平成24年度 研 究 ――― 研 究 主 題 発 表 要 項 ―――――――――――――――――――――――― 豊かな心を育み、生きる力を培う 教育課程の編成について ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 10月18日(水) 大阪市立中学校教育研究会 教 育 課 題 部 会 場 大阪市立加賀屋中学校 教育課題部 研究発表会 次 第 (司会:昭和中 坂根 眞一郎) 1.あいさつ(14:30~14:35) …………………………………… 瓜破西中 西本 晃 2.「教育課題部アンケート」について(14:35~15:05) 研究発表 「力のある学校」をすすめるために 3.講 ………………… 大 桐 中 長田 周也 演 「大阪の教育改革」について(15:10~16:35) 大阪大学大学院 教授 志 水 宏 吉 4.質疑応答 5.指導助言(16:50~16:55) ……………………………………………… 大阪市教育委員会 6.あいさつ(16:55~17:00) 「力のある学校」研究の経緯 教育課題部では、2009年度より「力のある学校」を研究主題として、各校へのア ンケートを実施し、その研究者の方々から講演ならびに指導助言をいただき進めている。 初年度は、その提唱者である大阪大学大学院 志水宏吉教授より、“力のある学校をつ くる”と題してご講演いただいた。2010年度は、 “力のある学校をめざす”を主題と して、その実践校である大阪市立大桐中学校の学校づくりの報告と大阪大学大学院 高 田一宏准教授にご講演いただいた。昨年度は、“力のある学校であるために”を主題に、 甲子園大学 若槻健准教授をお招きし、これまでのアンケート結果から取り組みにくさの 感じられる要素に焦点をあて、ご講演いただいた。 今年度は、 “力のある学校をすすめるために”を主題に、大阪の教育改革が施行される なかでの学校づくりについて4年間のアンケート結果もまじえて、大阪大学大学院 志水 宏吉教授より、ご講演ならびに指導助言をいただき研究をさらに深めていきたい。 《「力のある学校」(empowering school)の解説》 □「力のある学校」とは、その学校に通うすべての子どもたちを注1エンパワーする学校をいう。 (そこに関わるすべての人をエンパワーする学校) □学校現場では、「力のある子ども」とか、 「力のある教師」という言葉がよく聞かれる。 志水先生は、学校についても同じことがいえるのではないかと考えられ、高い総合力を発揮し ている学校を「力のある学校」という造語で定義された。志水先生を初めとする研究グループ が多くの学校を調査され、まとめたものが「力のある学校」の8つの要素-together 号(スク ールバス・モデル)である。 1・・バスのデザイン 2・・バスのメンテナンス R⑧外観(ボディ) O②ハンドル E⑦内装(インテリア) ブ レ | キ H⑥後輪(右) T⑤後輪(左) ア ク セ ル ①・・3、4 ⑤・・11、12 ②・・5,6 ⑥・・13、14 ③・・7,8 ⑦・・15、16 T①エンジン E④前輪(右) G③前輪(左) TOGETHER号 ④・・9、10 ⑧・・17、18 注.1~18はアンケート番号 ○は要素番号 □教職員集団の強力なエンジン(①)と学校運営のハンドルさばき(②)をスクールバスの中心 とし、生徒指導と学習指導はバスを導いていく前輪(③④)、校種間連携と家庭連携は運転を 安定したものにする後輪(⑤⑥)、学校環境・学校文化は、バスのインテリア(⑦)とボディ (⑧)と考えた。このスクールバスが走っていく道はけっして平坦ではないだろうが、8つの 要素をうまく連携させて、少々の悪路であっても力強く乗り越えていく学校の姿を思い描いた 注1.エンパワーとは、人が持っているいいものに気づいて伸ばしていくこと、自信のない子に、 はたらきかけて力を伸ばすことをいう。 - 1 - □スクールバスへのガソリン補給やメンテナンス(学校への人的・物的サポート)、また道路の 整備(社会的な環境整備)を受け持つ行政の支援体制の重要性もここでは見落としてはならな い。8つの要素に示された内容は、従来でも学校運営の基本とされてきた事項だと思うが、今 回調査した小・中学校においては、これらの要素がうまくかみ合い、積極的かつ効果的な教育 活動が実践されていた。 〔図解以外は2009年度 全市教育研究会 志水 宏吉教授 講演資料・著書「公立学校の底力」より引用〕 《「力のある学校」アンケート結果》 (124校のミドルリーダー〈教務主任・生徒主事・学年主任〉の先生方が回答) □「力のある学校」の8つの要素 ※以下〔 〕内の左は 2011 年度・中央は 2010 年度・右は 2009 年度の数値 (下記の数値は、各要素の評価項目について、百分率の平均値で算出) 今年度〔 2011・ 2010 ・2009 〕 ① 気持のそろった教職員集団(Teachers) 88%〔85%・85%・77%〕 ② 戦略的で柔軟な学校運営(Organization) 89%〔82%・80%・79%〕 ③ 豊かなつながりを生み出す生徒指導(Guidance) 88%〔83%・79%・69%〕 ④ すべての子どもの学びを支える学習指導(Effective teaching) 79%〔71%・60%・56%〕 ⑤ ともに育つ地域・校種間連携(Ties) 71%〔67%・60%・58%〕 ⑥ 双方向的な家庭とのかかわり(Home-school link) 84%〔82%・78%・67%〕 ⑦ 安心して学べる学校環境(Environment) 82%〔80%・73%・80%〕 ⑧ 前向きで活動的な学校文化(Rich school culture) 87%〔84%・85%・86%〕 (下記の数値は各項目に「3.ややあてはまる」 「4.よくあてはまる」と回答した人数を百分率で算出) □学校づくりの基盤となる評価項目(1は562名・2は572名が回答) 今年度〔 2011・2010 〕 1.教育目標を実現するための注2グランドデザインがあり、再構築されている。 60%〔59%・66%〕 2.自己評価書に則り日々の教育実践が行われ、学校関係者評価委員会も機能し 75%〔63%・56%〕 学校づくりが推進されている。 □要素①に関する評価項目(1は577名・2は576名が回答) 3.教職員の適性・能力に応じ責任を持って仕事を果たしている。 今年度〔2011 ・2010 ・2009 〕 89%〔87%・86%・79%〕 4.気軽に相談し合えるような職場の人間関係ができており、若い教員が 育つ土壌がある。 87%〔83%・85%・86%〕 □要素②に関する評価項目(1は577名・2は578名が回答) 5.教育目標は、児童・生徒の実態や課題、保護者・地域の要望等を踏ま えたものとなっている。 91%〔89%・88%・93%〕 6.喫緊の教育課題に対して、即応できる組織となっている。 87%〔74%・72%・64%〕 □要素③に関する評価項目(1は578名・2は576名が回答) 7.生徒に「意味のあるルール」を徹底している。 87%〔83%・80%・71%〕 8.特別活動などを通して、子どもをエンパワーする集団づくりに努めて いる。 89%〔84%・78%・66%〕 □要素④に関する評価項目(1は575名・2は578名が回答) 9.日常的な授業公開や、指導法の工夫改善について校内研修を計画的に 実施している。 84%〔76%・60%・58%〕 - 2 - 10.生徒に家庭学習の習慣をつけるための取組みを積極的に進めている。 73%〔65%・59%・53%〕 □要素⑤に関する評価項目(1は566名・2は577名が回答) 11.各教科の指導や道徳などの領域の指導に、地域の多様な人材の積極的 な活用を図っている。 55%〔52%・46%・37%〕 12.幼稚園・保育所及び小学校、高等学校との円滑な接続のため、連携に 努めている。 88%〔83%・74%・78%〕 □要素⑥に関する評価項目(1は575名・2は574名が回答) 13.教職員は、普段から家庭訪問等を通して、保護者の思いによく耳を傾 けている。 94%〔93%・92%・86%〕 14.学校は保護者に対して、児童・生徒の家庭学習習慣づけのための様々 な働きかけを行っている。 75%〔72%・63%・48%〕 □要素⑦に関する評価項目(1は575名・2は577名が回答) 15.校内に様々な掲示板等があり、学習意欲を引き出す教室環境が整備さ れている。 76%〔73%・65%・75%〕 16.全ての児童・生徒が安心して学校生活がおくれる規律や秩序が学校や 授業にある。 88%〔86%・81%・85%〕 □要素⑧に関する評価項目(1は576名・2は577名が回答) 17.教職員は、自校のこれまでの教育活動や取組みに自信と誇りを持って いる。 86%〔82%・81%・78%〕 18.学校のこれまでの教育活動や取組みの基本的な考え方は、継続、継承 されている。 89%〔85%・89%・94%〕 注2. グランドデザインとは、学校の教育目標・方針に向かって取り組んでいこうとする教育活動 と学校運営の全体構想図で、各校の特色などをわかりやすく図に示したものをいう。 下図は大阪市立大桐中学校のグランドデザインである。 大阪市 立大 桐中 学校 グラ ンド デザ イン 教育目標 人にやさしい学校をつくる 個性の違いを認め、思いやりの心を育てる 必修教科 必修教科の重点 基礎学力の充実に つとめる 総合的な学習の時間 テ ーマ ① 1年 2年 3年 地域とつ な がる ふれあい学習 福 祉 ふ れ あ い 体 験 学習 地域と自分 テ ー マ ② 学 年 演 技 を と お して 仲 間 と つな が る テ ー マ ③ 朝 の 総 合 学 習を 通 して 学 力 向 上 へ む けて 取 り 組 む 協同学習 集団づくり 一泊移住・体育大会 学級での小グループ活動 - 3 - 道徳・特活 キャ リア教 育 特別支援教育 人権学習 いの ちの学習 修学旅行 文化鑑賞会 水泳大会 球技大会 百人一首大会 マラソン大会 校外学習 「力のある学校」レーダーチャート - 4 - 《考察「力のある学校」アンケート結果より》 ・4年間の推移をみると、8つの要素のすべての数値が上がっている。 ・昨年度、課題としてあげた要素④、⑤については、経年比較すると、50%台から 70%台へとかなりの改善が見られる。これは、全市的に小中連携の取り組みや授業 力トップアシスト事業、元気アップ事業等の取り組みがなされた成果であると考えら れる。 ・要素①~⑧の数値が、殆ど80%をこえており、大阪市には「力のある学校」になれ る校園が多いことがみてとれる。 ・経年比較すると、若干下がっている項目として 18 の“取組みの継承”がある。ここ数 年大量に退職者が出たために、若手教員が急激に増加したことが背景にあげられる。 一方、項目 4 の“若い教師が育つ土壌”は、ほぼ横ばいではあるが、今後、各校の取 組みの継承とともに若手教員の育成が課題にあげられる。 ・今年度の結果からは、60%台またはそれ以下の項目として項目 1 の“グランドデザ インの再構築”項目 11 の“地域の人材の積極的な活用”がある。地域の資源を生かし た元気アップや職業講話、職業体験等の取り組みもあるが、今後さらに発達する情報 ネットワークも視野に入れて、ともに育つ地域・校種間連携を目指し、さらに取組み を進める必要がある。 ・70%台で、すこし低い項目としては、2 の“自己評価書、学校関係者評価”、10 の“家 庭学習習慣化の取組み”及び 14 の“家庭学習習慣化の働きかけ”がある。項目 15 の “掲示物等の学習環境の整備”については横ばいのままである。特に、学習習慣の形 成は非常に重要であり、各校で引き続き地道な努力を続けていかねばならない。また、 安全で規律のある雰囲気と学ぶ意欲を引き出す学習環境については、自分たちでつく った誇りある学校環境という視点を子どもたちに持たせるためにも生徒とともに取組 みを進めていく必要がある。 ・90%以上の高い項目は、13 の“家庭訪問の実施”と項目 5 の“実態に即した教育目 標”である。日本の学校文化の特徴といえる家庭訪問は、大阪でもほとんどの学校で 積極的に行われていることがみてとれる。 《大桐中学校のスクールバスモデル》 DAIDO中 モデル Team Th e Daido 人 1979 TOGETHER号 - 5 - に や さ し く 大阪市立中学校教育研究会 「教育課題部」ホームページのご案内 教育課題部の事業内容や研究歴(過去の全市研究会の発表要項など)を ご覧いただけます。 アクセスの仕方 方法1 下記のアドレスを直接入力する。 http://www.ocec.ne.jp/kenkyukai/jh/kyouikukadai/main.html 方法2 ①「にぎわいねっと」のホームページを開き、「リンク集」をクリックします。 ②「教職員のコーナー リンク集」のホームページが開きますので、「大阪市学校遠の研究会等の サイト」をクリックします。 ③「研究会等」のホームページが開きますので、 「大阪市立中学校研究会」の「教育課題部」を クリックします。 (注)教育課題部 検索 ← このようなWeb検索に、対応できていません。 - 6 -
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