぶりいうのも
後に魚の粉のこと言いまんねん」
「そういうめずらしいやつやのうて、 い話の最後に、何で『ぎゃふん』て言
もっとありきたりのやつおまへんか」 いまんねん」
「おまえの疑いももっともやが、その
「ありきたりやと思うけどな。ほな『お 「え?」
イモがないときにおイモを食べたく 「いや、笑い話の最後に、何で『ぎゃふ
「今、ききたいんです。教えとくなは
なったら、お尻の穴で空気を吸えばい
ん』て言いまんねん、てたずねてまん
いよ』
『どうして?』
『だって、口から
ねん」
「でも、ようやくその花粉症も峠を越
話はまた今度……」
れ」
「うるさいやっちゃな。魚いうのは、だ
困るが、雨降りちゅうのはなかなか風
情があってええもんや」
「何言うてまんねん。雨は体に毒やそ
うでっせ」
「そうか? 春雨じゃ、濡れてゆこう、
言うた人もおるけどな」
いたい生でそのまま食べるのが一番う 「そいつはあほですわ。雨に濡れたら
おイモを食べたら、お尻から空気が出 「そら……おまえ……決まっとるやな
るでしょ。だったら、お尻で空気を吸 いか」
まいんや。次が焼き魚、その次が煮魚
えば、口からおイモが出るはずだも 「どない決まってまんねん」
ん』
『ぎゃふん!』
」
「また今度教えたるわ」
く。粉にして食べるやなんて、愚の骨
ぶやろ。酔うたときに、小雨の中を歩
頂や。つまり、そんなあほなことをす
くのはひんやりとして心地のえかもん
るやつはおらんという意味で、『ぎょ
やで」
「そいつやー、そいつや!」
「何や、仇に巡りおうたみたいに……
「そんないけずなこと言わんと、今、教
えとくなはれ」
病気になりまっせ」
や。手をかけるたびにまずうなってい 「ちょっとぐらいやったらだいじょう
ふん』すなわち『そんなあほな』や」 「あきまへん。証拠がおますわ」
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文:田中啓文
第 25 回:ラクゴ・ザ・フューチャー二周年記念号
「どんな証拠や」
ちょっと聞き間違いが多すぎるんと
「阿波?」
だーす、夕刊だーす』ゆうて配って歩
「歌です。雨は病気のもとや、ゆう歌が
ちゃうか。あほなまちがいで済んでる
「阿波やない、アバ。そういうグループ
いてはる、という歌詞や」
いっぱいおまんがな。
『雨が病んだら
うちはええけど、そのうち大きな間違
名や。その『ダンシング・クイーン』ゆ 「はあはあなるほど」
……』とか『外は冬の雨、まだ病まぬ
いをしでかすで。気つけや」
う曲や。世界的に大ヒットした曲の歌 「信用したか」
RAKUGO
……』とか『病み上がりの虹は……』と 「歌で思いだしましたけど、外国の歌に
「まさか」
詞ぐらい、ちゃんと覚えとけ」
か……」
はけったいな歌詞のもんがありまんな」 「そうでっか。ほんで、ほんまは何て歌 「やっぱりな」
「よういわんわ。そら、雨が病むんやの 「おまえの話はあちこち飛ぶな」
「そういえば、こないだ童謡のCD聞
てまんねん」
うて、雨が止むやろ」
いとって、びっくりしたことがおまん
「すんまへん、今回、ネタがばらばらで 「え?」
「口で言うてもわかりまへんな、これ。 んねん。で、喫茶店にいてましたら、有
ほんまゆうたら、
『雨に濡れても』とか 線で懐かしい歌がかかってまんねん
「いや、有閑ざーんす、ゆうのは聞き間
ねん。わたいら、都会に住んでるもん
違いなんでっしゃろ? ほな、ほんま
には『そんなあほな』としか思えんよ
はどういう歌詞でんねん」
うなことが、まだまだ田舎ではありま
『雨に歌えば』とか、雨が当たっても病
わ。ほれ……あの……外人の四人組が
気になってない歌もあるから、おかし
歌とる、有閑マダムがどうたらこうた
「それはやな……また今度教えたろ」
いな、
とは思ってたんですけど……。
ほ
らそう歌ありまっしゃろ」
「またやまたや。今、教えとくなはれ」 「どうでもかえけど、ほんまにおまえ
れ、あのガイルゆう外人が雨に打たれ 「外人四人組で……有閑マダム……?
て修行してるゆう歌もありまっしゃろ」 おまえ、それ、また、なんぞの聞き
「な、なんや、それ?」
間違いとちゃうか」
「知りまへんか、
『雨に濡れながらたた 「いや、たしかにそういう歌詞でした
ずむ人、ガイル』……」
で。めちゃめちゃヒットした……ほれ
「ちゃうわ、それは。それはこうこうや」 ……『有閑ざーんす、有閑ざーんす』
「こうこうですか? ほな、わたいは ゆう……」
今まで聞き間違いしてましたんか」
「やっぱり聞き間違いや。それは、アバ
「言うたらなんやけどな、おまはん、 のな」
「どうでもええんやないか、そんな歌
詞ぐらい」
「あんた、今、歌詞ぐらいちゃんと覚え
とけ、言いましたがな」
んねんな」
の話はようあちこち飛ぶな。作者に言
うとけ。もうちょっと一貫性のあるネ
タで書くように、言うて。で、何のこっ
ちゃねん」
「そやったかいな。あれはやな……た 「器物はみな、千年の齢をへると付喪神
しかに有閑マダムが『○○ざんす』ゆ
ゆう妖怪になる、言いまっけど、ほん
うてるように聞こえるが、ちょっとち
まですな。田舎のほうでは、都会から
がうんや。あれは、有閑やのうて、夕
払い下げになったバスとかが走ってま
刊。新聞配達のおっちゃんが、『夕刊
すやろ。あれ、皆、妖怪らしいですな」
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「は? 何言うとるねん」
文:田中啓文
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「そんな長い名前のやつ、おるやろか」
「童謡にありまんねん、『田舎のバス 「おる」
は、おぼろ車……』ゆうて」
「ま、さからわんとこ。でも、ガイナッ
RAKUGO
「あほらしいて、コメントする気にも
クスのアニメの主題歌の歌詞ゆうのは、
なれんわ。それも言うなら『田舎のバ
どれも聞き取りやすいですわな、なん
スはおんぼろ車……』やろ」
や、べんちゃら言うようですけど」
「あ? そうですのん? これもまた、 「そやな、それはわしも認める。ガイ
聞き間違いですわ。しゃあけど、いい ナックスのアニメの主題歌歌とる歌手
わけするように聞こえまっけど、わた
は、みんな発音がしっかりしとるさか
いばっかりが悪いんとちゃいまっせ。 い、歌詞もきちんと伝わるんや、なん
歌詞ゆうのは、歌手がじょうずやった や、べんちゃら言うとるようやけど」
らちゃんと聞き取れまんねん。わたい 「たとえば、あのエヴァンゲリオンゆ
が聞き間違いするゆうのは、要する うの、おますわな。あの主題歌の『暗
に、歌手がへたくそなんですわ」
黒な変死のせいで』ゆうのは、なかな
「えらいこというた。そのとおりや。最
かよろしな」
近の歌手は発音がなってないやつがよ 「いえてる。
『暗黒な変死のせいで』は
うけおる。たとえば、○○○○とか○ 最高やな」
○○○○とか○○○○○○とか○○○ 「よかったよかった」
○○○○とか○○○○○○○○とか○ 「よかったよかった」
○○○○○○○○とか○○○○○○○
○○○とか○○○○○○○○○○○と
か……」