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第 19 章 ビデオゲームと学び - 静岡大学大学院教育学研究科附属 学習

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Chapter 19. Videogames and Learning. (Constance Steinkuehler & Kurt Squire)
In R. K. Sawyer (Ed.) Cambridge Handbook of the Learning Sciences (2nd Edition).
第 19 章
ビデオゲームと学び
池尻良平・藤本徹(東京大学)
1.章の要約
この章では,学習科学においても関心が高まっているビデオゲームの役割,効果,今後
の課題をまとめている。まず,商用のゲームも含めてビデオゲームが学習に対してどのよ
うな役割を果たせるかについて,これまでの先行研究をまとめる形で紹介している。ビデ
オゲームには,(1)学習コンテンツとして内容の理解を促進させられる役割,(2)学校
で重要視されている思考を促す誘い水として機能する役割,
(3)ゲーム内での行動やデー
タを利用して評価できる役割,
(4)活動に引き込む構造として参照しうるという役割,の
4つがあるとされている。次に,ビデオゲームの学習効果をメタ分析した先行研究をもと
に,ビデオゲームの学習効果を確認している。その結果,先行研究によって相反する結果
が出されていることがわかった。著者はこの結果に対し,ビデオゲームと学習の研究が抱
えている問題点,具体的には,ビデオゲームと学習に関する用語に対して統一的な定義を
取るのが難しい点,ゲームメカニクスの特定化が難しい点,学習者によって異なる経験が
生じてしまう点,使用の文脈で効果が変わる点が関係していると主張しておいる。最後に,
それぞれの問題点を克服する方針と,学習科学における今後の課題を提示している。
2.私が面白いと思った一文とその理由
「ビデオゲームがインタラクティブであり,個々のプレイヤーが異なるゴールとプレイ
のパターンを持っていることがよくあるため,結果的に各学習者の経験がある程度異なっ
てしまい,条件内や条件間での一般化が難しくなる」(p. 387)
。
この一文は,ビデオゲームの学習効果が先行研究で異なる理由として紹介されているが,
同時に,ビデオゲームが非常にインタラクティブな教材で,個々人の目的や考えに対応し
うる教材であることも示している。研究対象として困難な題材ではある一方,新しい学習
を切り開く潜在性を持っている点で,象徴的な一文といえるだろう。
3.背景
本章の著者の二人は,ゲーム学習研究分野が注目を集め始めた 2000 年代前半,市販ビデ
オゲームを題材とした博士研究を行った若手研究者として注目を集めた。Squire はインデ
ィアナ大で Sasha Barab の指導のもと,歴史シミュレーションゲーム「Civilization III」
を学校の授業や課外活動に導入した事例研究を行い,Steinkuehler はウィスコンシン大で
James Gee の指導を受け,多人数参加型マルチプレイヤーオンラインゲーム(MMOG:
Massive Multiplayer Online Games)
「リネージュ」のゲーム内仮想コミュニティにおける
学習文化に関する研究を行った。その後二人は 2005 年にウィスコンシン大学マディソン校
で研究拠点「Games Learning Society」設立に参画し,この分野の研究コミュニティの形
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Chapter 19. Videogames and Learning. (Constance Steinkuehler & Kurt Squire)
In R. K. Sawyer (Ed.) Cambridge Handbook of the Learning Sciences (2nd Edition).
成に大いに貢献した。Steinkuehler は米国政府の分析官を務め,教育行政関係者のゲーム
学習コミュニティの形成や,政府の推進する STEM 教育振興にゲーム学習研究の知見を取
り入れることに貢献した。ともにこの分野の発展を支える主要な研究者として知られてい
る。
4.日本への示唆
ゲーム学習の分野は,2000 年代半ばから急速に研究分野として成長してきた。今日では
米国を中心に多くの研究拠点や推進組織が設置されている。日本でも以前から授業へのゲ
ーム教材の導入やデジタル学習ゲームの開発は取り組まれてきたが,研究者の層が薄く,
研究コミュニティとしての発展は欧米に大きく後れを取っている状況にある。この分野の
研究は問題解決学習,プロジェクト学習,デザイン学習,学習コミュニティなどの学習科
学領域の研究にも深く関連している。学校教育への導入とともに,家庭環境やプレイヤー
コミュニティにおけるインフォーマル学習における展開が進んでいる。ゲーム学習の評価
手法の研究はこの数年で急速に進展しており,プロジェクト学習やオンライン学習の評価
手法の研究とも関連する重要な研究成果が期待される。
「未来の学びへの準備のためのゲー
ム学習」という観点については,マンガや映画など他の娯楽コンテンツを利用した教育実
践においても応用が可能であり,これまで学習研究が進展しきれていなかったコンテンツ
分野の研究の底上げも期待できる。
5.注意すべき用語
“game-based learning” ( ゲ ー ム 学 習 ), ”gamification” ( ゲ ー ミ フ ィ ケ ー シ ョ
ン)
,”preparation for future learning"(未来の学習のための準備)
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