DOWNSTREAM No.31 日本語版・要約編 DOWNSTREAM No.31 本編 p. 4 p. 5 p. 6∼8 p. 9∼10 p. 11 p. 12∼14 p. 15∼16 p. 17∼18 p. 19 p. 20∼21 p. 22∼23 p. 24∼25 p. 26 p. 27∼28 p. 29 p. 30∼31 血液製剤−現状と今後の展望− rHSAの製造に向けて アルブミン製剤のクロマト法による生産プラント稼働実績報告 負電荷を持ったアルブミン:効力のある抗HIV活性を示す陰イオンタンパク質の新種 凝固因子濃縮液の開発と生産 凝固因子の発展 加熱処理血液製剤の免疫原性 クロマト法とPEG/カプリル酸処理による血漿分画 クロマト法によるヒトIgGの開発と製造へのスケールアップ クロマトグラフィーによる免疫グロブリンの製造 液状免疫グロブリン製剤の開発 クロマト法を用いたアルブミン製造におけるウィルス、およびイムノ複合体の分画 プロトロンビン複合体濃縮工程におけるウィルス不活化 INACTINEテクノロジー 遺伝子組換え血漿製品‐規制側からの視点 血漿成分の新しい製剤の可能性とチャレンジ 入されました。 現在、最も大きなリスクは、従来と異なる新しい p. 3 CJDの発生です。この新しい CJDの診断方法はプ リオンタンパク質に対して検査精度が十分である Plasma products - where are we and かということで、多くの研究は、供給された血液に where are we going? 病原体として存在する場合、分離プロセスによっ 血液製剤−現状と今後の展望− てプリオンタンパク質を除去できることを期待す るところです。 将来 5∼6年前には、製造に関する規則はヨーロッパお 今後5年間、血漿分画製剤のビジネスはどのような よび米国の両方で行われており、 ヨーロッパのい 変化をするのかが課題です。おそらく血漿分画製 くつかの血液センターは地方の規制の下に、適切 剤の臨床における有効性は引き続き保たれ、また に許可されていましたが、米国の状況はあまりか その中で多くの訴訟が行われようになるかもしれま んばしいものではありませんでした。 せん。 過去5年は、商用目的のメーカーおよび非営利セク 遺伝子組換え体の Factor VIIIおよび Factor IXは、 ター相方の統合をめざしてきました。商業的には、 それらが高価であるにもかかわらず、成熟した市 利益を確保するための絞り込みと、規制に対応す 場の中で増加しています。 アルブミン、フィブリ るために払うコストの増加です。世界中での血漿 ノーゲンおよび Factor XIIIなどの遺伝子組換えに 分画製剤の供給能力は年間あたり400万リットル よる製品が開発中です。 分増加しました。 製品の安全性は4つの問題を備 しかし、トランスジェニック動物を使う技術によ えたこの業界に対する、おそらく最も大きな変化 る類似した製品が開発中である場合、遺伝子組換 への推進力でした。4つの問題とはすなわち、血漿 え製品とそれらは相互の脅威下にあります。トラ の品質、ウィルスの除去、臨床試験における必要 ンスジェニック法でもまた、どのようにして潜在 事項、およびGMPの施行です。 的な動物からのウイルス感染の危険を軽減するか、 また製品面では、新たに血漿分画製剤に遺伝子組 また安全性と効能を実証するために必要とされる 換え体としての Factor VIIIおよび Factor IXが導 臨床試験はいかなるものかといった問題を持ってい ます。 そして、遺伝子治療があります。 遺伝子治療が特 定タンパク質の欠乏症に対する最終的な解決法で あるとは言え、その開発のタイムスケールは非常 に長いものとなるでしょう。 また、多くの臨床医(および患者)は非血漿由来の 新しい医薬品に引きつけられるでしょう。 結論 次の5年間、もっとも大きなマーケットを持つ米国 およびヨーロッパとともに、世界的に血漿分画製 剤の需要はしっかりと成長していくと考えられま す。また、今後一層のメーカー間の統合があるで しょう。 特にノンエンベロープウィルスに対して 有効な新しいウィルス除去のプロセスが従来のエ ンベロープウィルスと同様に確立されるでしょう。 そして少なくとも1つのトランスジェニック法によ る製品が認可されるでしょう。 Factor IX欠乏の ための遺伝子治療法はもう間近になっているでし ょう。 そして血漿分画製剤はまったく安全な製品が、遺 伝子組換えによる新製品と同じ市場の中で伴に販 売を続けられるでしょう。そして規制当局からは、 より少ない新しい規則により、ハーモナイズされ たひとつの方針が出されるでしょう。 DOWNSTREAM No. 31 p.5 Production of recombinant human albumin from the methylotrophic yeast Pichia pastoris rHSAの製造に向けて p. 6∼8 Chromatographic albumin production-pilot manufacturing plant アルブミン製剤のクロマト法による 生産プラント稼働実績報告 オーストラリア・メルボルンのCSL社にて1995年6 月以来、世界的にも最大級のアルブミン製剤のク p.11 Development and production of coagulation factor concentrates: threats or opportunities 凝固因子濃縮液の開発と生産 人の血液凝固因子の欠損に関して多くの文献があ りますが、ほとんどがごくまれな症例です。凝固 因子欠損に関しての臨床問題を解く手がかりすら HSAは、これまで血液を原料として製造されてお りましたが、血液中に潜在する様々な不純物など による発病の危険性や、ヒト血漿の日本国内の供 給率がわずか26%という問題を抱えています。組 換えの技術がこのような課題を解決できる可能性 を持っており、rHSAに大きな期待が寄せられてい ます。rHSAは血液中に含まれる他のタンパク質と 異なり複雑な構造を持つ他、単価が安く、治療に 使用する量は1回のdoseに10gを要するために非常 に純度の高い製品でかつ巨大な製造スケールを要 することになります。 rHSAはPichia pastorisを宿主として発現させてお り、遠心とフィルタープレスを用いた手法で製造 していましたが、いくつかの解決すべき課題があ りました。この課題はストリームラインを使った 吸着流動床技術を採用することによって容易に解 決することができ、いくつかのクロマトグラフィ ーや膜処理などの技術を組み合わせることで精製 することが出来るようになりました。 また、精製工程では高感度な不純物の測定をEIA 法で行い、酵母に起因する不純物は全く検出する ことができないほど安全性の高い製品であり、 1997年に製造承認申請を提出し、すでに北海道に 工場を建設しバリデーションを行っています。 ロマト法による生産プラントが稼動しています。 80年代初頭より、血液製剤の製造工程にクロマト 法を導入するための様々な試みがなされ、生産性、 再現性、そして工程管理に優れた成功例の1つとし て、報告されています。 Fraction II+III supernatantを出発物質としたアル ブミンの精製にクロマト法が用いられています。 クロマト工程としては、まず2種類のイオン交換体 カラムを2本パラレルに使用し、最初の陰イオン交 換体:DEAE Sepharose FFカラムのアルブミン画 分(回収率95%以上)を直接次の陽イオン交換 体:CM Sepharose FFカラムに添加。最終的に CM工程のアルブミン画分の回収率は99%以上で プールされています。3サイクルを1バッチとし、 NaOHによるCIP、HETPの測定は毎バッチ実施 されています。 イオン交換体工程に次いで、ゲルろ過:Sephacryl S-200HRカラムが実施。この工程でアルブミンモ ノマーが精製されます。 本プラントにおける過去4年にわたる約1400トン相 当の処理実績は、血液製剤の製造工程にクロマト 法を組み込んだ時の様々な特性を明らかにしただ けでなく、今後クロマト法の導入が工程を簡単に 自動化・管理できる非常に有効な手段であること を実証しました。 つかめない場合もあります。凝固因子濃縮液の開 発と生産で、大きな成果を見てきましたが、血友 病患者におけるAIDSの流行のような出来事もあり ました。1950年代最初の10年間での主なゴールは、 血漿をより濃縮した第8、9、10因子の開発であり、 次の年代には、より高純度の濃縮液の開発が行わ れました。 大量の血漿から製造される高純度濃縮液の使用が 増えるにつれ、ウィルスの危険性が浮上してきた ため、1980年代からはウィルスに対する安全性の 向上に主な努力が払われ、1990年代には、遺伝子 組換えをによる第8、9因子の生産のほか、大きな 成果があります。 1990年代での改良はより安全な血漿からの凝固因 子濃縮液をもたらしましたが、そこにはまだ生産 不足や nvCJDのような新しい問題が発生する危険 性があり、また、遺伝子工学によって製造される 製品は脅威となるかもしれません。 しかし、近い将来にはより効果的なウィルス除去 技術の開発により、ウィルス問題が解決する可能 性があります。また新しい管理手段による超高純 度の濃縮液の大量供給が手間の掛からない治療方 法を導くことでしょう。 遺伝子組換え技術による大量生産は、安価な濃縮 液の大量供給を理論的に可能にしますが、それで も結局、いまでも世界中の凝固因子も欠損患者の 中で十分な治療を受ける事が出来るのはほんの少 数でしかないことを忘れてはなりません。 1980年代、原料となる血液がヒト免疫不全ウィル ス(HIV)によって汚染され、血友病を持った多く の人がAIDSに罹患したという事実は、血液製剤に p.12∼14 対するウイルス不活性化法の導入を積極的に促進 Evolution of coagulation factor しました。 特定の血液凝固因子にのみ結合するモノクローナ concentrates: biotechnological ル抗体(MAb)をリガンドとして利用するアフィニ breakthrough of immunoaffinity ティークロマトグラフィーの概念は、1980年代に chromatography using monoclonal 開発され、1987年に認可されたMonoclate (tm) antibodies HT(凝縮 Factor VIII)のような非常に純度の高 い凝固因子が製品として導入されました。 凝固因子の発展 Monoclate HTは1回の点滴量をそれまでのAHFの 場合にくらべて、4000分の1以下まで低下させる ことのできる画期的な突破口となりました。 血漿から得られた凝固因子を使用する血友病の治 またヒトFactor VIII-Cをモノクローナル抗体によっ 療は患者に計り知れない利益をもたらしました。 て精製したMonoclate HTに低温殺菌法のステップ の加 えることで改 良 された Monoclate Pは、 Armour Pharmaceutical社によって1989年に認可 され、イムノアフィニティークロマトグラフィー による工程が安全で非常に高純度のFactor VIIIを 生産できることを実証しました。 低温殺菌のようなウィルス不活性化と伴に使用さ れるモノクローナル抗体を用いたイムノアフィニ ティークロマトグラフィー工程により、血漿から 高純度に濃縮された安全な Factor VIIIとFactor IXを得ることが可能となりました。Monoclate P は、ウイルス汚染されていない安全な医薬品であ ることが証明されています。 DOWNSTREAM No. 31 p.15∼16 Immunogenicity of heat-treated therapeutic plasma derives products 加熱処理血液製剤の免疫原性 血液製剤の製造工程には通常加熱処理が組み込ま れますが、この処理工程中にタンパク変性を起こ p.17∼18 Plasma fractionation based on chromatography and precipitation by polyethylene glycol and caprylic acid クロマトグラフィー法とPEG/ カプリル酸処理による血漿分画 デンマークのHemaSure Denmark A/Sは、古典的 なCohn低温エタノール分画法に代わる新たな精製 法の開発について報告しました。 HemaSure Denmark A/Sでは設立当初の70年代半 p.22∼23 Characterization and formulation development of a new liquid intravenous immunoglobulin: Vigam Liquid 液状免疫グロブリン製剤の開発 現在、液状免疫グロブリン製剤が臨床での適応性 を高めるものとして注目を浴びていますが、凍結 乾燥免疫グロブリン製剤と比べてアグリゲーショ p.24∼25 Chromatographic partitioning of model and relevant blood borne viruses and of immune complexes of relevant in the manufacture of albumin クロマト法を用いた アルブミン製造におけるウィルス、 およびイムノ複合体の分画 Albumexはクロマトグラフィー法によって精製さ れ、低温殺菌されたアルブミン製品で、Cohn画分 に由来します。 DEAE Sepharose FFによる陰イオ し、活性低下が認められることがあります。これ は、変性の結果生じたタンパク質が体内で何らか の免疫原となることにより、活性阻害物質として の抗体が生産され、引き起こされていると考えら れています。この現象は、液状加熱処理されたF VIII濃縮製剤の使用患者に増加しています(製剤 使用患者の30%以上) 。 CSL社は、この現象についてin vitro、in vivoで検 証しました。 CSL社の高純度F VIII濃縮製剤 Biostateと、臨床的に阻害物質生産性がない良好 な結果を得ている中間精製物AHFとについて、 Anti-F VIII Mab、Anti- Biostate IgG、Anti-AHF IgG、それぞれを検証しました。このとき、AHF を故意に加熱変性させたものをポジティブコント ロールとしました。また、臨床試験でも阻害物質 としての抗体が作られないことも確認しました。同 様の検証をAT III製剤 Thrombotrol-VFでも行いま した。 結論として、いずれの製剤も製造工程での変性が ないこと、そして最終製剤に免疫原性がないこと が確認されました。 ばより、温和な条件でかつ室温で短時間に操作で きる、高品質・高回収率の手法の開発が進められ て来ました。クロマトグラフィー法の導入により 高純度・高回収率を実現し、また従来のCohn法 で起こる変性を回避するために、PEG、およびカ プリル酸を沈殿試薬に用い、室温での短時間処理 が可能となり、Cohn法で要求される低温作業のた めの製造コストと、ハンドリングの煩雑性とが不 要になりました。 工程の流れとして、まずSepharose 4FF ゲルろ過 により、F VIII/vWF画分とIgG/Albumin画分とに 分離。このゲルろ過工程は、F VIII回収率につい て、従来のクリオ処理工程の40-50%と比較して 60-70%の高回収率でした。FVIII/vWF画分は、ゲ ル ろ 過 に 引 き 続 き Q Sepharose、 次 い で S Sepharoseの各イオン交換体工程をそれぞれ実施し 精製しています。また、ウィルス不活化工程とし て、S/D処理、乾燥加熱処理(80℃、72時間)の 2種類の工程を経ることで、エンベロープ、ノン エンベロープウィルスをそれぞれ不活化していま す。F VIII製剤、Nordiateは1993年より製造スケ ールで稼動しています。 最初のゲルろ過により分離された IgG/Albumin画 分は、イオン交換体クロマトグラフィー工程と、 PEG、およびカプリル酸でそれぞれ処理され、ウィ ルス不活化工程としては、精製工程のカプリル酸 処理と液状加熱処理(60℃、10時間)の2種類で 不活化しています。IgG製剤はNordimmun、 Albumin製剤ははAlbumin HemaSureとしてそれ ぞれ販売されており、その純度は99%以上で、か つ非常に安定性の高い製剤となりました。 ン防止の安定化剤の検討や保存時の物理化学的特 性を高め、血圧低下を招く可能性のある不純物の 除去などの課題を更にシビアにとらえる必要性が あります。 液状製剤の開発には、短期間に行われる加速試験 によっておおむね 4つのポイント(機能の逆転現 象、Fc領域の反動現象、フラグメーション、低血 圧誘因因子)について精査する必要があります。 また、安定化剤としては、アルブミンやスクロー スなどが良く使われており、実績としても高いも のがあります。この液状免疫グロブリン製剤が当 局の要求を満足する為には、活性、製品純度、製 品形状の管理が重要になります。特に液状製品に 関しては、本文中の表1に記載してあるような基準 をクリアする必要があります。 液状および凍結品ともに冷エタノール分画法とウ イルス除去の可能性が高いクロマトグラフィーを 用いて製造しています。DEAE Sephadexを中間精 製で用いてメインの IgGを分画し、SD処理を37℃ で行うことで HCV、HIV、HBVなどのエンベロー プウイルスを不活化したのち、CM Sepharose FF で残存する SD処理液を除去します。液状製品は 最終工程によってエンベロープウイルスを pH=5 の溶液で不活化することになります。 このようにして製造された液状免疫グロブリン製 剤は、臨床段階で満足のいく効果がみられ、温度 安定性にも優れており規制当局の要求に対して十 分に応えられることができ、治療現場の要求にも 満足されるものとして次世代のグロブリン製剤と して活躍できると考えています。 ン交換、およびCM Sepharose Fast Flowによる陽 イオン交換、さらにSephacryl S-200HRによるゲル ろ過法を使用することにより98%以上の純度、お よびモノマー比率は99%以上が達成されています。 Albumex 2VIもまたクロマトグラフィー工程によ り最近開発されました。低温殺菌に加えて低いpH 条件とカプリル酸によるウィルスの不活性化ステ ップを組み合わせます。 血漿からのクロマトグラフィー法によるアルブミ ンの精製は、ウィルス除去による最終生産物の安 全性を確保する点に対して従来の方法と比較して 有利です。 イオン交換クロマトグラフィー後のアルブミン純 度は99%以上、ゲルろ過クロマトグラフィー後の モノマーの純度は99%以上を達成しました。 Albumexおよび Albumex 2VIの製造工程に関する 研究においてウィルスの分離に対する特定の抗体 の 影響は、ス パ イ ク さ れ た A型肝炎ウィルス (HAV)の場合に特に強調されます。 Albumex製造工程では、DEAE Sepharose FF イ オン交換カラムを通すことで IgGを除去したアル ブミン溶出ピークには、HAV感染力の5.1 logの減 少が観察されました。 さらに、CM Sepharoseカ ラムによって1.2 logの減少効果が得られました。 表2を参照してください。 Albumex 2VIの製造工程中で、HAV抗原と抗体 の複合体が分離される様子は、PCR法によってト レースされ、DEAE Sepharose FF カラムを通すこ とで感染力の1.4 logだけの減少が確認され、HAV RNAはCM Sepharose FF の溶出液中のアルブミ ン画分では検出限界以下までになりました。 Sephacryl S-200HR工程による効果は、2つのイオ ン交換クロマトグラフィー工程と同じで、アルブ ミン画分からHAVを4.5 log以上取り除きました。 DOWNSTREAM No. 31 p.26 Cofact, a double virus inactivated prothrombin complex concentrate プロトロンビン複合体濃縮工程に おけるウィルス不活化 1998年に至るまでオランダ、CLB(Sanquin Blood Supply Foundation)において、プロトロ ンビン複合体濃縮工程でのHIV、HBV、HCVな どの血液由来ウィルス不活化の唯一有効な手法と して、S/D処理を実施していました。ヨーロッパの p.27∼28 The INACTINE technology an advance in the inactivation of non-enveloped viruses INACTINEテクノロジー p.29 Current perspectives on recombinant plasma products a regulator's view 遺伝子組換え血漿製品‐ 規制側からの視点 p.30∼31 New plasma products opportunities and challenges 血漿成分の新しい製剤の 可能性とチャレンジ 血漿成分の中で治療薬としては、アルブミン、イ ムノグロブリン、血液凝固因子やフィブリンなど ガイドラインでは、血液製剤のウィルスクリアラ ンス保証のために、ウィルス不活化・除去に有効 な工程を2工程、製造工程に組み込むことを提唱 しており(少なくともその1工程はノンエンベロー プウィルスに有効な手法であること) 、このゴール に向けて様々なウィルス不活化方法が評価されま した。 CPVで検討したところ、液状加熱処理は効果が期 待できず、また乾燥加熱処理は処理後に活性低下 が認められました。そこで、第3の手法としてナノ フィルトレーションが検討されました。ポアサイ ズは、HAV、Parvovirus B19のような小さいノン エンベロープウィルスの除去ができるように15 nm を選択しました。 Planova 15Nを用いたナノフィルトレーションの ラボスケールでの結果をもとにスケールアップを 行ったところ、UF前処理、サンプル量、膜表面積 などを至適化し、75%の回収率を得られました。 本工程でのロスは、変性というより物理的・機械 的な原因によると考えられます。 CPVをワーストケースのウィルスとして使用し、 本工程のロバストネススタディーを行った結果、 ナノフィルトレーションを2回実施することで、6 logs以上のリダクション結果が得られました。 DV20の場合、CPV以外であれば、UF前処理なし で高回収率を得ることができました。 結論として、ナノフィルトレーションは、小さい ノンエンベロープウィルスの除去に非常に有効で あり、タンパク質に温和な手法であると判断され ました。 Pentose Pharmaceuticals (1999年11月の合併後は VITEX)は、血液製剤やバイオ製剤中に存在する ウィルスを選択的に不活化する新しい技術を開発 しました。この技術は、選択的かつ不可逆的に核 酸の複製を不活化するINACTINEという低分子の 求電子試薬(陽性試薬)を利用します。 INACTINEはエンベロープ、およびノンエンベロー プのウィルスの不活化を示してきましたが、特に これまでの不活化方法では難しいと言われている パルボウィルスの不活化に効果的であるというこ とが証明されています。ヒトのパルボウィルスB19 のモデルウィルスとして使用されているもので、 血液製剤の業界や規制当局の注目を浴びています。 このようにINACTINEは、血液製剤やバイオ製剤 におけるウィルスの安全性に関して非常に優位な 新技術です。 1980年代始め、AIDS感染および肝炎の感染を押 さえるために血漿の入手が制限されていました。 遺伝子組み換え医薬品の利益の1つは、血液由来 の病原体がないと考えることができるということ です。 しかし遺伝子組み換え製品の生産につい ては、特別な規制当局の要求を満たす必要があり ました。精製工程中に宿主の細胞由来物質、およ び他の汚染物質の効率的で信頼できる除去方法お よび製品の遺伝子の安定性と発現の安定性の確認 などを必要としました。 遺伝子組換えによる製品が本質的に同じアミノ酸 構成を所有するにもかかわらず、まだ自然の製品 と異なるタンパク質構造を持っている可能性があ るため、その同等性をしっかりと確認する必要が あります。 将来、遺伝子組換え製品や合成による新しい製品 が今後どれだけ普及するかは、費用対効果および 安全性によるでしょう。 が血液製剤の中心として多く適応されています。 これらの製品の製造工程は、精製工程でクロマト グラフィーを用いるほか、ウイルスの不活化を含 んだ安全性や純度に対しての要求が高いのは当然 のことと言えます。 簡単に言えば、特定物質を分離することですが、 血漿そのものは、数千の異なるタンパク質の混合 物でできており、その中には、潜在的な前駆物質 なども含まれており、治療薬として潜在的価値の ある目的物を高い純度で精製するという事は容易 なことではありません。 血漿中の数千の異なる物質のうち、およそ数百種 類の成分は現在すでに解明されています。 残念ながら、1970年代から1980年代にかけて急速 に発展を遂げてきたリコビナント技術と1980年代 のHIV感染問題が、血漿中の新規物質の特定を遅 延させる要因となったものの、現在ではタンデム マススペクトリーなどの技術が超微量の成分の探 索が可能になった他、遺伝子レベルでヒトの病気 が解明できるようになり、今後有効成分が豊富な 血漿成分中の治療薬が新たに見つかる可能性が非 常に高いと考えています。 内容に関するお問い合わせは、 アマシャム ファルマシア バイオテク(株) インダストリー事業部 T E L 0 :3 5 3 3 1 9 3 1 6 までお願いいたします。 発行者:アマシャム ファルマシア バイオテク(株) インダストリー事業部 バイオプロセスグループ
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