愛着スタイル 愛着スタイルが スタイルが排他的な 排他的な恋愛関係の 恋愛関係の攻撃性に 攻撃性に及ぼす影響 ぼす影響 Effects of early adult attachment styles on displaced aggression in exclusive romantic relationship 臨床心理学研究科 臨床心理学専攻 1000-080714 関本 文博 問題と目的 本研究では,青年期の愛着スタイルが攻撃の置き換え傾向にどのような影響を及ぼしている かについて検討を行う。また,その愛着スタイルが恋愛関係における排他性にどのような影響 を及ぼしているかについても同時に検討する。 方法 被検者は,大学もしくは大学院に通う 257 名(男性 90 名,女性 162 名,不明 5 名) ,平均年 齢 21.11 歳(SD=1.62)であった。調査は,質問紙による集団調査を行った。質問紙は,成人 愛着スタイル尺度(ECR)36 項目,攻撃の置き換え傾向尺度(DAQ)31 項目,および排他性 尺度 15 項目で構成した。これらの尺度は全て 7 段階評定法であった。 結果と考察 ECR における 2 次元愛着スタイル( “見捨てられ不安”と“親密性の回避” )得点の高低によ って,安定型群(--) ,とらわれ型群(+-) ,拒絶型群(-+) ,恐れ型群(++)に分けた。 愛着 2 次元を要因とし,DAQ の下位尺度得点と総合得点および排他性得点について 2 要因分 散分析を行った(Table 1) 。その結果, “怒りの反すう” (F(1,247)=22.68,p<.05) , “攻撃の (F(1,247)=17.83,p<.05)に 置き換え” (F(1,247)=6.09,p<.05)および“DAQ 総合得点” ついて, “見捨てられ不安”の主効果が有意であった。見捨てられ不安が高いほど,怒りの反す うを多く行い,置き換えられた攻撃をより多く行うことが示された。一方,“報復の企図” (F(1,247)=7.22,p<.05)については, “親密 (F(1,247)=4.45,p<.05)および“排他性得点” 性の回避”の主効果が有意であった。親密性からの回避傾向が強いほど,報復の企図をより行 うが,排他的な感情はあまり抱かないことが示された。 Table 1 4分類の愛着スタイル群における各変数との分散分析 親密性の回避 低群 高群 見捨てられ不安 低群 高群 低群 高群 安定型(n=73) とらわれ型(n=51) 拒絶型(n=66) 恐れ型(n=61) 36.15 (13.05) 44.86 (14.64) 37.79 (12.29) 44.87 (12.31) 25.92 (10.97) 30.82 (14.73) 31.30 (13.03) 32.33 (12.95) 30.75 (11.25) 33.51 (13.23) 29.65 (12.25) 34.61 (12.61) 92.82 (25.68) 109.20 (33.03) 98.74 (25.15) 111.80 (26.44) 69.88 (13.30) 74.41 (12.99) 67.95 (13.81) 66.61 (16.51) 怒りの反すう 報復の企図 攻撃の置き換え DAQ総合得点 排他性 ※( )内はSD 安=安定型,と=とらわれ型,拒=拒絶型,恐=恐れ型である。 F値 7.86 3.43 2.23 6.82 3.15 * * * * 多重比較(HSD) 安・拒<と・恐 安<恐 安<と・恐,拒<恐 恐<と *p <.05 Table 2 4分類の愛着スタイル群における排他性尺度の下位尺度との分散分析 親密性の回避 低群 高群 見捨てられ不安 低群 高群 低群 高群 安定型(n=73) とらわれ型(n=51) 拒絶型(n=66) 恐れ型(n=61) F値 多重比較(HSD) 社会的行為 2.98 (1.14) 2.79 (1.30) 2.67 (1.23) 2.86 (1.28) 0.77 親密な行為 5.13 (1.38) 4.41 (1.28) 5.07 (1.48) 5.18 * 拒<と・恐 儀礼的行為 6.13 (1.14) 6.65 (0.69) 6.16 (0.99) 6.34 (1.28) 2.94 * 安<と *p <.05 ※( )内はSD 安=安定型,と=とらわれ型,拒=拒絶型,恐=恐れ型である。 また,4 分類愛着スタイル群ごとに排他性尺度について因子分析を行った。その結果,排他 性得点の昇順に“恋愛関係以外の社会的関係でも普通に行われる行為(社会的行為) ” , “親密な 関係において行われるであろう行為(親密な行為) ” , “恋愛関係でのみ行われるべきであろう儀 礼的行為(儀礼的行為) ”の 3 因子(安定型群は 2 因子)が抽出された。 先と同様に,排他性尺度の下位尺度得点について 2 要因分散分析を行った(Table 2) 。その 結果, “社会的行為”については交互作用および主効果は得られず, “親密な行為” (F(1,175)=7.27, p<.05)および“儀礼的行為”(F(1,247)=6.87,p<.05)について“見捨てられ不安”に主効果 が得られた。見捨てられ不安が高いほど,より親密性の高い行為に対して排他性を喚起するこ とが示された。 総合的考察 本研究から,愛着スタイルを構成する 2 次元のうち,見捨てられ不安が高いほど攻撃の置き 換え傾向が強まり,また排他性も高くなることが示された。他方,親密性の回避傾向が強いほ ど排他性は低くなることも明らかになった。 4 分類の愛着スタイルのうち,安定型は,総じて攻撃の置き換え傾向が弱く,2 者間の行為 に対する中程度の排他性を有している。社会的行為と儀礼的行為との境界も明確であり,2 者 間の排他性が侵害された場合,非攻撃的な対処を取るものと考えられる。 とらわれ型は,攻撃の置き換え傾向が強く,2 者間の行為に対して強い排他性を覚知してい る。排他性を喚起するような行為の範囲が広く,恋愛関係においても,置き換えられた攻撃を 表出する可能性が高いだろう。 拒絶型は,安定型と同じく攻撃の置き換え傾向は弱いが,排他性を喚起するような行為の範 囲の狭さが特徴的である。これは,親密性の回避傾向の強さ故,ストレスフルな状況からの心 理的撤退を行うものと考えられる。 恐れ型は,とらわれ型同様,排他性を含意している行為の範囲が広く,攻撃の置き換え傾向 も強い。だが,2 者間の行為に対する排他性が低いことから,とらわれ型と違い,2 者関係が 脅威に晒された場合,怒りの感情や認知に対して抑圧を行うことが考えられる。
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